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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
35/38

第18話 メディシーア家

 

 裏切り者達を引き渡した後、エーリク隊はメディシーア辺境伯の館に向かっていた。


 館はホーリーヘッドの北東にある3階建ての大きな屋敷。

 その中にいるのはメディシーア辺境伯が持つ私兵の中でも精鋭中精鋭。

 魔導工兵でもベテラン組じゃないと勝てない。


 しかし、裏切り者が3人出て、7人。

 エーリク、クリフォード、煌夜、ミック、ベレット、メリッサ、そしてコリー。


 裏切り者がベテランよりの実力者だったけど、エーリクとクリフォードで制圧したことで犠牲者は出なかった。


 ただしベテラン2人、一人前程度の5人。

 しかも、ミックは後方よりでコリーはサポートよりの戦闘型。

 二人一組で行けば倒す事が出来るかもしれない。


 しかし、ミックや煌夜は重要な戦いがあるため、余計な戦いをするべきではない。


 そこでエーリクとクリフォードはその精鋭達を2人だけで片付けていく事にした。


 門番の2人を速攻で倒し、館内はエーリクを先頭、クリフォードを最後して残りの5人を囲む様にして先に進む。


「ディアンは何処にいると思われますか?」

「仕事場にしている書斎でしょうか」


 館をよく知っているミックにディアンの居そうな場所を聞く。


 まぁ、ミックも実際に何処にいるかは分からない為、可能性にしかならない。



 エーリク隊は3階に上がり、ある部屋にたどり着く。


「ここですか」


 エーリクは扉を開ける。


 左右に本棚があり、部屋の奥には机が置かれ、その向こうに椅子、さらに椅子の横にあのリィーズが立っていた。


「お待ちしておりました」

「レイラさん…」


 ミックはそのリィーズの名を言った。


「ミック、改めましてお久しぶりですね」

「はい…」


 はっきりと返事ができない。


「レイラさん、ミリーは?」

「ここにいらっしゃいますよ」


 リィーズ…レイラは椅子を回した。

 背もたれで見れなかった様で、そこに女の子が座っていた。


「ミリー…」


 その姿を見ても喜べなかった。


「ひっ」


 ついメリッサが悲鳴を上げてしまった。


「これはこれまで見てきた洗脳とは比が違うな」


 これまで見てきた兵士や魔導工兵は「正気がないな」程度だったが、目の前にいるミリーは生きているかすら分からない。

 敢えて言うなら人形みたいな感じ。


「この際だから貴方達親子についてお話ししましょうか?」

「それなら私達は先に…」

「聞いていった方が良いと思いますよ。それにこの子を解決する前に彼をどうにかしたらどうなるか分かりませんよ。今見ている様に他の洗脳されている子達とは違います。それに私も彼とこの子の二重洗脳に掛かっている状態にありますから、彼に刺激を与えて教えたい事も教えられないかもしれません。せめて戦闘が始まるまで居てくれませんか?」


 目的のディアンがいないので、去ろうとするエーリクをレイラは止めた。


 正直ディアンが今何をしているかは分からない。

 レイラが時間稼ぎをしている可能性も十分にあるだろう。


 でも、レイラの言っている事も正しい様にも見える。

 これまで見てきた洗脳された者達やここに入る前に聞いたカールの肉体への洗脳。


 ディアンにとって娘のミリーがどれだけ重要かは分からないけど、多分1番洗脳掛けている気がする。


 そうなるくらいなら少し待つのは悪くない。


「分かりました」

「ありがとうございます」


 レイラは話し始める。


「とりあえずディアンと私の出会いから話しますか。元々私は放浪とするリィーズでした。エーリク様やクリフォード様は私を見てどれくらいの年月が経っているかは大凡分かっていますよね?」

「大凡というのも難しい話だが、一応は」

「というより測れませんから。他の人型とはさらに上にいる様な感覚ですね」

「そうですか」


 リィーズの実力=経過年数という訳ではないが、経過年数が高いリィーズは実力が高い傾向にあるのは記録としてある。


 ただ、疑問に持つ点もある。


「それよりも貴女がなぜそこまで人間と変わらない体を持っているかの方が気になりますね」

「それは簡単な話です。腐敗した人間から生まれたリィーズだからです」


 人間から生まれたリィーズ。


 その実例は見られていない。

 しかし、動物から生まれたリィーズという実例はある。


 だから、そこまで不思議な事ではない。


「そうですか」

「それならその顔立ちは何ですか?」


 煌夜が質問する。


 レイラの顔立ちは西洋人ではなくどちらかと言うと東洋人の様に見えた。


「そちらの話は後程話させて頂きます。貴方との繋がりとも関係があると思いますので」

「あの剣と…」


 煌夜との繋がりだと炎の剣の話になる。

 確かに今はそれ程重要ではない。


「話を戻しますと、ディアンと会ったのはミックが生まれて1、2年後でしょうか。今とは違いまだ昔のディアンが表に出ていました。しかし、私との出会いはディアンを狂わせてしまった」


 レイラがいつメディシーア家のメイドとして雇われたかをミックは知らない。


 だが、出会いが1、2歳なら知らなくてもおかしくはない。


「元々ディアンの中にはもう1人いました。それは魔導の影響だと本人は言っていました。相手に回復と副作用を与える時にその行使した事による副作用が受けてしまう。しかしディアンはそれに抗い、精神狂わす副作用が別の人格として現れた。それでも抗い続けてきた、主導権を奪われない様に」


 相手への回復と副作用は軽いものなら軽く済むだろうけど、使用者には軽くても蓄積していく。


 それが本人の意志で拒否しても別の形で蓄積されてしまったのだろう。


「そして私が現れた事で彼は私に魅入ってしまった。それが人間と変わらない姿だったのか、私の力である血を操る事だったのか、その両方かは実際の所分かりません。でも、彼はある時に血を分けて欲しいと言ってきました。その理由は分かりませんでしたが、もうその時には私がリィーズである事を気付いていたのでしょう。それと同時に私は洗脳よりも効力の弱い催促という形で渡しました」


 ディアンとレイラの出会いは偶然でしかないだろう。

 レイラがリィーズである事をディアンともう1人のディアンの両方が気付いた可能性はある。

 ただし、ディアンは気付いていながら人間として接していた可能性があるが、もう1人のディアンはリィーズとして接していた。


「催促に関しては私の憶測になりますが、要望された時にその様にしてしまう感覚でした。多分ですけど、今の程の強制力はなく、その時は条件があったのだと思います。私がディアンに心を開いていたという事もあるかもしれません」


 催促はレイラが感じたのに近い言葉を言っているのだろう。


 そしてそれは回復とは別の力。


「それで彼は私の血を人間に入れたのです」

「え!?」

「リィーズの血を入れ…た?」


 エーリク、クリフォード、煌夜、ミックは驚きはしなかった。

 その可能性はミックの炎の剣関連で煌夜が感じてた事から予想出来ていた。


 それを知らないベレット、メリッサ、コリーはそれぞれで反応した。

 コリーは声こそ出さなかったが、表情から驚いていた。


「反応を見せないのはこちらとしては驚きだけど?」

「一応、予想はしていたもので…」

「そうですか」


 レイラは敢えて追求しない。


「実際には人間は人間でも罪人を使っていました。倫理観が終わっているのは確かではありますが、それでも罪人を使っていた事はまだマシでしょう」


 人体実験というのは実際にはある。

 ただし、表立ってする様な事ではないし、倫理観があるかないかで言えばないだろう。


 その対象が誰でも良いという訳ではなく、罪人を使う事で仮に表に出ても文句を言う事は少ないだろう。


 罪人を使ったのはディアンが制御した結果なのかは分からない。


「しかし、その実験は失敗に終わりました。結果は言わなくても分かりますよね」


 結果は「リィーズの血が体を崩壊させた」。

 つまりは死。


「その結果は確実なものとなった。それなのに…あろう事か彼は私の血をミック…貴方に与えた」


 予想通りとは言え、実験の結果が結果だけに恐ろしく感じた。


 ベレット、メリッサ、コリーに関しては前者2人は声を抑えて驚き、コリーはまたも同じ表情をしていた。


「ご存じの通り、ミックはここにいます。つまりは成功したのです。ですが、それでは終わりません。そのすぐ後に彼は血を自分にも与えたのです」


 実例が欲しかったのだろう。


 もちろん、結果はミックと同様に成功している。


「それが家系によるものかは分かりませんが、後日またおかしな事を言い出しました。『子を産め』と」


 リィーズには子を産むという事は出来ない。

 子を産む場所はあっても、機能がないからである。

 その前にそもそもそういう考えはない。


「私にそういう意思はありませんでしたし、多分無理でしょうね。ただ、そこを彼は自身の魔導で無理を通しました」


 副作用があれば何でも出来てしまうディアンの魔導。

 それは回復能力ではなく催促と似たような能力なのだろう。


「その結果として彼と私の子が生まれた。それがミリー」


 それを意味するのは人間とリィーズのハーフ。

 多分、生物的にも初めての存在。


 それも予想していたとは言え、驚きはする。


「知っての通り、ミリーはリィーズとの仲を持つ事が出来ます。それはある意味魅了に近い力でした。そして、彼はそれに魅力を感じてしまった」


 ディアン、ミック、ミリーそれぞれにリィーズに関する特異性を持つが、その中でもミリーは特別性が高い。

 リィーズと仲間になれるのは今までにない力だろう。


「執着し、その力を研究して洗脳を作った。それを繰り返し繰り返し行い、ある地点へと行き着いた。それが今のミリーなのです」


 洗脳を作り出し、更なる研究を行なってきた。

 その実験体は私兵や魔導工兵、リィーズとさまざまといる。


 でもその中で1番受けてきたのはミリー。

 手放したくないから余計に縛り付けたのだろう。


「一気に申し訳ありません。しかし、ここまで聞いた上でミック、貴方はミリーをどうしますか?」


 色々と予想付けて来たとは言え、ミリーが人間とリィーズのハーフであった事。


 少し前にレイラがリィーズでどうしたいか問われた時以上に難しい問題。


 レイラはリィーズだから、切り捨てるという選択肢も取れるが、ミリーは大切な妹。


 目的だって妹を助ける為に来ている。


 そのまま助ける事を選ぶか。

 リィーズとして討伐する事を検討するか。


「もし、ミリーを殺そうと思うなら私が絶対に許しません」


 レイラは元が人間だからなのか、自分の産んだ子を自分の子だと認識している。

 母性本能というのが生まれているからだろう。


 だからこそ自分はリィーズだから仕方ないと思いつつも、ミリーだけは救いたいと思っていた。


 本当ならここでミリーに手を出される前に自分が全員と相手をしようと思っている。


 ただし、ミックだけは身内だからどうするかの猶予を与えている。


「ここに来るまで色々と考えて来ました。レイラさんがリィーズであると知った時、私は混乱しました。そして、私やミリーの件も考えました。その上で答えさせて下さい」


 レイラがリィーズであるという事実と自分達のリィーズに関連する事からの予想。


 そこから自分がどうするべきかを考えて来た。


 そして答えを見つけた。


「レイラがリィーズであっても私は構いません。昔から見てきた貴女からは偽りがあったと感じた事はありません。そして、ミリーに関してはずっと唯一の家族だと思ってきました。今更見限るなんて事はしません。出来ません!」


 レイラがリィーズであっても、ミリーが半分リィーズであっても、ミックは今まで深めてきた仲や愛を信じ、これからも大切にしていく為に。


「ありがとうございます、ミック。それなら貴方に本当の父親からの言葉を伝えておきます」


 レイラはディアンからの伝言をミックに伝える。


「『ミック、ミリー共々苦しい思いさせて済まない。お前に関してはどうにかする事は出来たかもしれない。もう1人の私はお前には興味がなかったみたいだからな。ただ、ミリーには執着が物凄く、どうしようもなかった。だから、お前がミリーを救ってくれ』」


 そう言われても信用をしていなかったから、それを本当に言っているかは分からなかった。


「貴方を学校に入学させたのは本当の父親。彼の『邪魔だったから』という理由を利用し、魔導を学び、成長して貰う。そして、来るであろう日為に」

「何故そこまで期待をしているんですか…」

「それも聞いています。貴方達の魔導の素となる神は親子同士。どちらも治癒神で高名でありますが、ディアンは神ディアン・ケヒトで悪名が残っており、ミックは神ミアハでディアン・ケヒト以上の力を見せた」

「だからって同じ事には…」

「それもごもっともだと思います。でもディアンはミックの特異性が回復に特化した能力である事が鍵になると言っておりました」

「私の特異性?」


 ミックは他の2人よりも弱い特異性だと思っていた。

 何故ならディアンは副作用あれば何でも出来て、ミリーはリィーズとの仲を深める事が出来る。


 対してミックは回復するだけの特異性だから、少し劣等感を抱いていた。


「回復能力特化だからこそ回復能力に関しては誰よりも優秀で強力なのではないかと」


 実際にはリィーズに対しては攻撃的な回復能力を有しているけど、一応あれは過剰回復によって可能としているだけで、ディアンやミリーの様な回復能力とは違う力を持っている訳ではない。


 だからこそ2人よりも回復能力が上と予想しているのだろう。


「私がミリーに掛けられた洗脳を解けると?」

「そういう事ですね」


 ミックはそのつもりで来ていたけど、正直自信は無い。


 しかしディアンはそれを信じていると言う。


「まぁそうね。ずっともう1人のディアンと接していればそう思うのも仕方ないわね。彼に関しては貴方をミリーから引き剥がそうとしかしていませんから」


 本当のディアンと接していたかは少しくらいはあったかもしれないけど、もう1人のディアンと接し過ぎて悪い印象しかない。


 そして、そのディアンはミリーを確実に手中に入れる為にミックの存在が邪魔だったのだろう。


 だからこそ、それを本当のディアンが利用した訳だが。


「この際だから貴方の母親についても教えた方が良いかもしれませんね」

「母上の事を知っているんですか!?」

「えぇ、短い時間でしたけど」


 レイラはディアンの事を信用出来ないミックに自身の母親の事を話す。


「貴方の母親と会った時はずっとベットに寝たきりでした。その上で時々話し合う事がありました」


 本来なら役割を持つ者くらいしか主人の妻に会う事は出来ない。


 それが出来る程にディアンが心優しく、館内の雰囲気は良かったのだろう。


「貴方の両親は政略結婚の様なもので、母親は元々隣の島の一国の王族だったのです。それに関してはご友人であったお二人は知っていると思います」

「えぇ」

「そうだな」


 ディアンから聞いていたのか、エーリクとクリフォードは知っていた様だ。


「そもそも場所的に隣島の監視を担うのがメディシーア辺境伯の役目。それと共に仲を取り持つ役目もある。政略結婚もその一つだ」


 メディシーア家は辺境伯。

 辺境伯は国外の事を役目にしている貴族である。


 特に七王国がある島と隣島の国々との関係は連合王国の関係があるとは言え、良いとは言えない。


 その関係の調整はノーザンブリア王国やウェールズ公国、そして北のスコットランド王国もやっているが、各国のやっている事は矛先を自分達に向けさせない事と一国にまとめさせない事である。


 現在ブリテン島における国力は若干ウェールズ公国が劣るもののほぼ均等している。


 そこに隣島…アイルランド島が矛先をこちらに向かえばその均等は崩れる。


 だから、メディシーア辺境伯の役目はとても大事なのである。


「えぇ。なので他国の他所者として嫁いで来た自分を特に嫌う事なく迎い入れてくれた事にとても嬉しかったと言っておりました。それと同時に自身がその中に入る事も容易だったそうです」


 他国の者だから警戒されると思ったのだろう。


 そこをディアンを筆頭に館内の皆が容易に迎い入れてくれた。


「実家から情報の横流しとか頼まれていないのか?」

「流してはいたそうです。ディアンと相談しながら真実と嘘を混ぜて流していたそうですが」


 政略結婚の中には情報収集も目的として嫁ぐ事がある。


 まぁそこを上手いぐらいに夫婦で流していたみたい。


「ふーん、それだけ仲は良かった様だが」

「そうですね。私が来るまでは…」


 ここからミックが生まれた所に移行する。


「貴方が生まれた後、貴方の母親は出産による影響で衰弱してしまい、寝たきりになってしまいました。それでもディアンは延命する為に様々な施しをしていました。逆に母親はもう一つのディアンを抑える為に支える事が出来くなったと嘆いていました」


 既にディアンの中にもう1人いる事は知っていたのだろう。


 ディアンが話したのかは分からないが、限られた者に対して伝える事で自分の心を落ち着かせる様にしていたのかもしれない。


「そして、私が来た後からディアンが急激に変化した。それと同時に容態が悪くなった。もう1人のディアンがディアンの魔導を施したからです」


 ここでのディアンの魔導は回復能力として使ったのではなく、それを用いて副作用をしたのだろう。


「そう言えばある時期からディアンは魔導を味方に使ってなかったけ?」

「もしかするともう1人に邪魔される可能性があるので、あえて使わなかった」

「えぇ、多分治す事は可能でしょう。ただ、治す目的で使うとどんな副作用が出るかは分かりません。逆に副作用を目的に使うとどんな回復が発生するか分からない代わりに意図的に副作用を与える事が出来ます」


 ディアンの魔導は等価交換。

 何かを求めればそれだけの対価が必要。


「私のこれは期待だと思いたいが」

「仮に副作用があっても上手く使ってくれると思っていたのではありませんか?それともそれをミックに直して貰おうと思っていたのかもしれませんね」

「なるほど」


 クリフォードは左腕にある義手…アガートラムを見て言った。


 アガートラムの副作用は「無理やり体に接続した事で使用すると義手からの金属が液体で逆流してくる」となり、金属が体内に入ると脳や体に障害を起こす。


 実際クリフォードはそれを上手い事使っているとは言え、限界は存在する。


 まぁ本人はそれさえ気を付ければ問題ないと思っているが。


「それを受けた事はすぐに気付き、死期を感じたあの人は私に伝言を残しました」

「一メイドどころか、素性も知らないのに伝えるとは思えないのですが?」

「うーん、どうでしょう?私がリィーズ…というのはありませんね。それか私に興味が向かっている事に気付いていたんでしょうか?」

「少なくとも何かあったのだろう。とにかくその伝言は何だったんだ?」

「はい」


 分からない以上考えてた所で意味ないが無いとクリフォードは切り捨て、伝言を聞く事を優先する。


「『ミック、これから先両親はいないかもしれません。それでも貴方なら父の闇を治す事も出来る。母も父もそれを期待している』と」


 当時まだミックは魔導を使っていなかっただろうにそれを気付いたかの様な言葉。


「ディアンの妻って…」

「クリフォードさん」

「あぁ」


 クリフォードがディアンの妻…ミックの母親がどんな人だったかを考えながら聞こうとしたが、エーリクは「今はやめた方が良い」という気持ちで止めた。

 クリフォードも察して口を閉じる。


 ミックが俯いていたからだ。


(僕の記憶にはどちらもあるのだろう。だけど思い出せない、幼かったから。でも、レイラの言葉だけで何となく優しい人達だったんだと…)


 そこである記憶が浮かんだ。


 ーーーーーーー

「私達の子ども…」

「そうだ、元気な男の子。こんな生まれて間も無い子に言う事じゃ無いが、この何も出来なかった私達の為にこの領土を頼む」


 生まれて間も無いミックに話し掛ける両親。

 その言葉はあまりにも重く、赤子に伝える様な言葉ではなかった。


 ーーーーーーー


「ふふ」

「ミック?」


 不意に笑ったミックにベレットが心配そうに声を掛ける。


 ただこの笑いを納得している笑いだと気付く者も何人かいた。


(本当に赤子に何を伝えているんですか…)


「それだけ切羽詰まっていたという事でしょうか…」


 小さく呟いたミックは顔を上げる。


「その伝言、しかと受け取りました」


 両親の思い(伝言)を受け止め、覚悟を決めた。


「何か聞く事はありますか、ミック?」

「いえ」


 もうミックがすべき事は分かっている。

 だから、今聞きたい事はない。


「分かりました。他の方はどうでしょうか?」

「2つ程聞いてもよろしいですか?」

「えぇ」


 質問しようとしたのはエーリク。


「領民とディアンは何処にいますか?」


 信用するかどうか別にしてとりあえず聞いてみた2つの居場所。


 レイラはあっさりと答えた。

 指を下に向けて。


「どっちも地下ですね」

「地下…ですか」

「ただ、ディアンは…」


 レイラは端に入る1つの本棚に近付き、1つの本を手前に傾けると、1つ横の本棚が移動してその先に階段が現れた。


「この先にいると思いますよ。領民に関して地下にいるという事だけしか分かりませんけど」

「そうですか、ありがとうございます。コリー、メリッサ、行きますよ」

「はい」

「は、はい」


 エーリクは2人を連れてディアンの下に向かう為、階段を降りて行く。


「さて、私達も移動しましょうか。ここはミックとミリーの戦いになるでしょうから」

「そうだな」


 レイラが先行し部屋の外へ。

 クリフォードと煌夜が続く。

 ベレットは立ち止まっていた。


「ベレット、行きましょう。ミックを邪魔しない方が良いから。もう彼にはミリーしか見えていない」

「う、うん」


 煌夜は立ち止まるベレットがミックを心配してると気付いたので、集中しているミックを邪魔しない様に注意した。


「それと戦闘の準備を」


 それにベレットは頷いて答えた。


 そして、部屋の扉を閉じた。


今回はメディシーア家の謎が解かれた感じではありますが、まだ謎があるっちゃありますけど、それはディアン戦に持ち込みかな?それか小出し程度出すかも。


レイラに関しては次回に。

一旦ミックとミリーを部屋を残し、部屋を出た煌夜、ベレット、クリフォード、レイラはレイラを先頭にそこから離れる。

いきなり始まったミックとミリーの戦いを驚きながらも、こちらも戦いを始める。

次回、炎剣の繋がり。

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