第47話 下船
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部屋を出ると、シアーとネックが扉の前で待ってくれていた。二人は出てきた僕を見て、何かを察しているのか話しかけて来ない。
「シアー」
「はい」
「準備をしてすぐにここから発つぞ」
「…………はい」
もうここにはいられない。いや違う。もうここにはいたくない。僕は早足で自身が寝ていた部屋に戻って身支度を整える。
「旦那……大丈夫ですかい?」
準備中、ネックが心配そうに重い口を開いた。
おそらく僕の身体のことを聞いているのだろう。
「大丈夫だよ。昔から身体は頑丈だからね」
「旦那の身体についてじゃありやせん。バラの姉御に会った時のことです」
「…………大丈夫だよ」
あしらうように言い放ちながら準備を終え、立ち上がり荷物を見た。
愛用の剣、僕とシアーの服、水筒、そして冒険者資格。うん全部ある。
「シアー、準備できた?」
「はい。元々荷物はそこまでありませんので」
「それじゃあ行こう」
そして僕達三人はこの家から出た。
家を出ると、そこは暗い路地だった。明かりの見える方に歩いて行くと樹木が生い茂る港の景色が映し出された。
ディエルクほどではないがそれなりに活気のある小さな港には耳長族の姿が多く見受けられた。
ここはエルフ達が暮らす自然あふれる緑の島国『フェリアル』。紆余曲折あったが僕達はようやくこの地に辿り着いた。
「ネック、出口まで案内してくれるか」
「はい。付いてきてください」
ネックの案内の元、僕とシアーは小さな港町を歩いて行った。
人が少ない静かな港を歩きながら周りの景色を堪能する。
「良い匂いですね」
「あぁ、これはハーブの香りだな」
この『フェリアル』という国はハーブや野菜などの植物が有名で品質の高い品は他国で高値で取引されている。
そのせいかこの港は植物の香りが漂うらしい。
「着きました」
そうして港の出口に到着した。
「…………本当に良いんですか」
「あぁ、バラによろしく言っておいてくれ」
心配そうな表情をするネックに下手な笑顔で答えた。
これ以上ここにいると自分の心を抑えきれなくなってしまいそうで、一刻も早くここから、バラの元から去りたかった。
「…………わかりました、シアーちゃんも元気でね」
「はい。ありがとうございました」
ネックに笑顔で別れをし、僕達は港の門を潜り緑に囲まれた草原へ降り立った。
青々とした緑色の海、その先の果ては未だ見えない。
「サミー、これからどこに行くんですか?」
「そうだな…………森の方に行ってみようか」
そうして僕達は樹の生い茂る森に向かって歩き出した。
新たな出会いと別れが訪れることも知らずに。
これにて第四章『旅立ち、そしてバラ色の出会い』は終わりです。
ここまでご覧いただき誠に有難う御座いました。
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それでは今回はこれにて、次のお話もお楽しみに。




