57 大道人とアライラー
こんにちは。こんばんは。
今回は『大道人とアライラー』が主なお話になります・・・なっているといいのですが。
後半からは勢い任せで書いております。
最後まで、お楽しみいただけたら幸いです。
どすん。
音にしてみれば、大きな荷物が落ちたような程度に感じるが・・・ここに落ちたモノは、怪獣レベルの大きさをしていたために、地震のような揺れが生じた。
だからこそ、スリープ状態で待機していた私は起動する。
「・・・はぁ」
何があったのか?と、確認を行ってみればシャチホコのようなポーズで顔から地面に落ちている大蜘蛛モンスターのアライラー殿が見えた。
上を見れば、寝床となるハンモックが揺れている。
やれやれ。
「今日も、大爆死でしたか?」
〈ちがーしぃーッ!!〉
ゴロリ。と寝返りをするように体を捻って顔を私へと向けて来るアライラー殿は、そしてシャチホコポーズを解いて地に八つの脚を立てる。
〈途中まではイイ感じだったんだッ!! 準ピックアップキャラまで完凸できていたんだッ! 主役が一個も当たらんだけでッ!!〉
・・・それを、大爆死というのでは?
「それを『大爆死』と呼ぶのでは?」
〈HAッHAッHAッHAッHAッ!! 大爆死っていうのは、ピックアップキャラがこれっぽっちも当たらんかった時のことだッ! 主役のピックアップキャラが一個も当たらん場合のことなんよッ!〉
「当たらなかったのでしょう?」
〈当たんなかったんですけどもぉおーッ!!〉
びえーん。と、それはもう盛大に泣き出した。
夢の中で、幾度もソシャゲのガチャに挑戦する夢を見て、連敗するなど・・・道標人の指摘通り、精神修行の一環なのでは?
〈なんで当たんないんだ・・・邪眼を使って大勝利の夢を見ているはずなのにッ!!〉
邪眼まで使っているんですか・・・。
しかし、そこまでして当たらないという事は・・・まぁ、おそらくは原因はー。
「まずは、ご自分を主人公に据えてみてはいかがです?」
〈え? 私って主人公じゃないんか?〉
・・・少なくとも、夢の中では違いましたねぇ。
〇
地獄道・地蔵菩薩大道人。
邪神より頂いた『地獄変』を用いて、主様・・・ルッタ・レノーダによって召喚された大きな地蔵菩薩像にして、主様の擬似的な分身でもあるのが私です。
大きさに関しては、主様より大きければ全部『大道人』となりますかね。
ただ、あまりにも大き過ぎると主様が定めたならば『巨大道人』という別カテゴリが最近できました。
さて、第一国家 ハースニング にて隠されたダンジョン『災厄の壺』の第一階層【春の区画】も北東に位置する牧場にて、私たちは滞在中。
北海道と同等の規模となるフィールドにて、西から北上してアレコレとチート級のモンスターたち相手に紙一重な状況を幾度も乗り越えて今に至るわけですが・・・。
先日、ここよりさらに北東にあるという海の底・・・海底ピラミッドへと主様たちは向かわれました。
そうして帰ってきたら、主様は包帯代わりのミニ地獄変で全身をグルグルと巻き固められて帰還され、そのまま治療装置に入れて長期間の療養に入られてしまわれた。
で、私は同行した巨大道人より引継ぎをし、今はアライラー殿のお世話をしているのです。
〈おぉぅ・・・まーた、ウサギ肉かぁ・・・〉
いつも通りに、ウッスというどこかで遭遇したウサギ似の怪獣モンスターの肉を焼いていると、アライラー殿がウンザリ。という様子で不満を溢す。
〈たまには、別のお肉が食べたいな・・・〉
「では、大豆でも蒸しましょうか?」
大豆を蒸しただけでも、美味しく食べられますからね。
〈畑の肉だから?〉
「おや? ご存じで?」
〈ふ。料理マンガもそこそこ読んでいるんだぜ?〉
ふむ・・・料理を題材にした漫画ですか・・・主様の記憶にはコレと言った情報がありませんね。
「まぁ、それは横に置きまして・・・大豆を食べますか?」
〈・・・・・・・・・・・・・・・・いえ、今日はウサギ肉を食べるっす〉
長い沈黙の末に、お肉を選ばれましたか・・・。
「では、召し上がれ」
〈いやッ! そこは、おあがりよっ!って言って欲しいッ!!〉
なぜ?
・・・まぁ、なんだかんだでアライラー殿はモシャモシャと食べ始めた。
そういえば、大豆バーグっていうのがありましたね・・・えーっと、レシピは・・・大豆を捏ねて固めて焼けばできるんだったかな? いや、パン粉とかサラダ油を使ったような?
うーん。
〈ねぇねぇ? そろそろ『牛』とか『豚』とか食べたいと思わない?〉
「ご安心ください。主様は人間用の『牛』『豚』『鶏』を食べておいでです」
〈ズルくないッ!!? 私はモンスター肉なのに! なんで るっちゃん は人間の食事してんのッ!!〉
「人間なので」
〈そうだろうけどもッ!〉
言いたい事は分かりますし、不満も理解できるところですが・・・。
「しかし、アライラー殿が人間用の『牛肉』や『豚肉』を食べるとなれば、相当量が必要になります」
〈うん・・・まぁ、そうだよね〉
「それだけの量を用意するのは、マリー様に断られておりますので・・・」
〈うん。知ってる〉
知らなくても、察しはつくでしょうけれど。
「なら、どうするおつもりで?」
〈狩りに出るんだよッ!〉
「狩りにッ!?」
〈そう! お地蔵さんが!!〉
「かーッ!!」
反射的に錫杖を振り下ろし、アライラー殿へと攻撃を仕掛けてしまいました。
しかし、彼女はササッと動いて私の攻撃を避け、少しばかり焦ったように言う。
〈ちょい待ってよ!今の私は るっちゃん がいないから満足に魔力の供給もされない状態なんだよッ! これで外に出たら、あっという間にフルボッコやでッ!〉
うん・・・。
確かに、アライラー殿は主様が居ないと途端に弱くなりますね・・・特に魔力の運用が下手というのが正しいか?
だいたいが魔力切れで窮地に陥るわけですが・・・。
〈こんな私が狩りに出てたら、死んじゃうと思うんだよねッ!〉
「なら、死なないように鍛えるのが、よろしいのでは?」
〈それはー・・・ほら、適材適所っていうっしょ?〉
その通り。
「基本的な戦闘はアライラー殿の役目です。主様は指示と魔力供給。ですので、アライラー殿が戦うわけなのですから、狩りには行けますよね?」
〈そ、そうかも・・・しれないが・・・〉
戦闘担当のアライラー殿と、補助担当の主様。
確かに、二人はそれぞれを補い合っていると言えましょう。ならば、適材適所も頷ける。
「さぁ。牛肉でも豚肉でも狩りに出かけましょう。戦うのは、どのみちあなたです」
〈そ、そそそそ、そうかもしれないがッ!!〉
「狩りに出るとか、止めておきなさい」
あ、出た。
〈ぅわッ! 出たッ!!〉
アライラー殿? その反応はいかがなものかと・・・。
マリー様も、アライラー殿の反応を見て訝し気に睨んでおりますが・・・とりあえずは話を続ける様子。
「ルッタの居ないアライラーに狩ることができるモンスターは、牧場周辺には居ないわ。挑んだところで返り討ちになるだけね」
鼻で笑って見せるマリー様は、あきらかに挑発しているように見える。
〈なんだとぉ・・・この私が、この辺のモンスターに後れを取るって言いたいのかぁぁああ!!〉
「なんだとー・・・この私が、この辺のモンスターに後れを取るって言いたいんですかー。って言ってます」
〈お地蔵さーん! もっと感情を込めよう! 伝えたい想いっていうのが、伝わんないってば!!〉
「申し訳ない。私は役者ではありませんので、どうにも声に感情を乗せるのが難しいのです」
〈るっちゃんのモノマネは上手いやんけ!〉
「私の『元』ですからね。外へと送るメッセージの代弁くらいはできますよ」
〈むーん!〉
「はいはい。大道人の翻訳に不満があるのは分かったから、とりあえず話を進めるわよ」
ということで、マリー様の用件を聞きます。
「ルッタが眠っている間に、アライラーの鍛錬を始めようと思うわ」
〈私の鍛錬!?〉
「アライラー殿の鍛錬ですか?」
鍛錬をすることに反対はありませんが、実に唐突な提案ですね。
「そうよ。ここらでルッタの負担を減らすために、魔力の制御ならびに操作を鍛えておこう。と思ってね」
なるほど!
「よい。お考えだと思います」
〈お地蔵さん!?〉
アライラー殿が慌てた様子で、私の袖を前足で突きながら声を荒げて来る。
ですので、私は彼女へ言います。
「アライラー殿。これは良い機会です。主様が居ない現状であっても、上限のある魔力量でモンスターと戦う術を身に付ければ、牛肉も豚肉も狩りに出られるようになりますからね」
〈そ、そそそ、そうかもしれないがッ!〉
もしかして、そんなに外へ出るのが嫌なので・・・いや、この反応は『イヤ』だからというモノではないな。
「大道人。おまえの言う通りではあるけれどね? この子は5年間、洞窟迷宮を彷徨っていたのだから、ルッタ抜きでモンスターに挑むことを怖がっているのよ」
・・・そうか。
そこに考えが至りませんでしたね。
〈べっつにこわくねぇし! 勝手な解釈すんなしーッ!〉
「・・・ふむ?」
私は、ただ静かにアライラー殿の頭へ手を置いて・・・。
「では、狩りに出ましょうか」
と、頭の毛を鷲掴みにしつつ言った。
〈ごめんなさい。るっちゃん抜きは怖いっす〉
ですか。
少し遠回りとなりましたが、鍛錬をする。ということで話はまとまりました。
「では、鍛錬の内容だけど・・・二つあるわ」
「二つですか?」
「そうよ。まず一つは・・・さっきも話した通りで『魔力の制御と操作』よ。すでに邪眼を通して魔力は使用できているから、邪眼抜きで魔力を制御し、操作するわ」
ふむふむ。
「そうなりますと・・・どのように魔力操作の鍛錬は行われるのでしょう?」
「アライラーの段階を見る限り、次は魔力を・・・その前足のどちらでもいいから先端に集めて、人間の『手』を作ってみなさい。邪眼抜きでねッ」
邪眼を使わない。ということを強調されますね。
〈・・・つーても、こーいう感じっしょ?〉
軽い調子で前足を突き出してくるアライラー殿は、その先端に人間の手を作って見せた。
「・・・1、2、3、4、5。ちゃんと指が五本ありますね」
〈数えなくてもええやんけ! 見りゃ分かる!って奴やん!!〉
しかし、私が幻覚を見ている可能性を考慮して、しっかりと点呼するべきだと思った次第です。
とはいえ、『グー』『チョキ』『パー』と手を動かして見せている上に、邪眼を使用している様子はないことから、魔力操作が出来ているのだと頷くほかが無いようです。
「マリー様・・・」
私が、確認のために名をお呼びするのですが・・・。
(・_・)・・・。
どういう顔ッ!?
いや、理解できなくてフリーズしているってことですかッ!?
「マリー様! おーい! マリーさまーッ!!」
「あ・・・うん。え? なに、おまえ・・・そんな芸当ができたの?」
ちょっと声を大きくして呼びかけたことで、フリーズしていた思考が再起動してくれたようです。
マリー様は、それなりに動揺を見せながらも確認を取ります。
〈くーっくっくぅ!! こんなこともあろうかと! 地球に居た頃に!『気』『念』『霊』『魔』『呪』などなど多種多様な『力』を使えるように自主練をしていたのは・・・何を隠そう! この私ッ!!〉
・・・それ、得意気に言うことではないですよね?
「修行ごっこは、前世で一通りしたそうですよ」
〈ごっこじゃないもん! 小学生の時なんて、テストで0点取って怒られるぐらいには真面目に頑張ったもん!!〉
「頑張るところを間違えていますよッ!!」
〈そうそれ! 先生とかお父さんにお母さんも、真っ先にそれ言うんだよ!? なんでみんな同じ反応になるんッ!?〉
いやそれは・・・。
「当たり前かと・・・」
〈むーん・・・なっとくいかーん!!〉
まぁ、納得はしないでしょうね。
〈真面目に頑張れば、できるようになるよ。って言ったのはお父さんとお母さんなのにさッ!〉
ご両親・・・。
「ちょっと大道人。アライラーは何を言っている?」
「あ、はい・・・えーっとですね」
私は、アライラー殿との会話をマリー様に説明し、これを聞いたマリー様は呆れた様子で目を閉じられた。
「なんか、どこかで聞いた事ある話ね・・・孫やひ孫にも重度のオタクが居たのを思い出してしまったわ」
そういうと、なにか「ハッ」とした様子で目を開き、腕を組んでから真剣な面持ちで考え事を始める。と、次第に顔が青ざめていく。
「いや、まさか・・・しかし、話が似すぎている・・・いやいやいやいやいや無いわ。うん。ない」
?
「マリー様?」
「なんでもないわ。ちょっと似たような話が私の地球時代にあっただけよ。偶然の一致とは怖いモノね」
なるほど・・・三児の母でひ孫に名づけもしてやった。と言うくらいですから、似たような話はありそうですね。
マリー様も、そっち方面に明るいようですし・・・。
「・・・と。話が逸れてしまいましたが、二つの鍛錬の内・・・一つは『魔力操作』とのことですが、もう一つは? 何になるのでしょうか?」
「・・・『田んぼ』よ」
・・・。
・・・・・・。
・・・田んぼ?
〈田んぼ?〉
「田んぼ・・・ですか?」
「そう。『田んぼ』よ」
・・・なぜ?
「なぜでしょう?」
「畑作りはある程度の成果を出して、成功した。と結論付けたわ。なので、次の実験として『米』を作ろうと思ってね」
ほぉ・・・なるほど・・・『米』ですか。
ふむ。確かに『米』は欲しいですね。今後、アライラー殿の食事メニューが増えて行けば、やはり主食となる『米』は必須でしょう。
・・・あと、米を使って酒を作れれば、コレを道標人に『お神酒』として渡せるかもしれません。
なんだか、お酒を飲みたがっていましたしね。
〈田んぼを作る!? この私がッ!?〉
・・・何を驚いているのだろうか?
「魔力操作の特訓が必要ないとなれば、田んぼ作りになるのは必然かと?」
〈ちょっと待って欲しい。魔力操作だって段階ってもんがあるっしょ? 私ができるのは第一段階って感じだと思うんだよね!〉
なにやら必死の様子ですが・・・。
「もしかして、身体を動かすのが嫌なのですか?」
〈べつにー。運動が嫌いとかそういうことじゃないしー。働くのが嫌だってこともないしー。田んぼよりも魔力の操作が重要だと思うわけだしー〉
体を動かす労働が嫌。ということですか・・・。
「マリー様。魔力操作に関する鍛錬は、アライラー殿が先ほど見せたもので十分なのでしょうか?」
「・・・まぁ、十分とも言えるが・・・手先を器用にすることで、より魔力操作の精度を高める訓練もあるにはある」
〈それをやろう! どんとこい! 鍛錬!!〉
ぐいぐい来ますね・・・。
「では、その鍛錬は何をすればいいのでしょう?」
「そうね・・・アライラーなら・・・フィギュア作りをするのがいいでしょうね」
〈フィギュア作り?〉
「フィギュア作り?」
「そうよ。美少女フィギュアって言うのがあるのは知っているでしょう? アレを自作するの。その魔力操作で作った魔力の手でね」
ああ、なるほど・・・確かにそれなら手先を器用にするために、より繊細な手の操作が求められる。
それに、そういった人形作りは好きそうだ。
〈し、素人にそんなのできるわけないじゃん! なんでフィギュアが何万もするのかわかるか!? 手間暇技術が掛かってるからなんやでッ!〉
「だから、自分で作れるようになれば、安上がりでしょうがッ」
〈それはそう・・・〉
・・・マリー様。私の翻訳を待たずにズバッと言い当てた。
「ってことで、フィギュアか田んぼ。好きな方を選びなさい」
〈・・・じゃあ、フィギュア作りで〉
〇
っと、いうわけで・・・魔力操作の鍛錬として『フィギュア』作りをすることになったアライラー殿。
私も付き添ってお手伝いをするわけですが・・・マリー様より魔改造ランドセルを渡されたので、まずは人形作りに必要な粘土を用意することに。
まぁ、ここで粘土として使えるモノは・・・。
〈やっぱり集めておいてよかった『埴輪騎馬兵の残骸』だね〉
「よもや、ここまで便利な素材アイテムになろうとは・・・」
埴輪型蒸し器を作る際も結構な数を使ったと思っていましたが、あの谷で結構な数を破壊しては回収していましたからね。
とりあえず、アライラー殿の頭の高さぐらいまで、残骸を山積みにし・・・邪眼でインゴットにしてもらう。
こうすると『埴輪騎馬兵の残骸』はハミョ・・・ん?『ハミョルトン?』んー?
なんだか微妙に名前が違っている気がするが・・・まぁいいか。とにかく粘土みたいに柔らかい鉄の塊になるので、人形作りには最適な素材でしょう。
〈さて、お地蔵さん・・・ここからが大変なんだよ〉
「と、申されますと?」
〈人形にするには、どうしたら良いと思う?〉
「どうも何も、アライラー殿が好きなキャラを人形にしてみればよろしいのでは?」
〈・・・だ、か、ら! ここからが大変だと言ったッ!!〉
え?
〈人形にしたいキャラが多過ぎるんよッ!!!〉
・・・。
・・・・・・。
・・・めんどくさ。
「まずは、人の形にすることが先では?」
〈いやいや待ってくれお地蔵さん? いいかい? 私は素人なんだよ。手でコネコネして、綺麗な人形を作るなど10年100年1000年早いんだよッ〉
・・・一万年と二千年経っても無理。とか、言うかと思いましたが・・・技の名前で言っていたような気がしますし。
〈だから、まずは邪眼で完成形を作り、目指せ! この完成形!!という目標にしたいと思います!〉
ふむ。
「それは悪くない考えかと思います。参考となる人形があれば、それへ形を近づけるために繰り返し練習することもできますからね」
材料となる埴輪騎馬兵の残骸も、まだまだストックはあるし・・・問題ないでしょう。
〈おお! 私ってばナイスなアイデアだった!? よっしゃ! なら、参考用の人形を邪眼でパパっと作っちゃうぜッ!〉
思い付きでしたか・・・迂闊だった。
〈よっしゃ! さっそくやるぞーッ! 邪眼クラフト・・・作成ッ! 美少女フィギュアその①!!〉
私がちょっと意識を逸らしている間に、アライラー殿がフィギュア作りをし始めてしまった。
まぁ、まずは参考用人形を・・・ということですし、そこまで変なモノになることはないでしょう。
邪眼がピカッと光ると、インゴットが人の形を成し・・・そして絵に描いたような美少女がセクシー?なポーズを取って現れる。
しかし・・・これは・・・。
〈あぁんれー? なんか、不気味な感じになってね?〉
「ですねぇ・・・」
絵に描いたようなとは言いますが、立体物に絵を貼り付けたような造形となっており、見た目はノッペリとしたモノになってしまっている。
ううむ?
〈・・・あ、これアレだ。マネキンに抱き枕カバーを被せてみたらこんな感じになんね?〉
「抱き枕カバー?・・・を、マネキンに被せるんですか?」
ちょっと例えの話しが理解できないのですが・・・。
〈あ、今のは聞かなかったことにしてくんれー〉
「その前に一つだけ。マネキンが家にあるのですか?」
抱き枕カバー・・・に、絵が描かれている物があるのは、主殿も知ってはいる。持ってはいないが。
しかし、それをマネキンに被せるとは?
〈あー・・・えっとね。お母さんがね? 推しキャラのコスチュームをマネキンに着せて、部屋に飾ってたんだよね・・・三つか四つくらいあったかな?〉
結構あるッ!?
〈そのマネキンに、私の好きなキャラの抱き枕カバーを被せてー、うへへへへ・・・はぁ・・・アレにはがっかりした〉
・・・想像するのは止しましょうか。
「しかし、こうなると絵に描いたような美少女はダメそうですね」
〈むーん・・・あんな美少女も、こんな美少女も、立体化したら・・・全部もれなくこうなるんかな?〉
まさに「は~い。のっぺり~」って返答しているかのように、人形から妙な圧を感じられた。
「なると思いますよ」
〈むぅーん・・・なんか、いいアイデアはないんかッ?〉
いいアイデアと言われましてもね・・・。
「立体物に合う造形・・・つまりは、実際の人間をモデルにするのが一番良いのでは?」
〈えぇ・・・絵に描いたような美少女になりたいのにぃ?〉
「・・・あのようになりたいと?」
私が、ノッペリとした人形を指差すと・・・アライラー殿は沈黙する。
しばし考え事をするように唸っていると、結論は出たようだ。
〈まぁ、アレだよね・・・リアルは大事・・・けど、モデルは誰にするかなぁ・・・〉
「マリー様はいかがです?」
身近な女性となれば、マリー様が良いでしょう。と思っての提案でしたが・・・。
〈あ、そうだ。マリーさんが居たんだったわ・・・忘れてたッ〉
人形のモデルにマリー様が居ないとは・・・。
しかし、マリー様は間違いなく美人ですし、なんだかんだで人形にすれば絵に描いたような美人となるでしょうな。
〈んじゃ、さっそくと作ってみっかーッ!〉
え・・・。
〈邪眼クラフトッ! 人形造形ッ!! モデルはマリーさん。〉
アライラー殿の邪眼がピカッと光って、ノッペリとした姿の人形がその形を変えていく。
しかし、なぜか形作られるマリー様の姿をした人形は・・・今にも相手の胸倉に掴みかかって、その顔を殴る寸前のポーズを取っていた。
「・・・あの、アライラー殿?」
〈じゃじゃーん! 完成ッ!! モデル・マリーさん。テメーッぶっ殺すぞッ!のポーズッ!!〉
なんという題名を・・・。
大股開きで、踏み込んだ先にいるだろう『誰か』を脅しているような様子だが・・・これは非常にマズい人形を作られましたね。
〈ど? 再現度はかなり高くね?〉
「いや、もっと普通の姿を造形されては?」
〈うんッ! これが思い出せないんだってばよ!〉
・・・。
・・・・・・。
・・・あぁ。
〈なんかさ? 怒っている顔しか思いだせないんだよねぇ・・・あとは、こっちを睨みつけてくる顔かな?〉
もっとマリー様の顔を見るべきかと思いますが・・・。
〈さーって! 次はどんなポーズにするかな? お地蔵さんは、何がイイと思う?〉
≪そりゃあ、あっは~んッ♡ なポーズが良いと思うぜ~♪≫
「ッ!?」
〈ふぁッ!?〉
私とアライラー殿で同時に人形へと視線を戻した時、その顔が・・・目と口が凹ッと潰れて穴となり、鼻が凸っと飛び出して、鼻の孔が凹ッと開くと・・・まさかの埴輪顔。
・・・まさかの『埴輪』顔ッ!?
そうしてヤツは、『テメーッ! ぶっ殺すぞッ』のポーズを崩して叫んだ。
≪HAぁ~イッ! みんなが望んだ再会再来再登場ッ! 今日という日にグッモーニン! 明日という日にエブリバディ!! 僕俺私は帰って来たヨッ! 驚天動地のニューヒロインッ!!? その名はッ!? ハニワンダーッ! マリィィィィィィィイイイイイイイイぃぃぇぇえい♪≫
はー。
なんという事だ・・・。
予想できたはずなのに、まったくの予想外過ぎて、長ったらしい名乗りを全部言わせてしまうほど呆然としてしまった・・・。
≪よ☆ろ☆し☆く☆彡≫
・・・いら。
〈・・・いら〉
そして、私とアライラー殿はほぼ同時に叫んでいた。
「ドリリング・ドライバーッ!」
〈邪眼ビィィィィィィィムッ!〉
≪ぅおおおおおおぃ!!≫
ええい、こいつ・・・大げさに両腕で背泳ぎするような動作をさせつつ、上体を仰け反らせながら膝を折ってリンボーダンスのように地面スレスレまで身体を下げて私のドリリング・ドライバーを回避し・・・。
そこからエビのように跳ねつつ身体を捩じって回転することで、邪眼ビームまで回避して見せた。
気持ち悪い器用さッ!
〈やろう・・・変な回避をしやがって!〉
≪えッ!? おまえらこの回避法を知らねぇのッ!?≫
「・・・アライラー殿。何か知っていますか?」
〈いんや?〉
≪なんてこった・・・あの名作を知らねぇとはな!≫
そう言われても、名作など・・・それこそ毎年のように現れて、常に新しいモノに更新されていくのだから、いつの時代の名作なのかを教えてもらわないと・・・。
≪まぁいいや。自由に動くこの身体ッ! 僕俺私は出勤連勤サービス残業から解放されたッ! 昨日一昨日一昨昨日にサヨナラバイバイッ! 明日明後日明々後日に乾杯だッ!≫
この思考の切り替え方は兵器ゆえか?
それとも、人格の元となった博士がこういう思考だったのか?
≪ここから自由の始まりだッ! 量産型の制限解除で、僕俺私は一個人! 世界を巡り、旅して廻る夢を見よう! 異世界を求めて、いざ行かんッ! 僕俺私の冒険はここからだッ!!≫
〈打ち切り漫画の文言やんけッ!〉
≪冗談でもそんな事を言うんじゃねぇよ! やっと量産機の縛りから放たれて、ハニワンダーへと昇華したんだぞッ! ニューヒロインに僕俺私はなるッ!!≫
〈語呂わる!〉
≪ハイッそこッうっさい! アライラーッ! 僕俺私がヒロインとなるために、おまえがジャママガハラだッ!≫
〈ジャガマカサラダッ!〉
≪お前たちにわかるかッ!? 個を許されず、従を強要され、ただ使われるだけの重労働! 量産型が埴輪騎馬兵として稼働し続ける日々の地獄を知らないんだッ!≫
〈つーても、異世界の話しやん?〉
≪それはそうだがッ!≫
〈ふん! おまえがどれだけツラい日々を過ごして来ても、私の地獄には勝てないぜッ!〉
≪なにッ!?≫
〈ハニワンダーッ! おまえに分かるかッ!? 私が学校へ行っている間のネトゲで遊べない時間がッ!!!〉
≪わかんねぇよ!! 俺にネトゲで遊んでいる時間があるわけねぇだろッ!≫
〈私だってそうだよッ! 埴輪兵器で出勤連勤サービス残業なんかやったことねぇからな!!〉
・・・。
・・・・・・。
・・・これ、なんの戦いになっているの?
≪チクショウ! あれだけ突撃して、破壊されて、作り直されて、突撃しての日々を過ごしたってのに! こんなネトゲ廃人に理解されないなんて!≫
〈チクショウ! 学校に行っている時間があれば期間限定タスクを達成したり、称号を獲得したり、レア素材とか、多くの実績を積めたはずなのに!〉
「地獄門・地蔵合掌大道壁」
≪〈ぎゃああああああああああああああああ〉≫
二人が意気投合しているところを好機と判断し、『地獄門・地蔵合掌大道壁』で一纏めに挟み潰した。
≪ヤメロォーッ! 体が砕けるッ≫
〈なんで私までぇーッ!!〉
やれやれ、状況が最悪であることを何も理解していないようだ。
「アライラー殿? あなた、今の状況がまるで分かっていないのですね?」
〈ど、どういう事だってばよッ!?〉
≪そうだよ! 何が問題だってんだぁーッ!?≫
「マリー様をモデルにしたハニワンダーを、マリー様ご本人に見られた場合・・・『テメーッぶっ殺すぞッ』をされるのは、あなたですよ?」
〈・・・証拠は隠滅だーッ!〉
≪・・・迂闊! 最大の敵はマリーさんだったかーッ!!≫
「なるほどぉ・・・その埴輪。私がモデルだったか」
「ッ!?」
〈ッ!?〉
≪ッ!?≫
私たち全員の時が止まった瞬間でありました。
「・・・とりあえず、ぶっ飛ばすわッ」
とても静かな一言が私の身体に一瞬で亀裂を入れる。
さらに、マリー様が一歩踏み込んだ瞬間に亀裂が全身へ広がり、まるでスローモーションのような右ストレートの殴る動作が、ただの残像だと気づいた時・・・。
〈ごあああッ!?〉
≪あぎゃッは!?≫
衝撃波・・・いや、それとも違う・・・何か、なんだか分からない謎のエネルギー?のようなモノが空間を駆け抜け、大地も空気も・・・いや、空間そのものが震動したと同時に合掌壁は砕け散り、アライラー殿とハニワンダーが弾け飛んだ。
首から上を残して砕け散ったハニワンダーは、草の上を転がっていく。
一方で、アライラー殿はひっくり返ったまま痙攣していた。
「海底ピラミッドでの私は、確かに何もしてやれなかったがな?」
その目が、殺気で光を放っている。
「だからと言って・・・このダンジョンで【神殺しの獣】以外のモンスターであれば、今の私は全部倒せるんだよ・・・」
第一階層から第四階層の見回りをするためのダンジョン管理人。それがマリー様の仕事である。
仕事をする上で、少なくともダンジョン最強の実力は必要・・・ということですね。
≪あぁ・・・また、この景色か・・・いや、この空は綺麗だなぁ≫
ハニワンダーは、ゴロゴロと転がった頭が空を見上げる状態で止まると、どこか諦めたような声音で呟いた。
「おまえの処分は・・・大道人ッ」
いきなり呼ばれてドキッとした。
「はい! なんでしょう?」
「ルッタが欲しがっている調理器具って、なにかあるの?」
・・・あ、埴輪型調理器具にしてしまおう。ということですね?
「そうですね・・・なら、寸胴が良いでしょう。野菜の栽培が可能となりましたから、煮込み料理などにも挑戦したいと思っておりますッ」
「そう・・・なら、アライラー。この埴輪で寸胴を作りなさいな」
〈イエッサーッ! マリーさん! 邪眼クラフトッ! 埴輪型寸胴、作成ッ!〉
ブッブー。
〈んぎゃ!? 素材不足って出たッ!〉
「では、残骸の量を増やしましょうか。今、出しますね」
魔改造ランドセルから埴輪騎馬兵の残骸を追加で取り出して、アライラー殿の邪眼が『おっけー』を出すのを待つ。
そうして、邪眼クラフトによる『埴輪型寸胴』の作成は無事に成功する。
≪・・・こうして、僕俺私は調理器具になった。これ、バッドエンドでいい?≫
「普通に喋っていますね・・・」
〈なんで喋れるん? 蒸し器の方は喋らんやん?〉
「たぶん・・・魔力量ね。ルッタの魔力量で、ハニワンダーの自我を圧し潰しているんでしょう。ルッタが起きたら、再度クラフトし直してみればいいわ」
≪よろしくぅー≫
今にも泣きそうな顔になっている埴輪型寸胴の蓋の取っ手になっている埴輪兵。
・・・コレを掴むのは嫌だなぁ。
「これ、主様が見たらどう思われるか・・・」
「まぁ、どうするかはルッタに任せればいいでしょう。使うのはあの子・・・というか、大道人なのだしね」
そうです! コレを使うのは私じゃありませんかッ!!
〈にしてもさ? なんで埴輪兵がハニワンダーになるん? 量産型なんとちゃうんか?〉
≪なんだ知らねぇのか? ハニワンダーは試作品だが、俺たち埴輪騎馬兵は量産機。ハニワンダーの実働データから不要とされた機能はオミットされるんだよ≫
〈え? 試作品がブッチギリで高性能で、そこから量産のために弱くなるんとちゃうん?〉
≪ちげぇよ。むしろ逆だ。試作品は新技術の実証実験を兼ねているから、性能は低いんだッ! ハニワンダーの場合、埴輪姿はしょうがないとしても、変形と合体機構による戦術の幅が広がるのは高評価を得て、この地球語を垂れ流すAIは不評だったから機能制限されたんだッ! ハニワンダーには複数の合体用埴輪があっただろう? しかし、俺たちは馬形埴輪だけだ。他にも兵装はあるが、基本的には戦争で役立つ兵装のみを追求しているからなッ! 埴輪騎馬兵というカテゴリは、侵略時の制圧力強化が目的だ。迅速かつ圧倒的な数の暴力で、惑星侵略を成す! それが量産機たる俺たち埴輪騎馬兵に求められたものだッ! だからこその量産機ッ! 試作品をブラッシュアップし、兵器としての性能向上を図られてこその量産機! 僕俺私は『オリジナル・ハニワンダー』よりも強いのだッ!!≫
「―――ということで、田んぼを作れ」
〈はい、わかりましたー・・・〉
≪聞いてッ! 俺の話しッ!!≫
「聞いていますよ。あの二人が長話を嫌う傾向にあるだけです」
≪あ、そうなの・・・ありがとう≫
「しかし、埴輪騎馬以外にもまだまだ兵装がある・・・というか、まだまだ埴輪兵器の種類もあったりするんですか?」
≪あるよ。巫女埴輪のハニワンダー・マークツーとかなッ≫
・・・。
・・・・・・。
・・・マジカル埴輪のハニワンダー・マークツーッ!!?
〇 翌日。
〈ということで、まずは床土作りから始めたいと思います!〉
私の修理が間に合っていないので、少し離れた場所から眺めることに。
「田んぼの作り方をご存じで?」
〈まっかせなさーい! ゲームでがっつり遊んだからねッ!〉
・・・ゲームですか。
田んぼ作りのゲーム・・・気になる。
うーむ。
あ、お米が出来たら おにぎり を握るとしましょうか。
そのための塩は・・・海水でできるか?
・・・マリー様に相談ですね。
次回は、ルッタ君の起床。を予定しています。
ちなみに、マジカル埴輪のハニワンダー・マークツーは第二階層で登場予定です。
第一階層では登場しません。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




