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第60話 赤々とした日常

    *


 この村は上から見てみると丸い円形の形をしており、内側を村人の居住地、外側を農業地と割り振っている。


 農業地では野菜、果物、香辛料、ハーブを作っており、その種類は様々だ。


 そして今僕達は農業地の果物を作っている場所に訪れていた。


「綺麗な景色ですね」

「そうだね。樹がに実ったりんごがとても綺麗だ」


 何本も植えてある赤々とした高い樹の道を歩きながら周りを見渡していた。

 そろそろ寒くなる季節、りんごが一番美味しい時期だ。


「あれ? サミーとシアーちゃんだ」


 カゴを背負った耳の長いエルフの青年が僕達を見つけて話しかけてきた。どうやら彼はりんごの収穫をしているようで、カゴの中には沢山のりんごが詰まっていた。


「おはございますカムラさん」

「おはようシアーちゃん。今日も元気そうだね」

「はい」


 人口の少ないこの村では全員が顔見知りだ。毎日のように道ですれ違うし、毎日のように挨拶を交わしている。


 そんなエルフの青年…………りんご農家のカムラさんはニッコリと笑った。


「それで、どうしてここに?」

「ラルさんから聞いたんですよ。そろそろ美味しいりんごが実ってるだろうって」

「あーなるほど、ラルさんか! じゃあさっそくりんごの収穫、手伝ってくれかい?」

「はい」


 そうして僕達はカムラさんのりんごの収穫の手伝いをすることになり、収穫用のカゴを借りて、沢山のりんごが実る樹々を歩いていく。


「いいかい? 赤くてツヤのあるりんごを選ぶんだよ。逆にシワのあるヤツはダメだからね」

「わかりました」


 そう言って慣れた手つきでりんごのツルをハサミで切った。

 シアーも続くようにハサミで切ろうとするが、身長が足りなくてハサミがツルに届かなかった。


「あー、持ち上げるからバンザイしてね」

「う……はい」

「ははは、シアーちゃんは小さい樹でやろうか」

 

 カムラさんの指導は的確で、背負ったカゴの中がすぐにいっぱいになった。


「ふー、お疲れ様。かなり早く終わって助かったよ」

「疲れました…………」

「ほら、水だよ」


 収穫を終わらせた僕達は果樹園の外で一息吐いていた。


 傍らにはりんごがいっぱいになったカゴが三つ、およそ50個ほどのりんごが並べられていた。


「よし、それじゃあ手伝ってくれたお礼に何個かりんごをプレゼントしようか!」

「お、ありがとうございます!」

「りんご楽しみです」

「見繕うからちょっと待っててくれよ〜」


 そう言って何個かりんごを選別して、麻の袋に入れていく。

 その光景をシアーは待ちきれないという眼差しで見つめていた。無表情だが。


「よーし、こんなもんかな。はいりんごだよ」

「ありがとうございます」


 先程カムラさんは何個かと言っていたのだが、十個以上のりんごの詰まった麻袋を渡してきた。相変わらず気前が良いなぁ。


「サミー、一個ここで食べても良い?」

「うん? いいよ」

「やった」


 そう言ってシアーは麻袋の中に手を入れて一つの小さなりんごを取り出した。そして迷うことなく他のより()()()()()()()()りんごへ思いっきり齧りついた。


「す、酸っぱいです…………」


 そうして涙目になりながら彼女は齧ったりんごを見せつけた。


「ははは! そいつはとびっきり酸味が強いヤツだからな!」

「シアー、すごい顔になってるぞ」

「ーーーーッ!!」


 笑っている僕達にシアーはぷっくりとほっぺたを膨らませたのだった

 こうして、のどかな村の午前が過ぎていった。

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星空を見上げれば〜私達は星々の夢を見る〜 短編の近未来ファンタジー百合小説です。 本作品と併せてお読みいただけると嬉しいです。
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