第13話 光の神子
攻防を続ける中、現れたのはベレットだけ。
煌夜は一度リィーズを突き放し、一端離れることにした。
「はぁ…ふぅ…」
煌夜は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「ちょうどいいところに」
「大丈夫?コウヤ」
「はい。ですが、そんなに動けないと思います」
煌夜は神懸かりを解き、その影響をドッと受けているだろう。
やれることはサポートすること。
つまりは……
「なのでベレットさんが倒して下さい」
「え?無理無理」
まだ動けるベレットにそれを任せるしかなかったが、ベレットは必死に拒否する。
それもそのはずでベレットはまだ中型を倒したことがない。
同年代ではそういう者の方が多く、倒したことのあるミックが異常なだけ。
しかも、その世代の中で1番弱いと思われているベレットには荷が重い。
さらに目の前にいるリィーズはただ中型ではない。
大型ほどの力を有する中型。
太刀打ちできる訳がない。
それでも煌夜は出発する前に総長のエスラから言われたベレットの潜在能力を期待することにした。
そして、それを導くことこそが【導神】としての役目だと思い、託すことにした。
「何のためにここに来たんですか?」
「わ、私は…コウヤを助けに……」
「そういうことではないです。貴女は何のためにこの村に来たんですか?」
「あ……」
ベレットがここに来た理由は故郷とその村人たちを助けること。
総長のエスラが許可した理由でもあるけど、実際は中型以上とは戦わず、小型だけは戦っても大丈夫というのが許可した中に含まれている。
煌夜としても戦わせるべきではないと思いながらも、ベレットが【主神】になり得る存在と言っていたことを考慮すると決してダメということではないのだろうと判断した。
そして、ベレットにとっては守りたいという想いが自ずと覚醒に至れるのではないかと何となく思った。
「分かったよ」
ベレットは自身の剣…特に特徴のない直剣だ。
『発光』
ベレットの魔導名の《サンシャイン》の能力『発光』を発動する。
それにより剣に光が帯びる。
「はぁぁぁぁ」
ベレットは気迫を持って攻撃をする。
「は!は!は!」
「ど素人だな」
しかし、ベレットの攻撃は尽く躱される。
というか、ベレットの剣術は剣術とは言えなく、流石の煌夜もここまでとは思っていなかった。
「あ……」
ベレットが転けた。
「もういいか?」
リィーズが蔦の先をベレットに向ける。
煌夜はそれを阻止すべく重い体を持ち上げ、低い体勢から駆け出し、蔦を斬る。
斬ったはいいものの、そのままの勢いで前に倒れる。
「ごめん」
「いえ」
ベレットは立ち上がり、煌夜は起き上がるけど立ち上がることはできなかった。
(これだけの技量だから小型しか倒せなかったのか)
ベレットが魔導工兵になってからも苦戦していたと聞いていて、おちょこちょいなところに問題があると思っていたけど、実力が多少どころか、割となかったことに驚く。
(勝てなくてもいいとは言ってもこれでは……)
ベレットが来ても同様に時間稼ぎをすればいい。
討伐隊の人たちが来てくれれば流石に倒せる。
ただどれだけ保てるか分からない。
期待していたベレットがこうでは少々難しい。
(でも、ベレットの潜在能力が本当にあるなら、僕はそれに賭けたい)
その時、太陽の光がベレットに差す光景を左眼だけが捉えていた。
『不浄淘汰』
煌夜は小さく発する。
ベレットが攻撃をしていたが、相変わらず躱されており、リィーズがベレットの剣を飛ばす。
無防備になったベレットにリィーズが蔦の先を向けるのを見てフォローに入ろうとする煌夜。
しかし今度は上手く動くことできなかった。
リィーズが思いっきり突き刺した。
「痛て」
ベレットは横に転けた。
それによってリィーズの攻撃を避けた。
再度攻撃するリィーズだったが、またもベレットは避けた。
その避け方がベレットらしくはあっても転けたり転がったりして少し情けない避け方ではあった。
でも、煌夜からすればそれはリィーズの攻撃を見るもしくは感じて避けていると思い、覚醒は近いのではないかと思った。
あまり動かせない体を動かしてベレットの剣を拾い、ベレットの近くに向かって投げた。
剣は地面に刺さり、ベレットはそれを拾う。
そして、太陽は頂点に差し掛かる時、煌夜の左眼で見ていた光景が右眼でも確認することができ、両眼の見る光景が重なった。
ベレットはリィーズから離れてジャンプする。
全身に太陽の光を浴びて能力を発動した。
『シンボル』
ベレットの体に光は纏まり、剣に纏う光が強くなる。
ベレットが剣を振り上げるのを見て、煌夜は行動を起こす。
『浄火』
自分の能力を発動し、ベレットの剣に火を纏わせる。
すると、光と火が交わり、光り輝く火を纏う。
ベレットはそれを振り下ろす。
「いけぇぇぇぇ!、ベレットぉぉぉぉ!」
『聖火ぁぁぁぁぁ』
ベレットから光り輝く火が斬撃となり、リィーズが植物系の防御をするが、尽く切られていき、リィーズに当たる。
「ギャァァァァ」
リィーズは悲鳴を上げ、リィーズを中心に火が立ち昇る。
リィーズの体(植物)が燃えていき、本体は崩壊していく。
火が収まるとそこにはリィーズの本体だけがバラバラになって落ちていた。
これで終わり……ということはなかった。
「残ってしまった……」
煌夜は知っている。
リィーズは消滅させなければ意味がないことを。
ベレットは全力を出したのか、光が収まって落下してきた。
すぐに落下地点に移動する。
「くっ」
受け止めたはいいものの、元々の神懸かりの疲れがあるため、受け止めた衝撃によりダメージを受ける。
これで2人とも戦うことができなくなってしまった。
「ほんの少し甘かったようだな」
声が聞こえ、バラバラになったリィーズの本体が集まっていく。
「いや、十分ですよ」
『海物』
何処からか声が聞こえ、目の前に水で出来た大きなイカが現れた。
そのイカは足を伸ばしてバラバラになったリィーズの本体を包み込んだ。
「これで……そんな、まさか!」
包み込まれた本体が溶けていく。
「せっかくここまで成長出来たっていうのに。クソォォォォ」
断末魔を上げながらリィーズは消滅した。
煌夜は声のした方に見るとそこにはエーリク隊長がいた。
「エーリク隊長、ありがとうございます」
「2人が保ってくれたから。間に合いました」
実際、2人が保てなかったらこの村はどうなっていたか分からない。
さらにリィーズがどう行動するかも分からないため、方向によってはエーリクとは会わないかもしれなかった。
結果的に2人のおかげでそうはならなかった。
煌夜はエーリクの背後を見ると人がいて、その中にミックがいるのを確認するとその者たちが討伐隊なのだと気付き、あとは任せようと思って眠りについた。
エーリクは指示を出す。
煌夜は自分が、ベレットはダリアに運ぶ流れとなり、村の火事場泥棒などの警戒のため、レオを含む数人が残り、あとの者は拠点に戻ることにした。




