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ブルーコリーハート〜異世界転生した僕の青い物語〜  作者: ジョン・ヤマト
第四章 旅立ち、そしてバラ色の出会い
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第38話 騒がしい海の上で

    *


「クソッ!! さっきからチョコマカしやがって!」

「落ち着け! 噛まれないようにしろよ!」


 船首の近くに戻ると、あの大きな体格に似合わず素早い動きをするウツボに船員達は苦戦を強いられていた。


「大丈夫か!」

「旦那! 二人噛まれしまいました!」


 その言葉の通り、二人の船員が真っ青な顔をしながら倒れていた。まずい、毒が回り始めている、早く決めなくては。


 幸いにも船員達も奮闘したのか、ウツボの身体にも傷が目立っている。


「僕が来るまで通さないようにしろ!」

「りょ、了解!」


 急いで戦闘の場へ駆け抜けようとしたその時。何かを感じたのかウツボの動きが激しくなった。


「━━ァァァァゥ!!」


 その巨体を蛇行させながら指揮をしていたネックに向かってタックルした。


「グハッ!!」


 唐突に身体をぶつけられたネックは倒れてしまう。倒れたネックの横を通り抜けたウツボは素早く船内を動き始めた。


「? どこに行くんだ?」


 左舷を通り抜けウツボが向かった先、そこにいたのは。


「魔物…………!」

「嬢ちゃん、アタイの後ろに隠れろ!!」


 シアーとバラ。ウツボは彼女達に向けて真っ直ぐ突っ込んで来る。


「━━ァァゥァァ!!」

「やめろォ!」


 叫びながら全力で走る。だがサミーと彼女達の距離は5メートル以上離れている。このままでは絶対に追いつかない。


 だがサミーは走る。大の男ですら突き飛ばす力だ、シアーやバラが受けたらひとたまりもない。大事な人を守るためにサミーは走る。


「こ、来いやァ! 魔物ォ!」

「あ……あ……」


「━━ァァァァ!」


 シアーを守るように前に出ているバラに向かってウツボは飛びかかりその牙が突き立てようとする。


 しかしその牙がバラに届く事は無かった。ウツボは胴体に何かが突き刺さり、その場に倒れ伏した。


「……間に合った」


 ウツボに突き刺した物。それは水の刃、サミーの魔法である"ダイルソード"だった。

 投擲した鋭い水の刃はチェーンソーのように回転しウツボの身体を今も斬り裂いていた。

 

「漫画の真似事だが、さすがの威力だ」


 そう呟くとサミーは水の刃を手に取り力を込めた。


「━━ァァ」


 そうしてウツボは胴体を断たれその命を絶った。

 魔法を解除し、剣を納めたサミーは二人の方を向いた。


「大丈夫か?」

「あ、あぁ。アンタのおかげで怪我一つ無い」

「サミー、ありがとうございます」


 唐突の出来事の連続にバラは戸惑っている。一方のシアーはぺこりと頭を下げた。が、その目尻には涙を浮かべている。


「怖い思いをさせてごめんな、シアー」

「でもサミーはしっかり助けてくれました」

「そうか…………ありがとな」


 微笑みながら、二人で見合った。二人に怪我が無くって本当によかった。


「………………」

「おーい、バラの姉御! サミーの旦那! 大丈夫かぁ!」


 その時、ネックの声が船内に響いた。

 バラはハッとしたように船首に向けて声を上げた。


「お前らも大丈夫かぁ!?」

「あ、姉御! はい、毒の処理もできましたし怪我人も殆と軽傷なんで大丈夫っす!」


 よかった、特に大怪我した人はいなかったようだ。

 だが、戦闘後の船内は大量のウツボの血液に死骸が残っている。


「とりあえずは掃除からだな」

「そうだな! サミーにも手伝って貰うからなぁ!」


 バラの不敵な笑みを浮かべ声を響かせた。

 その後は特に魔物に襲撃される事なく掃除を終わらせた。






    *


「はぁ、掃除疲れたな」


 静かな夜。僕は昨日と同じように甲板に出ていた。


 あの後は色々忙しかった。帆の調整をしながら、甲板に染みついた血を拭き取り、魔物の死骸などを船員全員で処理しているとこんな時間になってしまった。


 船員達は疲れてしまい、もう船室で休んでいる。そして僕は落ち着くために昨日訪れた場所へ再び向かっている


「さーて、お楽しみの時間…………うん?」


 意気揚々とその場所へ向かうと既に人がいた。

 暗くてよく見えないが、その姿はシアーとバラだった。


「二人とも」

「こんばんはサミー。良い夜ですね」

「お、今日も来たのか」


 シアーは時間帯故に少し眠そうな表情だ。一方のバラは昨日と同じく酒のボトル片手に夜の海を眺めている。


 結構飲んでいるらしくその顔は赤くなっていた。


「なんだぁ? 乙女同士の会話に入りたいのか?」

「茶化さないでくれよ、少し夜風に当たりたかったんだ」

「ハハハ、わかってるよ」


 さぁ、と言いながら自身の隣の手すりをトントンと叩いた。


「船には慣れたかい?」

「多少はね。ネックの指揮もあって楽にやらせてもらってるよ」

「嬢ちゃんはどうだい?」

「はい。皆さん優しくてとても楽しいです」


 シアーは船の上では荷物運びや釣りなどを手伝っている。そんな彼女は小さな体躯や僕と頑張って働いてるのも相まって船員達から可愛がられているようだ。


「そりゃあよかった。やっぱりアンタ達に頼んで正解だった」


 バラはボトルを傾けながら上機嫌に笑った。

 

「はあ、今回だけの関係というのがもったいよ」

「そうだな。だけどまたやる機会があるかもしれないだろ」


 四日間という短い航海だが、同じ船で一緒に過ごした事である種の友情が育まれたように感じる。


 確かに色々大変だが仲間と協力したり、この景色を見るのはとても楽しかった。


「そうは言ってもねぇ。…………なんならこのままアタイ達に付いてかないか?」

「え?」

「いやさ、サミーと嬢ちゃんの元々の目的は渡り(密航)だろ? ならこの船に乗り続けるのはどうだい?」

「…………」

「バラさんたちの船に……?」


 唐突の提案。この提案は確かに魅力的なものだった。


 何せ移動するたびに一々船の護衛依頼を探すより、一つの船に留まるのが圧倒的に楽だ。


『サミー! 絶対に生き残ってくれよ!』


 確かに魅力的だが…………、それでも心のどこかで受け入れ難いような感覚があった。


「…………なんてな。冗談だよ!」

「おいおい……冗談かよ……」

「いやぁ、サミーや嬢ちゃんの唸ってる顔は面白かったな!」

「……バラさんイジワルです」


 バラはハハハと笑いながらボトルの中身を一気に飲んだ。


 はあ、真剣に考えて損した。


「ま、もしまた船に乗りたかったらいつでも言ってくれ。アンタ達の実力は評価してるからな」


 そう言ってバラは手すりから離れ背を向けた。


「アタイはもう寝るよ。明日は残りの航路についての話があるからね」

「わかった。おやすみ」

「おやすみなさいです。バラさん」


 バラは後ろを向きながら手を振りそのまま船室へ去って行った。


 そしてこの場に残ったのは僕とシアーの二人。


「…………シアーはこの船のことは好きかい?」

「はい、大好きです」

「そっか……」


 アウトロー達が跋扈する船の上、ふと見上げると豚の描かれた旗が星空を背景に靡いていた。


「……………………」


 雲ひとつない夜空には一際輝く星が見えた。


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星空を見上げれば〜私達は星々の夢を見る〜 短編の近未来ファンタジー百合小説です。 本作品と併せてお読みいただけると嬉しいです。
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