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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
27/38

第10話 クリフォード隊

 

 数時間後、クリフォード隊は現在の前線である町マスナトレヴに到着。


 そこの指揮官がクリフォードの下に来る。


「お待ちしておりました」

「ここの指揮官か?」

「はい、ヒューズと言います。ここの支部長をしています」

「ではヒューズ。ここからの指揮は私が行うが、備蓄管理は引き続きお願いします」

「了解しました」


 クリフォードは指揮官としては有能でも、管理に関しては長けている者に任せる事にした。


「戦況はどうですか?」

「はい、では一度場所を変えましょうか」


 ヒューズの案内の下、1つの建物に入る。


「ここはこの町の支部になります。現在は作戦本部として機能しています」


 3階建ての建物。

 その一室に案内される。


「では、今の戦況を報告します」


 ヒューズは机の上に置かれたこの町の地図を用いて説明する。


「現在四方八方からリィーズが攻められている状況にあり、その対処に魔導工兵が駆り出されています。現状小型や中型の対処のため、それほど苦労はしていません」


 円形の防壁に四方の門。

 基本的にこの造りが多い西洋建築。

 そこに川があったり、盆地に造られていたり、場所によって違った町の城。


 ここマスナトレヴは東にマーシア王国、南に公都、西に港町に続き、北はメディシーア辺境伯領に向かう街道でそのメディシーア辺境伯領は北北西くらいの方向にある。


 そうした上でリィーズの侵攻は主に北が多く、他の入り口にもそれよりも少ないがいる。


 クリフォード隊が街に入る前は門前をある程度空きが出来る様に倒しており、それまでの道のリィーズをクリフォード隊が倒して入門している。


 北門以外の門は逃走用に死守している。


「クリフォードさんが事前に魔導工兵の温存の指示がしてくれたからです」

「どこかで防衛する可能性があったから。情報は限界まで居て貰っていましたが、魔導工兵に関してはなるべく温存して、防衛拠点として機能する街で防衛する事はリィーズの存在を知ってから決めていました」


 ディアンが公国の街に侵攻して、侵攻しているのがリィーズだと知るとクリフォードは防衛拠点の候補を幾つか考えていた。


 どの街でもリィーズとの戦力差は起きると思ったから。

 リィーズの数を減らすよりも魔導工兵の数を減らさないようにしていた。


 2、3つの街が落とされると今回の作戦を考え、防衛拠点候補から1つ選び、そこに合流して防衛、攻勢を掛ける流れを考えた。


 そしてこのマスナトレヴは商業街。

 品物が多く流通する場所。

 防衛拠点にするには適切な場所である。


 仮に攻勢が掛けられなくても籠城が可能だから、時間稼ぎにもなる。


「まぁこれをする上で懸念点もある。ここを無視されれば少々面倒くなる。ただしそれは敵側にとっても困る」


 ここに戦力を集めたのに無視されれば意味はない。


 しかし、無視されるなら追撃し、挟み撃ちの形すれば良い。

 それを考えると敵としても一都市ずつ落としていくしかない。


 これは人間が指揮官だからこそだろう。

 そうでなければ無視する可能性の方が高いかもしれない。


「となると、ここが要になる」

「はい。こちらは備蓄も豊富ですし、小型や中型であれば殲滅は可能だと思います」


 中型までなら上手い事やれば問題はない。

 問題なのは…


「問題なのは事前に報告があったように大型と人型の存在が確認された事です」


 ディアン自身が魔導工兵である以上は魔導工兵を相手にする事を想定した場合、中型以下では太刀打ちできない事はよく分かっている。


 だから、大型や人型の存在は予想出来る。

 ただし、それを相手に出来るのは限られている。


「予想していたが、こればっかりは支部の魔導工兵を集めても対処は出来ない」

「すみません」

「いや、倒す事は出来るかもしれない。ただ、それで犠牲者を出しては意味はない」


 今は公国の北部の支部の魔導工兵がここに集まっていて、数だけはいる。

 それなりの実力者はいるから、倒せない事はないが、犠牲は確実。


 そこでクリフォードや王国の魔導工兵がいる。


「その代わりに私達がいる。これから私達は先行して大型と人型の討伐に行きます。済まないがその間の防衛の指揮官をお願いします」

「分かりました」


 ここの総指揮官をクリフォードのまま、防衛の指揮官をヒューズに任せる。

 先程までそうだったから心配することはないだろう。


「デレック、みんなと協力して大型をお願いします」

「了解です」


 王国の魔導工兵の1人が返事する。


「デールは待機で通信役を頼む」

「分かりました」


 さらにもう1人返事する。


「もし何かあれば彼を通して連絡を」

「分かりました。それと後ででもいいと思ったんですけど、それを討伐した後はどうしますか?攻勢を掛けるという話でしたけど?」

「とりあえずここの殲滅は優先すべきではあります。だからそれをしてから攻勢を掛ける予定。その後からはここを最終防衛地として守っていて下さい。私達は進みはしますけど、ここに来る可能性は全然あると思います。大型や人型が出ても可能な限りは自分達で対処して下さい。それでも難しい場合は連絡を」

「はい、今も今からも特には変わらないという事ですか」

「そういう事です」


 普通は指揮官が前に出る事はあまりないけど、特に防衛戦においては優秀な部下を動かしている方が多い。


 クリフォードの現状の役目は前線の総指揮官であるものの、役割としては防衛戦からの脱却と失われた領土を取り返すための攻勢という目的のために動いている。


 そのためにはクリフォード自身の力も必要となってくる。

 部下だけでは時間が掛かるし、例え王国中から集めても烏合の衆でしかない。


 それにクリフォードはあまり時間を掛けたくない理由を個人的にあったからである。


「では行ってくる」

「ここは任せて下さい」

「あぁ」


 クリフォードを含めた王国の魔導工兵達は再度町を出た。

 10人が町の外周に向かい、リィーズの対処に行く。


 既に大型は見えており、クリフォード以外は走って向かう。

 その数は13人。

 クリフォード1人に比べて大型には13人。

 これには理由があり、大型の実力はどのリィーズでもあまり変わらない。

 対して人型の実力は振れ幅が大きく、人型になった直後なら中型と大型の中間、それなりに経過もしくは蓄積されていれば大型よりもつよくもある。


 中間ならクリフォード1人で十分。

 仮に大型以上でも相当な実力でなければ時間稼ぎができる。

 その間に大型を倒せばいい。

 ただし、クリフォードは事前にマスナトレヴ周りのリィーズ討伐を優先するように伝えていた。


 そのクリフォードはまだ見えていない人型を見つけるために馬を使う。


(ここからが反撃だ)




 馬を走らせて数分後、クリフォードは他の魔導工兵が大型への討伐を確認した後、人型を捜索をしていた。


 大型は大きいだけに分かりやすいが、人型は基本的に人の大きさと変わらない。


「リィーズたちが特に理由もなく侵攻する所為で見渡しは良くはなっているけど」


 人型でなければリィーズはそのまま進んでいくだろう。


 まぁディアンが細かく指示していれば別だが、あってもどこに向かうかくらいでしていないはず。



 しばらく駆け巡り、ついに見つける。


「いた」


 クリフォードが見る先には人の形をした石…瓦礫みたいな感じだ。


 そのまま走らせると、クリフォードに向かって体の一部を飛ばして来た。


 それを確認したクリフォードは馬から降りる。


『ソードオブライト』


 空中に光の剣が現れ、その石を切り裂く。


 真っ二つに割れた石はクリフォードを通り抜け、地面に落ちた。


 因みに馬は来た方向に戻って行った。



 クリフォードは駆け出し、次々と襲い掛かる攻撃を光の剣で切り裂く。


 敵が飛ばす石は多いが、クリフォードの光の剣は複数出せる。

 対処は難しくない。


「人間か。しかも1人なのか?」

「だったら何だと言う?」

「少々舐められたものだ、と思っただけだ」


 敵…人型リィーズが話し掛けてきて、クリフォードはそれに返事をした。


「こっちは戦力不足だからねぇ。多少無理をしてでもこうするしかないから」

「そっちが対処できるのは限られているって話だからな。でも、この先にそれなりに居たはずだが、倒して来たのか」

「さぁてどうだろうねぇ」

「馬鹿を言うなよ、お前が1人でいる時点で対処し切れていない証拠だろ」

「1人でも十分って意味でここに居るかもしれんないぞ」

「舐め腐りやがって」


 クリフォードは挑発し、敵はそれに乗ってきた。


 敵の腕に巨大な岩が生成され、それを飛ばしてきた。


 それを複数の光の剣で切り裂く。


 しかし、その岩に隠れて敵が接近し、攻撃を仕掛けてきた。


 クリフォードはその対処に遅れ、敵の攻撃で吹き飛ぶ。


 体勢を整えながらその間に光の剣で反撃。

 しかし、その刃は少し削る程度であった。


「残念だったな。どれだけこの体に蓄積してきたと思っている」


 敵は満足げにに言ってきた。


 敵の体は岩石。

 座っていたら瓦礫に見えるだろう。


 まぁつまりはその岩石がこのリィーズの成長という事だろう。


 そしてそれはこれまでの街で得た建物からの物だろう。

 その成長は計り知れない。


 クリフォードの刃が通るかも分からない。


 それを見てクリフォードは腰にある剣を抜く。

 左腕のアガートラムを使わない右腕だけの片手の構え。


 クリフォードの腰にはもう一本携えていた。

 それは短剣。

 既に持っている獲物があるのに携えているもう一つの獲物。

 つまりはアガートラムで使う獲物という事。


 過剰に使うと悪影響を及ぼすアガートラム。

 それを敢えて使うこの短剣はクリフォードの奥の手。

 これは今までに数回しか使った事にない。


 それを無しにして基本的にクリフォードの戦法は光の剣による多段攻撃と今抜いた剣による剣術での攻撃の2つ。


 さらにこの剣には『硬化』というか頑丈になるように魔導が付与されている。


 多段攻撃は中型までを、剣術は厄介な中型以上を相手にする場合に使う。


 それでも無理ならってことでアガートラムを使う訳だが、極力使わないようにしている。



 剣を抜いたクリフォードは駆け出しながら光の剣で攻撃。


 光の剣は浅い傷を与え、そこに剣を振るう。


 ガキンと鈍い音が鳴り、敵は頑丈な体でそれを防御。


 光の剣の攻撃を敢えて受けて、クリフォードが振るう剣を蓄積の量を増やして硬くしている辺り、警戒はしているようだ。


「フンッ」


 敵の体に当たっている状態でクリフォードは一押し、少しの傷を与えて吹き飛ばした。


 敵は少し飛ばされて後ろに倒れ込んだ。


「こっちには用事がある。時間を掛けるつもりはない」


 そこにさらに追撃。

 空中にあった光の剣を自身の剣に吸い込ませて、自身の剣が光る。


「舐めんじゃねぇ!」


 敵は腕を振り上げる。


 クリフォードは一旦警戒し、止まってしまう。


 そこに上空からクリフォードを囲むように壁が出現。


「流石にやる」


 クリフォードは次の敵の攻撃に賞賛する。


 クリフォードに被る影が大きくなり、見上げる。


 そこには大岩が出現し、クリフォードを押し潰すように降ってきた。


『ソードオブライト』


 それに向かい合うように光の剣が増える。


 しかし先程から浅い傷しか与えられなかった光の剣で対抗は難しいはず。


 大岩が壁の高さに差し掛かった時…


『刃よ(エッジ)』


 大岩から光の剣先のような物が現れた。

 それが大岩を粉々に、さらに壁も同じように壊れた。


 クリフォードは壊れた岩の隙から飛び出し、光の剣が展開。


「済まんな。そんな暇はないんだわ」

「くっ、流石に突破は…」

「本当に済まんな」


『刃よ(エッジ)』


 光の剣が敵を攻撃。

 しかし、防御を固めたのか通らない。


 ただ一言言ったら、光の剣から刃が出現。

 伸びていない、そこに出現して敵の体を貫く。


「また復活しても困るから、これで終わらせる」


 敵は逃げようとするが、光の剣で動けないようだ。


 剣を投げ飛ばし、敵に当たる寸前に『刃よ(エッジ)』と言い、剣から光の刃が出現。


 そこにクリフォードが向かう。

 アガートラムで短剣に手を掛ける。


 短剣に掴み、力を込める。

 その時に痛みが発生。

 それに耐えながら抜き取る。


 短剣の刃は真っ黒になっていた。


『ソードオブダークネス』


 その刃は突き刺した剣の光の刃に突き刺す。

 短剣から光の刃に侵食。

 光の刃が闇の刃に変わり、敵の体にひびが入って広がる。


 それ確認し、短剣を仕舞う。


『刃よ(エッジ)』


 闇の刃が脆くなった敵の体を粉々に破壊した。


 クリフォードは剣を拾い、納める。


「こっちの討伐は終わった」


 持ち運びの通信機器でデレックに連絡する。


「こちらはまだ時間が掛かりそうですが、その内討伐出来ると思います」

「それが出来次第、次の町に向かって下さい。私は一度マスナトレヴに戻り、リィーズの殲滅に向かってから向かいます」

「了解です」


 連絡入れた後、クリフォードはマスナトレヴに戻り、外にいる小型や中型のリィーズを『ソードオブライト』で殲滅。


 マスナトレヴにいるデールに連絡を入れ、これから次の街に向かう事とマスナトレヴの防衛を任せる事をヒューズに伝えて欲しいと頼み、デールは了承。


 クリフォードは次の街に向かった。


 ・『ソードオブライト』

 普通の剣と変わらない光の剣。


 ・『刃よ(エッジ)』

 『ソードオブライト』の派生技。光の剣の刃から新たに刃が出現する。伸びるのではなく30cm程の刃が出現する。


 ・『ソードオブダークネス』

 アガートラムを強く使うとアガートラムの金属が体内に入る事で使う事が出来る『ソードオブライト』の闇版。ただし、金属を体内にいる事で起こる体の不安定感をアガートラムが持つ武器に流す事で刃が真っ黒に変色。それに切れられたものは不安定感を流し込まれて体組織が脆くなる。使用者のクリフォードは不安定感を無理やり武器に流し込ます事で軽傷に抑える事が出来ている。


今回はクリフォードの戦闘。

クリフォードは本当はアガートラムを使用しない案を考えていたんですが、アガートラムの代償を色々と考えて「金属が体内に流れる事で起こる不安定さ」という事にしました。実際に金属が体内に入ると色々と気分が悪くなるらしくそれを「不安定さ」という事にし、その「不安定さ」を「体組織の崩壊」という風にして技にしました。

まぁ一応クリフォードの実力はエーリクと同じくらいかそれ以上という事にしているので、それくらいあっても良いかなと思って考えました。


次回はレオ隊の話。

クリフォード隊よりも遅く到着したレオ隊。

着いたのはポルスヴェルズという港町。

そこで戦況を聞いた上ですぐに戦場へ向かう。

次回、レオ隊。

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