第2話 魔導鍛冶師
総本部を出た煌夜は寮に戻り、自室に戻った。
「正直収穫と言えるかは分からないけど、一先ず頼まれ事はしないと」
軽く準備をして、寮を出た。
煌夜はセントラルの街を歩く。
普段も会社に向かう際に歩いてはいるが、こういう休みで歩く事は初めてである。
セントラルは連合王国の王都なので魔導工兵の街と呼ばれているが、一般人の方が多い。
そもそも魔導工兵自体が少ない訳だけど。
そして、兵士はちゃんといる。
だだしそれは連合王国兵という扱いになっている。
ここは場所的にはマーシア王国。
厳密にはアングロ・サクソン連合王国唯一の独立した街。
マーシア王国兵や他の王国兵を駐留させず、独自の兵士を持っている。
因みに魔導工兵はリィーズに対する戦力であるため、戦争運用や犯罪者に対する運用は連合王国の規則で禁止となっており、組織は要請されてもリィーズ以外は例外を除いて拒否している。
だから、人への対処は通常通り兵士が行なっており、兵士の採用は魔導持ちではない者に限定している。
セントラルで時々見かける鎧姿の者が連合王国兵。
その役割は他の王国とは少し違い、防衛をあまりしないのである。
セントラルが不干渉地帯というのが連合王国における条約としてあるとはいえ、破らない国がないとは言えない。
そもそも連合王国を造った事で損をしたマーシア王国がその行動をしてもおかしくない。
それを踏まえて連合王国もとい組織は2つのことを行なっている。
1つはセントラルまでの道のりを連合王国持ちにしながらもその場所にある国は免除、そこを通る際の関税を一部渡す。
もう1つはセントラルの連合王国兵には防衛時に魔導が付与されている武器を使用でき、一応威力を抑えた上ではある。
さらに規模の度合いで魔導工兵の投入を検討できる。
これは不干渉地帯の条約に含まれており、この条件で1番得するのは組織ではあるものの、それと同じくらいにマーシア王国が得している。
そもそもセントラルはマーシア王国内にあり、関税を払う必要がなく、他全ての連合王国に加入している国などの関税を一部貰えるからである。
その次からは他の七王国とメリットが下がっていく。
元々連合王国は戦争をするためではなく、リィーズ討伐するための国。
その総本山であるセントラルをその影響にされないようにする必要があった。
まぁ、その影響でセントラルの連合王国兵は治安維持を主にしている。
煌夜の目的地はその連合王国兵と関係のある場所である。
「ここか」
煌夜は見つけた建物に入る。
「いらっしゃい」
女性の声が聞こえた。
奥の店番のところに壮年の女性が立っていた。
「うん?異国の者かい?」
「まぁ、はい」
女性はすぐに煌夜が外国の者だと気付いた。
西洋人と東洋人では顔立ちが違うからだろう。
「ということは魔導工兵という訳ね。それも新人なのかな?」
「そうですね」
煌夜の年齢で個人的に鍛冶屋に来ることは少ない。
そもそも兵士は量産されている武器を使用していることが多く、煌夜の年齢だと兵士は大体その武器を使う。
そして、武器を所有する許可があるのは兵士と魔導工兵、あとは許可されている流浪の者だけ。
しかし、流浪はそうそういない。
まぁそれ以前にここは魔導工兵の街で他国から魔導工兵が来ることもある場所。
魔導工兵と考えるのが容易にできる。
「ここは武器の手入れをするためなのかい?」
「違います。少々こちらの武器を見たくて」
「うん?ここにあるのは特に特徴のない武器ですけど?」
「はい、それで大丈夫です」
周りには様々な武器が置いているが、それは量産品。
急遽必要になる場合や流浪の者たちに向けて置かれている。
鍛冶屋の仕事は王国兵が使う量産武器を大量に作って納品することと特注武器を作ることを主とし、ここに置かれている武器が売れることはそうそうない。
今回は急遽必要という可能性はあっても煌夜は武器を所持している。
修理したいがために来たならまだ分かっても、そういう訳でもなく量産武器を見たいとなれば不思議に思われる。
「まぁそうね。この国の武器を見たいってことかしら」
ただ、他国の人がこの国の武器を見たいということならまだ分かると言ったところだろう。
「そういう訳では…」
しかし煌夜はそういう目的では来ていない。
「なんだ、客か?」
店奥から髭面の男性が出てきた。
「異国からきた魔導工兵らしいわよ」
「そうか。用件は武器の修理か?」
「違うみたいよ」
「なんだ、違うのか。なら、どういう用件だ?」
煌夜は目的を話した。
「お前さんの剣術を教えるために剣を探している…か。その教える相手は誰だ?」
「ベレットですが…」
その名を聞いて頭を抱える2人。
「まーだそんなこと考えてるのか、あの総長は」
「散々やってた気がするんだけどねぇ」
ベレットが出来損ないなことを知っているみたいだ。
「ベレットは魔導の才以前に戦いに好まれてないんだぞ。アイツはアイツなりの仕事を探した方がいいと思ったんだが」
ベレットが魔導工兵に向かないのは組織内のほとんどが思っていることだろう。
別に魔導工兵ではなくとも職員として働いてもいいと思うし、無理して魔導工兵をやる必要はない。
ベレットが魔導工兵をしているのはベレット自身がしたいと思っていることと総長エスラが推薦していることが大きい。
「まぁいいや。それでそのために武器が必要な訳か」
「はい」
「その反りの感じ、片刃か?」
「そうですね」
「となると刀になるか」
煌夜が持つ剣の反り具合で片刃だと分かる。
片刃剣は別名刀となるが、そうなると少々厄介なことがある。
「基本的にこっちの主流は両刃剣で直剣が多いからな。刀だと限られる」
西洋だと両刃剣の直剣が多い。
これは金属のフルプレート鎧に対する叩き斬るということと振り回すということで重宝されている。
それでも刀は存在する。
重さや大きさが大きい両刃剣とは違い、比較的に軽く取り回しのできるようになっている。
さらに直剣だけでなく反った曲剣もある。
それが合うかどうか別である。
「ちょっとお前さんのを見せてくれ」
「渡すことはできませんが」
「剣身をみせてくれらぁいい」
そう言われて煌夜は刀を抜いて見せた。
「これは全く別もんだな。こっちは柄や鞘に装飾を施すことはあっても剣身をここまで綺麗に作ることはしない」
西洋では戦闘重視で大きさや重さに違いがあるが、剣身の特徴はあまりなく柄や鞘に装飾が施されている場合が多い。
煌夜の持つ刀…倭刀は刀身に刃文がある。
刃文は焼き入れ工程により刀身に入る模様。
刀の美しさを際立つ一つの理由だが、これは刀の切れ味や強度を保つためにできたもの。
それが近くあったランプの光に照らされて見えていた。
「こんな剣があるなんて……」
女性は少し高揚してながら見ていた。
「なるほどな」
男性はいろんな角度から刀を見て、結果を言う。
「結論から言えばこりゃあダメだわ」
「ダメとは?」
「多分形として使うのはいいとしてだが、使用目的が違う。これ、片手で振り回すの難しいだろ?」
「片手で扱うことはありますけど、基本的には両手ですね」
「なら、無理だな。こっちの刀は基本的に片手で扱うからな」
そもそも西洋には盾を使う文化がある。
軽い武器に盾を持つことで敵の攻撃を盾で受けた上で攻撃することできる。
それは魔導工兵の中でも持っている者がいるくらいだ。
盾を持たない者は片手と両手を両方使う者やそもそも大きさや重量により両手で使う必要がある。
そして西洋刀は刀身は細く片手で振り回すようにできており、両手で持てるようにはなっていない。
「仮に形だけでもやろうとしても実戦でダメになる。……仕方ねぇ、作ってやる」
「そこまでして貰う必要は…」
「気にすんな。これは俺のためにもなる。異国の武器を作る機会なんてねぇから」
「分かりました。お願いします」
ない物は作るしかない。
ここは鍛冶屋、武器を作る場所だ。
「とその前に自己紹介がまだだったな。俺はここで鍛冶師をしているジェフだ」
「私は店番をしているドロシーよ。ここは私たち夫婦で営んでいるわ」
「僕は煌夜です」
お互いで自己紹介を行う。
「引き続き店番頼んだ」
「えぇ」
「こっちだ」
煌夜はジェフに案内され、店の奥に案内される。
扉の先には倉庫らしき部屋があり、武器が置かれていた。
さらに奥に通されると一度外に出て目の前に2つの建物があり、左側の建物に向かう。
ジェフは両引き戸の片方を開けて、その中に入る。
煌夜もそれについて行く。
石造りの建物でその中は熱い空間になっていた。
「早速取り掛かろうと思うが、同じ製法で全く同じ物を作ることはできん。そもそも製法を知らないからな」
倭刀の製法は特殊。
作ろうと思ってもそうそう作れる物ではない。
仮に鍛冶師でも本場ではなければ作れはしない。
「それでも可能とする方法はある」
「もしかして魔導を使うんですか?」
「うん?よく知ってるな」
「一応これも魔導が含まれているので」
「そうか。とりあえず俺は魔導を使用することできる魔導鍛冶師だ」
魔導鍛冶師。
魔導を使用できる鍛冶師ではあるが、実際のところ魔導工兵と大差はない。
あるのは魔導が鍛冶師よりな点である。
魔導工兵は自身の魔導でリィーズを倒すことができる存在。
魔導鍛冶師は魔導が付与された武器を作ることができる存在。
魔導が付与された武器なら一般人でも小型リィーズなら実力次第で倒すことができる。
ただし、魔導鍛冶師は魔導工兵以上に少ない。
国に1人か2人いるかいないくらいである。
それくらいなら魔導工兵のために作った方が得。
魔導次第で噛み合って実力を伸ばせる。
その魔導鍛冶師が目の前にいるジェフだと言う。
「俺の魔導は『複製』。同じ物の劣化した物を作り出せる。まぁ都合のいいモノではないが、それほど難しくはねぇ」
同じ物を作れる訳ではなく、その劣化版。
性能が落ちる代わりに有能なところもある。
「形や重さだけで複製可能だ。その分、触る必要はあるが」
形と重さでおおよそだけで作り出す。
完璧ではないけど劣化した物を特に時間掛けることなく作り出せる。
ただ、重さに関して実際に触れないと分からない。
それを許可するかどうかは煌夜にある。
「すみません。形だけでどうにかなりますか?」
「うーん、まぁどうにかなるが、その分軽いか重いかになるだろう」
煌夜は断った。
その理由は倭刀は倭独自の刀。
それを真似される訳にはいかないからである。
「例えば幾つかの武器を僕が持って、同じか同じくらいの重さがあったら、それに合わせて貰うのは?」
「確かにそれなら…どうにかなりそうだが……」
正確ではないしろ、同じくらいの重さを他の武器で代用することはできるだろう。
そもそも『複製』は本人の匙加減でおおよそになってしまっている。
それを思えばまぁあまり変わらない。
「分かった、そうしよう」
ジェフは部屋に置かれていた幾つかの武器を取り出して煌夜に一本ずつ渡した。
煌夜はその中から自分の刀と近しい物を見つけ、それをジェフに伝える。
さらにより正確にするためにジェフは再度刀を観察した。
「一応メモして頭に入ったが、どうなるかはできてからだ。連絡は総本部に伝える」
「分かりました。ありがとうございます」
煌夜はジェフに別れを伝え、ドロシーにも伝えて店を出た。
今回は魔導鍛冶師について軽くでした。
正直あまり膨らまなかったなって感じがしました。
因みに魔導鍛冶師は鍛冶師ができるってだけで戦闘も可能。
ただ、魔導鍛冶師は貴重なので組織としてやって欲しいとお願いするほどである。
魔導工兵の街と言われているセントラルは2人がいます。
もう1人が出るか分かりませんが、魔導工兵の武器を作っている人です。
ジェフは一般人が使用できる魔導が付与されている武器を作って役割分担をしている(という現状の設定ですが)。
次回はベレットの修行になるんじゃないかな。
それから数日経ち、煌夜とミックは総本部に申請して休みを合わせ、それにベレットも含むように伝える。
それが許可されて2人はベレットの修行を始めることにした。
次回、ベレットの修行




