第10話 食料難の回避
翌朝、ウィローが村にやって来るとどこか様子がおかしいと思った。
絶望的なのにそうではないような気がした。
もちろん、討伐隊が来たからというのもあるけど、それだけではない気がしたからである。
そこである光景を見る。
村人が果物を食べようとしていた。
「何をしている?」
村人の手を掴んで口に含むのを止めた。
「何って朝ごはんを食べようとしてたんですが、それが何か?」
ウィローが問い質そうしたが、横から声を掛けられる。
「あれ?ウィローさん、予定通りですね」
そこにいたのは煌夜だった。
「コ、コウヤ、これはどういうことですか?」
「それは簡単な話です。毒抜きをしました」
「え?毒抜き?」
帰ってきた言葉に理解出来なかった。
毒抜きのことではない。
どうしたら毒抜きができるのか分からなかった。
「どういうことか、説明をお願いします」
「はい」
返事をすると煌夜は手のひらに火を出した。
「僕の魔導には『浄火』……不浄を浄化する火を出すことができます。元々腐った物には有効だったので産業廃棄物に対して可能かどうか分からなかったのですが、成功しました」
「それをどうやって証明したんですか?」
「食べました」
「食べたって……体調を崩す可能性があると言うのに……」
「そうしないと信じて貰えないですし」
腐った物なら変色や変形していて、それが戻ることで判断することができる。
しかし、これに関しては見た目で判断できるほど変色や変形はしていないため、危険を承知で実証する他ない。
「ただ、実証したはいいものの、問題も起きまして……」
「問題?」
「はい、そもそも大丈夫だったんじゃないのかって……」
「あぁ、なるほど…ね……」
見た目で判断できないからそもそも危険性はなかったのではと思われたらしい。
「それである人がまだ『浄火』を使ってないのを勝手に食べちゃってしばらくは大丈夫だったんですけど、夜中体調を崩してしまって今は寝て貰っている状態です」
「分かりました。そちらの対応は私がします。案内して下さい」
「こちらです」
ウィローは勝手な行動をしたことに追求しようとしたが、煌夜が善意であることは間違いなく、不確定なために報告できなかったことはあるが、せめて自分が来るまではしないで欲しかった。
そうすればすぐに対応可能だったが、今から考えていても仕方ないと思い、すぐに容態を見るために煌夜に案内して貰う。
ある家に入るとそこにはベレットとその母親がいて、ベッドには男性がいた。
「ベレット?この方はもしかして……」
「お父さん」
ベレットと少し似た顔をしている女性を見て母親だとすぐに気付いたウィローはベッドで寝ているのが父親ではないかと薄々気付きながらもベレットに聞くと「そう」と帰ってきた。
「すみません。お父さんは少々ベレットに甘いので、何処の馬の骨かも分からないコウヤさんを嫉妬というか敵視してしまったようで……」
心配しながらもベレットと母親は呆れていた。
だけど、お父さんの行動が煌夜の証明になったのは間違いない。
「分かりました……」
ウィローも少し呆れながら容態を見る。
「発熱、呼吸の乱れ、鼓動は少し弱い。後は体内がどうなっているかというところだろうか」
「今は安定していますが、吐き気と下痢もあります」
状態としては最悪だろう。
安定というか寝かせることで吐き気と下痢を抑えているという状態にある。
『洗水』
ウィローは水を生み出す。
「これを全身と体内に」
ウィローはそれを全身にかけて、さらに口に含ませて飲ませた。
「これで抑えられるでしょう。ただ治した訳ではないので後でちゃんと診て貰います」
「ありがとうございます」
「ありがとう、ウィローさん」
ウィローの使う『洗水』は洗浄効果のある水を生み出すことができて、リィーズには洗浄し、人には悪いものを洗い流して安定させる効果がある。
「しばらくは待機ね」
「はい」
「了解です」
煌夜たちはこの村で防衛として待機することにした。




