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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第7話 アガートラム

 

 その道中のこと。


「すみません、1つ聞いてもいいですか?」

「何?」


 レオが気になった事をクリフォードに聞く。


「その手って何ですか?」


 クリフォードの左手が普通ではなかった。

 敢えて言うならガントレットを着けているようにも見えたが、服の下に着けるような物ではないから、不思議に思った。


「うん?これは義手って奴だね」


 クリフォードは袖をまくり、腕を見せた。


 手だけでなく腕までもが金属で出来ている。


「昔にリィーズとの戦いでなくなった、名誉の負傷…重傷のようなものかな。まぁ、その後にくだんのディアンがくれた物で、彼の魔導で神経で繋ぐ事が出来ている」


 義手…義肢技術は現在でもある物ではあるものの、体を支えて歩くこともできる義足とは違い、義手は掴む動作が必要となる。


 仮に武器を持つにしても、ロックすることで持ち上げたり支えたりは出来ても、手を開いたり閉じたりができるという訳ではない。


 それに比べてディアンに作って貰ったというクリフォードの義手は違った。


「ちゃんと動いているでしょ」


 クリフォードは指を動かした。

 これが通常の義手との違いである。


「噂程度でしたが、そこまでできるとは…」

「助かってはいるんだがな…」


 クリフォードは袖を戻して、左肩に手を乗せる。


「さっき言ったと思いますけど、ディアンの魔導は副作用を持っています。これは身体に影響するもの」

「まぁ、当時の彼は懇意に渡した物ではあるけど…」


 クリフォードはどこか悲しそうに義手を見ていた。


「彼は元々私たちと変わらないモノ…正義を持っていた。しかし、彼には絶対に継がなければならなかった辺境伯の重圧に彼の魔導は蝕んでしまっていた」


 元々は今のミックとそう変わらなかったのだろう。


 違ったのは一人息子であったディアンと妹という守るべき存在がいたミック。

 そして、副作用を持つ魔導。


「彼は魔導を使えば使うほどに感情を露わにし、その力を誇示するようになった」


 強力な魔導による代償なのか、それは人を変えた。


「それが10代の頃はまだマシだったけど、20代から怪しかったな。今も残るディアンのことはもうその頃からのものになる」

「10代の頃はライバルって感じでしたよね?」

「私はそんな気はなかったんだけど、彼には少しあったらしい」

「20代からは亀裂があったような気がしますね」

「その頃も私はそんなこと考えてなかったけど、今思えばそのせいだったのかもしれない」


 クリフォードはもうその時に王族から抜けようと考えていて、魔導工兵として何ができるかを模索していた。


 その結果としてディアンとの価値観の違いが生まれたのかもしれない。


「これは亀裂の浅い時の彼の残された良心…かな。それでも全力を出せる訳ではないんだけど…」

「制限付きとは言え、実力は十分だと思いますけどね」


 クリフォードの義手はアガートラムと呼ぶが、ディアンの魔導による副作用というのは生身と直結する形で接続されているため、過剰に使うと義手の金属が生身に入り込み、簡単に言えば病弱になってしまう。


 そのため、クリフォードの本気は見せられない。


 義手の役割は日常生活と武器を使う際の支えのみ。

 一応奥の手はあるが、それでも実力は上位と言える。


「本当なら自分が向かう必要があるだろうけども」

「因縁という意味では私の方があると思いますよ。総本部という意味では」

「確かに」


 クリフォードも最初は総本部所属であったけど、今後のためにマーシア王国本部に移動した事で、総本部では実質的にエーリクとディアンで二分することになった。


 その後すぐにディアンが実家を継ぐという話が出ていたけど、総本部のエースで時期討伐隊の隊長の呼び声も高いエーリクに敵対心を向けていた。


「総本部でそれなりに幅を利かせれば、総長がいなくなった後に融通が利くと思ったんじゃないかな。優秀な魔導工兵がいても総長になれる逸材は一握り。当時は今の総長がそれほど遠くないうちになると言われていたが、その後は可能性としてディアンとエーリクが候補に上がっていた。しかし、ディアンは実家を継ぎ、エーリクは帰国しなければならない。その後はまだその実は見つかっていないしな」

「クリフォードさんは…」

「悪いな」


 今の総本部に足りないのは総長になれる逸材である。


 それを持っているエーリクは残念ながら他国の魔導工兵で近いうちに帰国することになっている。


 逸材に至れる才を持つ者は数人居たりするが、逸材ではない。


 だからこそ根を張っているということだろう。


 因みにクリフォードは逸材であるものの、総長になるつもりはない。

 マーシア王国にいることを望んでいるからである。


「うーん、やっぱり親友として何か言うべきかな?」

「あるのでしたら打診してもいいと思いますが、そうではないなら別に大丈夫ですよ」

「そう?確かにあまり私情を言ってられない状況ではあるけど」


 今回の件、クリフォードはマーシア王国本部の本部長として王国を守ることを第一に考えている。


 だから、前線に出ることになっても、攻めてくる敵軍を対抗するために行くだけで、最前線に行く訳ではない。


 それでも唯一の元親友として何かするべきなのかを再度考えていた。


 ただ正直何か言えるほどのことはなく、エーリクもそれに関してはよく分かっていたから、無理して行く必要はないと言っている。


「おっと済まない。とにかくこれはディアンが作ってくれた物だよ」

「は、はい。そうなんですね」


 2人の会話を聞いていたレオは「自分がもう少し力があれば行かせる事が出来たかもしれない」と内心思っていたところに話しかけられ、戸惑ってしまった。


「どうした?」

「いえ、先程と雰囲気が違うと思いまして」

「あぁ、その事か」


 誤魔化す意味も含めて会議中では違った口調をしていることを聞いた。


「一応形式とか相手によって口調は変えてるんだけど、元々魔導を持っていると自覚してからは王族を辞める事は決めたからね。覚えておく必要はあっても普段は別にしなくていいかなぁって」

「そうなんですね。貴族を辞める人は時折居ますけど、口調まで変わっている人はあまりいないと思いますが?」

「辞める人に関しては多分思春期の問題じゃないかな。その時期って感情が表に出しやすく、きっぱりと判断しちゃうから。それに大体学校に行っている頃合いだから、そうなる傾向にはある。まぁそもそも少数だと思うけど」


 王族や貴族の子どもの中には魔導工兵に専念するために辞める人は時折いる。


 それが少数なのは普通に親が過保護もしくは教育しているから辞めさせないようにしているからで、余程寛容ではない限りはそうなる事はない。


 クリフォードは王族と言っても直系ではないのとマーシア王国の王族にある国に関わる仕事をしない者は王族を名乗らないというのが大きい。


 まぁ実際、幼少期では「人のために」という軽い気持ちだったのが、学校時代でより具体的になった結果だろう。


「さて、着いたか」


 話しているうちにマーシア王国本部に戻ってきた。


 クリフォードは(今回だけの)夜勤をしている職員に人を呼んで貰う。


 その人たちというのは総本部側のウィローとパメラ、本部からの数人。


 呼び出したそのメンバーとエーリク、レオ、クリフォードで作戦会議を始める。


今回はクリフォードとディアンの関係性。

ディアンのキャラ設定自体はミックのキャラ設定の後に考えたですけど、クリフォードはこの章で考えたキャラになります。ディアンの神やクリフォードの神は能力名は出しても神の名は本編には出さないかも。ただ、解説には載せるつもりではありますが、小出しした情報を調べれば分かるかもしれません。

因みに2人の過去話は突発的に考えたので無理やり辻褄を合わせています。


次回は本部の部屋で休んでいる煌夜の話。

部屋を案内された煌夜は蒸気機関車での疲れからベッドに座る。

今回の件に関して改めて考える煌夜。

帝や美龗姉妹に黙って行動している事に後ろめたさがありながらも行く理由がミックの父親に怒っている事以外にもある事に気付く。

次回、炎の剣。


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