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ブルーコリーハート〜異世界転生した僕の青い物語〜  作者: ジョン・ヤマト
第四章 旅立ち、そしてバラ色の出会い
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第42話 VS青海のドン

    *


「全員戦闘準備だ! ネックはすぐに船を動かせるようにしろ!」


 親玉ウツボを見るや否や指示を出し剣を抜く。そして急いで親玉ウツボのいる船尾の方へ駆け抜ける。


 しかし眼前の敵はそんな悠長に待ってくれなかった。


「━━━ァァァァ!」

「危ない!!」


 親玉ウツボは船を噛み砕こうとその大きな口を開き船に迫った。


 まずい。そう思うと同時にサミーは駆け抜けながら魔法の詠唱を紡いだ。


「"水よ、撃ち放て!"」


 手を前にし慌てたよつに水魔法を撃つ。


 放たれた水の塊はウツボに命中しその巨大な身体をのけぞらせた。ギリギリだったが、ウツボの顎が船を噛み砕くことは無かった。


 そして船尾に到着したサミーは親玉ウツボの正面に対峙した。しかし。


「━━ァァァ」

「━━ァゥァァ」

「━━ァァ」

「…………クソッ」


 一昨日襲ってきたウツボが五体、すでに船へ侵入してしまっていた。そして目の前には親玉の超巨大ウツボ。船員達もサーベル片手に応戦しているがこの急な状況に対応が遅れている、まさに絶対絶命。


 幸いにもこれ以上数は増えなさそうだがそれでも危険な状況に変わりは無く、早急に解決しなければいけない。


 そう思いサミーは大きな声を張り上げた。


「聞いてくれ! 僕は目の前の親玉の相手をする! 他は手下を! ネックは急いでこの船を動かして、バラとシアーは船首の隅に隠れていてくれ!」

「「「「「了解!!」」」」」

「あいよ! さ、嬢ちゃん」

「は、はい」


 船員達は二人一組で手下のウツボに応戦、ネックは急いで操舵輪を握りしめ船を走らせる準備をした。バラはシアーの手を引きながらウツボに見つからないよう姿勢を低くして移動し始めた。


 良かった。急な指示だが、全員冷静に行動を始めてくれたようだ。


 さて、目の前の親玉ウツボは先程の水魔法を喰らって怒り心頭のようで、サミーに向けて敵意を募らせている。このまま引きつければ船の被害を抑えることができるだろう。


「━━━ゥゥ……ァァァァ!!」

「来い、僕が相手をしてやる」


 サミーが剣を突き出しながら声高々に開戦の鐘を鳴らす、と同時に強い風が吹き船が動き始めた。


 徐々に加速を始めた船は親玉から逃げるようにして暗礁地帯の中へ突入した。親玉ウツボも逃すまいと身体を起こしながら船を追い始めた。


「おっと……」


 ガンという衝撃音と共に船が揺れた、だが問題無く戦闘は可能だ。


 サミーは手始めと言わんばかりに魔法の詠唱をし、言葉を紡ぎながら指で空をなぞる。


「"ハイドロブレード!"」


 そう叫ぶと同時になぞった場所から水の刃が噴射された。


 一枚、二枚、三枚。鋭い水の刃は親玉ウツボに真っ直ぐ向かい緑の肌を切り裂く。が、その攻撃は表面の肌しか傷を付けられなかった。


 その頑丈な肌に思わず固唾を飲んだ。


「なっ……」 

「━━━ァァァァ!」


 そして敵もやられるばかりでは無い。

 親玉ウツボは暗礁地帯にある岩を尾びれで壊して船に向かって弾き飛ばした。無数の大きな岩が船へ降りかかる。


 だがサミーの対応は早かった。


「"水よ、盾となり我らを守りたまえ"」


 そう魔法を詠唱しながら甲板に左手を翳した。すると船を覆うようにて水の防御壁が現れた。水の壁は降りかかる岩を受け止め、そして滑るようにして海へ落としたのだ。


 これも、さっきの魔法も仲間(シオン)の真似事だ。だがそれが今はこうして役に立っている。

 

 水の壁を解除したが攻撃の手は緩めない。サミーは再び言葉を紡ぐ。


「"ウォーターカノン!"」


 そして手から繰り出される半径3メートルの巨大な水の塊。その津波のような衝撃が親玉ウツボを襲う。


 親玉ウツボは思わずその巨体をのけ反らせるが、それだけだった。津波のような衝撃でも親玉ウツボの歩みを止めることは出来ない。


 そして攻撃を受けた親玉ウツボの大きな口が船に襲いかかる。強靭な顎、あらゆる物を噛み砕くような大きな牙が船に迫った。


 だがサミーは冷静だった。両手で剣を前に出して迎撃の構えを取った。そして親玉ウツボの大口が目の前に迫ると。


「ハァッ!」


 という掛け声を上げグサリという小さな音と共に親玉ウツボの喉元に剣を突き立てた。鋭い突き、そして神の力を持った強力なパワーは親玉ウツボの顎を受け止め喉元を貫かんとした。

 だが、剣は硬い肌を貫くことは出来ない。肌の表面に傷を付けただけだった。

 

「…………チッ」


 このジリ貧の状況にサミーは思わず舌打ちしてしまう。


 硬い、硬すぎる。この圧倒的な防御を貫くことができない。果たしてこの超巨大なウツボを倒せるのか。サミーには一抹の不安が過った。


 その後もサミーが攻撃し、親玉ウツボが喰らう。そしてウツボが反撃しサミーが対応する。そんなどうにもならない戦闘がこの狭い船内で続いた。


「…………」


 周りを見回し考える。

 目の前の親玉は生半可な攻撃では倒せない。強力な一撃が必要だ。


 そして時間が無い。今はこの親玉ウツボから逃げるためにこの暗礁地帯の中、無理に船を走らせている。その影響か時折ガンッという嫌な音が聞こえて来ており、甲板にも水溜まりが目立って来ている。


「ネック! あとどのくらい持つ」

「十分持たないぞ! 早くしてくれ!」


 焦るネックの様子に船の限界が近いことを確信した。

 このままでは船が沈没してしまう。それに手下のウツボと戦っている船員達の体力の限界も近づいている。

 このどうしようもない状況を切り開くために必要なのは。


「一気に決める……」


 『捨て身』の覚悟が必要だ。

 あの親玉ウツボを倒す一撃。自身の限界を超えた一撃が必要だ。


 サミーは左手を胸に当て目を閉じた。


「"水よ、魂を震わせろ 一切合切の力をこの一撃に託し憂鬱とした雨空を照らす"」


 それは一種の祈り、一種の決意。『僕は全力でやる』という誓いだ。そして右手に持った剣に体内の魔力を込める。


 瞬間、剣は青々とした輝きを放ち、厳かに煌めく。飛沫を上げる剣に込めた思いは一つ。


「こいつを斬り落とす」


 そうしてサミーは親玉ウツボに向かって飛び上がった。


 飛び上がると同時にすぐさま近づく。目の前には大きく見開いた瞳がサミーの身体を写し出した。


 一方の親玉ウツボは無謀にも近づいて来た獲物を捕食しようその大きな口を開く。


 両者の距離が1メートルに迫り、お互い必死の一撃が放たれた。


「━━━━ハァ!!」

「━━━ァァァゥン!!」


 爆発音が辺りに響くと、水飛沫が散らされ周りの動きが止めた。


 船員達、ネック、バラ、シアー、そして手下のウツボ達。この場の全員がその爆発音の発生元である船尾に目を向けた。


 そこにいたのは。


「…………勝った」


 頭を斬られ赤い血を撒き散らす親玉ウツボの身体を背景にサミーが船尾の縁に立っていた。


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星空を見上げれば〜私達は星々の夢を見る〜 短編の近未来ファンタジー百合小説です。 本作品と併せてお読みいただけると嬉しいです。
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