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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第12話 囚われの貴公子

 

 クリフォード隊がマスナトレヴに入った頃、エーリク隊はメディシーア辺境伯領に向かっていた。


 道中には偶に小型と中型の集団が居て、迂回する事も出来るけど、その分時間を使う事になるので強行突破をしている。


 クリフが壁を駆使して道を作り、前方をスカーレットが炎で出来た番犬を走らせてリィーズを倒していき、後方をメリッサが毒を撒いてリィーズを倒していた。


 途中大型も遭遇したが、時間短縮の為にクリフのサポートをされながらエーリクが倒した。


 それから数時間後、暗くなり始めるのを確認すると辺境伯領までは間近な所までは来ていたけど、その手前の街で宿として攻略。


 少人数の防衛を交替しながら休みに入った。


 その際にクリフォードからの連絡で現状の進行度の確認とレオ隊のことを受けた。


 一応進行度は悪くないとエーリクは思いながらも少々戦力不足なのは否めなかった。


 それでも第一はディアンを止めるのが先で、取られた街はクリフォードに任せるしかなかった。


 レオ隊の件は労いを送り、クリフォードの指示や現地の指揮官の指示に従う様に伝えた。



 翌日。

 エーリク隊は街を出て、辺境伯領に入っていく。


 事前の情報では辺境伯領の魔導工兵が居るという話だったが、まだ会ってもいないし報告も受けていない。


 つまりはここから先にいる可能性があるという事だ。



 アングルシー島に行くには橋を渡る必要がある。

 そこにはリィーズが入り乱れている。


 今まで通り行こうと思ったら、その中に魔導工兵が混ざっていた。


 今までは仮に魔導工兵が居ても迂回すれば良いけど、今回は迂回する所はない。


 それを狙って配置しているのかもしれない。


「どうしますか?」


 ウィローがエーリクに尋ねる。


「魔導工兵は倒すと啖呵を切ったものの、そう易々と倒す訳にもいきませんからね」


 蒸気機関車の中でそう皆んなに言ってしまったけど、魔導工兵は貴重な存在ではあるし、なるべく犠牲は出したくない。


 そこで考えたのは。


「クリフ、道を作ってくれませんか?」

「分かった」


 回復以外は大抵何でも出来るクリフに頼んだ。


 クリフはリィーズと魔導工兵の頭上に壁を並べて道を作り出した。

 支柱として魔導工兵のいない場所を見極めながら橋を作る要領で作っていく。


 アングルシー島に着くとそこにある街でリィーズや魔導工兵を掻い潜って街を出る。


 ここから辺境伯領最大都市ホーリーヘッドに向かう。


 その道中も強行突破や迂回してアングルシー島とホーリー島を繋ぐ橋に着いた。


 そこに居たのは…。


「ミックですか……」


 後ろにリィーズや魔導工兵を控える様にミックが立っていた。


「ずっと見てきましたが、ミックはそれ以上。さて、どうしましょうか」


 ここも飛び越えれば良い様に思えるが、ホーリー島は小さい島。

 超えた所で囲まれれば終わる。


 だから、ここからは避けられない。


過激回復オーバー・ザ・ヒール


 ミックが言葉を発したその時、エーリク隊の全員の体から血が噴き出した。


「全員…、まさかディアンが何かしたのだろうか?」


 ミックの魔導にはここまでの範囲を影響する程の力は無かった。


 それを可能としているのはディアンであるとエーリクは思った。


「回復役は治療を最優先に。動ける者は戦いを」


 エーリクは指示し、皆んな行動に移す。


 そして、エーリクは覚悟を決めて戦い向かおうした。


 しかし、それを遮る様に前に踏み出した者がいた。


「コウヤ」

「ここは僕達が」

「僕達?」


 エーリクは煌夜の後ろに付いて行く者を見た。


「ベレット…なのか?」


 いつも…はっきりと言えばうるさいベレットが別人の様に落ち着いていた。


「僕は残念でならない。妹を守る為に親に抗うと言った君が、今ここにいる」


 煌夜は今も抗っていると期待していた。

 例え相手が魔導工兵の中でも上位でも意志で抗っていると。


「コウヤ、貴方が戦う必要は無いはずでは?」

「多分無いと思うけど、自分が突っ込みたいだけです。それにエーリクさんに戦う訳にもいかないでしょ」


 煌夜はただそうしたいだけ。

 それでもエーリクにはやらせたくない。

 エーリクがやるべき事はミックの父親のディアンを相手にする事。


 今消耗すれば負ける可能性が高くなる。

 それには他の皆んなも同意するだろう。


「それに見ていて下さい」


 ベレットは刀を抜くと刀身が大きくなった。


「ベレットの魔導を使える様に態々魔導を刀に付けて貰いました」


 ベレットの持つ刀には『大小』という刀身の大きさを変える魔導が施されている。


象徴シンボル



 ベレットは刀を天に掲げて【主神】としての魔導『象徴シンボル』を発動した。


 刀身から光が照らされ、それが皆んなに注がれる。


「これがベレットの【主神】」


 エーリクはその身に注がれたベレットの【主神】の魔導を受ける。


 以前は解放直後であった事、ベレットが自身が未熟だったこともあり、半端で自分しか効果出なかったが、煌夜との修行した上でその力がちゃんと解放された。


 ・【主神】『象徴シンボル

 基礎能力向上に加え、少々持続回復を自分と複数人に与える。


 強力な力と言えるが、まだ補助的な力しかなく期待するほどではない。


「これでも僕の【導神】『不浄淘汰』を使って今の状態になっているんですが、それでもミックとの元々の差とさっきの回復が強かったので、僕も行かないといけませんが」


 ベレットは戦い方をはっきりとしていない状態で戦おうとしている。

 それを補える為に煌夜の【導神】や自身の【主神】を使っている。


 まぁミックの『過激回復オーバー・ザ・ヒール』が何かしらの強化で本来の『過回復オーバーヒール』の範囲攻撃になっている為、実際の差はよく分からない。


「とにかくエーリクさんは雑魚狩りをお願いします。その方があまり疲弊はしないと思いますので」

「分かりました。ミックの事はお任せします」


 エーリクはベレットとミックの横を通る。

 他の皆んなもそれに追従する。


 それをさせないと動こうとするミックにベレットが攻撃。


「さて、僕も行きますか」


 煌夜も刀を抜き、駆け出した。


 ーー


 ベレットを主体に煌夜も攻撃するが、ミックは捌いていた。


 ミックは剣術と回復の魔導。

 剣術は貴族の血筋なのか、一流に近い程の練度もある。

 回復の魔導は他の魔導にはあまりない中距離の指定攻撃。

 しかもそれが回復の魔導。


 本来魔導持ちというのは魔導という能力を持っている事で言われているが、実際は魔導力という力を有している事でリィーズにダメージを与える事が出来ている。


 この魔導力は当初では回復の魔導持ちでもリィーズを倒せる理由をこれにしていたが、後に可視化出来る事が発生したものの、一部がそれを可能としているだけである。



 それでミックの魔導は回復能力なのに攻撃を可能としているのは可能としている父親のディアンがいたからそこまで疑問に思われてはいないけど、厄介な能力ではある。


 ベレットの魔導に回復能力が付属で付いているだけなのでミックの魔導に対抗出来る訳ではない。


 まだマシなのは攻撃の回復能力が浅い事。

 先程した『過激回復オーバー・ザ・ヒール』も『過回復オーバーヒール』も過剰な回復による破裂が傷として残る訳で、リィーズの場合は一応集合体という扱いなので破裂=分裂という形になるのに対して、人の場合は破裂すれば傷として残っても再度同じ場所をした時に一度回復過程を経て破裂する形となる。


 攻撃方法としては遠隔の個体指定のランダム攻撃と直接触る指定攻撃の2つ。

 実はどちらにもメリットデメリットがある。


 遠隔攻撃は遠隔出来る点はあるものの、ランダムで攻撃、しかも指定するには数秒必要とする。


 近接攻撃は当てる場所を指定出来るし即発動な点があるものの、直接触らないといけない点や武器を使う方が深く入る点がある。


 まぁ実際、デメリットに関しては気にすれば大丈夫な事なので、敵としては厄介と言えるだろう。


 ベレットは攻撃していく。


 刀路は多少教えているけど、まだ練度として今までの剣術の高いので今は刀ではなく両刃剣で戦っている。


 そこに他の学んだ西洋剣術を織り交ぜた剣術を時々している。


 ここまでしてまだミックの方が上。

 しかも遠隔攻撃は対面であれば多少無理を通せてしまうところを煌夜が横槍を入れて妨害している。


 これで対等もしくはこちらが上で戦えている。


(妨害するにしても触れられる訳にはいかない)


 遠隔攻撃させない為に妨害をする煌夜。

 しかし、基本的に剣はベレットの方に向かえていても、空いている手で触れられれば『過回復オーバーヒール』を受ける事になる。


(なら両手を封じるしかない)


「ベレット、そろそろ気持ちを」


 ベレットはそれに反応して頷き、一旦離れた後に剣が刀に変わる。


 その隙に遠隔攻撃をしない様に煌夜が間に入る。


 ベレットは正眼の構えをして深呼吸する。

 そして、ミックに向かう。


 煌夜は入れ替わる様に横に跳び、ミックの正面にベレットが襲う。


 振り下ろしたベレットの刀はミックは剣で受け止めるが、先程の比にならない程の力にもう片手も使う。


『浄火』


 煌夜は魔導を発動して無防備のミックに斬りつける。


 両手が使えないミックの体に傷が……付かない。


「うん…、流石に厳しいか。それでもやらないきゃいけない」


 煌夜の刀はミックの体を通っているが、傷が付いていない。

 でも、煌夜はそれに疑問を思っていない様だ。


 煌夜が離れるとミックは力を入れて左に跳ぶ。


 ベレットの刀はそのまま振り下ろされ、地面を叩き付けた。



 ミックは跳びながらベレットに手を向けた。


過回復オーバーヒール


 今までの遠隔攻撃と思った煌夜。

 しかし…


多段特定マルチターゲット


 ベレットの体に複数の赤い点が現れる。


 今までと違うと思い、煌夜がミックに向かう。

 だが、もう遅い。


実行エクセプション


 ベレットの体に現れた複数の赤い点から血が噴き出した。


「ベレット!」


 煌夜はベレットとミックの間に入る様にしてベレットに駆け寄る。

 その際に【導神】の『不浄淘汰』を解除。


「コウヤ…」

「大丈夫ですか?」

「そんなに深くないから大丈夫」

「でも、しばらくは治療に専念していて」

「うん…」


 背中を向ける煌夜に同じ事をしようとするミック。


「させないよ」


 煌夜は振り向き様に刀を振り上げた。


 遠く離れていたミックの手が切れる。

 それにより手を下ろし、たじろぐ。


『不浄淘汰』


 煌夜の【導神】『不浄淘汰』には2つの効果があった。

 1つは対象を落ち着かせて1つの道に導く効果。

 もう一つは。


『忿怒』


 それは神の素たる烏枢沙摩明王の明王たる姿を表す。


 ・【導神】『不浄淘汰・忿怒』

 怒りを露わにし、不浄を清浄に導く為に明王の化身となる。不浄となるものを清める力を持つ。


 今のミックにとって天敵となる力である。


 煌夜はミックに振り下ろす。

 それをミックは剣で受け止める。


 単純な力では均衡していた。


「ミック、聞こえるか。お前の中にある外部の力は確かに太刀打ち出来ないだろう」


 煌夜は問い掛ける。


「でも、心は抗っている…と思っていたよ、僕は。さっきを行動を見て、容赦なんて無いって事が分かった」


 煌夜は何があろうと心は抗っていると思っていた。

 それだけは意志の問題になる。


 しかし、先程ミックは容赦なくベレットを傷付けた。


 先程の能力かは煌夜には分からないけど、もしかしたら深傷を負わせる可能性だってある。

 今のミックが未知数だからこそ思う事でもある。


 だから、煌夜は怒りを込めて問いただす必要があると思った。


「だからと言ってその力(壁)を突破出来ない」


 現状均衡しているという事は不浄を清める事は出来ない。


「ベレット!一撃与えるだけの力はありますか?」


 ここで必要なのはベレット。

 現状の力比べでは魔導の効果もあってベレットの方が可能性がある。


「あるよ」


 いつもの元気さはないけど、ベレットは返事した。


「じゃあ、いけると思ったら言って!」

「うん」


 煌夜は敢えて【導神】を再びベレットに使わなかった。


象徴シンボル


 ベレットは【主神】の力を使う。

 今まではみんなの為の力。

 次は自分の『象徴シンボル』としての力。


 ベレットはふらつきながらも立ち上がり、刀を大きくして天高く上げた。


 ・【主神】『象徴シンボル

 みんなに与えた力を一部貰い、自身の力とする。


 みんなから光がベレットに向かい、刀が眩しく光る。


 その刀を鞘に納めた。

 鞘の中にあってもその光は納まらない。


「いいよ!」


 ベレットは大声で合図を送る。

 それと同時に駆け出した。


 煌夜はチラッとベレットの接近を確認すると横に跳ぶ。


 ミックの視界にベレットを捉える。


過回復オーバーヒール


 まだ早い方のランダム遠隔攻撃をするミック。


「ベレット!」


 ランダムのはずなのにベレットの右足にダメージを受ける。


 それにより足に力が入りづらく、よろけてしまう。


(今、転ける訳にはいかないの!)


 ベレットは転げそうになりながらも左足を踏み出し、体勢を立て直す。


 そして、刀に手を掛ける。


閃光シャインフラッシュ


 抜刀。

 光り輝く刀がミックに向かう。


 ミックはそれを剣で受け止めるが、その勢いは止められず後ろに押されて行く


 その後ろにいるリィーズたちを薙ぎ払いながら奥に向かっていく。


 煌夜はその空いた場所を後ろから追いかける。



 2人は橋を越え、その先の町にある建物に激突した。


 少し遅れて煌夜も来る。


「ベレット、ミックの剣を飛ばせ!」


 ベレットは言われた通りに刀の角度を変え、振り上げた。


 それによってミックの手から放れて、剣は飛んでいく。


「後は僕がやります!」


 そう言われてベレットはその場から離れる。


「あ…」


 しかしここで転ける。


「とにかく今は離れろ!」


 煌夜はそう言いながら既に接近していた。

 反撃している可能性がある為、時間はやる訳にはいかない。


「神路心祈流」


 刀を振り上げた。


「祈祷斬」


 シンプルな名前で刀を振り下ろす煌夜。

 ミックを一刀両断。


 さっき斬った様に傷は付けられなかった。


 ミックは攻撃するべく手を伸ばす。


 だが、煌夜はその場から離れる。


 それならと手を向けようとしたミックを炎が包み込む。


「これ、ミックが死んだりしないよね?」


 心配そうに来ていてくるベレット。


「大丈夫です。元々僕の魔導の炎は不浄を清める為のもの。人相手では死ぬ事はありません」


 ほとんどの魔導はリィーズに対抗する為の力。

 それでも決して人に効かないという訳ではない。


 だから使用には注意が必要ではあるし、近接武器を選ぶ理由にもなっている。


 因みにベレットの魔導はリィーズを消し去る為の力であり、実際には魔導力の上乗せで魔導の光が使われている。


 しばらく経って炎が消える。


「終わりましたか?」

「エーリクさん、はい」


 そこにエーリクがやって来た。


「みんなはどうしたの?」

「リィーズの殲滅と魔導工兵には気絶して貰う様にしています。ここからは確実に数を減らす必要がありますから、敵の数が分からない以上は」


 他の魔導工兵たちはベテラン組が敵の魔導工兵を、歴の少ない組はリィーズの相手をしている。


 一々相手をしては疲労と消耗が増えてしまうが、敵の数が分からないから相手をするしかなかった。


「そろそろ起きそうですね」


 ミックの目が開く。


今回はミック戦。

ミックの魔導攻撃はリィーズ特化で人に対して有効ではありません。まぁ使い方次第で脅威になるという感じです。

ベレットの戦い方に関してはベレットの考え方や気持ちの持ち様でちゃんと戦えるって事を今回証明した訳なんですが、まだ未熟である事は確かです。

ミック戦は第2章の重要な戦いなので2話くらい使ってもいいと後から思いました。それでもあまりやれる事がミックにないかも、それこそ強力な力がなければだけど、そもそも魔導発動をさせない様に2人体制で戦っているのでどちらにしろこんな風になってたかも。


次回はミックが目を覚ました所から。

煌夜とベレットによってミックを倒した。

気絶したミックが目を覚ます。

そのミックから色々と話していく。

そして、ミックはエーリクにある事を頼む。

次回、懇願と叱咤。

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