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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
26/38

第9話 作戦と編成

 

 翌朝、5時頃。

 まだ寝静まる中で王国本部では動きがあった。


 総本部所属の魔導工兵と王国本部の魔導工兵が集まっていたからだ。


 総本部所属の魔導工兵たちは王国本部の魔導工兵がいることに疑問に思いながら待機していた。


 そして、火の光だけの暗い中でエーリクとクリフォードが話を始める。


「おはようございます、よく眠れましたか?まだ眠い方もいると思いますが、これから前線に向かうため、もう一度蒸気機関車を乗ることになります。その間で寝て貰ってもいいですが、作戦を伝えると思うのでそれまでは起きていて下さい」


 これから王都から前線に向かう。

 その際に蒸気機関車を乗るが、実際に寝れるとは思えない。

 それで寝れるのはごく僅かでしかないだろう。


「出発の前にここに本部の魔導工兵がいる説明をします」


 2人が王城であったことを話しながら、本部の魔導工兵と公国の魔導工兵を前線に出すということ、それに伴ってあまり出せない公国側には総本部から何人か行かせるということ、その指揮官をレオに、前線指揮官をクリフォードに、クリフォードが前線に出る代わりにこの戦争における総指揮官を王国近衛騎士団の団長に任せたことを伝えた。


 その後、エーリクは最前線の部隊と公国側に向かう部隊の編成を伝える。


 ・最前線の部隊

 隊長:エーリク

 副隊長:ウィロー

 クリフ、スカーレット、メリッサなど

 ・公国側の部隊

 隊長:レオ

 副隊長:パメラ

 ダリア、バーナード、アラン、フィオナ、煌夜、ベレットなど


 部隊の人数の割合はこの作戦における最重要な最前線に6、7割。

 比較的に連合王国外の魔導工兵は公国側の部隊に入れている。

 その人数は煌夜を含めて5人。

 本当はもっといるけど、今回は辞退している。


 そして、作戦は簡単に言って最前線の部隊が強行突破、王国・公国の前線の部隊は防衛をしながらの攻勢。


 最前線の部隊は迅速な解決を目的にしている。

 目的は敵の指揮官…つまりはディアン・メディシーアを拘束もしくは撃破、殺害のどれかをする。

 そのためにはメディシーア辺境伯領の港街ホーリーヘッドに向かう必要があり、道中のリィーズに構っている暇はない。


 王国・公国の前線の部隊はこれ以上侵攻させないようにすることを最低限に置き、その上で攻勢を掛ける。

 こちらは防衛に重視している現地の兵士や魔導工兵はその街から出る事が出来ないため、攻勢を掛けられない。

 そのための攻勢部隊であり、押し返すことが目的となる。


 ーーーーーーー

 蒸気機関車は道中の各街に止まり、情報と現地の魔導工兵を乗車させる。


 王国の魔導工兵に関して、急を要するため全部の支部を回れない。

 だから、止まる街に行くか、事前に行けない事を報告し、その分を止まる街の支部から出すことになり、出した分を行けない支部から寄越す。


 そして20余の王国の魔導工兵が集まり、前線の手前の街で一度一泊を取ることに。


 各街を可能な限り時間を削り、21時に到着。

 何とか1日で前線の手前まで来る事が出来た。


 ここでしっかりと休み、明日の決戦に備える。


 ーーーーーーー

 その数分後、煌夜はある部屋の前で止まり、ノックする。


「誰ですか?」

「煌夜です」

「煌夜ですか。何の用で?」

「部隊編成に関してのことで相談したい事が……」


 数秒経ってから


「入っても良いですよ」


 煌夜は中に入る。


 そこにはエーリク、ウィロー、レオ、パメラの隊長や副隊長の面々にクリフォードら王国の魔導工兵たちがいた。


「今は作戦の確認中です。手短に」

「はい」


 その面々の中で煌夜は言う。


「僕を最前線の部隊に入れて下さい」


 煌夜は公国側の部隊に入れられていた。

 それではミックに会う事も出来ないし、炎の剣も分からずじまいになる。


 だから、最前線の部隊に変更して欲しいと告げた。


「総長は人数合わせで参加して欲しいとは言いましたが、国との問題に発展する可能性があるため、1番危険な最前線に行かないという判断で貴方をレオの部隊に入れました。言わば配慮という訳です」


 今日は部隊を2つに分けた訳だが、当初通り総本部全員で向かう場合であっても、連合王国外の魔導工兵については後衛に回るように指示するつもりだった。


 参加自体は自己責任とは言え、そこは気にする必要はある。

 エーリクとしてもよく思っていないだろう。


「一応貴方も国の代表としてこちらに来ている訳ですし、ここに来るのに自己責任とは言え、それは残るのはよくお分かりでしょうか?」

「はい。でも、僕は行かなければならないです」

「行かなければならない…ですか。ミックの件という事ですか?貴方との仲はそれほど深くはないと思いますが?」

「確かにそうですね」

「そう言えば以前のベレットの件でも首を突っ込んでいましたが、貴方にとってそれは大事なのですか?」


 煌夜はミックとベレットとは1ヶ月程度でしかない。

 友達の仲になれても、国の代表を無視してまでするような仲ではない。


 それを思ってエーリクは疑問に思っている。


「僕は家族というものを大事にしています。僕には生まれてすぐに亡くなってしまった母とその後にいなくなった父がいます。それによって幼少期に辛い思いをしました。その上でベレットは理想的な家族を持っていて、大事にして欲しいという想いで参加しました。今回のミックは僕と似た境遇であった事が参加理由です」


 煌夜は詳細な事は話さず、大まかな事を話して前回と今回の参加理由を述べた。


「それは国の代表という立場を捨ててまでする事ですか?」

「はい」


(うん?何です?コウヤから感じられるものは…炎?)


 幻影だと思うが、エーリクは煌夜に炎が纏っているように見えた。


「貴方の意志は分かりました。クリフォードさんはどう思いますか?」

「別に大丈夫じゃないか?元々攻勢を目的にしている部隊とは言ってもこれ以上攻められないための部隊って言うのが正しいと思うし」

「そうですが…」

「私は前線の総指揮官ではあるけど、どうするかは実際の指揮官と総本部における現時点でのトップである君が考えるべきだ」


 クリフォードは前線における総指揮官だけど、それは作戦で命令できるだけで、部隊編成にまで口を出しにくい。


 クリフォード自身が総本部の魔導工兵のことをあまり知らないからというのもある。


 この場で決めるのは実際に指揮を取るレオと立場上レオの上に当たるエーリクとなる。

 クリフォードは多少意見を言えるくらいだろう。


「分かりました。とりあえずミックの件は了解しました。ですが、参加させるには弱いですね」


 ミックの件は個人的な理由で得しない。

 何かしらの効果があっても不確実なので、許可できない。


「……正直、これは話したくなかったのですが、ここだけの話にして下さい。総長は勘繰ってそうなので言っても大丈夫です」

「分かりました。皆さんも宜しいですね?」

「君たちもそのように」


 エーリクの確認にウィロー、レオ、パメラは頷き、クリフォードの確認に王国側の魔導工兵も頷いた。


 それを確認した煌夜は胸に手を当てる。


 すると空中に剣が生成される。



「炎で出来た剣…大きさ的には短剣ですか」


 大きさは小さい。

 見た目は剣なのは分かるが、両刃か片刃までは分からない。


「僕はこれが何のかは分からないんですが、探す必要があると思っています」

「探す必要がある?」

「でも分からないって事は何とくでしかないんだろうな」


 煌夜はこれが誰の中にあるものだと何とく分かっていても、探す事に何の意味があるかまでは分かっていない。


 クリフォードが言うように何とくで探しているだけである。



「私の魔導と似たような感じに見えるが…」


 クリフォードは魔導を発動する。

 煌夜が出した炎の剣のように空中に光の剣が出現する。


 クリフォードの魔導は神ヌアザを素とする《バトラーオブライト》を使用し、主に『ソードオブライト』という光の剣を生み出す。


「動かせないんだよな?」

「はい」


 クリフォードの『ソードオブライト』は光の剣を生み出して動かす事ができる。


 対して煌夜の出した炎の剣は動かせない。


「それでそれと同じものが辺境伯領にあるかもしれないっていうことですか?」

「はい」


 確かではないが、その可能性が高い。


 エーリクは少し考え込んだ。


「分かりました。私自身納得出来ていないところはありますが、私の部隊に参加すること許可します」

「ありがとうございます」


 エーリクから許可が出た。


 因みにエーリクが納得出来ないのは炎の剣でも参加させる理由としてまだ弱いと個人的に思った。


 でも、別の要因でエーリクは参加を許可した。


「ついでにベレットもお願いします」


 煌夜は図々しくも追加要求した。


 それにレオや王国側の魔導工兵が口を出さそうとしたが、ウィローがレオを、クリフォードが自分とこの魔導工兵を手で抑える。


「私がベレットを最前線の部隊にしなかったのは付いて来れないと思ったからです。それは良く接している貴方も理解しているはずです」

「はい。でも、ベレットを成長させるには危機的状況が適していると思います。先日の人型リィーズの討伐戦や最近の修行を見てそう思いました。もしかしておちょこちょいのところやろくに剣術を覚えられないことで戦闘を避けていたんじゃないですか?」


 ベレットは戦闘中でも転けてしまったり、剣術を覚えられないから、魔導工兵として働かせても極力中型リィーズとの戦闘を避けるように言っていた。


 まぁ、組織としても次第に中型リィーズも倒せるようになればと思ってはいても、そこまで本気にしていなかった。


「うーん、確かにそのような判断をしていた気はしますが、魔導工兵自体は貴重であり、成長させるにしても慎重に行わなければなりません」


 魔導工兵は今現在ではそれなりにいても、いなくなっては元も子もない。


 だから、ベレットの希望を考慮しながらも、慎重に見ていた。


「しかし逆に言えば、いざ中型以上を目の前にして力不足が原因で負けてしまえば意味なんてないですよね?」


 リィーズの発生は突然。

 基本的に小型リィーズを相手にさせるためにその職場に就かせているが、決して中型以上が発生しないとは限らない。


 そんな時に力不足で勝てなかったでは何の意味もない。


 煌夜が言いたいのは誰かが側にいる上で危機的状況を経験させることが大切だと言っている。


「確かにその通りなのかもしれませんが、問題なのは付いて来れるかです。それをどうにか出来ますか?」


 エーリクとしては先程煌夜が言った理由も確かに行かせたくない理由にはなるけど、問題なのはおちょこちょいなせいで時々転けられては困るからである。


 これをどうにか出来るなら参加しても良いって事だろう。


「僕が必ず行かせます。そもそもベレットは体力的には問題なので、付いて行かせるようにどうにかします」

「それならお願いしますよ」

「はい」


 何とか許可が出た。


「これで聞きたいはないです」

「そうですか。ちゃんと英気を養って下さいね」

「はい。失礼します」


 煌夜は部屋から出た。


「許可してよろしかったですか?」


 ウィローが聞く。


「煌夜関しては総長からお願いされていた事がありましたからね」

「総長から口出されるのは偶にあるけど、何をお願いされたんだい?」

「彼の行為を少し融通して欲しい…とのことです」


 贔屓との言えるお願い。

 それには総長なりの理由があった。


「へぇ、融通ねぇ…。それには理由はあるんだろう?」

「はい。総長は彼の事を『素質は私と同じかそれ以上かもしれない』と言っていました」


 その言葉に愕然とする。


「それはつまり彼には【初神】の素質を持つって事かぁ」

「そういうことになりますね」


 クリフォードが言った【初神】。

 格が【主神】や【導神】よりも上に位置する力。

 条件は神話の分野における祖とも言える神のため、神話の数に分野となればそれなりになるが、決して【初神】の素質を持てるとは限らない。


 そしてその力は一柱の神につき2つの魔導を有する。

 それ以前の【主神】と【導神】の能力は1つの魔導の1つの能力から派生した能力で、基本的に【主神】は仲間の強化、【導神】は仲間の成長という効果を持つ。

 その【主神】と【導神】をそれぞれ1つの魔導として有しているのが【初神】である。


「それにしてもそんなに急ぐ事なのか?」

「はい、それは私も思っておりました」


 成長させるという意味ではエーリクもクリフォードも賛成である。

 ただ疑問なのはそう急ぐ意味があるかという事。


 煌夜は魔導工兵になりたての15歳。

 金の卵なのかもしれないが、酷使すれば死期は早まる。


 それは煌夜を最前線に行かせない理由の一つでもあった。


「もしかすると実力者の高齢化を示唆しているかもしれないな」

「確かに。ほとんどはもう40越えで40後半になれば老化が表れてくる」


 老化は体の機能低下を起こす。

 その老化自体は40歳手前からも進行してはいるが、はっきりと表れてくるのは40歳後半辺りから。


 そして、実力者と称される者は総長や各本部長にあと何人かいたりするが、そのほとんどが40歳を越えている。


 まぁ、マーシア王国の国王であるハワード・マーシャルは72歳とご高齢でご健在であるものの、皆がここまで高齢になれるほどこの世は甘くない。


「戦闘という意味でもどこまで出来るかも分かりませんし」

「総長は何か感じているかもしれん。そのために若手の成長を促しているかもな」


 長生きするにしても体が動くかどうかは別。

 戦うには体が必要であり、老化によって体の機能は低下するので、実力者だけを頼っていれば後々大変なことが起こる。


 総長はその事態を危惧しているという事だろう。


「そういう意味では私らも燻っている訳にもいかないな」

「はい」


 総長が煌夜を期待しているからと言って、他の魔導工兵を期待していない訳ではない。


 ただ、そう言われてしまえば期待されていないと思われても仕方ない。

 だから、今の状態に留まらず、先に進まなければならないと再度決意を固めるのだった。


 ーーーーーーー

 翌日。


「おはよう、ベレット」

「おはよう!コウヤ!」


 朝起きて、準備をした後で煌夜はベレットを探し、挨拶を交わす。


「ベレット、もし最前線の部隊に入れるとしたら入ります?」


 朝早くベレットに探していたのは昨夜ベレットを最前線の部隊に参加するのを許可してくれたことを言うつもりでいるが、その前にベレットは参加したいかを確認している。


 前後関係が違うような気がするが、事前に話して期待させた上で無理だったではベレットを悲しませる。


 だから敢えて許可をして貰った上で今聞いている。


「煌夜は?」

「僕最前線の部隊に再編成して貰えるようになりました」

「じゃあ、行く!」

「それなら良かったです。ベレットもそのようにしたよ」

「ありがとう、コウヤ!」


 ベレットの決め手が煌夜が参加するかどうかというのもどうかと思うが、どうやらそれだけが理由ではないみたいだ。


「それにミックが心配だから。ミックは強いから大丈夫だと思うけど……」

「はい、そうであって欲しいです」


 何だかんだでミックとは学校時代からの付き合いであるベレットはどうしているかを気にしているのだろう。



 日の出で予定通り3つの部隊が分かれて出発した。


 1つ目は最前線の部隊であるエーリク隊。

 ここからは馬に乗り、辺境伯領に直接向かう。

 乗馬経験のない者はある者の後ろに乗っている。


 2つ目は王国の前線を構えるクリフォード隊。

 クリフォード隊は馬と馬車で前線の街に向かう。


 この2つの部隊で使う馬と馬車はほぼ使い捨てとなる。

 基本的に移動用で馬車はとりあえず街に置いていく事になるが、その街が落ちれば失う。


 馬は戦闘用として使用する事も可能ではあるものの、全員が全員それで戦闘できるとは限らないため、勝って連れて帰れなかったら失う事になる。


 そして3つ目は公国側の魔導工兵と合流するレオ隊。

 レオ隊は昨日と同様に蒸気機関車に乗り、公国側の魔導工兵がいる街に向かう。


 ここからは多少の休暇しかない戦闘が始まる。

今回は作戦と編成。

大きな進展はないけど、煌夜が最前線に行く為の話と思ってくれればと。


事前に言っちゃいますけど、この後クリフォード隊とレオ隊を1話ずつ投稿した後、しばらく投稿は遅れるかも。

出来るだけストックするよりも投稿優先しようと思っているのでなるべく早く投稿するつもりです。


次回はクリフォード隊。

翌日クリフォード隊は現在侵攻されている街マスナトレヴに着く。

そこで現状聞き、戦場に出る。

次回、クリフォード隊。

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