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魔導工兵  作者: 龍血
第2章
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第3話 ベレットの修行

 

 あれから数日、その間に煌夜とミックは総本部に休みを申請。

 その休みにベレットも含むようにして、それを総本部は了承した。



 この休みはベレットの修行するためである。


 因みにベレットは「何で?」と少し疑問に思いながらもそれを受けた。


 3人は総本部内にある修練場にいた。


「さて、これからベレットの修行をする訳だけど、一先ず煌夜の剣術を改めて見せて貰おうかな」

「はい」


 煌夜は刀を抜き、剣術を披露する。

 煌夜の剣術は神路心祈流しんじしんきりゅう


 神路はやまと国独自の宗教で心祈流はそれを元に作られた流派。

 神に心から祈り捧げるように刀を振ることで神からの恩恵を受ける。


 型としては一振り一振りに力を込めるタイプの流派。

 ただし決して流動的ではないという訳ではない。


 力加減を操作し、速さ重視と攻撃重視を使い分け、最高速で向かい、最高力で攻撃を行う。

 その一つ一つに神の力が宿る。


 という体ではある。

 実際に宿る者と宿らない者はいる。

 なので一応型として神路心祈流がある。


 まぁ今回見せているのはやまと国における刀路とうじの初歩を見せているに過ぎない。


 刀路とうじとは刀を振るためのみち

 地域よって違いがあるが、皆がそのみちを通ってそれぞれの流派に向かう。


 そもそも倭刀わとうの剣術はやまと国独自のもの。

 それをすぐに使えるほど甘くはない。


 刀を振り下ろすのに気持ちを。

 横薙ぎするのにも気持ちを。

 振り上げるのにも気持ちを。


 精神統一することで迷いをなくし、僅かな足音と刀を振る音、振ったことで発生する風だけが残る。



 そして、煌夜は刀を納めた。


「こちらの剣術と似ているかもと思ったけど、やっぱり違いますね」


 見ていたミックが話しかけてきた。


「これでも基礎だけどね。それでもそちらとは違った難しさがある」


 これは西洋とやまとの考えの違い。

 それが剣術として現れる。



 次にミックが剣術を披露する。

 ベレットに対する見本を改めて見せることと煌夜に見せるためである。


 最初は比較的によく見られる力任せな攻戦的な剣術。

 力を乗せる時は両手、振り回す時は片手、その時その時で判断して動く。

 これは初心者や力自慢に見られるもの。


 次に盾を持って攻守を行う剣術。

 相手の攻撃を盾で受けて、その隙に剣で攻撃する。

 初心者がある程度剣を覚えた後に進む、力がなくても盾という防御があることで攻撃を可能とする。

 逆に言えば攻撃が落ちる剣術ととも言える。


 次に貴族で見られる剣術。

 美を追求し、それでも決して弱くはなく受け継がれてきた剣術。

 ミックが基本的に使っている剣術である。


 最後に刺突武器を使用した剣術。

 素早さを追求し、大きな攻撃にはならずとも確実に小さなダメージを与える。


「割とあると言うか、覚えているんですね」

「1番最初は除き、結局は合うか合わないかですし、自分は慣れてしまった剣術を使っているまでですけどね」


 剣術は1つではない。

 それが自分に合うかどうかはやるまで分からない。


 それに複数の剣術を得ていることは戦術を変える手札があることに意味がある。


「ねぇ、もう立ってもいーい?」


 少し離れた位置に椅子を座ってこちらを見ていたベレットが聞いてきた。


「では、西洋剣術からやっていきましょうか」


 披露する時間を終え、指南する時間に移る。


 ミックがベレットに改めて西洋剣術を教える。

 その際に煌夜もそれを聞き、西洋剣術を学ぶ。


 ベレットはもう既に教えて貰っているため、知識としてはある。

 ただし、それはできるかは別である。


 落ち着きのないベレットは貴族剣術、刺突剣術、さらに防御型の騎士剣術に合わない。

 重心を保てていないからだ。


 剣術を使う以上はそのほとんどが重心を必要とする。

 仮に必要がなかったら、腕の力に頼るしかなくなる。


 しかしベレットはそういうタイプでもないから、結局は我流な感じになってしまう。



 対して煌夜は実戦で使える程度ではないにしろ、基礎はできているため、それなりに使えていた。



 その指南中、修練場の扉が開く。


「失礼します。煌夜さんにお客様です」

「頼まれた物を持って来たぜ」


 組織の職員とその後ろにジェフが入って来た。


「ジェフさん。できたんですか?」

「あぁ、見てみろ」


 ジェフは持っていた刀を煌夜に渡した。


「確認します」


 煌夜は受け取った刀を抜き、刀身を見る。


(形や重さはほぼ同じ。多少劣っているが、元々僕の刀は質が高いから、これは悪くない。いやこれは魔導の力と鍛冶師としての技で質を上げている。流石の出来だ)


 その刀はやまと国の一人前の鍛冶師が作った刀と遜色ないほどの出来だった。


 元々の煌夜の刀の質が高かったのもあるが、ジェフは魔導の『複製』だけでなく、より鮮明にするために自身の鍛冶師の技量で底上げをしている。


 煌夜はジェフがどのようにしてこれを作ったかは知らないけれども、倭刀わとうを作るのは簡単ではないことは分かる。


 それは他国のプロの鍛冶師でも難しいだろう。


 それができてしまうジェフは貴重な存在と言える。


「素晴らしい出来ですね」

「そう思ってくれるのはありがたいが、もう少し再現できればとは思った。だが、そういう訳にはいかないのも事前に聞いていたからな。まぁ、これが今の俺の限界だった訳だ」


 これは職人魂としての悔いなのだろう。

 それでも煌夜の方は十分な仕事をしてくれたと思った。


「いえ、ありがとうございます」

「いや、俺も学んだ機会だったからな。これに関してはお互い様だ」

「はい、分かりました。お金の方は…」

「あぁ組織から貰ってる」


 煌夜がベレットのために剣を買う話をジェフのお店を紹介される際に言っている。


 その時に組織からの依頼ということでお金は組織持ちということになっていた。


 しかし、ジェフのお店で刀を作ることになり、お金はその分高くなる。


 その話をジェフのお店を出た後に報告していたが、それでも組織持ちであることは変わらなかった。


 そもそも煌夜はこちらの魔導工兵として働く際の給金は貰っている。

 だから、組織からの依頼なので全額とはいかなくとも、何割か払うつもりではいた。


 まぁ、払えていたかは別になる。


「それじゃあ、これで帰るわ。なんかあれば言ってくれ」

「はい、ありがとうございました」


 ジェフと職員は修練場から出て行った。


「そういう訳でこっちの方もやって行こうと思うけど…」

「休憩しよう…」

「そうですね。区切りがついてしまいましたしね」


 早速、刀を使って刀路とうじをやっていこうとしたが、先ほどまで西洋剣術をやっていたから疲れが溜まっている。


 一度休憩をするべきだろう。



「休憩の後、型を覚えて貰う訳だけど、それともう一つやって欲しいことがあります」

「まだ何かやるの?」

「そう難しくないです」


 煌夜は地面に座った。


「瞑想というのをやって貰います」

「瞑想?それをしてどうなるんですか?」


 瞑想は心を落ち着かせるためにすること。

 ただしこれは西洋においても一応あったりするが、一般的ではない。

 ミックはその名前を知っているだけで何をするかはまでは分かっていない。


「心を落ち着かせたり、無心の状態になります。もちろん欠点もありますが、その時はやめるしかないかな」


 欠点は辛い過去を思い出してしまったり、精神病を患ったりしてしまう。

 最終的には心を遮断し、感情を引き出すことが難しくなる。


「瞑想に関しては剣術と並行してやっていきましょうか」


 そして、煌夜による刀路とうじの指南が始まる。


 剣術は時間がある時、瞑想は隙間時間に行なっていく。


 最初こそ瞑想自体が続けることができなかったり、眠ってしまうこともあったが、ベレットは欠点らしきことを引き起こすことはなかった。


 ーーーーーーー

 仕事に限らず、修行という観点でもベレットと共になることが増えて来た煌夜。


 側から見ると他所から来た者が出来の悪い奴に出来もしない剣術を教えている構図になっている。


 それはベレットに教えたところで…というのがあり得ることではあるけれども、問題なのは貴族出の魔導工兵だ。


 魔導工兵の輩出率の割合は貴族出が多い。

 その理由は血筋というのもあるかもしれないけども、それよりも発見率の高さにある。


 基本的に魔導持ちは魔導を発動し、それを発見されないと魔導工兵への要望を出せない。


 貴族の場合、親が隠さない限りは魔導持ちの発見はすぐになる。


 そもそも魔導工兵は貴族とは別の地位がある。

 それはリィーズへの対抗手段として必要な人材であること。


 それが身内にいるだけで安心感が違う訳で、さらに当主になれば領民は安心できるのである。


 貴族にとって魔導工兵になることはメリットの方が多い。

 その分、命懸けの仕事をしていくため、それがいやだから、魔導工兵にしない貴族もいる。


 まぁそういう訳で比較的に貴族出の多い魔導工兵は貴族主義の者がチラホラといる。

 チラホラなのはミックのようなそこまで貴族主義ではなかったり、貴族主義が嫌いまたは貴族自体を辞めてまで魔導工兵になった者もいるからである。


 その貴族主義の貴族出の魔導工兵が思うのは「碌に剣術を覚えることの出来ない平民がどっかのよく分からない異国のモンに教えを乞いてやがる」と嫌味ったらしを含めて2人を見ている。


 当の本人たちは1人は能天気に流し、もう1人は気にしていない訳だが。


 実際、貴族主義を掲げたところでそれを容認していない総長に楯突く魔導工兵も貴族もいない訳だから、気にする必要もない。

 一応例外はいるが。


今回は指南しただけでまだ成果を出ていないですね。

出るのかどうかは後々ということで。


神路という宗教は出したですけど、宗教は個人的にはあまり広げたくないので味付け程度かなと思います。

まぁ仮に広げるにしても大分先の事なので神路心祈流という流派があるという程度で覚えて貰えば大丈夫です。


次回からこの章の展開部分に入ります。

普段の仕事にも慣れ、ベレットの修行を進める中、煌夜と同様にベレットの指南役を任されていたミック。

そのミックが最近様子がおかしいと気付く煌夜。

しかし、当の本人に聞いてものらりくらりと躱されていく。

ただ、その理由が何なのかを煌夜は知っていた。

次回、ミックの悩み

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