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第49話 過去の試練

これは過去の出来事、すでに過ぎ去った物語。

まだ平和だった頃の思い出、悲劇の前日譚。


少年達に巻き起こる一つの出会いと別れの物語。

これは誰しもが通る試練であり、宿命なのだ。それを乗り越えた先には何があるのだろうか。

わかりづらい? まあ一言で言えば『過去編』というやつさ。

   

    ✳︎


「あったぞ! これじゃないか!」


 鬱屈した林の中、ライングが赤い一輪の花を指差した。


 その声を聞き、探し物をしていた僕とシオンはライングの元へ。


「確かにその花が頼まれていた物ね」

「よし、採取して戻ろう」


 そうして僕達は花を採ってアローグン王国に戻るために歩き始めた。






    ✳︎


 周りの冒険者達は酒を飲み、肉を食い、大きな声で語り合っていた。そんな喧騒という言葉が似合うこの場所、大衆酒場『剣のより所(ソーレスト)』に依頼を終えた僕達は居た。


「やっぱり薬の素材集めだけじゃ物足りないぜ!」


 そう言って水を飲むライング。その様子は遊び足りない子供のようだ。


「仕方ないわよ。私たちはまだまだ駆け出し。大きな依頼は受けられないわ」


 上品な仕草でサラダを食べながらシオンは応えた。


 冒険者試験から二か月。僕達、青い空(ブルースカイ)は素材集めなどの小さな依頼をコツコツとこなしていた。


「でもよぉ、やっぱり魔物の討伐とかやりたいぜ」

「そういった大きな依頼は他のパーティが持っていってしまうからね……」

「はぁ〜、やるせないぜ!」


 そうしてライングは不貞腐れるように机にへたり込んだ。


 確かに今は地味な依頼ばかりだろう。しかし僕達には実績が足りないのだ。まだ大きい依頼は受けられないだろう。


「お兄さんたちどうしたの?」


 ふと、小さな子供が僕達に話しかけてきた。

 ライングは顔を上げ子供を見ると笑顔で返した。

 

「ハハハ、ちょいとだらしないところを見せちゃったかな?」

「私達は依頼を終わらせてご飯を食べているのよ」

「へー、そうなんだ!」


 子供はシオンの返答を聞いて二パッと笑顔を浮かべる。


「ということはお兄さん達は冒険者なんだね!」

「おう! 俺達は青い空(ブルースカイ)っていうパーティを組んでるんだぜ!」

「すごいね! なら」


 そう言って子供はポケットから何かを取り出してテーブルの上に置いた。


「はい! これあげる!」

「え? これは、」

「じゃあね!」


 子供は僕の疑問の声から逃げるようにこの酒場を去って行った。それにしても逃げ足が早すぎるぞ。


「行っちゃった……」

「それでこれは何?」


 それは一通の封筒だった。紙はかなり上質であり緑色の鼠の紋章が刻まれた封蝋が押されていた。


 シオンが封を開け中身を取り出して見ると、そこには一枚の紙があった。


「これは……依頼書?」


 一枚の紙、それは冒険者ギルドが発行している依頼書の写しだった。


 依頼内容は極めてシンプル。『魔物の討伐』だ。






    ✳︎


 次の日の朝、僕達はこの依頼書のことを知るために冒険者ギルドに向かった。


「この依頼書について教えていただけませんか」


 受付の女性に子供から貰った依頼書を見せる。その依頼書を見て女性は少々驚いた様子だった。


「あら、この依頼は……」

「何かありましたか?」

「これは三日後に破棄する予定の依頼なんですよ」


 そうして依頼の詳細が語られる。


 この依頼が出されたのは三か月前、『村に出没した魔物の集団を討伐して欲しい』というものだった。


 依頼内容自体はそれなりに経験のあるパーティーなら簡単にこなせるようなもの。しかしこの依頼の村の場所が問題だった。


「この街から山と湿地帯を超えた先にある秘境なんですよ。その上、小さな村なので報酬の額も少なくてですね」


 一応ギルドから最低限の報酬が支払われるが、それでも過酷な道のりを進むことに比べると少ない金額、つまるところ『割に合わない』ということだ。


 そうした理由からこの依頼は冒険者から避けられてしまっていたようだ。


「それで三日後に依頼受諾者不在ということでこの依頼は破棄する予定なんですよ」


 受ける人が存在しない依頼をギルドが置いておく意味は無い。村の人達には可哀想だがこれも仕方のないことなのだろう。


 さて、唐突だがここでライングとシオンの表情を見てみよう。


「秘境かぁ……!」


 ライングは秘境という言葉に興味津々に水色の眼を輝かせている。昔からこう言った話には目がないやつなのだ。そのおかげで僕とシオンも苦労している。


「この場所って確か........」


 一方のシオンは何か考えごとをしている。呟いている内容から察するに依頼の場所が何か特別な場所なのだろうか。


「それで、この依頼どうするの?」


 言ってしまえばどこの誰ともわからない子供から貰った依頼書だ。怪しいからあまり受けたくないのが僕の本音だ。

 しかし。


「行こう! 冒険者として困ってる人は見過ごせない!」

「私も賛成よ。少し気になることができたわ」

 

 二人の賛成によりこの依頼を受けることが決まった。

 この世は多数派が勝つのが道理、ああ無情なり。


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星空を見上げれば〜私達は星々の夢を見る〜 短編の近未来ファンタジー百合小説です。 本作品と併せてお読みいただけると嬉しいです。
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