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魔導工兵  作者: 龍血
第1章 光の神子編
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第9話 村と大型リィーズの状況

 

 煌夜はベレットと隊長のエーリクと共に村に訪れる。


 セントラルよりも暗く、火の灯台しかない村には自警団という村人たちが交代制で村を守っている。


 その内の1人がエーリクに気付き、声を掛ける。


「こんな夜更けに何のようだ」


 その言葉には威圧感が込められた。


「私たちはセントラルから来た魔導工兵の者です。現在この付近でリィーズの発生したことを聞きましたので、状況確認のために伺いました」


 対してエーリクは丁寧に教えた。


「リィーズの発生はこちらでも確認済みだ。ただ、アンタらが魔導工兵?って呼ばれる者かは判断できない。それを証明する物があったりするのか?」


 リィーズの発生はどこでも起こり得ることだから知っているけど、魔導工兵については彼らにとっては身近な存在ではないため分からない。

 しかも、仮に証明する物があっても、同様に分からない可能性が高い。


 エーリクはこういう時にどうするべきは熟知しているが、今回はそんなことをしてなくてもいい。


「暗くて見えないの?それとも忘れちゃった」


 エーリクの後ろからひょこっとベレットが顔を出す。


「何を言ってるんだ。知ってる訳が……」

「おい、顔を見てみろよ……」

「は?」


 男性はベレットを見ることなく否定するのに対してもう1人の男性がベレットの近くにある光玉で照らされたベレットの顔を見て、気付かない男性の肩を叩く。


 叩かれた男性は目を開き、ベレットを見る。


「べ、ベレット!?何でここに!?」

「ふふん、お久しぶり」


 誇らしいように男性らの前に姿を現すベレット。


「そう言えばベレットは何年か前に魔導工兵になるって言ってセントラル?という街に行くって言ってたっけ?」


 もう1人の男性が自分の記憶にあるベレットのことに関してのことを僅かながら思い出しながら話していた。


 村人は村とその近隣しか知らないのだろう。

 だからマーシア王国内では近場にあるセントラルはカントゥイド村でも彼らにとっては遠い場所かつ知らない場所という認識をしていた。


「そうそう。だから今日はその魔導工兵の仕事で来たんだよ!」

「分かった分かった、あまり大声を出すな。みんな寝てるんだからな」


 驚いていた男性ももう1人の男性が言っていたことを思い出し、ベレットに声を抑えるように言う。


「昔話は後にして、本題に入らせて貰いたい。ここの長に会わせて欲しい」

「わ、分かった」

「俺が行く」

「あぁ、頼む」


 もう1人の男性が村の中に入り、エーリクたちは残った男性の下、すぐのそこにある守衛室で待っていることに。


「そう言えば君は不思議な格好をしているな」

「詳しい話は今回と無関係なので話せませんけど、僕は別の国の者です」

「そうなのか。俺らにとっては無縁と思っていたが、村の外には多くの文化があるんだな」

「文化は独自発展や流れたことによる文化の合体と進化が起こります。この村にも村特有の文化があるはずですね」

「うん!あるよ!」


 男性と煌夜の会話にベレットが割り込んでくる。


「済まないが、今は無理なんだ……」

「え?」


 男性は事情を話し始める。


「この村は森と近いこともあり、そこで育つ多種多様な食べ物がある。それを街や偶に来る商人に売ったりしてるんだが、今はさっき話してたリィーズのせいで森は立入禁止。現状森の中がどうなっているか分からんから仮にリィーズを討伐してもあるかどうか分からん」


 カントゥイド村は一応自給自足の生活をするために農業やちょっとした畜産を行なっているもの、森にある食べ物で利益を出している。


 利益が出るということはここが田舎でも街や商人から生活必需品を買うこともできる。


 ただ今はリィーズの影響で森に入ることができず、利益が出るどころか、何だかんだで自分たちの食料にもなっていたため、農業における蓄えがあるとはいえ、長くは保つとは思えない。

 まぁまぁ深刻な事態ではあった。


「そうなんだ……」


 ベレットはがっかりしたように肩を落とした。


「でも、貴方達が倒してくれれば元に戻るってことだろ?」

「そうですね。とりあえず状況確認してから事を運びますので」

「よろしくお願いします」


 待っている間話していると、守衛室の扉が開く。

 そこに居たのは20代くらいの女性。


 しかし、挨拶しようとしたエーリクよりも早くその女性に気付いたベレットが驚きの言葉を口走る。


「お母さん!」

「あらあら、ベレットがいるって聞いてたけど、本当に帰って来てたのね」


 ベレットが言うには母親らしい。

 確かに顔立ちは似てるけど、どちらかと言うとお姉さんの方が合ってそうだ。


 その光景を見ていたエーリクと煌夜は驚いていた。

 それでもエーリクはすぐに仕事モードに戻る。


「コホン。えぇ、ベレットさんの母親でしたか。その方が何故ここに?」

「済みません。村長はお眠りになっていまして、代わりにその娘の私が来た次第です」


 またまた驚きの事実。

 ベレットの母親は村長の娘らしい。

 つまり、ベレットは村長の孫ということにもなる。


「なるほど。それで話はどちらへ?」

「はい、ついて来てください」


 守衛室から全員出る。


「2人は引き続き警戒をお願いします」

「「はい」」


 男性は元いた場所に戻っていく。


「護衛は大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。ベレットが信頼してる人なら問題ありません」

「そうですか」


 ベレット以外は他所者。

 それなのに護衛をつけないのはベレットがいるからだと言う。


 ただエーリクからすれば護衛がいるの方が何か起きた時にベレットの母親を瞬時に守ることができる。

 まぁ、ベレットがその役目を持たせているのかもしれない。



 周りの家は2階建ての木造建築。

 街では石造建築が多い中、少し珍しくもある。


 その中で1階だけの大きな家に案内された。


 中に入ると円卓の机に椅子が並んでいた。


「ここは集会をする場所です。普段はそう使うことはありません。こちらにお座り下さい」


 案内された椅子にエーリクと煌夜が座る。


「貴女はあっちよ」


 ベレットは母親の方に行こうとしていたが、今回は魔導工兵として来ている。

 それを分かっていて母親は2人の方に行かせる。


「ベレット、今回は魔導工兵として来ています。帰省に来た訳ではありませんよ」

「は〜い」


 ベレットは大人しく煌夜の隣に座る。


「では話を聞きましょうか」

「はい」


 母親は経緯を話す。


「先程お聞きしたかもしれませんが、私たちは森に行って食べ物を採取してくることがあります。そのため、森に行くことは頻繁にあり、一昨日も同じ目的で森に入って行きました」


 一昨日。

 エーリクたち討伐隊はすぐにここに着くことができたが、村人が直接または手紙という形で報告しようと思ってもすぐには届かない。

 仮にその期間が一昨日の昼頃から今日の昼頃なら2日ほど掛かってしまった計算になる。


 因みに今日の昼頃の計算なのは報告を受けて討伐隊のメンバーに通達や準備を考慮しての計算だからである。


「森の浅いところでは特に異常なく採取することができたのですが、深くなっていくにつれて荒れているのを発見したそうです」

「因みにどのように荒れていたのでしょうか?」

「枝が折れていたり、果物は歪に落ちていたり、地面の草や山菜は踏みつけられたよう潰れていたり、あまつさえ木がへし折られたりしていました」

「なるほど、森の被害は相当のようですね」


 事前に大型という情報がなければその状況は恐怖でしかない。

 特に彼らにとっては相当なものだろう。


「元々リィーズの確認はされていますが、それでも小型か中型。木がへし折られるなんてことはありませんでした」


 そもそもリィーズは小型と中型が主流で大型、特に超大型は滅多に発生しない。


 村人たちにとっては中型でさえ人生で一度や二度見掛けるかどうかで、その者たちが大型の話を聞いても眉唾物でしかない。


「そこで彼らは採取をやめ、1人を報告のために村に帰して、危険と思いながらも調査をすることにしたそうです」


 当時そこにいた者たちはあまりそういう状況にあったことがないから、被害状況とその原因を調べることが村のためになると思っての行動だろう。

 場合によっては村にも影響する可能性があると思ったのもその一つ。


「調べていくうちに被害は大きいと確認が取れ、途中から切り開いた場所に出たのです。そしてそこにいたのがリィーズと思わしき生物でした」

「思わしきということは判断が難しかったのですか?」

「はい。先程話したようにこの村ではリィーズの遭遇はそう多くはありません。さらにその姿形はリィーズの特徴と良く合っているモノが多いです。ですから、それ以外の種類に関して無知なのです」

「埃や塵といったゴミから発生するのはダスト。それを多く見掛けているということですけど、逆に言えば今回のをリィーズと判断するのは難しいと思われますが……」


 実際、リィーズにはダスト以外にも腐った物から発生するロットンがあったりするが、実は種類を多さを出しているのはこの2つではなかったりする。


「『ゴミは単なる源でしかない』と聞いたことがあります。なので、リィーズの特徴がありながらも別の見た目をしているリィーズは存在していることは村の中でも知っている者はいます」

「なるほど、それは合ってます。問題なのは『ゴミ』にしてしまうこと。そしてそれが複数の物から合体して発生するキメラという名前のリィーズなのでしょう」

「キメラ?」

「2体もしくは複数の個体が1つの体を持つ存在のことです。中型から見られる存在で発生率こそ低いですが、その反面種類が多いのが特徴と言えるでしょう」


 リィーズは大きく分けて3つでダスト・ロットン・キメラ。

 ダストは最も確認され、リィーズという名を付ける由縁にもなった存在。

 ロットンは別種という扱いを受けながらもダストの進化した状態とも言われているが、その答えは出ていない。

 この2つはゴミから発生したリィーズという位置付けを持っている。

 対してキメラは中型以上という制限はあるものの、長年の研究で源はゴミというのが分かったのはいいが、ゴミと別の物が合わさってリィーズになるのか、ダストやロットンから別の物をくっ付いていき、キメラという別種なのかは分かっていない。

 しかも、別の物は限度はないため、種類もその都度増えてしまう。

 一応枝分かれ方式で種類分けはしている。


「そうなんですね。確かに聞いた話と一致します」

「どんな感じだったんですか?」

「埃があったり、ドロドロした物も見受けられましたが、体を構成する大部分は木を主にした植物でした」

「植物系ですか……。それほど苦労するほどではないですが、問題なのはドロドロした物がなんだろうか…でしょうか?」


 キメラの中で動物系や植物系は火に弱い傾向があり、リィーズも火が弱点で魔導工兵の魔導もそれに関係して火系が多いから、キメラの中では楽な方ではある。


 ただエーリクが気になるのはリィーズの体を構成する一部が気になるらしい。


「ドロドロした物に何か?」

「これは貴女方とは全く無関係で被害に遭わせてしまっていることなのですが、多分それは産業廃棄物という物です」


 産業廃棄物。

 それは工業から排出される処理の難しいゴミのこと。

 人間や動物、自然にも影響する物だから扱いも慎重にやれないといけないが、魔導工兵の仕事はこの産業廃棄物の処理も行っている。

 とは言っても産業廃棄物の処理可能な魔導持ちは限られているため、処理しきれずに廃棄してしまっている可能性がある。


「それが森にあるということはそこにある植物はダメになっているかもしれないので、ここ数日で採取した物は遠慮していた方がいいと思います」

「え?」


 それを聞いて青褪める母親。


「もしかしてもう病気に掛かってしまった方が?」

「いえ、一応備蓄があり、古い物から食べているため大丈夫ですけど、ただ備蓄は個々の家庭で違いがありますので、混ざっていたりするところやいつからの物かまでは分からない状態になっているのです」

「それは困りましたね」


 この問題は魔導工兵の仕事ではないが、討伐隊はこういう機会が偶にあるため、エーリクはこの対処法はない訳ではない。

 あるとすれば備蓄がどれくらい残るのかという話である。


「因みに水分はどうしてますか?」

「果実水や果実酒など果実から作った飲み物が多いです。なのでこれも危険性があるかもしれません」

「そうですか。とりあえず水分確保はすぐに解決できます。食料に関しては時間を要しますが、支援できますので備蓄の整理をお願いします」

「分かりました」


 問題は多いけど、とりあえずはリィーズの討伐をしなければ後に影響する。

 この状況では村人の衛生面を確保しつつ、リィーズの討伐をする必要がある。


「ベレットとコウヤは拠点に戻った後、荷物を村に運んでそのまま残って協力してあげて下さい。明日から討伐まで間は村の護衛に徹し、何かあればこちらから連絡します」

「分かりました!」

「了解です」


 荷物は食料や水。

 元々食料は余分にある。

 討伐に難航した場合の余分である。

 水に関してはウィローの魔導による水生成が可能。

 それを運ばせて、そのまま協力という名の待機命令。


 一度拠点に帰り、拠点作りの手伝いをしてそこで就寝。

 その後で村で待機だったので前倒しになっただけ。

 それに2人は追加要因なのでそこに問題はない。


「最後に現状どのようにしているかを教えて下さい」

「はい。知って通り私たちにはリィーズと戦える人はいません。なので森には立入禁止、リィーズの警戒を強めるために人を増やし、一応いつでも逃げれる準備はしてありますが、こちらとしてはここを手放しくはない状態にあります」

「そこら辺については仕方はありませんね。ただ、逃げる際と逃げた先の住処についてはこちらはどうしようもないので、そちらでどうにかして貰うしかありません」

「はい。それはそうですね」

「一応ベレットとコウヤには逃げる際にも同行させますが、2人には大型のリィーズに対してはあまり攻撃せずに防御に徹して貰うつもりです」


 元々2人は正規メンバーではなく追加メンバー。

 大型との対面は想定していないため、基本的に守りに重点を置かせている。

 しかも村人を守りながらなら攻撃はするものではない。


 因みにこういう住民が避難しなければならない状況にあった場合は先遣隊ではウィロー、その後に来る本隊が合流後に2、3人と交代して守るようにしている。


「このくらいですかね。私たちは拠点の方に戻ります」

「ありがとうございます」

「いえ、これも仕事の内です」


 全員が立ち上がる。


「コウヤさん?もよろしくお願いします」

「はい、自分も仕事なので精一杯やらせていただきます」

「ベレット、また後で」

「うん」


 全員が集会所から出て、ベレットの母親と別れる。


 3人は村を出る際に先程あった守衛の男性2人に挨拶をして急いで拠点に戻る。


 拠点に戻ると拠点作りはしていたけど、そろそろ終わりそうな段階でいた。


 3人が戻って来たのを確認したウィロー、スカーレット、ミックが手を止めてこちらにやって来る。


「隊長、状況は?」


 ウィローが聞く。


「リィーズに関してはキメラであることは分かりましたが、現状がどうなっているかは分かりません」

「この森はまぁまぁ広いので足止めになっている可能性があるかもしれません」

「全部倒されると困りますが、現状では助かりますね」


 ここら辺に限らず、大体の場所では開拓や人口増加による街の発展の影響で木の減少傾向にあった。


 この森は果物や山菜などが採れる場所なため、その影響は薄かった。

 なのでそれなりの広さがある。

 リィーズも動くならそれは邪魔になり、倒して進むことになるが、それも限度があるため猶予はない。


「それよりも問題なのは村人の食料と水です」

「何があったんですか?」


 エーリクは村で聞いたことを話した。


「なるほど、水に関しては私がどうにかしますが、食料に関しては分けても多少賄えるだけですよね?その辺はどうします?」


 村の食料難を自分たちの備蓄から分け与えることでどうにかしようとしているが、仮に6人の2日分渡しても村人全員でどれくらい保つか分からない。


「現状はそうするしかありません。至急セントラルに戻り、援助して貰えるよう頼む必要がありますので、翌朝本隊にいる副長が来るまではウィローに指揮権を渡します」


 討伐隊は隊長のエーリク、本隊を任せている副長、そして後方支援の長のウィロー、本隊側にいる後方支援の副長的立場にいる人がいる。

 討伐隊の指揮権はエーリクにあり、その次が副長、ウィロー、後方支援の副長に流れていく。


 現状ここにはエーリクとウィローしかいないため、エーリクがいなくなるとウィローに指揮権が渡り、副長が来たら副長に指揮権を渡すことになる。


「副長が来たら予定通り2人のサポートに移って下さい」

「了解致しました」


 その後、スカーレットとミックが拠点作りを再開。

 ウィロー、ベレット、煌夜は村に渡す食料と水を用意してベレットと煌夜は先に村に向かった。


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