表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

はじまりの木

 アリーチェたちはカーソンとジェフの案内のもと、はじまりの木へ向かっていた。

 はじまりの木は、住宅街から離れた手付かずの森の部分にある。


 

「それで……はじまりの木って……?」


 アリーチェが走りながら尋ねる。


「うーん、言葉で説明するのは難しいけど、とりあえずこの森の大事な部分です! とっても大きくて、中に重要な書類や資料が保管されてるです!」


「なるほど……。その資料が盗まれてしまったら大変ね」

「俺たちが見た、木の中に1人で入った怪しい奴。……目的は何なんだろーな」

「まだ逃げてないといいけど。」


 目に鋭い光を灯すリアムは、動きやすいように元の王子の服装に戻っている。


「妖精たちの大切な資料を奪うつもりなら、許さないわ……!」

「うわ……なんかやべーオーラしてる……。」

「やっぱりアリーチェはなにか特別な力を感じるんだぞ」

「せ、聖女だからよ!」


 アリーチェは目をしどろもどろさせる。

 小人や妖精には何かが感じられるらしい。

 


「あっ、見えてきたです!」


 前方に巨大な木の幹が見えてきた。


「あれがはじまりの木だぞ」

「大きい……」


 家一軒ほどの大きさがある榦からは、何本も枝が空へ向かって伸びている。そこについている葉は、普通の木数十本ぶんくらいある。


「っ! あれ! 誰かいるです!」


 木の下に人影が見える。

 ローラの声に、その人物が振り返った。


「……森を荒らさせて、こっちの警備、手薄くしたのに。」


(え……? あれって……)


 抑揚のない声で、ローラたちの方を睨む。

 彼は茶褐色のぼさぼさな髪に、澄んだ赤い瞳が覗いている。黒いマントを羽織っているせいで表情までは見えない。


「こ、こいつだ! さっき俺たちが見たやつ!」


 その人物の手には、一冊の本が握られていた。


「その本……王宮の無くなってた資料! なぜ持っている」

 

 その言葉に怪しげな人は、リアムを見つめる。

 

「琥珀色の瞳、華奢な体。……お前、王族?」

「……そうだけど、僕の質問に答えてくれない?」


 リアムは不機嫌さを露わにしてため息をついた。


「……ここで減ぼす。」


 そう言って彼が片腕を突き上げると、身につけていた白いブレスレットが橙色に光る。

 その途端、辺りに怪しげな気配が漂い始めた。

 

「っあれ!」


 ジェフが指さした方には、いつの間にか魔物がいた。


「こっちにもいるです!」


 そうしているうちにどんどん魔物か現れ、気づくとアリーチェたちは、大小様々な魔物たちに囲まれてしまっていた。

 

「50はいるね……」

「なんで……ここには来れないはずだぞ……?」



 ここは、魔物の住む森とは違う空間。妖精が呼んだもの以外入ることは出来ないはずだ。


「妖精しか呼べない。なら、妖精に呼ばせる。」


 ブレスレットをつけた腕で指を鳴らした彼は、アリーチェたちに背を向け、逃げようとする。


「待って! バーナード!!」


 

 アリーチェは咄嗟にその人物を引き止める。


「……」


 彼は顔だけ振り向き、じっとアリーチェを見つめる。相変わらず表情は見えない。


(しまった……)

 

「すみません…………人違い、です。」

「……。」


 

 彼はそのままスッと跡形もなく消えてしまった。


 

(だって……生きてるはずないもの……)


 アリーチェは動揺を隠せずに、俯いてたたずんでしまう。

 

 すると、後ろから切羽詰まった声が飛んでくる。


「アリーチェ、後ろ!」

「!」

 

 リアムの声に振り向くと、鹿の魔物が彼女の眼前に迫っていた。


(間に合わない――)


 アリーチェはぎゅっと目を瞑る。


 だが、衝撃は来ない。


(あれ……?)


 

 目を開けると、魔物たちは遠くにおり、アリーチェからさらに離れていく様子が見えた。


 周りを見渡してもリアムや妖精たちは居ない。

 

(……私は今、戦いの外にいるんだわ。)


 おそらく、ノーラがアリーチェだけを転移させたのだろう。


 魔物が向かっている方からは炎が上がり、魔物の咆哮が聞こえる。


(チャンスね、背後を狙いましょう!)



「〈アイシクルズ〉!!」


 アリーチェが手を差し出すと、いくつもの尖った氷が放たれ、魔物に突き刺さる。

 

「グァァアア!!!!」


(まだまだ)


 アリーチェは一際大きな氷を生み出し、それで剣形作る。そして、顔を苦痛で歪めた魔物を容赦なく切りつけていく。



 程なくして、アリーチェはリアムたちのいる所にたどり着いた。


「このっ! ちょこまかと!」

「お、オイラの服食べるなよ!」

 

 小人たちは、小型のナイフでうさぎやリスの魔物と戦っている。

 ノーラは突撃してくる魔物の眼前に、別の魔物を転移させたり、高い位置から落下させたりと、意外とえげつない攻撃をしていた。


「アリーチェ! 大丈夫?」

「リアム殿下。平気です!」


 リアムは、ノーラや小人たちのうち漏らしを攻撃しながら、アリーチェを気にかける。



 その途端、アリーチェたちの周りに大きな影が落ちる。


「っリアム、そいつ獅子の魔物です! 気をつけるです!」

 

 木の上で全体を俯瞰していたローラが張り詰めた声を上げた。

 

「任せて! 〈ブレイズ〉!!」


 リアムから放たれた炎が、熱風をまといながら獅子の魔物を襲う。


「っダメだわ!」

 

 リアムの渾身の一撃は、獅子の魔物がグォオオオオと人吠えすると、いとも容易く跳ね返されてしまった。

 アリーチェたちの周りを激しい炎を伴った熱風が吹き荒れる。


「〈プロテクト〉!!」


 リアムが咄嗟に、前方への結界を張る。それは、炎をカバーしたが、抑えきれない爆風が彼らを襲う。

 

「前が見えない……!」

「落ちるです〜〜!」

「吹き飛ばされそう、だぞ」


「ガォオオオオゥ!!」


 ローラが木から落ちそうになるが、獅子の魔物は構わずに突進してくる。


「っ!」

「ノーラ! 危ないぞ!」


 ローラが落ちるタイミングを見計らった獅子の魔物に、ローラと、助けに行ったノーラが咥えられてしまった。


「ローラ、ノーラ!!」

「離すです〜〜!!」

「……ローラを助けるつもりが、食べられそうだぞ」


 2人が抵抗するが、獅子の魔物はビクともしない。

 さっきの炎で、それ以外の残っていた魔物は全てやられていた。

 


「あとはこいつだけなんだけど……」


「〈アイシクルズ〉!!」

「グウォオオオオ!!」


 アリーチェも氷の魔法で魔物の足を狙うが、今度は完全に消されてしまった。


「あいつが吠えるだけで魔法が消されてしまう……。無効化の特異魔物か。」


 たまに、突然変異のように特殊な能力を持つ魔物が現れることがある。それらは特異魔物と呼ばれ、そのほとんどが通常の魔物より手強い。


「ああいうタイプの魔物は知能が高いから、剣でも2人に当たらないように攻撃するのは難しいわ。」


 前世のアリーチェなら出来ただろうが、筋力、日々の鍛錬など諸々の面で、今の彼女にはほぼ不可能だ。



「ガァオオオオオオ!!」


 魔物が咆哮をあげながら、アリーチェたちへ突撃してくる。


(避けるしかない……!)


 アリーチェは、思い切り地面を蹴りあげ、斜め上に飛び上がる。


 魔物はアリーチェの横スレスレを通っていった。


 だが、魔物は片方の前足を上げて何かをはじき飛ばす。


(っ! もしかして!)


 地面に叩きつけられたそれは、人の形をしていた。


「リアム殿下――!!!!」

「おもしろい!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ブクマ、評価よろしくお願いします│ω・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ