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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第22話 水と治癒

 

 少し遡り、エーリク、メリッサ、コリーは隠し階段から地下へと向かう。


「ここからは地下にいるかもしれないリィーズの対処の為に私とメリッサが前後の位置に、コリーは魔導を使っていて下さい」

「「はい」」


 1.5人分の幅の階段をエーリク、コリー、メリッサの順で降りていく。


 エーリクとメリッサは攻撃面で強力な力を持つ。


 対してコリーはサポート能力を持つ魔導工兵である。


 ・魔導 《ホットエアー》

 ・能力 『ホットウェーブ』

 ある一定の範囲に熱波を送る事が出来る。リィーズには攻撃、自分たちには痛み止めの効果を付与する。


 この能力の痛み止めというのは『熱によって痛覚が麻痺し、痛みを感じなくなる』という認識がされている。


 一応この時は触覚事態は正常なので、限定的に痛覚だけが麻痺している。


 特別な能力を持っているものの、回復能力の方が上である。

 回復能力よりも良い点は怯まない事。


 攻撃を受ける事で一瞬から数秒の間に動きを止めてしまう。

 特に痛みによる怯みは次の行動に時間が掛かる。


 その痛みによる怯みをなくすのが『ホットウェーブ』である。


 ただしこの痛み止めは無効ではなく軽減なので、軽傷くらいならどうにかなるだろうけど、重傷なら流石に耐え切れなくなる。



 最終的にエーリク隊は攻撃型2人、(攻撃型よりの)サポート型1人の偏った編成になった訳だが、こうなった理由として幾つかある。


 一つ目は人数不足。

 総本部から来た約40人、王国と公国から応援として魔導工兵を前線に来ている。

 敵側が侵攻してきた前線に割き、クリフォード隊は落とされた街を取り返す為に割き、ホーリーヘッド時点でクリフォード隊も合わせて約30人。

 総本部自体が最前線に送る事を目的にしていた為、多めに送る事が出来たとしても市街戦には少ない。

 さらに市街戦において幾つかの部隊に分けてそれぞれに目的を持つ事によって減っていき、そこに裏切りも起こって減っている。


 二つ目は回復能力が希少である事。

 回復能力は純粋な回復能力の魔導と付属として回復能力がある攻撃型魔導がある。

 どちらにとっても希少であり、後者の殆どは微力かつ継続回復というのが多い。

 市街戦の前夜の時点でクリフォード隊抜きで6人。

 ウィロー、アシュリー、ミック、ベレット、ネイト、そしてエーリク隊側にいた裏切り者。

 クリフォード隊の方にもいたにはいたが、編成時にミックとベレットはエーリク隊になる事は決まっており、ネイトはクリフ隊で必要、ウィローは回復よりも戦う可能性もあるという理由でアシュリーと裏切り者となる。

 前夜の時点で裏切るというのは可能性であって、裏切らない可能性もあるし、個々で裏切らない可能性もある。

 いつ裏切るかも分からないため、クリフォード隊(デレック隊)と合流するまでの間にされると場合によってはウィローだけが回復役する必要あり、戦闘に参加するのが難しくなる。

 という点を考慮して確実なアシュリーをウィロー隊に入れている。

 裏切り者だった回復役が裏切らなければここまでの同行を許し、回復役を頼んでいただろう。


 実際にはミリー・レイラ戦において回復役を各々でいるため、どちらかを寄越すのが正しいのだろうけど、ミックは妹のミリーを助ける為に来ている訳だし、ベレットは現状では煌夜の側にいる事で最高の状態になる事が出来ている。


 まぁ、後者に関しては魔導の全力を出すという点では煌夜と一緒にいる必要もないだろうし、回復能力は使う事も出来るだろう。

 それでもエーリクは特に言う事はなかった。


 結果的に疑似的とはその役割をコリーが務める事になった。


 コリーの魔導は正直に「無いよりマシ」という評価されている。


 今回の編成において決まっている戦いに行く者は固定としてそれを踏まえて回復役を振り分け、不足分としてコリーはエーリク隊に含まれている。


 エーリクもメリッサも経験上の違いはあっても火力という面ではどちらも強力。

 戦闘面では2人だけで問題ないだろう。


 コリーは自身の防衛を務めながらサポートを行う。


 とは言っても階段には何も無く、階段を降りきって、両開きの扉があった。


「確認します」


 エーリクは小さな声で2人に伝え、2人は頷いて応える。


 右扉を少し開けて、間からその先を覗く。


 その先には一本道で、等間隔に松明が置かれていた。

 そして何よりも。


「ここもいない」


 エーリクは扉を開ける。

 その一本道には何もいなかった。


「リィーズも魔導工兵もいませんね」

「好都合ではありますが、この先にも何も無い可能性もあるかもしれません。それとも狭過ぎる故に配置をしていなかったか」


 この先にはディアンもしくは領民がいるとすれば何かしら妨害があっても不思議で無い。


 それなのに何もいない。

 その事実が不気味さを際立たせている。


 引き続きそのまま歩いて行き、またも両開きの扉にたどり着く。


 先程と同じ様に中を覗こうとしたその時。


「こそこそしていても無駄だ。入って来い」


 その扉から聞こえた声。


 エーリクはそれに応える様に扉を開けた。


 その先には広い空間があり、幾何学的模様が地面が描かれ、その中心にいた。


「ディアン」

「久しいな、エーリク」


 その男性こそが今回の首謀者かつ敵総大将であるディアン・メディシーアである。


「お前が来たという事はレイラを倒したか…いや、クリフォードが来ているという話を聞いているから、そっちを優先したか」

「レイラさんが最終防衛だったのですか?」

「は?ここに来るのは十中八九お前かクリフォードしかいないだろ?あのクソババアや各本部長・支部長ならともかく現時点でこの街にいる者で我に挑めるのはお前らだけだ。配置したとて無意味でしかない」


 ディアンに挑む者は限られる。

 その者にはリィーズや魔導工兵を配置しても無意味だと分かっていた。


 それより下の実力なら足止めとして置いただろうけど、挑める者がいなければレイラに阻まれて突入する事もないし、いたとしても今回の様な同行する形となる。


「さて、ここに来たという事は我を倒しに来たって事でいいな」

「えぇ」

「こちらも易々と倒されたくはないからな。ただ、小童とは少々侮り過ぎだ」

「散!伝えた様に!」

「「はい!」」


 ディアンが手を向けた時、エーリクは避ける様に指示をする。

 メリッサとコリーが離れる。


『キラーヒール』

『クラーケン』


 エーリクはディアンの能力を自身の水で出来た大王イカで防ぎ、そのまま攻撃を仕掛ける。


『ディケイ』


 メリッサはディアンの横から毒を出す。


「毒か。喰らっても問題ないが、喰らう意味もないからな」


『キラーヒール』


 メリッサの毒は消えてしまった。


「メリッサさん、当たる様に努めて下さい」

「分かりました」


 メリッサの毒は当たれば死もあり得る力を持つ。


 しかし、エーリクはそれほど期待はしていない。

 ディアンも毒を持つからである。


 それでも当たらなければ分からない。

 エーリクにとっては掛けみたいなものだろう。


 コリーのする事は自身の防衛と『ホットウェーブ』で自分を含めた3人に痛み止めを施す。


 そして、何よりもこの戦いでの主力はエーリク。

 大王イカの足が伸び、ディアンへと攻撃を行なう。


『キラーヒール』


 足が紫色に変色。


 すぐに足を切り、もう一度向かう。


「私は容赦しません」


 大王イカの2本の足から水が流れて、地面に広がる。


「水攻めか」


 大王イカの6本がディアンを攻撃し、2本が水を流している。

 次の行動を邪魔させない為に。


 水が部屋の一面に広がり、足首ほどに満たすとそれを発動した。


【主神】『グロヴ・ヴォグ』


 大王イカの残り2本から水の玉が飛び、メリッサとコリーに当たり、水の玉が水の膜となって覆う。


 そして、大王イカは崩壊。

 大量の水が溢れ出す。

 一瞬で部屋を水が満たす。


「これは……息が出来る。声も…」


 水の中でコリーは息が出来る事と声を発する事に驚く。


「これって…毒を流して大丈夫?」


 メリッサは毒を出す事をやめていた。

 毒が味方にも向かうかもしれないと思ったからだ。


「メリッサさん、問題ありません。味方には当たりませんから」


 その心配を解く為にエーリクが伝えた。


 メリッサは半信半疑ながら毒を出した。

 それを確認したエーリクがその毒を混ぜる様にしてディアンを中心に渦巻いた。


 普通ならここから抜け出す事は出来ない。

 しかし。


「ダメなのか」


 渦に呑まれた…様に見えたディアンは何も変わっていない。

 ダメージがなかったからである。


「はっ!」


 剣を抜いたディアンは一振りでその渦を解いた。


「我に攻撃は無意味だ」

「予想はしていましたが、流石は回復においては貴方ほど右に出る者はいない」

「残念だがな」


 エーリクの攻撃は魔導工兵の中でも上位…いや最上位の部類に入るだろう。


 そのエーリクの攻撃でもディアンには届かない。


「しかし、そちらは何故戦おうとしない?」

「さぁな、答えるとでも?」


 エーリクはほとんどの力を見せて攻撃してきた。

 逆にディアンは一度能力を使っただけ。


 エーリクが攻撃し続けていたというのもあるが、反撃しようと思えば出来たはず。

 しかも、未だにその場から動いていない。


「そういうお前は焦り過ぎじゃないか?」

「これでも遅い方ですよ。貴方の軍が攻めて来た所からここまで来ているのですから」


 エーリクがすぐに大技を出した事に焦りがあるのではと聞いてきたディアンにエーリクはむしろ遅いと答えた。


 これはディアンが自分との戦いに焦り過ぎという解釈で言ったものの、エーリクはこの戦争全体での話を言った訳である。


「未だに貴方の戦力を把握し切れていない。だから、どの地でも警戒を解く事が出来ません。それならその長を倒すしかないとは至極当然ではありませんか」


 ディアン側はリィーズの存在で戦力の把握は出来なくなっている。


 通常戦争における戦力は個の実力、持つ武器、兵力、他にも地形や防衛力などある。


 その中でリィーズの出現による影響は兵力。

 もちろん個の実力もあるが、出現後でも例外がない限りはどこの支部でも対応可能。

 兵力は通常ではおおよそ把握出来るし、多くても限度はある。

 しかし、リィーズはどこからでも出現し、ほっとけば増えるし、何より即戦力である。


 人間は年齢の問題や戦力になる為に鍛錬をする必要がある。


 その差は大きく、期間が長ければその分大きくなるだろう。


 ただし、ディアンを倒した所でそのリィーズが消えるという事もない。

 無くなるのは統率力だけ。


 だから、ディアンを倒す事が正しいかどうかは分からないけど、どっちしても倒す事には変わりはない。


 エーリクが急いでいる理由は魔導工兵には限りがあるから、長期戦になればこちらが不利になると思っているからである。


「だからと言って焦る必要が何処にあるって言うんだ?小童は所詮小童でしかない。そう、我の前ではな」

「引け!」


 ディアンが何かするのを感じたエーリクが声を上げる。


 それに反応して2人は下がった。


「もう遅い」


『キラーヒール』


 2人は2歩目で止まった。


「今まで何を見てきた。アホが」


 2人の姿を見て分かった。

 洗脳は簡単に行える事を。


「声も出せない程か?まぁそれならそれで都合がいいがな」


 エーリクは顔を伏せていた。

 後悔していたからである。


 洗脳が出来るのはここに来るまでにずっと見て来た。

 だけど、そもそもディアンが使う能力とは違う為、あり得るとすればミリーのようなタイプの魔導持ちが別にいるか、【主神】や【導神】でそれを可能としていると思っていた。


 前者ならミリーと同様に匿っている可能性があるものの、その存在がいるとしたらミリーを重宝する事はなかったかもしれない。

 どちらかというとその場合はレイラを味方に付ける為に重宝していると捉える事が出来るだろう。


 後者なら【主神】と【導神】自体が通常の能力の上位互換という事が多い。

 その為、ディアンの場合は既に回復という分野においては大体の事が出来るので、「副作用」を取り除いた能力か、または「分野が広くなる」かになる。

 その上で洗脳を可能とするのは「分野が広くなる」方だろう。


 1つ疑問に思っていた事があるとすれば『洗脳』という能力である。


 そもそも魔導は攻撃、サポート、回復の効果のある能力が多い為、リィーズを倒す為のモノという認識をされている。


 それを踏まえて『洗脳』はどれにも当てはまらない。

 それ以前にそれをするのに参考にしたミリーの『魅了』にしても当てはまらない。


 つまりは今までの常識に無かった事が起きていて、それが『洗脳』と思われる力と思いながらも確定する事がエーリクには出来なかったのである。

 何よりそれが遅れを取った要因だろう。


「すみません」


 エーリクが一言謝罪を言う。

 それと同時にメリッサとコリーは倒れた。


「殺したか」

「いえ、今回は私の不手際。こうなった以上、今は気絶して貰っただけです」


 洗脳状態になった2人を戻す事は出来ない。

 それなら眠って貰った方がマシだと思い、エーリクは気絶させた。


「そもそも1人で戦う予定だったのをいろんな選択肢を用意した上でここまでたどり着きましたが、今この時にそれはもう1つだけになりました」


『ユーブハーヴ』


「ぐっ」


 部屋全体に広がった水がディアンに集まり凝縮していく。


「深海を知っていますか?最近探査が行われたらしいですが、まだ謎の多い場所。そこには暗く、水による圧力が浅いところよりも強いと言います。今貴方がいるのはその深海。貴方なら生きる事は出来ても、そこから抜け出す事は出来ません」


 エーリクは追い打ちを掛ける様に能力を使う。


『クラーケン』


 黒い水で形成された大王イカがディアンを包む黒い水の上から足を伸ばして縛る。


「最初からこうしておけば良かったですね」


 ディアンは黒い水の中で『キラーヒール』をしていながらも苦しんでいた。



 しかし、突然下に描かれていた幾何学的模様が光る。


「何が…」


 エーリクはすぐにメリッサとコリーを水で入り口の方に運ぶ。


「レイラとミリーは解かれたか」

「何で声を発して……」


 ディアンが黒い水の中から声を発する。


「それなら前倒しにするか」


【主神】 『ポイズンオールパーパス』


 ディアンは【主神】を発動するが、さらに呟く。


『リバァース』


 それを発した後、地鳴りが起こる。


「仕方ない」


 ディアンが何かしたと思い、エーリクは止める為に大王イカの足で締め付けに掛かる。



 しかしもう遅い。



 黒い水が弾け、ディアンの体が大きくなっていく。


「天井が崩れている。このまま居ては…」


 エーリクはメリッサとコリーを連れて、部屋から出て、急いで地上に向かう。


 しかし、階段を上がる手前で3人は瓦礫に埋もれた。

久しぶりの投稿。

決着部分に難航していたのですが、次の話に詰め込みました。

現在エピローグをやっている状況です。


本編の方はエーリク隊VSディアン。

コリーの魔導が判明したのですが、これから先活躍するシーンがあるかは不明。まぁ特殊な能力なので作ろうと思えば出来そうではありますが。

メリッサの活躍の場は別で用意しています。今回はこの程度で。

エーリクは前章で披露した大王イカだけでなく、深海や【主神】を披露しました。はっきりと言えば現状の全力となり、強力な能力を持っている訳ですが、ディアン相手にはそうでもないです。

ディアンの魔導の詳細はこの章の用語解説で説明しようと思います。


次回はクリフォード側に移った後の話。

突然地面から現れた巨人。

それを見上げるクリフォードとミック。

明らかに倒せる相手ではない見た目の巨人に2人は立ち向かう。

次回、力に溺れた狂神。

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