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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第4話 ミックの悩み

 

 一先ず、繰り返しベレット修行をしていく。


 ただ、月日が流れてから別の気になることが出てきた。


 それはミックのことである。


 ミックは同室というだけでなく、ベレットを指南する依頼を受けている。


 仕事場が違うため、外ではあまり出会うことも少ないけど、同室である以上は出会う機会が多い。


 ベレットの件もあるため、話すことはあった。

 しかし、


「ちょっと眠くて」

「そんな気分じゃなくて…」

「ごめん」


 などなど断りを増えていた。


 さらにベレットの修行も最近は付き合ってくれないらしく、自己練習や煌夜が代わりに見るということが増えた。



 そういうことを組織に尋ねてみたのだが、職員から「総長からの伝言になりますが、『今は気にするな。アイツは貴族出身であるから何かあるんだろ』と言っておりました」と言われたので、貴族という言葉が出てしまえば仕方ないと思った。


 しかしそれが煌夜にとってどうしようもない貴族という身分だけだったら、煌夜もそこまで気にしなかった。



 煌夜は事前にミックから悩みというのを聞いていた。


 ミックは煌夜の家族構成を聞いた上で自分の家族構成も伝えた。


「私には父君と妹がいて、母君は煌夜と同じように幼い頃に亡くなっています」


 ミックの父はメディシーア辺境伯。

 マーシア王国の飛び地にいる貴族である。


「私は父君からの影響を強く受けながらも何とか耐えている状態にあります。それは単なる息子に対する厳しい態度ではなく、駒に対する態度でした」


 その名前はディアン・メディシーア。

 組織に籍を置きながらも引退した元魔導工兵で、貴族主義を掲げている野心家。

 魔導工兵の実力は高く、現在いる魔導工兵の中でも指折りの実力者である。


 その父親から強く影響を受け、魔導工兵という職もある事情により迷っていたのを父親がゴリ押しで魔導工兵の教育機関に送った。


 それはいつ来るか分からない将来のためだろうというミックの推測である。


「でもそれは私にとってはそれほど重要な問題ではありませんでした。何故ならある事情があったから」


 ミックにとってはそれ以上の問題があった。


「妹のことです」


 妹は父親を除けば唯一の身内。


「5年前、私が魔導工兵の学校に行くことになるまで私は実家で妹と一緒に過ごしていました。妹はまだ5歳という年齢でした」


 魔導工兵の学校は10歳から15歳の間に行くことが多い。

 発見されていても家族との交流を優先し、10歳から入学することになっている。


 ミックの場合は入学を渋ったことで12歳の頃に編入している。

 その時にベレットに初めて会っている。


「あの父君の側に妹を残すことがどうしても出来ませんでした。私ならいざ知らず、妹までその手が届くならと渋ったのですが、私は今ここにいます。あれから5年。あれからどうなっているか分かりません」


 ミックはこちらに来てから一度も帰省していない。

 それは父親であるディアン・メディシーア辺境伯が許可していないからだ。


 ミックを魔導工兵に専念させるためなのか、それとも実家に帰さないようにしているのか、その両方か。


 それにより5年間、妹がどういう状態にあるか分からずに過ごしてきた。

 ミックの悩みというか、不安という形で残って。



 ミックが悩むことは父親と妹。


 決してそれがそうという訳ではないが、ありそうなのがそれではと煌夜は思った。



 後日、突然ミックの姿が消えた。



 煌夜は総本部に確認を入れたところ、帰省しているという返答を貰った。


「この帰省が正しいことなのかが分からない」


 ミックは妹の心配をしていて、様子を見るということで帰省を望んでいた。


 それを拒んだのが父親なら、今回帰省できていることはその父親が許可を出した。

 もしくは別の理由。


 多分煌夜が気にすることは何もない。

 煌夜の立場はここの魔導工兵という以前に外国の魔導工兵である。


 ミックの父親が貴族なので、外国の者が首を突っ込む訳にはいかない。


 煌夜はただ同居人というだけで気にしていたら、それだけで首を突っ込む理由にはならない。


 そこの線引きはちゃんと見極める必要がある。


 まぁ煌夜にそれだけの理由だったら冷静になっていたかもしれない。


 ーーーーーーー

 先日


 煌夜からミックの様子がおかしいことを報告を受けた数日後の総長の下にミックが訪れた。


「総長、直接お呼びとは何でしょうか?」

「担当者から伝達しても良かったんだが、私個人にお前と話しておきたいことがあったんだ」


 そもそも一魔導工兵が総長と会うことはそうそうない。


 1番は特に理由がなければ会う必要がないからである。

 会うか会わないかは総長が決めることで、一魔導工兵が決めることはできない。


 逆に言えば総長が来て欲しいと言う場合はそれだけ重要な件があるということでもある。


「お前に帰省という名の帰還命令がお前の父親から来た」


 一度も帰ることを許可してくれなかったミックの父親が許可した。

 それがしかも帰省という目的ではなく、帰還命令。

 つまりは再び総本部に戻ることがないということ。


「そのような感じの文は事前に貰っていました。しかし、帰還命令ですか…」

「今まで帰省することも許さなかったもんな。それが帰還命令という格上げした要請。それが意味することは分かっているな」

「はい…」


 その意味をミックは理解していた。

 それがミックにとって怒りと悔しさを生む。


「私はお前が実家に戻ることを勧めない。だが、止めるつもりもない。一応組織は貴族への干渉をしないことにしてるからな」


 組織『魔導工兵』は王族や貴族の家族間や仕来りへの干渉をしないことにしている。


 組織には首を突っ込めるほどの力を有しているが、あまり突っ込む過ぎると過干渉状態で批判を受ける。


 ただでさえ魔導持ちは危険な存在であるという認識は一般的にある。


 だからこそ信頼関係は大事にしなければならない。


 総長が行くのをお勧めしないのは個人的な意見で、強制するつもりはない。


「ただし、アイツの行動次第ではこちらも動かざるおえないだろうな」

「私をお呼びしたのなら、その可能性はあるかもしれません」

「あぁ。どんな結果になろうとお前への擁護をしよう」

「ありがとうございます」


 そして、ミックは総長室を出た。


「ついに動くのか。結局昔と変わらぬか、それでも人間としての線引きはあってくれよ」


 総長は窓から外を見て、そう言った。


「さて、こちらも準備をするとしようか」


 総長は振り返り、部屋を出た。


 ーーーーーーー

 薄暗い空間。

 石造りの高台に男性がいた。


「ついに我の野望は始まる」


 男性の横には幼い女の子とメイドの姿の女性が手を繋いで、男性と同じようにその先の光景を見ていた。


 その視線先には異様な生物が沢山いた。


今回から第2章の本筋に入っていく事になりますが、ミックの件や最後の人物らへんは章の最後になるかなと思います。


次回は導入というか展開というかの部分です。

突然煌夜とベレットの下に1つの知らせが届く。

それはあり得ても決して起きにくい出来事であった。

次回、戦争。


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