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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
32/38

第15話 決戦前夜 後編

 

 日が傾き、夜に差し掛かる頃。

 煌夜は数人入る事が出来る大きなテントにてセントラル出身の先輩魔導工兵を話していた。


 先輩魔導工兵の名はコリー。

 21歳で平民、実力者というより魔導工兵に関しての指南するのに適しているタイプの魔導工兵である。


 煌夜にとっては同室のミック、同仕事場のベレットの次くらいに親しく頼り甲斐のある先輩。

 魔導工兵の事をベレットに聞くよりも全然分かりやすいので、良く聞いている。


「すみません、ちょっと外の空気を吸いに行って良いですか?」

「うん?良いよ」


 煌夜はコリーと別れ、テントの外を出る。


 外に出た理由はテント中の空気感が悪かったからである。


 テントの中には貴族出身と平民出身が一緒にいて、エーリクやミックの様な貴族出身でも親しくしてくれる者がいるものの、普通は垣根が大きい。


 年齢が高くなれば自ずと魔導工兵の立場を理解してきて、接し方を変える者はいるので、若い者程のその傾向がある。


 さらに西洋主義というものがある。

 これは簡単に言えば「西洋人が優れていて、東洋人が劣っている」という考えである。


 これは貴族出身に限らず、平民出身にも見られる。


 煌夜は身に感じていたが、正直「甘い」と思っていた。


 やまと人…特に武士は「心を閉ざしてこそ武士となり得る」という考えを持つ。


 この「心を閉ざす」事はベレットに教えた事にもなるが、正しくは「心を悟らせない」様にする事を指す。


 だから、その感情を露わにしている事は「甘い」と評価したのだ。


 ただ今回は少々違う事も気付いていた。

 向けられる対象だからだろう。


 まぁそれで気分を悪くしたから、外に出る事になった理由である。



 森の風を感じながら、簡易的な瞑想を用いて心を落ち着かせる。


 その時、何か気配を感じて、身に付けていた刀に手に掛ける。


「誰だ!」


 気配のする方に呼び掛ける。


 その者は歩みを進め、燭台の火に照らされて姿を表す。


「黒の割烹着みたいな服装?」


 服の形からやまとにある家事用服である割烹着に似ていたが、全身真っ黒だった。


「一応メイド服という物になりますが、意味合いとしては割烹着でも似ています」

「何故、割烹着を知って……」


 割烹着はやまとの服なので、遠く離れたこの地で知る者は少ない。


「さぁ、どうなんでしょう?」


 偶然知っていたという事もあるが、白を切る辺り怪しく見える。


「いや、その顔立ち…東洋人?」


 ここでは珍しい堀が浅く、全体的に丸っこい顔立ち。

 西洋人というより東洋人に見られる特徴だった。


 しかも煌夜はそれがやまと人ではないかと思った。


(何だ?警戒が解けない)


 煌夜は未だに刀から手を離していなかった。

 むしろ強く握る程に。


 見た目はやまと人のような顔立ちで服装からするにメイドという召使いの様に見えるのだが、何故か警戒を解く事が出来なかった。


 煌夜が感じたのは違和感。

 それが何かまでは分からないけど、感じ取ってしまった。


 そして、1つの答えが見つかる。


「まさか…リィーズ…」


 可能性としてあったのはリィーズ。


「良くお分かりで」


 そのモノは特に否定する事なく答えた。


 煌夜が何故リィーズと言ったのには理由がある。

 それは召使いなら主人が存在してメディシーア家の可能性に、ミックが言っていた母親的存在だったのが実はリィーズではないかという話。

 あとは魔導工兵としての直感でしかない。


 単なる状況証拠からのものだったが、間違いではなかったらしい。


「まさか今のうちに殲滅する為に…」

「そんな大それた事は出来ませんよ。少なくとも総本部の上位3人がいる状況では勝つのは難しいので」


 3人とはエーリク、ウィロー、クリフの事だろう。


 3人はそれぞれの役割をする事が出来、完璧な連携を可能とする。


 どんなリィーズでも勝てる可能性が高い。


 それでも「勝つのは難しい」と言っている辺り、このリィーズの実力は相当高い事が伺える。


「今回、ここに来たのはミックの状態を知りたかったのもありますが…」


 その可能性はあったが、用事はそれだけではない様だ。


 そのリィーズは煌夜に指を差した。


「私個人として貴方に会う為に来ました」


 煌夜はそう言われて全く理解出来なかった。


 会う理由が分からない。

 しかもリィーズに対してでは余計にそう思う。


「リィーズに会う理由なんてない筈……」

「リィーズと貴方の繋がりはありません」

「何を言って……」

「とにかく理解して貰う為には見て貰うしかありません」


 そのリィーズは煌夜に近付いてくる。


 その反応して刀を抜き取る。


 構えを取ろうとした煌夜は急に熱く感じた。


 それと連動する様にそのリィーズから炎の剣が現れた。


「な、んで……」


 リィーズなんかにと言い淀み、驚きを隠せなかった。


「やっぱりダメね」


 リィーズはがっかりした様に言った。


 炎の剣には鎖が巻き付かれていた。


「なら、仕方ないですね。ミックの所に行きましょうか」

「行かせ…ない」


 煌夜はそれに驚きつつも、違和感を感じて刀を構え直す。


「この意味が分かります?一応貴方とは争うつもりはありません。そもそもここに来た理由にしましても戦う為ではありません」


 リィーズは煌夜の横を横切ろうとするが、突然光の剣が地面に刺さった。


「予想よりも早い到着で」

「ここは『魔導工兵』の拠点だ。入らないで貰いたい」


 リィーズと煌夜の間に誰かが割って入って来た。


「クリフォード…さん?」

「無事か」

「はい」


 目の前に現れたのはクリフォード。


「ディアンの所のメイドか、リィーズ」

「はい、その通りでございます。正確にはその娘、ミリーのお世話係をしております。これはディアン・メディシーア本人からの要望になります」

「要望?命令ではないのか」


 本当に主従関係なら命令があり得る。

 しかも今のディアンならそれの可能性が高い。


 それなのに要望と言った。


「あの方の親友という事で1つ教えておきます。あの方は2人います。それでも決して助けようとしないで下さい。あの方はそれを望んでいていません」

「それは救われる見込みが無いからか?」

「お答えしません。私はそれだけを貴方に伝えます。それでは私はこの辺で」

「待て!」


 リィーズは一方的に話して、去って行った。


「私の包囲網を抜けて行ったか」


 既に周りに光の剣を配置していたが、難なくと突破して行った様だ。


「とりあえず報告を済ませよう。一緒に来てくれ」

「は、はい」


 2人はエーリク達がいるテントに向かった。


「クリフォードさん、お早いご到着ですね」

「ある程度は作戦立案に参加したいからな。まぁ、それよりも話さなきゃいけない事がある」


 そこでクリフォードの後ろから煌夜が顔を見せる。


「コウヤ、何故ここに?」

「それに関しては今から話す」


 クリフォードは先ほど起きた事を話した。


「あの人がここに来たなんて……」


 ミックはそれに驚きつつ、その目的が自分にあるのではないかと思った。


「目的は何だったんでしょうか?」

「それについてはコウヤが説明してくれ」

「はい」


 目的に関しては詳しい所まではクリフォードも知らない。

 煌夜が関係している事には気付いているくらいだから任せた。


「あのリィーズは2つあると言っていました。1つ目はミックの様子です。どういう気持ちで会いに行こうとしていたかは分かりませんが、近付けさせる訳にはいかないと思いました」

「ディアンの召使いとしてか個人的かは分からないが、リィーズと判断したならその行動は間違いない。ただ、相手の見極めも忘れない様に」

「はい。一応牽制に留めるくらいでした」

「まぁ程々で」

「はい」


 クリフォードは煌夜の行動を賞賛したが、相手の実力を把握出来ていない状態で挑むのは無謀に近い行動だったと注意する。


「もう一つは先日話しましたが、炎の剣に関してです。ミックにはそれらしい事は話しましたが、ちゃんと話してなかったと思います」

「炎の剣?」

「なら、改めて説明をしてくれ」

「分かりました」


 お浚いも兼ねてミックに説明を行う。

 その中でミックにもそれらしいものも感じていた事も追加で教えた。


「それってどういう事なんだ?」

「分かりません」


 ミックにも似た感覚があった事に皆が疑問に持つ。


「確率としては低く、あまり考えたくないのですが……」

「何か分かったのか、エーリク」


 エーリクは気付いてしまった。

 ただそれはあまりにも想定外で考えたくはない事だった。


「そのリィーズが母親もしくは血縁関係にある可能性」

「それは!?」


 それを聞き、皆が驚いている。


「まさか、そこまでを……」


 ウィローがある事を考え、恐怖を覚えた。


「いや待て、そういう話はあったりするのか?」


 クリフォードは煌夜に聞いた。


「分かりません。僕や対象者は子どもはいません。少なくとも親や血縁関係には見られません」


 発現してから親や血縁関係に似た現象を発現するとは考えにくいが、子どもだとその因子を受け継いで似た現象を起きる可能性はあり得る。


 ただそれを証明する事は出来ない。


「或いは血か」


 そこでクリフが呟いた。


「なるほど、血か。さっきと同じ様に可能性は低いが、ディアンの魔導がある。不可能を可能としているのかもしれない」


 血を与えられてそれが起きている。


 それをした意味は分からないが、現象が起きる可能性は同じくらいある。


「ミック?大丈夫ですか?」


 エーリクが俯いているミックを心配して声を掛ける。


「それは私がリィーズという事になりませんか?」


 今の話はミックが人間であるのは確実としてリィーズとのハーフかもしくはリィーズの一部を持つ存在である事になる。


 実際はまだ可能性の話であるけど、そうであった時、自分はどうなるのだろうか。

 そしてそれは自分以外にも…と考えてしまっている。


「この話はここまでにしよう。ミック、済まなかった」


 クリフォードが謝り、他の皆もミックに頭を下げて謝罪した。


「い、いえ…」


 ミックは恐怖を少し感じてしまったが、先輩たちにはなるべく見せない様に努めた。


 その懸念はミックの中で消える事はない。


「一先ず、そのリィーズをどうするべきか考える必要がある」

「その決定権はミック、コウヤの2人にあります」


 話を少し変えて、件のリィーズに関してを話す。


 リィーズである以上は倒さなければならないが、クリフォードとエーリクは聞く事にした。


「僕は既に決めています。少なくとも炎の剣を達成させる」


 煌夜は決めていた。

 それを目的の1つとして来ているからである。


「場合によっては生存を望むかもしれません」

「そうか。ミックはどうする?」


 ミックは悩んでる。


 煌夜は元々目的があったから生存を望んでいるのに対して、ミックは幼い頃の親しかった人がリィーズだった。

 正直混乱はあったのだろう。


 それに先程の懸念もある。

 簡単には答えられない。


「難しいか」

「コウヤの答えで生存の可能性が出ましたので、多分捕縛という形にはなると思いますが……」

「うーん、まぁあれだけの実力者なら重要な役割を与えるだろうから。例えばディアンの護衛とか」


 そのリィーズの実力を見て来たから、その重要度は高いと判断した。


 配置もその分重要な所を置くだろうとクリフォードは思っていた。


「それこそミックの妹に付けている可能性はありませんか?」

「幼少期は乳母を、今もそれに近い役割を持っているはず」


 ミックの妹はリィーズと仲良く出来る魔導を持つ。


 今のリィーズの起用の仕組みが分からないとはいえ、その存在は大きいだろうと考えた上で件のリィーズがお付けになっている可能性はある。


「確かにこちらに戻った際にミリーの側にいましたので、その可能性はあるかと思われます」


 ミックは妹の状態を見て、件のリィーズに目が入っていなかったが、今も昔も側にいた事は変わらなかった。


 今がどういう扱いをされているかが実際には分からないが、その可能性があるならそれを踏まえて作戦を考えてもいいだろう。


「それじゃあ、私が行った方が良いか?」

「クリフォードさんには別の方に行かせるつもりでしたが…うーん……」


 そのリィーズに誰を当てるかを考える時、エーリクはディアンを、ウィローは拠点確保とホーリーヘッド内のの調査、クリフは揺動となり、クリフォードはウィローと同じでサポートも兼ねる。


 1番動かしやすいのはクリフォードと言えるが、やはり人数不足が否めない。


「とりあえず作戦を教えてくれ。前後関係がおかしくなってしまったが」

「はい」


 元々それを聞く為に少し早く来ている。

 エーリク達にも都合があるから、寝静まっている時に起こす訳にはいかないからである。


 エーリクは作戦を伝える。


「なるほど。一先ず、船からの援護は無しにして、領民の確認後に援護して貰う様にする。それぞれの動きも了解した。確かにウィロー隊だけでホーリーヘッドを捜索をするのは難しいだろう。そこで私の隊を使いたいのは分かった」


 クリフォードは3人の作戦を把握しながらも、今のリィーズに関しても含めて考えていた。


「しかしこういう状況になってしまったなら、こちらから1つ提案がしたい」

「何でしょう?」

「私の隊から私を抜き、副官であるデレックが代わりに指揮して貰う。それで私は件のリィーズと対峙する為にミックに同行する形にする」


 1番の問題は人数不足。

 そして件のリィーズと戦う者を誰にするか。


 件のリィーズの実力を大凡把握出来ているクリフォードは並大抵な実力では敵わらないと判断して自分が行くと言った。


 それでウィロー隊のサポートはクリフォード抜きの隊で指揮を副官に任せる。


 クリフォードやエーリク程の実力は無いが、それより一個下の実力者が何人かいるので総合力的には問題無いと判断した。


「そのリィーズとの戦いに僕も参加していいですか?」

「構わない。ミックと同様に関係があるからな」


 煌夜の件のリィーズとの戦いに参加したいと言い、クリフォードは簡単に了承した。


「まぁ最終的な判断はエーリクに任せるが、どうする?」


 今はまだ提案の段階。

 それを最終的に了承するのは指揮官であるエーリク。


 因みに煌夜と戦う点はクリフォードが件のリィーズと戦う事なった場合に戦ってもいいと了承したである。


 そもそも煌夜はミックに同行するのは既に許可されているので、件のリィーズと戦う可能性はある。



 エーリクは考える。


 クリフォードの実力はこの中で1番上。

 相性とかも含めたら分からないけど、実力は上。

 その存在の配置は正直迷う。


 強い相手に当てるのは良くある。

 それは想定できない場所に配置する事もある。


 クリフォードをウィロー隊のサポートにしたのは『魔導工兵』の支部にいる魔導工兵に対するものと街捜索の際に実力者が隠れていた場合の保険の為である。


「王国組の実力はどうでしょうか?」

「各支部には支部長や副支部長以外の上位実力者を寄越して欲しいと伝えている。半分にしても今ここにいる総支部組と大差ない。まぁ総合力では分からないが、何人かは指揮官としてもやれる。私が居なくても何も問題無い」


 クリフォード隊は王国中から集められた戦力差を補う為の精鋭達。

 部隊を分裂しても活動出来る様になっている。


「では軍艦への連絡は?街の捜索に居なければ連絡は難しいと思いますが?」


 領民の確認が取れた上で船側の正規兵に連絡する必要がある。


 これは相互連絡が必要という訳ではなく、船側に知らせる事が出来れば良いので、ここでは領民の確認が取れた所ですぐに連絡は可能かを聞いている。


 因みに確認方法をどうするかを船側に伝える必要がある為、結局相互連絡が必要ではあるが、クリフォードが船の件を伝えた時点で連絡方法があるのは認識しているので、その連絡方法が他の者でも可能どうかも聞いている。


「これだ」


 クリフォードは何かを机に置いた。


「特注の通信機。同じ通信機に通信する事が出来て、何処でも通信出来る」


 机に置かれたのは木製で片方の先が金属で出来ている棒状の物だった。


「まだ試作品に過ぎないが、十分に使える筈だ」

「もしかしてデールという方の魔導ですか?」

「話は聞いていたか?」

「総長から」

「そうか」


 デールは今回のクリフォード隊における通信役。

 基本的に通信役を行うサポート型の魔導工兵である。


「デールの魔導を簡単に説明すると『風の道で音を送る』。彼自身はそれを使って近距離で直接相手へ言葉を送ったり、長距離では通信機など受信可能な物なら言葉を送る事が出来る。これはそれを応用して作った物だ」


 通信…というより情報伝達を可能とする魔導工兵というのはここまで正確なモノではない。


 そもそも魔導があれば狼煙の様な可能で、必要としているのは正確な伝達と長距離の伝達。


 正確な伝達は文字や絵などでとにかく正確な詳細を伝える事で、距離はあまり関係無い。


 長距離の伝達は基本的には通信機が事足りるが、部署によってや今回の様な街にいない時用に伝達可能な魔導工兵がいる。


 例えば総本部には各本部や支部に送る場合がある。

 通信機があれば送る事自体は可能だが、一斉送信は出来なかった。

 そこで現れたのが当時まだ開発途中であったファクシミリを利用した同時一斉送信を可能する魔導工兵。


 その魔導工兵は風と雷が使える稀な魔導を持っており、情報を風で音に変えて雷で送る方法で一斉送信を可能とした。


 ただし、全部の支部に送られるという事はなく、通信機が無い所もあり、その場合は伝書鳩を使う場合があるが、多少時間が掛かる点や場所によっては鳩を送れない事もある。


 そこで金属製の箱に手紙を入れ、風の道を作って送るという方法を取る事もある。


 この場合の欠点としては方角や距離感の把握が必要で、初めて送る場合は一度別の物を送って確かめてから送る様にしている。


 この2人よって総本部は情報伝達をしているが、それに比べてデールの情報伝達は一斉に送る事は出来ないが、何処でも通信が可能という点は戦闘面や前線に出ない後方への連絡を遠隔に行う事が出来る。


 ただし、デールが接続する形になるので一方通行という形になってしまう。


 そこで開発されたのが持ち運び可能な小型通信機。

 通信機を可能な限りに小さくして、通信する電波をデールの風の道を使う事で可能とした。


 これによりデールと同じという事はなく、その小型通信機に限って通信し合う事を出来た。


「少し押しづらいが、それぞれに番号があり、その番号と同じボタンを押す事でその番号との通信する事が出来る」


 よく見ると小型通信機に大きく番号が書かれていた。

 その裏に番号とその下にボタンがあった。


「とりあえず隊長には渡す」


 クリフォードはエーリクに1番を、ウィローに3番を、クリフに4番を渡した。


「それと土地鑑とかの為にミックにも渡しておく」

「ありがとうございます」


 さらにミックに5番を渡した。


「私は2番、軍艦は8番にしている」


 クリフォードは2番を持っていて、船側には8番を渡しているらしい。


 因みに6と7の番号は6がクリフォード隊の副隊長であるデレック、7は王国作戦本部…つまりは王様や総指揮のジョーセフの所にある。


「0番は何でしょうか?」


 エーリクは小型通信機を見て尋ねた。


 小型通信機には持っている小型通信機以外の0〜8番までのボタンがあった。


 そして今、1〜5番がここにあり、6〜8番は別の場所にある。


 それに普通なら1番からの順番の筈。

 それが0番からあるという事が不思議に思った。


「この番号はデールに繋げる為にある。彼自身は一方通行だがら、こっちから繋げる必要があるだろ?」

「そうですね」


 通信機は送信と受信を可能とするが、デールの場合は送信しか出来ない。

 そもそも通信機からデールに送信する事が出来ないからである。


 この小型通信機を作るに当たってデール用も必要だった訳である。


「まぁ、デールのは受信機だから少々違うかな」


 デール自身は送信可能なので、送受信可能な通信機を必要としなかったため、小型受信機だけを作った。

 その方がコストダウン出来るからである。


「分かりました」


 エーリクはクリフォードをミックに付かせる事に了承した。


 そして、改めて作戦を伝える。


「今回作戦における目標は戦争を仕掛けて来たディアン・メディシーア辺境伯の捕縛もしくは討伐。それに付け加えてホーリーヘッドの領民の確認と保護とする」


 これは何も変わっていない。


「編成は第一目標であるディアンの捕縛を私の隊。第二目標である領民の保護をウィロー隊とデレック隊。さらに個々の目標としてミックが妹の保護、炎の剣の件に関してや強敵に当てる為にコウヤとクリフォードさんが例のリィーズと戦い、この3名は途中までエーリク隊に同行。最後にそれを円滑に行う為にクリフ隊を揺動を行う」


 次に部隊編成とそれぞれの役割。

 クリフォード隊はクリフォードが抜けて副官のデレックが隊長を務める為、デレック隊に変更。


「第二目標における指揮官はウィローが行い、『魔導工兵』ホーリーヘッド支部の拠点確保や軍艦への連絡をお願いします」

「了解しました」


 付け加える形で拠点確保をウィロー隊とデレック隊が行い、領民の確保からの軍艦への連絡はウィローが行う。


 この連絡の判断をウィローに任せる形になる。


「クリフ隊は門の突破を可とし、街中では領民の事を考えて上での揺動をお願いします」

「了解」


 クリフ隊は揺動を目的とし、他の隊よりも自由に動ける立場にある。


 揺動の仕方は本人に任せつつ、領民の確認が取れない状況下では建物を壊す行為は出来ない。

 壊せる対象は門と城壁。


 逆に言えばあまり派手なやり方が出来ない立場でもある。


「リィーズは討伐。魔導工兵と兵士は出来れば無力化、難しければ倒して構いません。領民も魔導工兵と同じではありますが、なるべく無力化をお願いします」


 リィーズは今まで通り、魔導工兵・兵士・領民に関しては無理やり戦わされている可能性が高いので、無力化を推奨する。

 だだし、優先すべきは自分と仲間であるから、今回が戦争という事もあり、倒すも許可する。


 まぁ、これに関しては今回の戦争が始まった時から変わっていない。


「作戦に関してはこのくらいにして、ウィローは編成と明日出る時間をこの後皆に伝えといて下さい」

「はい、分かりました」

「クリフは連れて行く者に直接伝えて下さい」

「分かった」

「クリフォードさんはまだ来ていない部下たちと軍艦への連絡をお願いします」

「了解した」

「ミックとコウヤは戻って休みを取って下さい」

「分かりました」

「はい」

「では解散とします」


 皆がテントから出て行く。


 残ったのはエーリク。

 作戦の最終チェックを行いながらディアンの対策も改めて考える。


 その時、ゴトッと外で音が鳴った。


 エーリクはそれに気付き、外に出ると金属製の箱が置かれていた。


(トレヴァーの箱?)


 トレヴァーとはこの箱を風に乗せて遠くに運ぶ事が出来る総本部所属の伝達魔導工兵である。


 エーリクがその箱を開けると中には1枚の紙があった。


(これは総長からのですか)


 それは総長からの手紙だった。


 エーリクはそれを読んでいく。


 内容は項目として2つに分かれていた。


 前半はこの戦争後に起こり得る事態。

 総長が七王国や連合王国全体、さらには連合王国外の国との話し合いをしている所だろう。


 政治側のトップが動いているとはいえ、実質的には総長が魔導工兵のトップなので、話が来るのだろう。


 この中にはエーリクの出身国である北欧王国からもある。

 その話についてはエーリク自身何となく予想が付いてはいた。


 手紙の後半は今回の戦争について。

 本来なら逆に書かれていてもおかしくない内容だが、総長にしてもエーリクにしても前半はある程度予想できるのでそれほど重要な事ではない。


 どちらかというも後半の内容の方が総長としての本筋と言えるだろう。


 内容はホーリーヘッドまでの事をクリフォードからある程度聞いているという事とホーリーヘッド戦の事をクリフォードと同様に任せるという事。

 そして、ディアンの事。


 内容からしてこのディアンの事が本筋でそれまでが前座なのだろう。


 それを読み、エーリクは「了解致しました」と思うのだった。


今回は新たな人物?と伝達系の魔導工兵が出ました。

新たな人物というよりリィーズなんですが、詳しい話はまた後で。

伝達系の魔導工兵は当初(第2章の全体構想)考えていません、というより正規兵を使う為に生み出したモノなので、多分後の章ではあまり出さないかもしれません。

正直難しい所がありまして、基本的に伝達はいくらでもあります魔導があるので。その上で近距離ならテレパシー的なモノ、遠距離なら手紙を飛ばすとか何かの機械を利用するとか考えられるモノはあっても限りがある訳で、一応属性として風(音)、雷(電気)、光(電気)なら可能かなと思っています。

まぁ残念ながら出さない可能性があるので、風呂敷を広げる事はないと思います。


次回から市街戦に入って行きます。

まだ朝日が出る前、各部隊は既に動き始めていた。

クリフ隊は城門、エーリク隊、ウィロー隊、デレック隊もそれぞれ街への続く隠し通路の場所に。

そして、クリフが開戦の狼煙を上げる。

次回、ホーリーヘッド市街戦 開戦

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