騎士との再戦
アリーチェは、急に現れた少女たちに、困惑する他なかった。
「ええっと、この子たちは……」
「あぁ、彼女らは妖精だよ。僕の……知り合い?」
「友達くらいにはなったつもりでいたです……。あ、あたしはローラ! よろしくです!」
腰まである赤い髪を、ふたつの三つ編みにしたつり目の少女が手でピースサインを作りながらそう言った。
「私はノーラだぞ。……って、自己紹介してる暇はないんだぞ……」
ローラと同じように白い髪を縛った、たれ目のノーラはリアムに手を差し伸べる。
彼もノーラに近寄り、それを握り返す。
「それじゃあ、転移するんだぞ」
「あ、私はアリーチェです! 妖精って本当にいるんだ……って、転移?!」
「転移が使える妖精もいるです!」
「……アリーチェ、君はついてこなくていいよ」
リアムは「そこに居て」とアリーチェを追い払うように手をひらひらさせる。
「そんな! 婚約者の友達が困っているなら助けに行かないと!」
アリーチェのそういうところは、何歳になっても変わらない。
「確かに、リアムってそんなに強くないし、アリーチェの方がすごいオーラ放ってるです! 頼りになりそうです!」
「え、オーラ?」
「私たちの森を守って欲しいぞ……」
「……ほら! 行ってもいいですよね?」
3対1になったリアムは仕方ないとため息をつく。
「……わかったよ。僕の本来の役目は聖女を守ることなんだけどな……」
そう言ってリアムは空いている方の手をアリーチェに差し出す。
アリーチェがその手をとると、視界が歪んだ。
「行くんだぞ。手は絶対話しちゃダメだぞ……」
目の前が真っ白になったと思ったら、次の瞬間、アリーチェは森にいた。
「ひ、酷い……」
そこには、木々を剣や斧で傷つけ、切り倒す人々が30人ほどいた。
「その格好は……またアメーゼル帝国騎士団?」
「り、リアム殿下……」
リアムに怪訝な顔で睨まれた騎士が、狼狽えながら言った。
その様子を一瞥し、リアムは声を張って言う。
「森の木々を傷つけるな! 王族命令だ!」
その言葉に騎士たちは怯むが、1人の騎士が前へ出てくる。以前もいた団長だ。
「こちらはアメーゼル帝国の皇帝からの指示で切り倒しを行っておりますし、ここはトロイムの森の我が帝国側です。勝手な命令は受け入れられません。」
「っ……」
トロイムの森はアメーゼル帝国とカルハイト王国の国境になっている。魔法によって区切られているが、確かにここはアメーゼル側だ。
「ここにはあたしたちの家があるです! やめて欲しいです!」
「そうだぞ。住み処がなくなったら困るんだぞ」
「……っくそ、止められるなら止めてみろよ!」
そう言って、ノーラに剣を振り下ろす団長。
アリーチェは咄嗟に、近くで油断していた騎士からするりと剣を奪い、団長の剣を受け止める。
「くそっ。何してんだ新人!」
「すみませんマイケル団長〜!」
団長、もといマイケルが新人を叱っているうちに、アリーチェは彼の剣をぶんと薙ぎ払う。
アリーチェの体力は、剣士ラシャドのスパルタ指導のお陰でだいぶ増えていた。
前世の計り知れない実践の経験値と合わせれば、騎士団など敵ではない。
ちなみにラシャドは、アリーチェに吹っ飛ばされたあと、2、3日で回復していた。驚くべき生命力である。
「くっ……お前、なんか強いと思ったらあの時の聖女か!」
「覚えていただけて光栄です、よ!」
カキン、と剣同士がぶつかり、鍔迫り合いになる。
「あれから、俺たちはお前なんかに二度と負けないよう、厳しい訓練を行ってきたんだ!」
「そうだ!」
「あれは本当に辛かった。」
「お前途中からサボってただろ」
「おい、言うなよ!」
マイケルと違い、騎士たちは気が抜けるような会話を繰り広げる。
(……負ける気がしないわ)
「アリーチェ、僕らも戦うよ」
「私一人で十分。」
そんなことしたら確実に只者じゃないと怪しまれるが、アリーチェは目の前の戦いに夢中で、全く気が付かなかった。
アリーチェが鍔迫り合いになっていた剣の力をふっと抜くと、相手がバランスを崩す。
「くっ……」
その隙にアリーチェは目を瞑り、人の気配を感じる。
(道筋は見えたわ。)
かっと目を見開いて、地面が沈むほどグッと踏み込む。
「はぁああっ!」
アリーチェの剣が次々と甲冑の上から騎士を切りつけていく。
目にも止まらぬ速さのそれは、稲妻のように見える。
騎士たちは為す術なく、アリーチェを目で追うのが精一杯だ。
「うわぁあ」
「なんだ?!」
「に、逃げろ……!」
そんな情けない声を上げながら、騎士が次々と倒れていく。
「……甲冑の上から、剣を叩き込んで気絶させている……?」
「尖ったオーラがみえるです!」
「強すぎだぞ……」
これは、アリーチェが前世でも重宝していた得意技だ。瞬時に最短のルートを探り、無駄な動きをほぼゼロにして相手を一気に片付ける。
「はっ!」
最後の1人ももれなく倒したアリーチェは剣をぶんと振り、汚れを払った。
「アリーチェ! すごいです!」
「どこで訓練した? 本物の騎士みたいだぞ」
瞳を輝かせ、興味津々で見つめてくる二人が視界に入り、アリーチェははっと我に返る。
(や、やりすぎた……?)
辺りを見回すと、自信のあったマイケルも含めた騎士全員が気を失って倒れている。
帝国内で選りすぐりの騎士をこんな風にしておいて、たまたまとは言えまい。
「け、剣が大好きでたくさん訓練したら強くなれたんですよ……」
「そんなことある……?」
(うそじゃないから)
アリーチェは、訝しげなリアムの視線から目を逸らして、気付かないふりをした。
魅せ場なのにアリーチェが強すぎて盛り上がらない……
楽しんで頂けていましたら、下の評価、ブクマよろしくお願いします!
本当に励みになってます……!( ;∀;)




