転生したら生首だった件。
目を開けたら、世界が横倒しになっていた。
いや、ほんと急な話。
地軸が歪んだの? 世界がひっくり返った?
思いついてみたものの、あまり現実感がない。
どうも、野っぱらのど真ん中にいるような……
横倒しに緑の地面が広がって、視界の左上に青空が見えている。
はあん、すると横倒しになってるのは自分の方か、と納得。
左に90度起きあがれば、めでたく世界は安全だ。
けれど、起きあがれない。
というか、身体の感触がない。
手足さんが行方不明で、何だったら、胴体の感触も曖昧だ。
何とか眼球の動きだけで、自分の状態を観察する。
……まてよ。首から下がない。
かろうじて首の一部は残っているが、何かで切断されたみたいに、胴体がまったく見あたらなかった。
ホワイ? マイボディ、イズ、ウェアー?
でたらめを承知で、脳内にクエスチョンを散らす。
生首ってどういうことよ? それで、何で生きてるの?
というか、俺は何者だ。
いきなり地面に生首で、転がされてる身の上が知りたい。
あ、と思いついたのは、前世の記憶だ。
俺ってば、転生したんだった。
交通事故で死んで神様みたいなのが現れたと思ったら、生まれ変わらせてやる、と宣告された。
かっちょいい無頼派の人生を! チート付きで!
と、力一杯お願いしたはずが、どうして生首で横倒し?
第一、転生したとなったら、赤ん坊の頃から始まって、すくすく成長する過程で自分のチートスキルとかに気が付くのが筋じゃなかろうか。
「おーい」
とりあえず、声を出してみる。
話せるらしいぞ。すげえな、生首。
視線をキョロキョロとする。
前方と、横がちょこっとしか見えない。
首を動かすことは無理そうだった。気張れよ、筋肉。
とは言え、首一つじゃ転がることも不可能だろう。
どうすっかな……。
前の人生と別物になったことは、まちがいない。
異世界転生ってやつだ。
で、そもそもの俺って誰よ?ってことに、話が戻る。
もうちょいわかりやすい、取説的なものはないのだろうか。
生まれ変わりに、親切設計は心懸けてほしいところ。
───と、ふいに地響きが耳を打つ。
すぐに振動が来た。地面全体が大きく揺れる。
一度生首になって、高速道路の高架下にでも放置されてみるといい。
言うなれば、そんな感覚。
揺れが強くなるほどに、野原の向こうから黒い影が見えてくる。
最初にわかったのは、馬の蹄。
黒い馬が並足で、こちらの方に近づいてくる。
影が大きくなってくると、馬上の人物も見えてきた。
でんっと、黒い鎧が乗っている。
全身これ甲冑で、肌の一つも見えてこない。
腰に履いた大きな剣が、また迫力満点だ。
乗ってる馬にしても、完全武装。
顔の大部分と首の下辺りを鉄板が覆って、乗り手と同じくかなり年季が入っている。
そして、当の乗り手の全体像は……。
視線をできる限り馬上に向けて、俺は納得した。
馬の乗り手の、その首から上がない。
頭部のない、巨躯の騎士。
首なし騎士———デュラハンだ!