第26話 物語の時間
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洞窟の奥地。決戦の後、そこに残っているのは巨大オオカミの死骸、そして天井の穴から降る雨に晒されている小さな祠だけだった。
とても静かなその場所に何者かが訪れる。
雨に濡れてなお血に塗れ、身体は既に限界だというのに未だに生きており、身体を這いつくばりながら何処かへ向かっていた。
彼が今思っている感情は一つ、『死にたくない』。ただそれだけだ。
親友に裏切られ、もはや助かる術もなく死に向かっている。それでも生に執着し、何かに縋るように当てもなく這っていたのだった。
考えがあったわけでも無い、ここに辿り着いのはただの偶然だ。
「ぁ……ぁ……」
一つ進むたびに身体に激痛が走り、一つ進むたびに更に生への執着を増していく。
そうして真っ直ぐ進んでいた時、手に何かが当たった。
「…………ぁ?」
ゆっくりと顔を見上げる、そこにあったのは雨に濡れている祠と水色の石が置いてある台座がポツンとある。
水色の石は先程までとは異なり、明るく輝き、薄く青い光を放っていた。
「ぁぁ…………」
今回の出来事の始まりはこの水色の石からだった。
この依頼を最後にパーティーを抜けようと決意したのも、巨大オオカミとの戦いが始まったのも、そして今の状況になったのも、全てこの石から始まった。
そんな水色に輝く石を見てサミーが今思っていた感情は。
「たす…………け………て」
心からの懇願だった。
どんな目に遭おうと、こんな終わりは嫌だった、生きていたかった。例え悪魔に縋ってでも。
サミーは台座へゆっくりと這うように登る。
「ぁ………」
そして台座に置いてある水色の石へ触れた時。
「え……?」
目の前の景色が陰鬱とした薄暗い洞窟から、透き通るように綺麗な雲一つ無い青空へと変化するのだった。




