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心にもない心無い事

作者: 黒楓

月曜真っ黒シリーズです。

 祥月命日からちょうど3日後


7月最後の日


私はこっそりと彼のお墓へ向かう。


 白いワンピースにオフホワイトの麦わら帽子、その上に更に日傘を差したのは、何もかも焦がす勢いの日差しを避けるだけでは無い。


万が一でも、この姿を見咎められる事が無い様にする為だ……




 4年前の7月28日に“彼”は亡くなった。

彼自身の頬やくちびるを染める代わりに……自宅の天然大理石の浴槽を薔薇色に染めて……


誰にも知られてはいない事だけど、私は彼を死へと誘った(いざなった)カミソリそのもの。


 私は自分の心を掘り散らかしてできた“穴”に心にも無い残虐な言葉を移植し、毒花を咲かせ摘み取って、彼にその花束を押し付けた。


それら“心無い言葉”達を彼にぶつけたのは、私の事を『薄汚い売女』と思わせ、蔑み吐唾させる為だったのに!!


その言葉達のせいで……


誰もが魅了され誰もが恋焦がれる、この世に二つとない絢爛にして馥郁と薫る“花”は……


あまりにもあっけなく自らを折り取ってしまった。



まさかの知らせを聞いた私はすぐさま自死を考えたが

私の穢れた血で彼を汚す事などできるはずも無かった。




 お墓へと至る道は……芝が敷き詰められた斜面伝いにゆっくりとした弧を描いている。


 一昨年まではここは整備されていない山道で、ヤマユリの白い花があちこちに立ち、訪れる者を芳しい香りで出迎えていた。


 その斜面に芝が敷き詰められるまで、元あった茂みは何度となく伐採され、とうとうヤマユリもその息の根を止められたのだ。

ヤマユリには何の罪も無いのに……



 ピカピカの墓石に打ち水をすると、それを弾き飛ばすように陽射しが跳ねる。

彼の魂を少しでも慰める事ができたらと買い求めたヤマユリの花束を供えお線香に火を点ける。

薄紫の煙が立ち昇ったら私は墓前に土下座する。


下へ下へと流れゆく水が白いワンピースを泥に染める様に


排水口のコンクリートを割って生え出て来る醜悪な“雑草”は……

今この時も焼き付く日差しに身を晒している。



なかなか思いつかず短くてスミマセン<m(__)m>




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― 新着の感想 ―
[良い点] 一体、何があったのでしょう。 彼の気持ちを想うとやりきれないですが、本当に愛していたのですね。 どうか、安らかに。
[一言] ……せつない、せつないですなぁ  “彼”は自分を「嘘で塗り固められた紛い者」と自嘲自己嫌悪し続けていたのかもしれませんね。だから、主人公に本気になってしまった、それ故の絶望だったのか、と。…
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