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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
34/38

第17話 支部攻略戦

 

 残ったウィロー隊とデレック隊は支部の攻略を開始する。


 ホーリーヘッド支部。

 2階建ての石造の建物で、周りの建物と比べれば大きい方である。


 支部の大きさは他の『魔導工兵』の支部と比べると並ではあるものの、質は上位。


 これは七王国の辺境である事やディアンに対抗策として高い実力者を集めていたからである。


 だからこそこの支部の攻略は簡単なものではない。


 しかも10人いたウィロー隊はレスターを含めた3人の裏切りにより1人は気絶、もう1人はやられてしまった。


 現在いるのはウィロー、スカーレット、武器補充の為にいたジェフ、そしてグレッグ(男)、アシュリー(女)の5人

 あまりにも少な過ぎる。


 サポートとして来たジェフが戦わないといけない程だ。


 対してデレック隊。

 元々クリフォード隊の全体人数は24人。

 そこから10人は制圧した街に残っていて、14人がホーリーヘッドに来ている。


 さらにクリフォードが抜けた事で13人いる事になる。


 そこでデレック隊から4人がウィロー隊に加わり、ウィロー隊が9人、デレック隊が9人という編成に変更された。


 その上で支部の攻略を始める。


「突入します」

「はい」


 デレックが先頭で中に入る。


 入って早々出迎えて来た魔導工兵と思われる男性2人をデレックとウィローがすぐに制圧する。


「1階は私達が、2階はデレック隊に任せます」

「了解」


 厄介だと思われる2階を質の高いデレック隊に任せて、ウィロー隊は一階の制圧を行う。


「決して犠牲は出さない様に」


 もう犠牲を出せない。

 そう注意を行い、必ずこちらが人数の多い様に行動する。


 30分くらい掛けて制圧。

 先に2階を制圧したデレック隊の加勢で素早く終わらせる。


 しかし、まだ終わってはいない。

 ここには地下がある。

 そこには牢屋があり、普段は使わない魔導持ち専用の牢屋。


 そして、未だに支部長のカールを見かけていない為、そこにいる可能性がある。


「今から私とデレックで地下の探索を行います。皆さんは一度防衛と休憩をして待ってて下さい」


 地下はそれ程広くなく、あまり多いと逆に動けなくなる可能性がある為、ここからは2人で挑む。


 地下を降りて、目の前に並ぶ牢屋。

 そこを歩いて行き、その最奥に居た。


「誰かいるのか?」


 服がボロボロで少し髭を生やした男性がそう聞いて来た。


「カールさんですか?」

「如何にもワシがカールじゃが……」


 正しく受け答えが出来ている事に安心するウィロー。

 しかし。


「少し安心している様に思えるが、ワシの場合は他のもんとは違うぞ」


 カールは動きを見せる。


「意思はワシにあるが、体はそうではない」


『ブレード』


『カードゥル』


 カールは地面にあった大剣を手に取り、右下から左上にかけて振り上げた。


 それに反応してデレックが土壁を生成する。


「避けろ!」


 デレックが横に飛びながら叫ぶ。


 それを言われてウィローも反対側に飛ぶ。


 カールの大剣から放たれた斬撃が土壁に当たり、多少抵抗したものの切り裂かれる。


 その斬撃は周りにある牢屋の鉄格子まで切っていた。


「事前通りに」

「はい」


 2人は戦闘態勢に完全に入る。

 デレックの攻撃と防御を行い、ウィローがサポートになる様に前後で分かれる。


 相手はカール・エバンス。

 引退間近の元ウェールズ公国の本部長。

 総長のエスラ程の実力者ではないものの、それに匹敵する程の実力者ではあった。


 今は老いによる衰えを感じ始め、引退を考えていた所に総長がホーリーヘッド支部の支部長を頼んだ流れである。


 これはディアンの実力が並大抵なものではないと思いながらも実際の実力者を送る訳にもいかないので、それなりの実力者かつ支部長クラスを任せられる人物を選ぶ必要があり、カールの存在は適任すぎた。


 それが敵として来たのは少し困り事ではあるが。


 カールから放れた斬撃をデレックは剣で受け止める。


 その間にウィローは接近する。


 ただそんなに甘くはない。


 カールから放たれる斬撃は四方八方に飛び、幾つでも出せる。


 カールの魔導は《ブレイドダンス》。

 神ウインドを素にしているこれは同じ神を素にしているアランの《ウァールウインド》との違いは行為とそれに応じる規模である。


 アランの《ウァールウインド》の『カッター』は唱えると風の刃が出て、指定した方向に飛んでいく。

 能力で違いはありつつも、威力や規模は1つの能力で変わる事はない。


 対してカールの《ブレイドダンス》の『ブレード』は振る事で起きる風を利用して発動する。

 それは物でも手足でもとにかく振る事が発動条件で、振る勢いや振った物の大きさで威力や規模が変わる。

 例えば大きい物を持って振っても振る勢いが無ければその分に威力や規模も落ちる様にもなっている。


 そして、カールの大剣を強く振り切れば大きな斬撃が飛んでいく。


『カードゥル』


 デレックが壁を作り、それを防ぎに掛かる。


 デレックは自身の前にある斬撃と今来た大きな斬撃。

 ウィローも飛んできた斬撃に対応している。


「これくらいで戸惑っていてはワシには勝てぬぞ」


 カールは容赦もなく大剣を振り回す。

 それに応じて斬撃が複数発生する。


「流石はカールさん…」

「これは防ぎ切れない…」


 複数の斬撃によってデレックの壁が壊れ、2人に向かい、防ぐ事は出来ずに吹き飛ぶ。


 2人は壁に叩きつけられ、床に倒れ込む。


「うむ、『魔導工兵』の建物は丈夫に出来ておる」


 あれだけの斬撃を受けても壁には何一つ傷が付かなかった。



 2人は立ち上がる。


「ウィローさん」

「何ですか?」

「土壁に水を掛けて下さい」

「壁が柔くなるわよ?」

「大丈夫です」


 デレックが土壁を作り、ウィローが水を掛けた。


 魔導には能力とは別に能力無しの属性を使う事ができる。


 土系は基本的に土を使った上で能力を使う事が多いが、他の属性は同時発動している事が多い。


 その為、今ウィローがやったのは『ウォッシュ』ではなくただの水である。


 その水が土壁に掛かり、染みる。

 それによって崩れ始める土壁を…


『カードゥル』


 デレックが能力で硬める。


 能力は土自体を硬めるモノではない。

 土に水を掛ける事で土がより硬くなり、重くなる。

 だけど、壁としては保ち難くなる。


 水の量が少なければそうなる事はないが、土壁全体を硬くする為、カールの攻撃を耐える為に大量の水を掛けた。


 それをデレックの能力で保てる様に硬めた。


 その土壁にカールの斬撃が当たる。


 複数の斬撃が当たるが、壊れる事なく耐えていた。


 しかし、いつか壊れる。

 それに守っているだけでは意味はない。


 2人はその壁の左右から飛び出し、前に出る。


 当然斬撃が飛んでくるが、デレックが再度土壁を生成し、それにウィローが水を掛けて、さらにデレックが能力で硬める。


 それを繰り返して少しずつ前に行き、ウィローが剣を振り下ろす。


『ウォッシュ』


 水の膜を覆われた剣がカールの体を斬る。


 水が動き出し、カールの体内に入り込もうとするが、弾けた。


 ウィローはカールの反撃を避け、下がる。


「やはりダメですか」


 今ウィローがしたのはディアンの洗脳を解く為に『ウォッシュ』を使った。


 しかしそれが弾けたという事は負けたのである。


「その様子じゃと目論見は外れたか。ならまぁする事はもう分かっておるな?」


 洗脳を解くのは賭けだった。

 ディアンの方が上なのは分かっていたけど、それでも効く可能性はあるかもしれないと思っていたからだ。


 それに煌夜がミックに付けられた洗脳を解いたのもその可能性として考える要因となっていた。


 それでも効かなかった。

 煌夜の魔導が特別だったのかは分からない。


 でももうやれる事は少ない。


「気絶させようとしても無駄じゃぞ?ワシのは体に洗脳されておるからな。気絶した所で何も変わらぬ」


 今までの洗脳されていた者はその者に対して洗脳を行い、言わば精神支配の様なもの。


 その精神が気絶すれば体も動かなくなる。


 逆に言えば体を拘束すれば良いと思うが、相手はカールである。


 それを可能とさせないだけの実力を持つ。


 ほっとけば良いというも出来るが、それを放置して支部を拠点する事は出来ない。


 仮にここに他の者が来ても何の解決にもならない。


 あるとすればカールが言った事を早く、確実に出来る事くらいだろう。


「まぁそうなるじゃったら話すべき事は話しておかないと」


 カールはある事を告げた。


「ディアン・メディシーアは二重人格の可能性がある」


 二重人格。

 1人の体に2つの人格を持っている事。


 その可能性は無いとは言い切れない。


 しかし、今のディアンは貴族主義で野心家。

 それしか見られない。


 その判断は難しい。


「ディアンは王都や他の国、総本部にも向かう事がある。その時はそちらが知っているものだ。だが、この街では違う見方が見れる」


 カールは老人の様な口調から変えて、話し出した。


 2人はカールの攻撃に対応していて、返事出来ていない。


「アイツが表に出てくる事はないが、領民に対する政策だけは寛容に接している様に思えた」


 貴族は自分の土地を統治する必要がある。

 経済や外交など行なう訳だが、その中には領民の生活も含まれている。


 実際にディアンがどの様な政策をしていたかは現地民しか分からないし、領民に関する事全てが寛容という事もないだろう。


 カールが言っているのはよく聞くディアンの話からすれば寛容な感じがしたからだろう。


「もう既に戦争になっているのは分かっているが、領民はどうなったか分かるか?」

「まだ見ていません。この後捜索するつもりですが」

「そうか。匿っている可能性はあるかもしれないが、慎重に判断してくれ」

「はい」


 もしディアンが領民に対して優しさを持っているなら、領民を別の場所に移動させて戦争に巻き込まれない様にしている可能性はあるかもしれない。


 ただし、領民のいるかどうかというのは判断が難しい。


 いると発見されればそれこそ艦砲射撃はできなくなる。

 いなければどこで艦砲射撃をするかを判断する必要がある。


 まぁ、カールは艦砲射撃についてを知らないから、領民がもしかしたら1ヶ所に集められる可能性もあると提案したまである。


「さてそろそろ良いかな。覚悟が整った頃だろ?」

「ありがとうございます」


 今の話は確かに伝えておきたい事であるものの、これから行おうとしている事への覚悟を持って貰う為に時間を稼いでいた。


 カール自身何もしていない訳ではない。

 動きを多少遅らせたり、『ブレード』の発動しない様にしたりしている。


 しかしそれも限界が近づきつつあった。


「あ、済まぬ。限界らしい。今から切り札に近い能力を使う。それは『攻撃は最大の防御』という奴だ。それを突破し、やれ」


『ブレイドダンス』


 やっている事はあまり変わらないが、先程よりも斬撃が増え、さらには360度全てに飛んでいく。


 振れば振るだけ斬撃が発生して飛んでいく。

 それが一種の防御となる。


 2人は突破する必要がある。


 そして『ブレード』の風の斬撃は勢いが止めれば消える事がもう分かっていた。


 確実な防御と回避を重視し、カールに迫る。


 デレックはウィローへの壁も作っているので少し後ろにいる。


「くっ」


 土壁の生成が一歩遅れ、斬撃を諸に喰らうデレック。


 そこに追い打ちを掛ける様に複数の斬撃がデレックに向かい、それに耐え切れずに吹き飛ばされる。


 デレックは吹き飛ばされながらも斬撃の上下から地面が盛り上がる。

 さらに少し後ろに土壁を生成し、それに足を付けて耐える。


 ウィローの方にも斬撃を飛ばしているにも関わらず、デレックの方に追加で来る。


「ま、ける…」


 剣が押され、デレックは耐えらなくなり、そのまま落下。


 その時に1つの斬撃が左肩から背中にかけて切り裂いた。



 落下しながらも痛みに耐えながら体勢を整え、着地しようとしたが、耐え切れずに膝と手をつく。


 その体勢のまま、手を向ける。


『カードゥル』


 ウィローとカールの間に土壁が生成。

 その土壁が押し出し、カールの方に向かう。


 カールの斬撃が土壁に激しくぶつかり、削り取っていく。


「やりますね。それならそれを無駄にしない為にここで決めます」


 ウィローはデレックの行動に賞賛し、このチャンスを確実にする為に動く。



 現状ウィローとカールの間に土壁が出来ており、ウィローから見て左側が空いていた。


 デレックの意図的かそこまで広げられなかったかは分からないが、カールはウィローのいる方の土壁に斬撃を放った後、空いている方に移動する。


 移動した先に捉えたのは身動き出来ないデレックだった。


 既に斬撃を止める為に使った土壁などは消えており、無防備な状態だった。


「自分を守りなさい!」


 カールの次の行動を何となく感じたウィローは叫ぶ。


『カードゥル』


 カールが斬撃を放ち、デレックが土壁を生成する。


『コンデンスウォッシュ』


 ウィローの剣には水の膜があり、それが薄くなって水が張っているかどうかが分からない状態に変化した。


 その状態の剣で土壁、さらにはその先にあるカールの斬撃も切り裂いた。


 土壁は崩れ、風の斬撃は霧散した。


 ウィローはその崩れた土壁を突破。


 1m程の距離にカールを捉え、カールはこちらを見て、反射的に剣を向けてくる。


「こちらの方が速いよ」


 左下段から振るわれる剣よりも速く剣を突く。


『オールウォッシュ』


 ウィローの剣はカールの心臓に向けて貫いた。


「見事じゃ」


 カールは賞賛し、手から剣を落とす。


 ウィローの剣から水の膜が広がり、カールを包み込む。


 レスターの時とは違い、確実に仕留める為に剣で刺した事による出血と『オールウォッシュ』による呼吸困難に陥れる。


『ブレード』


 苦しい中で悪足掻きの様に腕を振るってきたカール。


 咄嗟に剣から手を離して避けるが、左足の脛辺りを掠める。


 それによって地面に倒れ始めるウィロー。

 しかし、追撃を警戒して右足で踏ん張り、離れる為にジャンプし、体から地面に倒れ込む。


 その衝撃に耐えながらカールの方を見た。


 ウィローが剣から放した事で『オールウォッシュ』は解除されたが、カールは事切れていた。


 それを見てホッとしてしまった。

 その理由は2つある。


 1つはデレックの作ったチャンスを活かし切れなかった事になるからである。

 デレックは割と重傷を負い、ウィローは軽傷とはいえ足をやられた。

 再びチャンスを作るのは難しい。


 もう1つは覚悟。

 ウィローは前に人殺しをした事がある。

 これは魔導工兵や一般人に関わらず、前者は国の兵として、一般人は悪党として刃向かう事があるからで、年齢と共にその経験をする。

 だからと言って捕縛を優先にするのでごく稀にではある。


 今回の場合はカールが敵という訳ではなく、気絶という解決法も取れず、殺すという選択肢しか取れなかった。


 その可能性も考えて2人で来ていた。

 何故なら人殺しをした事がない者が特に敵意が無く、こちらにも殺す理由が無かった時に手が出なくなるからである。


 総本部や本部は人を殺す機会が支部よりも多いというだけなので、確認をしたらデレックもあると言う事を聞き、決行した訳である。


 仮にここでやり切れなかった場合は事前にデレックが持っていた通信機を渡された者に連絡して来て貰う事になる。

 その時は覚悟して貰うしかない。


 今回は単なる結果的に成功しただけの事。


「デレックさん、無事ですか?」

「何…とか最後の攻撃は防げました。ただ、動けません」

「分かりました。通信で皆を呼びます」


 ウィローは通信機で防衛をしているスカーレット達を呼ぶ。

 その際にスカーレットとデレック隊の数人だけで来て欲しいと伝える。



 すぐに来たスカーレット達は地下での状況を確認し、2人の下に向かう。


 ウィローはデレックとカールを1階に運ぶ様に伝え、自分はスカーレットに体を預けながら、1階に向かった。



 1階に着いて、デレックの治療を1人に任せて他は支部内の改めての探索と拠点作りを命令をする。


 そして、支部攻略が完了した事をエーリクに伝えた。

 その内容にはカールが言っていた事も伝えている。


「分かりました。拠点作りをして、その後に領民探しをして下さい。デレックさんに関してはしばらくは治療に専念して貰って下さい」

「了解致しました」


 デレックは傷の状態が酷く、動けない状況にある為、支部で治療を受ける事となる。


「領民探しに関して、部隊人数も考えた上で1つの隊が主要の道だけを通るだけにしよう。カールさんの言葉を踏まえての私の考えにはなるが」


 クリフォードが領民探しに関して提案してきた。


 カールの二重人格説は奇しくもミックの妹に付いているメイドのリィーズが言っていた事と同じだった事から、その可能性があるのではないかと思った。


 ただし、1つはリィーズからの、もう1つは本当に正気だったのかも分からない。

 それで判断するのは難しい。


 それでもクリフォードは昔のディアンならあり得るかもしれないと思い、信じる事にした。


「こちらも戦力が削がれていますからね…」


 元々少なかった数が裏切りや支部攻略で実質的にデレックは動けなくなり、現在ウィロー隊とデレック隊を合わせて17人(デレックは除く)。


 敵本拠地で1つでも拠点を確保した今、その拠点を防衛する必要がある為、そこに割く人数は最低でも5、6人…しかし今は裏切り者や道中で気絶にさせた魔導工兵と正規兵を地下に幽閉しているから、起きる可能性も踏まえて10人近くは必要になる。


 残った7人で探索に行く訳だが、分けると4・3。

 一部隊という換算は出来るが、魔導工兵はそう心配する事は無くなったものの、まだリィーズの存在が脅威としてある。


 だから分けられない。


 でも、そうなるとこの街全域の捜索は掛かり過ぎる。


 実際しないに越したことはないが、今は時間との勝負もある。


「とにかくクリフ隊がいる門近くの捜索は優先するべきでしょう。クリフが合流すれば防衛もその分楽になると思います。そうですね…、捜索にあたる部隊は街全体の主要の道を、クリフが支部に到着したら、防衛に当たっていた何人かで中央周辺の捜索をお願いします」

「分かりました」


 現在もクリフは揺動という名目で門前にいるが、今の状況からすればほぼ意味はない。


 それならクリフを防衛にあてた方が良いとエーリクは判断した。


 そうすれば防衛をしていた大体半分くらいを捜索をあてる事が出来る。


 まぁそれでも遠出出来ない程の人数なので、近場しか行けない。


 やはり全域への捜索は難しいと判断。

 クリフォードの提案を受け入れる事にした。



 ウィローはそれを聞いていなかったであろうデレックに伝えた。


「了解」


 一応隊長という立場なので伝えた訳だが、本人もしばらくはここにいる事は分かっている。

 流れを知っておく必要はあるとは思うが。



 そこにスカーレットがやって来た。


「ウィローさん、これを見て貰います?」

「はい」


 スカーレットは手に持っていた1枚の紙をウィローに渡した。


 そこには文字が書かれており、ウィローは読み進める。


「なるほど…」


 ウィローはある事をデレックに聞く。


「この紙、先程はありました?」

「いや見てない」


 この紙は2階の支部長室にあったらしいが、さっき2階の制圧をしていたデレック隊は知らなかった様だ。


 この紙の内容を簡潔に説明すると「これを書いたのは2人と対峙し、『ブレイドダンス』を使っている時に遠隔で書いた事。カールの剣を持って地下の奥…丁度カールが座っていたところでかざしてみて欲しい事」が書かれていた。


 早速、ウィローはスカーレットにカールの剣を持ってきて欲しいと頼み、2人で地下に向かった。


 地下はカールの『ブレード』により牢屋は破壊されて、鉄の棒が散乱していた。

 今は隅っこに寄せて、捕らえている者達を土系の魔導工兵に頼んで区分けしている。


 2人はそれを越えてカールが座っていた場所に着く。


「では、やりますわ」

「えぇ」


 スカーレットはカールの剣をかざす。

 すると剣が緑に光り、目の前の壁に切れ目が入る。


 2mほどの高さと80cmほどの幅の壁が少しズレて横にスライドしていく。


 その先には箱が幾つか置かれた部屋だった。


 早速2人は箱の中身を確認する。


「これは!?」


 その中身は武器や食料、医療品などの所謂備蓄だった。


 元々『魔導工兵』は拠点という役割を持っている。

 だから総本部、各本部や各支部には備蓄がある。


 しかし、ウィローが驚いているのはそういう事ではない。


 備蓄がある事は魔導工兵ならば知っている。

 つまりはディアンも知っているという事。


 利用するしない関わらず、置いておく必要はない。

 魔導工兵達や敵側に使われる訳にはいかないから、没収されている可能性が高い。


 それなのにここにある。


「人を呼んできて下さい」

「分かりましたわ」


 スカーレットは1階に向かう。


「没収される可能性を考えて隠していた。どういう意図で隠していたかは分からないけど、使わせて貰います」


 味方への手土産だったのか、自分達が籠城する為にだったのかは今は分からないが、ホーリーヘッド支部と思われる魔導工兵は何人か気絶させている。

 後で話を聞く事は出来るだろう。


 ウィローは支部に備蓄があった事をエーリクに伝え、自分の傷を治療した後、拠点作りに参加。


 それから数分後。

 新たに再編成された7人でクリフのいる門に向かった。


今回は支部攻略、主にカール戦になりました。

カールに関して特に説明する事はないけど、魔導名の《ブレイドダンス》や能力の『ブレイドダンス』と能力の『ブレード』の違いは作者本人のこだわりで特に意味はないです。

それとウィローの『コンデンスウォッシュ』は格上との修行により編み出した一度切りの格上に通用する洗い流す効果の『ウォッシュ』です。なのでカールの斬撃も消えました。一度切りなのは圧縮する行為が難しいのであまり使えないという意味で後々使える様になるかも。


次回はエーリク隊の方に行き、メディシーア家のはなしになります。

裏切り者達をウィロー隊に引き渡した後、エーリク隊は辺境伯の館に向かう。

館内の兵士をエーリクとクリフォードで対処しながら、ディアンがいると思われる書斎に向かう。

その部屋にいた者とは。

次回、メディシーア家。



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