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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第21話 託された想い

 

「成功した様で何よりです」

「ありがとうございます、レイラさん」


 祝福を与えるのはレイラ。

 人型リィーズを止めていた。


「どうやら収束した様だな」


 そこに遅れてクリフォードとベレットがやって来て、クリフォードは煌夜を抱えていた。

 ベレットは中にいたロキたちにビックリしてたけど、ロキたちの様子やミックが気にしていないのを見て落ち着きを取り戻していた。


「はい。煌夜は大丈夫なんですか?」

「気絶しているだけだから大丈夫だ」


 煌夜は気絶しているだけでその内起きるだろう。


「クリフォードさんはこれから父上の下に?」

「何故そう思う」

「貴方は後悔している。この様な状況になってしまったのを。でも、父上に何もしなかった事ではなく、そうしてしまった事で国民に苦を与えてしまった事に後悔しているのではありますか?」


 クリフォードはディアンに何もしなかった事を後悔しているのは間違いないだろう。

 しかし、ミックはあまり思っていないと言った。


「貴方の信念は国民を守る事にある。それはこれまでの貴方の性格や行動などの話を聞けば分かります。そういう点で言えば父上を守れなかったのは後悔していると思います。友としてはどうですか?」


 クリフォードはため息を吐きながら答えた。


「私は友としては非情だ。友と感じれば価値観が変わるからだ。国民を第一と考えれば平等に扱う事が出来る。しかしだ、今回私がディアンの下に行くのは友としてやれる事があるからだ。仮に本心で思っていなくても」


 クリフォードは王族に生まれたからには国民を守る事を使命だと思っている。


 しかし今は王族を辞めている。

 それは王族である事は色々と枷がある。

 その中でも守られる立場で率先して行動出来ない事は自由度がない。


 そして、何よりも世の中の脅威はリィーズ。

 魔導を授かったクリフォードはリィーズから国民を守りたいから魔導工兵になった。


 でも今この時、友の状態を無視して自分の信念を優先した結果が逆に国民を脅かしてる。


 クリフォードの後悔は「何かを蔑ろにして回り回って守りたいものを犠牲にしてしまった事」である。


 ただしそれはディアンの下に行く理由という訳ではない。


「私が前線に出る事にした理由は戦力不足を補う為だけでなく、国民を仇なす存在を滅したいと思っていたからだ」


 クリフォードは王国本部長でありながらも自由を好む。

 それは信念を貫く為に自分も動ける様にしているからである。


 まぁ、本部長である事は育成にも力を入れる必要があるからやっている。


「しかし、これまでにディアンが領民を守っている可能性があると分かった。先程ウィローから連絡があり、領民の確認が出来なかった事も1つとしてある。それにより船に艦砲射撃の許可した。準備出来次第放たれるだろう。とにかく、私がまぁ敢えてディアンを友と思う事があるとすれば、私とディアンの信念が似ている事だろう。お互い『民を守る事』を考え、それを約束として私は交わしている。今あの様な状態でありながらもそれを貫いてくれるというのであれば、私は友として応えるべきだと思ったんだ」


 クリフォードとディアンの仲というのはクリフォードが塩対応、ディアンが神対応という対比関係で出来ている。


 クリフォードがディアンには期待を持っていないのに対してディアンはしている。

 ただし、『民を守る事』に関しては同じか、クリフォードの方が上をゆく。


 それ故にクリフォードは2人で交わした約束を果たそうとしているディアンに敬意を持っている。


 それは友というより仲間と捉える事が出来るからこそクリフォードは「敢えて」と言ったのだろう。


「それで私は向かうが、来たいのか?」

「はい」


 ミックがクリフォードにディアンの下に行く事を聞いたのは自分も向かいたいからである。


「私が向かうのはエーリクだけでは倒すのは難しいと思ったからだが、戦闘に参加するのは難しいと思うぞ?」

「そうですね。今までの私はアイツを倒したいとずっと思っていた。でも私の力は倒す為の力ではなかった。それに私はもう倒したいとは思わない。だから、今私がアイツの下に向かうのは父上を助ける、それが無理ならアイツを倒す為にサポートをしたい」


 今のミックに恨みに囚われていない。

 あるのは父上を救うという意志のみ。


 取れる手は取り戻すか殺すか。

 それが父上を今の苦しみから救う事に出来る。


「まぁ…今なら問題ないだろう。参加を許可する」

「ありがとうございます」

「決して前に出る事がない様に頼むぞ」

「はい」


 クリフォードは参加を許可した。


「それともう一つ」

「何だ?」

「左腕を出して貰えませんか?」

「左腕?何をするつもりだ」


 ミックはクリフォードに左腕を出す様にお願いする。

 左腕とはアガートラムの事だろう。


「今でも父上程の無理を通す事は出来ません。でも、今は素体となる腕と1番難しい神経を繋げる事は出来ています。それ元により正確に繋げたいのです。アイツに勝つ為に枷を持った状態では勝てません」

「それはそうだが……」


 アガートラムはハイリスクハイリターンな力を持っている。

 そのリスクの部分はまだ軽いもので『ソードオブダークネス』という強力な力を使っている。


 しかし、ディアンとの戦いは長時間使用する事になるかもしれない。

 そうなるとリスクは確実に蝕み、場合によっては死ぬ事もあり得る。


 そうならない為に直す必要があるとミックは言っている。


「父上は私が自分を超えると思っていた。ですが、無理通すなんて事は出来ません。でも私に出来るのは『副作用無しに直す事が出来る』事です。そういう意味では父上よりも優れているかもしれません。だから、父上は腕を与える時、貴方に副作用を与える事をずっと懸念に思っていたと思います。それなのに貴方に与えたのはその副作用を息子の私に取り除いて貰う事を信じていた。それが今なのです!」


 ミックの力がディアンの力を超えるという話はレイラを通じて先程聞いた。


 その力とは『副作用の無い治癒』。

 ディアンの力は無理通してほぼ何でも治癒出来る能力であるものの、副作用を伴う。

 対してミックの力は元に戻す治癒を使う。

 それは副作用も戻す事が出来る。


 その力はディアンには出来ない。

 だからこその特異性。

 ディアンが望んだものである。


「……」


 クリフォードは静かに聞き入れ、左腕を差し出した。


「確かにディアンと戦うなら最善を尽くす必要はある。何より君が憎む相手をちゃんと判断し、父親を救おうというなら私は応えてもいいって思った。だから、やってくれ」

「はい」


 ミックはクリフォードの左腕…アガートラムに手を翳す。


『レストア』


 アガートラムに淡い光が包み込む。

 この時、【導神】『ラインホープ』も使っているが、既に解除しそう所を何とか留めている状態で『レストア』を使っている。



 そんなに掛かる事なく淡い光は消え、ミックは下がった。


「終わりました。試して下さい」

「あぁ」


 見た目は変わっていない。

 しかし、クリフォードには感覚が違う事が分かった。

 だから躊躇する事なく動かした。


「逆流していないな。何をしたんだ?」

「やったのは副作用である金属の逆流を防ぐ為に神経に管、接続部に壁を作りました。今回は人間が自己治癒能力を利用し、細胞分裂を行なって可能にしました」


 今回使ったのは自己再生能力。

 傷付いた皮膚を細胞分裂を行なって傷を治す力を利用した。


 ミックの魔導的には『元に戻す治癒』=『再生』という感じで副作用をなくしている。


「何というか、隅々まで神経が通っている感じがする」

「元々は義手を動かす為に神経が通っていました。というより隅々まで神経を通してしまえば副作用もその分大きくなります。ですが、その副作用がなくしてしまえば本来の腕と変わらない様に使う事が出来ると思います」


 今までのアガートラムは手と指を動かす為に神経が通っていた。

 それだけでも十分だったし、増やせばその分逆流しやすくなるから、最低限にしていた。


 その副作用がなくなり、本来の腕と変わらない様にする事が出来るが、実際は今までとそう変わらない。

 というより、今までが最低限の感覚だったので余計に感じる様になってむしろ動かし辛くなりそうな気もする。


「うん、確かに。これで存分に戦う事が出来る。感謝する」

「いえ」

「それじゃあ、向かうか」

「はい」

「ここを任せてもいいか?」

「えぇ。ディアンの事任せましたよ」

「あぁ」


 レイラはミリーを見守る為に残る。


「ベレットはここで待機していて下さい」

「うん、分かった」


 ベレットも同様にここに残る。

 今は敵対していないとはいえ、レイラがいる中で煌夜を残したくないからである。



 クリフォードとミックが行動を起こそうとした時、轟音が鳴る。


「大砲だ」


 驚くミックとベレットに答える。


 その答え合わせの様に近くで轟音が鳴り、地面が揺れる。


 さらにその後も何回か轟音が鳴っている為、街内にいるリィーズを倒している想定で明確には街破壊と言われてもおかしくない。


 一応敵方の本拠地という名目があるから出来る事であって本来なら非難を言われるだろう。


「うん?」

「どうしましたか?」

「気のせいだと思いたいのだが、地面の揺れが途切れていない気がしてな」

「揺れ事態はずっとしていますが?」


 ミックが言う様に揺れはずっとしている。


 しかし、僅かな違和感をクリフォードは感じていた。


「どうやら、少々遅かった様です。すぐにここから離れた方がよろしくかと」

「分かった。ミックとベレットは外に飛び込め、煌夜は私が抱える」

「分かりました」

「は、はい」


 クリフォードは煌夜を抱え、レイラはミリーを抱える。

 そして、ロキが開けた穴からロキたちリィーズを含めた全員が飛び出す。


 地面に当たる前にレイラが血を垂らしてクッションにする事で皆無事に着地した。


「館の敷地から出ましょう」


 レイラが誘導し、敷地外に出る。


 館の方から大きな音と共に敷地内の地面が盛り上がり始める。


「急げ!」


 出遅れているベレットにクリフォードが呼び掛ける。


「頑張って下さい」

「うわぁあ」


 転けそうとするベレットの手を掴み、転けない様にミックが支える。


 そして、何とか敷地から出た。

 振り返ると、毒々しい紫色の肌をした人型の生物が現れた。


「あれは大型でしょうか?」

「あれがディアンです」


 大型のリィーズだと思ったミックだったが、それがディアンだとレイラが答えた。


「リィーズと変わらないな」

「そう…ですね。彼は自身にも大分実験をしていたので、体の中に私以外のリィーズを取り込んでいてもおかしくはありません」


 既にディアンの中にはミックと同様にレイラの血が入っている。


 その上で他のリィーズも取り込んでいるのではないかと伝える。


「レイラさん、ここはよろしく頼む」

「えぇ、ディアンの事任せました」

「ミック、行くぞ」

「はい!」


 残る3人をレイラに任せて、クリフォードとミックはディアンに向かう。


今回はミックがクリフォードのアガートラムを治療(改造)する話でした。

アガートラムの副作用をミックが治す案はアガートラムが出来た時点で決まっていました。

ただ、展開的には最終局面の予定でしたが、【導神】はともかく『レストア』の方はそんなに遠くまで使える訳ではないので、最終局面では難しい可能性があって今回にしました。


次回はエーリク側の方に移ります。

隠し階段から降りていくエーリク、メリッサ、コリーの3人。

階段には何もおらず、その先の通路にもいなかった。

そして、辿り着いたのは少し広い部屋だった。

次回、水と治癒。

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