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53 ――VS クレイセンゼイマム

あけましておめでとうございます。

こんにちは。こんばんは。


今年も、よろしくおねがいします。


最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

〈鑑定!!〉



『クレイセンゼイマム。当世界で好き放題遊び回る『悪の神々』が、持ち込んだ異世界の大型モンスターを狩猟するために造った戦闘用大型機械天使。大規模な狩猟大会を開催するべく、全部で八体のクレイセンゼイマムを完成させると、大会に参加する予定の悪神へ「好きにカスタマイズしていい」と配られた内の一機。外見の変更点はカラーリングと頭部装甲の額にV字型の角を天使の羽で再現する装飾を追加した程度に抑えられており、内部機構を重点的に手を加えたことで元のクレイセンゼイマムより性能の向上に成功している。しかし、突如発生したバグによって【神殺しの獣】が現れた事が、ある種の不幸と言えるだろう。改造をいち早く終えていたクレイセンゼイマム一号機と操縦担当の悪神が【神殺しの獣】に挑み、塵も残さず消滅した。これにより、当機を含めてクレイセンゼイマムシリーズはお蔵入りすることとなった。ダンジョン化した後、しばらくしてからウィッチが発見することとなる。ここに残っていた七体の危険度を調べたことで、春、夏、秋、冬の各区画に移された。当機体は見つかった七体の中で最も脅威度が低かったため、春の区画に残されたモノである』



 この【災厄の壺】のオーナーと言われる人物が、ダンジョン化してしばらく気づかなかったぐらいには、存在感がなかったのか・・・。

「あー。あの時は大変だったわねぇ・・・」

〈どう大変だったん?〉

「大変だったんですか?」

 アライラの翻訳をしつつ、シミジミとした様子で昔を思い出すマリーさんに話を聞いてみたいと思う。

「今する話しではないわ。目の前の敵に集中しなさい」

 ・・・おっしゃる通りです。

 

 まずは鑑定より得た情報から、クレイセンゼイマムがモンスターを狩猟するための道具として建造されたロボット兵器であることは分かった。

 大会・・・そして悪神に渡された・・・とあることから、よくある乗り込み型のロボットなんだろう。

「マリーさん。アレを動かすには操縦者が必要ですか?」

「ええ。リモコン操作ではない、直接操縦席に乗り込んで操縦するタイプのロボットよ」

 やっぱりそうなんだ。

「AIのようなものは積んでいるんでしょうか?」

「いいえ、狩猟大会用だから操縦者の技量が試されるように出来ているわ。つまり、完全なマニュアル操作で動かす仕様になっているの」

 ・・・あんな巨大ロボットをマニュアル操作するの?

 悪でも神様だから、それぐらいはできる。ってことなんだろうか?

「・・・誰が乗っていると思いますか?」

「十中八九・・・ノイズでしょうね」

 やっぱり、そうなりますか。

「マリー殿にも、アレが見えているのですな?」

「ええ。美しい天使の羽を模した推進器の光を・・・よくもまぁ、あそこまで虫の羽みたいなノイズ塗れにしてくれたモノよ・・・」

 あ、マリーさんがキレ気味だ。

 クレイセンゼイマムに何かしらの思い入れでもあるのか?と邪推するが、今は配慮する時でもない。

 残念だが、スクラップにしてやる。

「マリーさん。アレをスクラップにしてもいいですか?」

「もちろんよ。過去の遺物だもの・・・思い出を汚されては堪ったもんじゃないわ」

「では、主殿・・・私の方でも支援を致します。お疲れでしょうが、もうひと踏ん張りです」

 地獄変を召喚する道標人が、俺の横で巻物を広げると何かしらの補助操作をしてくれているようだ。

 それが何かは不明だけど、俺の邪魔になるものでないのなら頼るのみ。

 正直・・・もう休みたい。頭痛い。


「と、いうことだ・・・もうひと暴れ、やるぞ。アライラ」

〈どんとこーい!〉

 邪眼に魔力をチャージし始めて、すぐにでも攻撃可能な状態にしておく。


「「「「「「ごきげんいかが??????」」」」」」


 ノイズに塗れた光るランスをこちらへ突き出して、全身の各部位より生えている羽・・・その中でも背中より生えている計10枚の羽がひと際眩しい光を放つと、接触不良を起こしている電灯のような点滅をしながら、奴の姿が消えた。

 いや、そう見えるだけで、ヤツは真っ直ぐにこちらへ突進してくるだけのようだ。

 一挙手一投足を見逃さないようにしていた俺でも消えたように見えるのだから、加速力は相当なものであると確認する。

 ここで俺が取るべき行動は、回避ではない。

 この消えたと錯覚するほどの速度であれば、左右に回避などしている暇はないのだから、正面から迎撃する以外の手段はない。

 この『ドリリング・ドライブ・ロケット・ブースター』を最大出力でぶつけるだけだ。

 投げているだけの余裕も無い。

 このブースターノズルに業火を点火して、爆発的加速を以て正面より衝突させる。


ざぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお


 テレビの砂嵐と金属同士の切削音が混ざったような音が鳴り響き、ノイズ塗れの火花が周囲へと撒き散らされる中で、クレイセンゼイマムの突進力に押されて艦船ドックの縁に背中を押し込まれる。

 この圧で、ドックの縁が砕け・・・その破砕音が背に響いてくる。

 奴の推進器が起こす押し込む力に、巨大道人ではパワー不足だとハッキリ分かる。ロケット・ブースターの火力を以てしても、ジリジリと押し込まれるのだから。

「ドリリング・ドライバー!」

 両手で掴んでいた『ドリリング・ドライブ・ロケット・ブースター』を、左手のみ離して、クレイセンゼイマムへドリリング・ドライバーを放つ。

 先にも同様の・・・地獄変を召喚して巻物を解き、螺旋状に回転させながら射出することで、超簡略式ドリリング・ドライバーとなる。

 ・・・トイレットペーパー型のバグモンスターと戦った経験から、咄嗟に思いついたが・・・結構便利だな。

 クレイセンゼイマムは、超簡略式ドリリング・ドライバーを避けるべく、突進を諦めて直上へ急上昇しつつ後退していく。

〈むーん。なかなかどうして、私の技がるっちゃんに簡略化されてるやんか〉

「君のおかげで、思いついたモノだ・・・君の技であることに変わりは無いよ」

〈むふーん。とーぜん!〉

 

 クレイセンゼイマムが離れてくれたので、すぐに身を起こして態勢を立て直すことにする。

 しかし、アレほどの加速が可能なら・・・一気に畳み掛けることもできるだろうに。何を狙う? 様子見のつもりか?

 この巨大道人は、海中では浮力のお陰である程度の機動力を得られたが、海上に出てしまうと重すぎて動きにくくなる。

 機動力の差は歴然だ。

 ・・・まだ、クレイセンゼイマムがその差に気づいていないだけだろうか?

〈るっちゃん! アイツッ!! ビームを撃ってくるつもりだよッ!!〉

「ビーム!?」

 ハッとして、意識をクレイセンゼイマムの現状へ戻す。

 かの天使型ロボット兵器は、その左腕に装備した巨大な円盤盾を翳して、こちらへ突き出して来た。

 盾に刻まれている模様・・・どこぞの滅亡した古代文明の文字に似ているソレらが、八つ。等間隔に刻まれており・・・一つずつが、時計回りに光を灯していく。

 ・・・分かる。

 その古代文字みたいなモノが光るたびに、アライラの邪眼バスター・ビームと同等の圧が発せられ、巨大道人越しに俺の肌を刺してくる。

 そんな文字が八つあるということは?

「アライラッ!! 一点集束ッ!!」

〈八連邪眼!! バスタァァアアアアッ! ビィィィィムッ改ッ!!!〉


 俺の言葉に合わせて、八つの邪眼に充填された魔力を一点に集束させて、ただ一つの圧倒的破壊力を持つバスター・ビームとして放つ。

 同時に、八つの文字が光りを放ち・・・それら光が円盤盾の中央へと束なると・・・アライラのバスター・ビームと同じ輝きを持つ特大ビームが発射される。

〈わ、私と同じ!?〉

 二つの同じ輝きを持つビームが激突すると、激しいスパーク現象を発生させて押すことも出来ず、当然引くこともできない二つのビームは次第に膨れ上がっていく。

「威力は互角か」

 どちらかの力が弱ければ、間違いなく押し込まれていただろうビームの激突も、まったく互角となれば後は爆発するだけだ。

 俺は『ドリリング・ドライブ・ロケット・ブースター』のブースターノズルとなっている傘部分を前に突き出して、盾とした。

「アライラ! バリアを展開できるだけ展開してくれ!!」

〈おっけ! 八連邪眼バリアッ!!〉

 傘だけでは足りないと思い、大急ぎで魔力を再充填しつつアライラへ指示を出す。

 即座に展開できたのは、バリア四枚。上出来だと思う。これらを構えて防御姿勢を取ると・・・誰がどう見ても膨張限界な二つのビームが・・・。

 

 そして、大爆発した。


 巨大道人の視界が閃光一色に染まり、巻物モニターがなにも映せなくなってしまうと共に、とんでもない震動が巨大道人の全身を襲い、あまりの爆圧にこの身体が持ち上げられてピラミッドの奥へと押し込まれていく衝撃を知覚する。

 何かに激突しては粉砕するような音と共にゴロゴロと転がり、アライラが悲鳴を上げる。

〈あだだだだだあぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃああぢゃだぢゃだぢゃだぢゃだ〉

 ・・・器用な悲鳴だな。

 逆に俺の頭が冴えたので、ありがとう・・・アライラ。


 外が静かになり、巨大道人の巻物モニターが外の様子を映してくれたので、頭を動かしつつ周囲を確認し、身体をゆっくりと起こしながらクレイセンゼイマムを警戒する。

〈いだだだだ・・・身体も結構焦げたぁ〉

「ほら、『カタチナセ』」

 アライラのダメージを急ぎ修復して、周囲にクレイセンゼイマムの影を探る。

〈にしても、なんだよッあのビームぅぅぅううううう!!!〉

「君の邪眼も、クレイセンゼイマムも、神の造物品だとすれば・・・おかしいことはないさ」

 悪の神も、邪神も、括りは同じ神なのだからおかしなことないだろう。

〈型落ち品を寄越したんかッ!? あのクソボケ神野郎ッ!!!〉

 あー、そこが不満のポイントなのかー。

 確かに・・・型落ち品と言えばその通りだ・・・このダンジョンはこの世界で数万年前からあるという・・・そして、アライラの邪眼はこの世界で数年前。

 新品のはずなのに、一点集束、八連邪眼バスター・ビーム改は・・・数万年前の悪神が造ったクレイセンゼイマムというロボット兵器の円盤盾から放たれたビームと同威力だった。

〈こっちは『改』やぞ!!『改』!! んなのに!! なんであんな数万年前の型落ち品と相殺しあってんだよぉお!!!〉

 ・・・。

 ・・・・・・何も言えん。

 つか、俺の魔力供給が原因とも思うが・・・言わないでおこう。これ以上の威力を求められても、今は身体が持たないからな。

 

 クレイセンゼイマムの姿を求めて、改めて周囲を見回してみるも・・・姿が見えない。

 海底ピラミッド内部は、まさに崩壊していた。

 施設を区切る壁などは吹き飛び、融解して焦げている施設の残骸が山となって散乱している有様だ。海底ピラミッドがピラミッドとして健在なのが、むしろ不可思議だ。

 パラパラと、上の階にわずかに残っている施設の一部が粉みたいに降ってくる。

〈るっちゃん。あそこ・・・〉

 アライラが前足をビシッと伸ばして指し示す方へ、巨大道人を向け直す。

 そこは、艦船ドックがあったのだろう地点で・・・海水は蒸発して縦穴のようになっている場所だ。が、その縦穴から海水を滴り落としながら浮上してくる機械天使が現れる。

 まだ、底の方には海水が残っているようだ。

 

 それにしても、完全に陸上に運ばれてしまったが・・・巨大道人の動作がどうしても遅い。


「アライラ。四連邪眼で巨大道人の動作にバフを掛けてくれ」

〈動作にバフ? えーっと? それっとどういうバフなん?〉

 ・・・確かに、そう言われると分かり辛いか。

「ゲームなどでキャラクターの機動力を向上させるようなバフでいいんだけど」

〈ほーん? ま、何が効くか分からんしー。四連邪眼!! バフ・ブースト!!とりあえず、名前は後できめなおすぜー〉

 お好きにどうぞ・・・。

 彼女の邪眼によるバフ効果により、巨大道人の足取りが軽くなると共に、武器も軽く感じられるようになり、問題だった動作がスムーズになる。

 ただ、このバフを維持するのは俺の魔力なので、あまり長時間を掛け続けるのはキツイことになる。

 短期決戦に持ち込みたいが・・・。

 どう攻めるのがいいか・・・空を飛ぶクレイセンゼイマムとの戦闘も地上で行うのが望ましいし、ビームの撃ち合いも互角となれば避けたいところだ。

 

「「「「「「もぉーいーかーい?」」」」」」


 ・・・は?

 クレイセンゼイマムが、妙な言葉を発しながら・・・そうして地上へと虫の羽みたいなノイズ塗れの羽を増大させて加速しつつ、急降下からの攻撃を仕掛けてくる。

 盾を構えながらの突進を、槍をぶつけることで抵抗するが、盾を押し込むことでこちらの態勢を崩しにかかり、クレイセンゼイマムは再び急上昇して距離を取ってくる。

 巨大道人を踏ん張らせて、なんとか姿勢を戻すことに成功し、再びの攻撃に備える。

「ちぃ」

 思わず舌打ちをしつつ、上空を睨む。

〈うひー。ヒットアンドアウェイ!ってヤツだね・・・どっする?〉

 どうする?と言われても・・・な。

 再度の急降下から、今度は槍を突いて来たので傘で受けて槍の向きを反らしつつ、こちらの槍で反撃を狙う。

 しかし、盾で防がれて再び急上昇から距離を取られる。

「・・・埒が明かないな」

 ヤツを見上げた時、どういうわけか、ノイズがわずかにクレイセンゼイマムの口を象るように出現して、ニヤッと笑うように動いた。

 と、再度の加速から急降下をしてくる・・・のは同じだが、速度が明らかに上昇しており、先と同じタイミングで迎撃したらやられてしまう。と、俺は即座に合わせる。

 これを凌いで・・・しかし、間髪入れずにさらなる加速で仕掛けてくるクレイセンゼイマムに、俺は焦りを覚えた。

 なぜなら、速度が増しているのと同時に、俺の動体視力では追えなくなりつつあるからだ。加速に限界がないように、クレイセンゼイマムの機動は線へと変化していく。

 すぐに目で追うのを止めて、耳から得られる音と、直感だけで耐える。

〈るっちゃん! 右からくるくる! 左に上から下の右横斜め後ろ!!〉

「何を言っているのかさっぱり分からないよ!!」

 俺が、モタモタとしてる様子に我慢できない。という感じでヤツの動きを教えてくれるアライラ・・・。

 ・・・んん?

「アライラ!? あの動きが見えるのかッ!?」

〈え? うん。見えるけど?〉

「どの程度ッ!」

〈どの程度て・・・えーっと、スーパースローカメラってあるやん? あんな感じ?〉

 ・・・彼女の目って、そんなにスゴイの?

 いや、だけど、それならば!

「アライラ! 君の視界を俺に繋げてくれ!!」

〈え? どうやって?〉

 どうって・・・どう? ええい、説明する手間が惜しい!

「俺が直で繋ぐ!!」

 天井に・・・アライラへすでに刺さっている錫杖が一本ある。これが、彼女への魔力を充填するための錫杖となっているが・・・俺は錫杖の輪を掴んで魔力の線を伸ばし、地獄変を新たに召喚してから小さい錫杖を作って・・・俺の こめかみ に突き刺した。

 俺の視界がブレて、アライラの視界を強制的に繋ぐ。

 目から涙が、鼻から水が垂れだしてくるが、気にしている余裕はない。

 マリーさんと道標人が、何か騒いでいるようだが・・・それこそ気にしていられない。


「本当に、スーパースローカメラみたいな視界だな・・・」


 俺の目にはもはや線すら見えなくなってきたクレイセンゼイマムが、残像を残しているようにゆっくりと移動している姿をハッキリと視認できる。

 ああ、そっちから来るのか。

 でも、まだだ・・・奴の動作が見えているとはいえ、急ぎ過ぎてはいけない。

 奴の攻撃よりも先に、こちらの攻撃を当てに行く。そのタイミングは、紙一重の先行を狙わないといけない。

 早過ぎれば、回避される。

 遅すぎれば、攻撃を受ける。

 ・・・彼女の眼が捉える・・・クレイセンゼイマムをよく見ろ。

「・・・ここだ!」

 クレイセンゼイマムが攻撃姿勢に移り、槍を突き出そうとする動作の刹那に、俺の攻撃を割り込ませるようにして『巻蛇槍貫撃』を差し出すように向けた。

 これに、ヤツは驚いたような挙動で緊急回避を行い、そのまま姿勢制御に失敗して地面を転げまわりながら、瓦礫の山へと突撃していく。

〈おー・・・ストラーイク!〉

 ・・・。

 まぁいいや・・・。

 こめかみ に挿した錫杖を引き抜き、視界を自分のモノに戻す。

 頭痛が激しいけれど、まだ我慢は可能だ・・・けれど、キツイな・・・。

「ん? これ・・・」

 何気なく、鼻から口を伝って垂れていた水を拭うと、血であることに気づく・・・また、涙の方も確認してみれば、血だった。

 ・・・そうか、アライラの視界をムリヤリ繋いだから、俺の脳に負荷がかかったんだ。

 

 どぉん


 そんな音を立てながら、瓦礫を吹き飛ばす光はノイズ塗れの羽。

 クレイセンゼイマムの推進器より放出されるエネルギーが、ヤツを加速させて・・・足が地上を軽く削りながら、端から見れば滑るように突進してくる。

 そして、盾をこちらに構えていることから、邪眼ビームを警戒していると見た。

「ならば!」

 こっちもクレイセンゼイマム目掛けて走り出す。

〈ちょ!? ちょちょ!!?〉

 アライラが動揺しているが、そこは今気にするところではない。

 出遅れて加速もままならないが、クレイセンゼイマムは盾をこちらへ突き出して突撃を敢行してくるので、こっちは盾を正面から抱き着くようにして受け止める。

 この際、巨大道人に跳ねさせることで敵の突進に対する抵抗をせず、押し戻される勢いを利用して着地し、地面を抉りながらブレーキを掛ける。

 こっちは石の塊だ。質量とか含めてクレイセンゼイマムよりもずっと重いのだから、止められないわけがない。

 さらに、盾に抱き着くようにしているため・・・アライラの邪眼は盾よりも上の位置にある。

「今だ! 二連邪眼バスター・ビーム!!」

〈あ! 二連邪眼! バスター・ビーム改!!〉

 まったくもって、意識に無かったと言わんばかりの〈あ!〉だなッ!?

 そんな事を思うも、即座に発射される二つのバスター・ビームは、クレイセンゼイマムの頭部を含めた上半身を吹き飛ばす・・・はずだった。


「な!?」

〈アレはッ!!〉


 目を剥いた。

 決まった。と思ったバスター・ビームは、突如として水のように『バシャア』と崩れて勢いも力も失い、クレイセンゼイマムの顔から上半身を濡らしたように熱を浴びせるだけとなる。

 高熱に装甲が音を上げ、急激に冷やされているのか? 煙が噴き上がって熱による変色も収まっていく。

 ・・・あのノイズ塗れのV字アンテナ。

 俺の眼が正しければ、ビームが命中する直前に、頭部あるノイズ塗れに光るV字アンテナが明滅したように見えた直後、ビームが勢いと力を失ったように思う。

〈アレだーッ!〉

「なにが!?」

 とにかく、クレイセンゼイマムの盾から離れて、バックステップで距離を取りつつ、なにやら興奮しているアライラの話を聞くことにする。

 一方で、クレイセンゼイマムはビームの熱で頭部が不調になっているのか・・・特に追撃も反撃もして来ない。その場にて冷却装置?のようなモノが装甲を冷やしているように見えた。

〈私が麒麟モドキと戦った時に、八連ビームをブッパしたけど当たんなかった!って言うたやん!?〉

 ・・・。

 ・・・・・・あ、うん。そんな事を言っていたような気もする。

〈あんな感じだったんよ! こう! いきなり! なんかこう! あんな感じで! こう!〉

 ・・・まぁ、雰囲気は分かるので良しとする。

「つまり、アレは【神殺しの獣】と化している・・・ということか?」

〈ヤバくね?〉


「いいえ、そうとも言えないわ」


 マリーさんが、俺の頭に包帯を巻きつつ言う。

「アライラのビームが無力化された事で、アレを【神殺しの獣】と判断したと予測するけれど、無力化の仕方が中途半端ね。本来なら、あんな水のようになりすらしないわ」

〈あ、確かに。あんな感じでビームが弾けて消えちゃったしッ!〉

 ・・・もうちょっと詳しい説明ができるようになってくれ。

「それにクレイセンゼイマムの装甲が熱で変色していることから、機体自体は【神殺しの獣】ではない。と見ると・・・おそらくは、あのノイズが【神殺しの獣】と化しているが、それも中途半端なバグ進化をしていると考えられるわね」

「ふむ・・・つまりは、付け入る隙が大いにある。ということですな?」

「その通りよ」

 なるほど。

 一番最初に見た・・・あの麒麟モドキを思い出す。

 それから、今のクレイセンゼイマムと比較してみれば・・・確かに、あの麒麟とは違って、大した威圧を感じない。

「アライラ。特に気にしないでいいよ・・・ノイズはまた別口だ。まずは、クレイセンゼイマムをぶっ壊すことに集中する」

〈・・・うへへ。オッケーッ! やりましょか!!〉

 とはいえ、あのノイズに干渉される距離というのも警戒しないといけない。

 邪眼バスター・ビームを無力化・無効化された事実は確かなモノで、その効力がどの程度の距離まで届くのか?は、今のところ不明。

 その上、こっちは機動力向上でバフによるブースト中だ。・・・これを妨害されれば、不利になる。


 距離を取りたいが遠距離攻撃はアライラ頼みだし、近接戦をしようにも巨大道人の機動力さえアライラ頼みだ。

 押してダメなら引いてみろ。引いてもダメなら?

「なぁ? アライラ」

〈うーん?〉

「押してダメなら引いてみろ。と言うけれど、引いてもダメならどうする?」

〈ぶっ壊すッ!!〉

 やっぱり、それが最適解かー・・・ふふ。

「よし! 行くぞッ!!」

〈おうともさッ!!〉

 巨大道人を走らせた。

 装甲の冷却は不十分であるようだが、こちらの動きに反応して盾を構える・・・また?

 奴には空を飛ぶことだてできるし、盾を構えるならビームをチャージすることもできるだろうに、それをしないのは何故だ?

 走り込みながら、その盾へと右手の槍を・・・棍棒と間違えている気がするのを自覚しつつ・・・叩きつける。

 激突音を響かせて火花が散った・・・直後。

 

 クレイセンゼイマムは盾を振るって、激突した槍を弾き払った。

「ッ!?」

 左腕を振るった力を利用して、クレイセンゼイマムの右手に装備されているランスが巨大道人を突くべく迫ってくる。

 これに、左手の傘をぶつけることで槍の軌道を反らし、傘を開くことで槍を弾く。と、左腕の盾で殴りかかって来たので、右手の槍で受け流しつつ押し合いを始める。

 互いに一歩踏み込んで、盾と槍の押し合いで睨み合った。

 クレイセンゼイマムの槍がこちらへ切っ先を向けているのを見て、俺も左手の傘をヤツに向けておく事で、素早く対応できるように構えておく。

「アライラ! 二連邪眼ビーム!」

〈二連! 邪眼ビーム!!〉

 少しの距離が開いたなら、ビームを撃って牽制を行う。

 額のV字アンテナっぽいノイズの光が、ビームをただのお湯みたいにして無力化してくるが、それで十分だ。

 再び間合いを詰めて、槍を突く。

「地の深淵に、我が力を持って求める!」

 俺の突きを見て、クレイセンゼイマムは丁寧な動作で盾を構え直して防御の姿勢を取る。

「地獄能・巻蛇掘削槍転撃・業火刃」

 今現在、俺が使っている『地獄能・巻蛇槍貫撃』を変形させ、鎖を増量して作る掘削用の槍。鎖を構成する環の部品より業火が噴き出して、ヤツの盾と激突する。


 ざあああああああああ


 そんな音を立てると、盾が激しい火花を散らし始めて装甲の表面が黒ずむとその下からノイズが現れる。

「なに!?」

 盾の下からノイズ?と思ったが、どうやら盾の表面にノイズを展開し、その上に盾を表示していたみたいだ。ノイズの下に盾が出てくるが・・・盾ビームを放った際に光っていた文字のようなモノが光っている。

「盾ビームを隠していたのか!?」

 いつの間に!?と、思いつつもこれをこちらに向けているということは、放つつもりなのは分かる。

 しかし、文字の光はまだ中途半端だ・・・すぐには撃ってこない。という考えも思い浮かぶ。対処への迷い。次の攻撃をどうするか?に対する隙。

 

 掘削槍によって、盾の表面を隠してたノイズが全て剥がれると・・・光を放つ文字から円盤盾の中央へエネルギーが集束しているのを見る。

 完全なチャージ不足であっても、隠して置けないと判断した上での攻撃に転じるつもりのようだ。「

「アライラ! 前面に四連邪眼バリア!」

〈四連邪眼! バリア!!〉

 同時に、地獄能・巻蛇掘削槍転撃・業火刃を後ろへ下げて、地獄能・巻蛇傘盾壁鎖槍をバリアよりも前へ突き出して、傘を広げる。

 直後に、傘を回転させつつ傘を形成している鎖の環の部品より業火を噴射した。

「纏い業火!! 壁鎖の転盾!!」

 同時に、盾ビームが光り輝いて『地獄能・巻蛇傘盾壁鎖槍』と激突した。

 アライラの一点集束。八連邪眼バスター・ビーム改と激突した時の圧には及ばないものの、傘で直接受けることで生じる負荷は左腕が捥げてしまう可能性を、危険信号として俺に伝えてくる。

 回転する傘によって、ビームを周囲へと撒き散らしながら受け流しているというのにッ!!

「地の深淵に、我が力を以て求める!!」

 傘に掛かる負荷が限界を迎えてしまう前に、反撃が必要だ。


「地獄能!! 爆鎖閻魔錠!!!」


 傘を形成している鎖の全てを、一斉に起爆した。

〈うひょーぉお!!!〉

 変な声を出さないでくれ。

 視界が、連続して発生する爆発に塗りつぶされる中、盾ビームが爆圧によって散り散りに吹き飛んでいくのをわずかな光線を描く様子で確認し、俺は傘を再形成しながら後ろへ引っ込めた。

 爆発によって生じる炎と、広がる黒煙の中へ再び『地獄能・巻蛇掘削槍転撃・業火刃』を突き入れて、クレイセンゼイマムが突き入れて来たランスと正面から激突させることで受け止める。

 爆発の炎も、爆発によって広がる黒煙も、この二つの槍が激突した衝撃波で霧散することにより、視界が元通りに火花で明滅し始めた。

 互いに一歩、前へと踏み込んで槍と槍の鍔迫り合い?となる。


〈るっちゃん!! アイツの背中が光ってるよ!!〉

 

 背中? 推進器!?

 光の羽はすでに展開されているが・・・光っている?というのは、さらなる加速を掛けるということか?

 この状況で、加速する?

 いや、そうか!!

「アライラッ! 四連邪眼バリアを解除して、四連邪眼ロケットブースターッだ!! 最大出力で頼む!!」

〈はぁッ!? どゆこと!!〉

「いいから! やってくれッ!!」

 奴の狙い・・・ここで加速する意味とは?

 俺の眼では消えたように加速することが可能な推進器を用いた体当たり。これで巨大道人を押し込んで、海底ピラミッドの壁に激突させること。

 艦船ドックにめり込んで一時的にも動けなくなっていた様子を見て、攻略法と判断したのか? 分からないが、そうであればマズい。

〈んもぉ! 四連邪眼ッ! ロケットブースターッ!! 最大―――〉

 クレイセンゼイマムの加速が、少し先に行われて巨大道人の身体が後方へと押し込まれ始める。これに少し遅れて、アライラが四連邪眼ロケットブースターを発動してくれるので、俺は叫んだ。


「頭部回転ッ! 180°!!」


 巨大道人の頭が、首から180°回転して顔が真後ろを向く。

 同時に。

〈―――出力!ってぅぇぇぇえええええッ!!〉

 唐突に頭が回転したことで、アライラが驚くのは予想できたが・・・邪眼はしっかりとロケットブースターを発動してくれた。

 クレイセンゼイマムの横に掛かる圧に対し、斜め上か方向からの圧で対抗することで押し込みを抑え込み、槍どうしが滑って空振りし合うと、互いの肩がぶつかり合って衝撃波が空気を揺らす。

 俺を壁へと押し込もうとする推力と、コレを阻止するアライラの邪眼による推力は互角を維持し、このまま持久力勝負に持ち込める。

 ロケットブースターを維持するエネルギーなら、ほぼ無尽蔵で供給できる俺だが、そのエネルギー量を維持し続けるのは無理だ。すでに全身から血が噴き出ている。

 一方で、クレイセンゼイマムも推進器が限界を迎えるはずだ・・・長時間の加速などできるモノじゃない。

 どちらが先に潰れるか?の我慢比べとなる・・・はずなんだが?


「「「「「「もぉーいーよぉーッ!!」」」」」」


 なにが? もういいの?と、聞き返すのは野暮か?

 俺は、クレイセンゼイマムが次にやろうとしている事に気づいた。

 推進器から、ひと際大きな光の羽が噴射されると・・・さらなる加速を掛けてくる。おそらくは、限界突破の最大加速を実行したんだと思う。

 だから、俺も応じることとした。


「開口ッ! 業火ブースターッ!!」


 巨大道人の、背後を向いている顔・・・その閉じた口がガバッと開いて、業火を吐き出すように噴射することで、ロケットブースターとして使用する。

 互いの肩が激突していた状態から、互いの頭が激突し合うほどに距離を詰め、さらなる衝撃波が地面を砕いて隆起させていく。

〈いだだだだだだ! お尻! 私のお尻が挟まってんだけどぉおッ!!!〉

「堪えろ!!」

 響き渡る事のないアライラの悲鳴は、クレイセンゼイマムの加速よって噴射される光の羽と、邪眼と口から噴射されるロケットブースターの轟音にかき消され・・・。

 地鳴りが響き出すと、ピラミッド内の空気を焼き尽くすように互いの推力が噴射する火が、虹色のグラデーションに輝いて空間を変色させていく。

 どれほどの時間が経過した?とも思える刹那の後に、クレイセンゼイマムの推進器が一斉に膨張を始めた。

 クレイセンゼイマムが、背中の推進器を切り離し・・・俺はロケットブースターに供給していた魔力を一斉に切る。

 

 直後、海底ピラミッド内を埋め尽くすような大爆発が発生して・・・俺も、クレイセンゼイマムも爆発によって吹き飛ばされる。

 ヤツは軽いせいか? 爆発によって宙を舞い、巨大道人は重いので地面を転げまわる。

 

〈げっほ・・・焦げ臭いとかの話しじゃないやんか・・・げっほ・・・これ、空気がなくなったんじゃね?〉

 爆発が収まり、周囲がとんでもない熱に満ちている中で・・・アライラは平然としているようだ。

「君は大丈夫なのか?」

〈そいやー・・・なんともないねー〉

 ・・・先の爆発でピラミッド内の空気が燃え尽きたのなら、モンスターとはいえ生物であるアライラが平然としているのが不可思議だが。

「アライラの場合、神の加護である『環境即適応』が機能しているのでしょう」

 マリーさんの言葉で、俺は・・・納得することにした。

 この状況を『環境』として認識するのが、非常に引っ掛かるが・・・邪神のことだ。その辺りの判定はテキトーなんだろう。

 アライラの回想を見た限り、彼女への態度はテキトーな様子だったからな。

〈むーん・・・クソでも神は神ってことねー〉

 ・・・それはまた違う話しだと思うけれどね。


 視界の端で、クレイセンゼイマムが降って来た。

「頭部位置、修正」

 俺は、巨大道人の頭を元の位置へ戻し、降って来たクレイセンゼイマムへと槍を構え直す。

 と、焼け焦げた破損が・・・目に見えて分かるほどになっているヤツが、鈍い動作で起き上がって立つ様子を見つめた。

〈それはそれとして、頭が回転したのには驚いたんですが!〉

「ふ。ロボットの頭は、回転するモノだろう?」

 今の巨大道人をロボットと認識すれば、頭が回転するのはおかしな話じゃない。石像として考えるなら、違和感で無理だったろうが・・・。

 こんな錫杖二つで操縦桿みたいな役割をし、巨大な石像がロボットのように動かせるのだから・・・マリーさんが牧場で何を言っているのか理解できなかったけれど、やってみろ。というのだけはなんとなく理解する。

 だから、やってみた。わけだが・・・。

 案外、できるものなんだな・・・。


≪まぁーだだよぉーッ≫


 ・・・なにが?とは聞く必要も無いか。

「もういいよ。終わりにしようぜ?」

 俺の考えを読み取ったのか? クレイセンゼイマムは動き出した。

「地の深淵に、我が力を以て求める・・・」

 クレイセンゼイマムは、その左腕に装備する円盤盾を直上へと投げると、指を鳴らした。鳴るのか・・・。

 盾に刻まれた八つの文字から中央へと光が走ると、その線に沿って盾が割れて変形を始める。


「回れ。回れ。傘の壁。回せ。回せ。螺旋の刃」


 八つに割れる盾が変形したソレが、空中にて軌道修正するように動くと、槍の先端を上空にある盾へ向けるクレイセンゼイマム。誘導するための光線が放たれて、盾は真っ直ぐに降りて来た。

 一方で、俺は右手の槍と左手の傘・・・その柄頭となっている錫杖の輪を重ね合わせて連結させると、時計の短針と長針のように輪を軸として動かし、時計で12時を示すように重ね合わせていく。


「留まる未練に罪を説く。罰は雑音祓う業の炎。焼いて刻むは地獄の灯ッ」


 クレイセンゼイマムの投げた盾からアームが飛び出すと、槍の根を掴んで盾を刃と接続させて連結させる。と、八つの文字がさらに開いて大きな鍔みたいになっていく。

 一方で、傘が開くと反った骨組みが真っ直ぐに伸びて、円盤状に展開し・・・同時に、掘削槍の刃が歯車みたいな凹凸の棒へと変形し、円盤の様になった傘と歯車が嚙み合って回転を始めた。

 

「転じる盤に火をくべろッ! 狂いし光をここに削ぐッ! 思念を断つは、斬鎖の槍なりッ!! 」


 クレイセンゼイマムの合体した槍盾・・・その八つに展開される鍔?より神々しい光が放出されると、円錐形となってまさに『ランス』と言える刃を作り上げた。

 それは、巨大な光のランスそのものである。

 一方で、重なり合って噛み合って、組み合わさって繋がった刃が歯車の回転で火花を散らしつつも高速で回転することで風切り音を発生させ、刃を形成する鎖の環の部品より業火が噴き出すことで円盤状の刃となる。

 炎のグラデーションが、美しい円盤刃を彩ってくれるが・・・。


「地獄煉! 巻蛇転刃斬鎖槍ッ!!」


 ・・・完成したのは、巨大なピザカッターみたいな武器だった。

 チェーンソーを想像して作ったはずだったのだが・・・どうにも上手く行かないな・・・。

「ゴホッ・・・」

 もう、何度目かの出血・・・そう思っていると、ひと際強烈な激痛が全身を駆け巡り、吐き出した血に肉片がいくつも混ざり込んで排出される。

 腹からじんわりと、血の温かさが体内に広がっていく感覚を得て、これまでよりも遥かに危険なダメージを負ったことを理解した。

 それは、まるで爆発したかのように、身体の内外で発生し始める。

「ルッタ!!」

 マリーさんの怒号が聞こえるなか・・・。

「地獄変!!」

 俺ではない。

 道標人が、その手に地獄変を召喚すると、封を解いて即座に俺の背中から心臓へと巻物を挿し込んできた。

「な、なにをッ!!?」

 この唐突な行動に、マリーさんが驚きの声を上げる。

「ただの治療では間に合いませぬ! 荒療治となりますが、マリー殿にも手伝っていただきたく!」

 今やるべき事は、ただの治療行為ではダメだ。と、道標人が激怒したような顔で言う。

「地獄能から間を飛ばして、いきなり『地獄煉』を使うなど! 自殺行為どころの話ではありませぬぞ!」

 ああ、それを怒っているのか・・・。

「いや、そうでなければ勝てぬことも確かゆえ・・・歯痒いがために腹立たしい!」

 ・・・申し訳ない。

「クレイセンゼイマムは堅いので、確実に壊すための武器を・・・と思っていたら、こうなりました」

「よい。今は敵に集中を・・・」

 掘削槍で、砕くことができなかった盾・・・アレを砕くために必要な力を求めた結果が『地獄煉』だ。今の俺には、過ぎた力と言う奴だが・・・使わないと勝てない。

 だから、使うだけだ。

 道標人は、さらに小さい地獄変を複数召喚してマリーさんに手渡す。

「マリー殿。このミニ地獄変を主殿に巻いてください。包帯のようなモノです」

「分かったわ」

 マリーさんが、手渡された小さい地獄変で俺の身体を包帯のように巻き始める中、俺の背から心臓へと挿し込んだ地獄変に何やら書き込みながら術を施していく道標人。

 ・・・なら。

〈んでー? まだダイジョブなん?〉

「ああ・・・でも、そろそろ決着にしたいな」

 もう、このまま戦闘を継続するのは厳しい。

 そもそもが、ボスラッシュみたいな道中を休憩なしで進み、終点にて悪の神々が造った機械天使との戦闘・・・こうして考えてみれば、毎度の事か。


≪まぁーだだよぉおーッ!≫


 俺とアライラの会話を聞いていたのか?

 それとも、俺から『決着』を望む念でも受信したのだろうか?

「ルッタ。ヤツの・・・クレイセンゼイマムが手にしている槍は、戦闘天使が使う一撃必殺の技『一投』と呼ばれる攻撃時に使われる槍の形態を、機械で再現したものよ」

「・・・投げられたら、終わりってことですか?」

 戦闘天使・・・それって、ヴァルキリーとか呼ばれる北欧だったかの神話に出てくる天使だったか?えーっと、オーディンだったか?が主神だったような?

「いや、戦闘天使を作れるレベルの神じゃないから、再現し切れていない劣化品。投げたら途端にエネルギーが霧散してただの投げ槍にしかならないわ」

 なるほど、神としての格差は実力差でもあるわけだ。

「ただし、あのように持っているならば・・・遜色ない威力を維持するわ」

「・・・わかりました」


〈ほんじゃー。やりますかいなー?〉

「ああ」


 一歩、踏み出す。

 巨大道人は『地獄煉・巻蛇転刃斬鎖槍』を抱えつつ、クレイセンゼイマムとの距離を詰める。そのための一歩を踏み出す。

 ただそれだけで、地面が陥没して亀裂を広げていくが・・・気にすることじゃない。

 これに対して、クレイセンゼイマムも一歩踏み出した。

 その手に『一投』という必殺技級の槍を持ち、ただ静かに俺との・・・巨大道人との距離を詰める。

 ノイズで再現された人間の眼。

 その瞳は、ノイズが渦巻くことで瞳の円形を再現し、まるで瞳孔を演出するように動いている。

 不気味でありながらも、どこか哀愁を感じるノイズの感情・・・それを目で表現しているようだ。

 

 同時に、二歩目を踏み込んだ時・・・それは開戦の合図でもあった。


 駆けていた。

 巨大道人とクレイセンゼイマムは、互いに光と炎を纏う槍を抱えながら・・・その顔に表情らしい表情を見せるずに、無言で駆け出して・・・。

 互いの槍が、互いに届く間合いへと踏み込んだ瞬間に・・・。


『巻蛇転刃斬鎖槍』と『一投』は衝突して激しい火花を散らす。


「だああああああああッ!!!」

≪ざああああああああッ!!!≫


 もはや、そこに戦い方なんてものはない。

 俺も、ノイズも、もはや知性なんてものは疲弊しているのだろう。

 巨大道人とクレイセンゼイマムの戦いは、互いに棒切れを振り回して叩きぶつけ合っている子供みたいな・・・無駄だらけの殴り合いになっていた。

 打ち込んで、受け止められ、打ち返して、受け流され、火花は散り、熱が地を焼き、風が空を切り、刃が掠める。

 クレイセンゼイマムの悲鳴・・・と勘違いするような破砕音。駆動系が壊れているのをムリヤリ動かしているのが分かるほどの騒音がその全身より聞こえてくる。

 対して、俺もまた歯を食いしばって巨大道人を操っていた。

 槍を打ち合うたびに、かの『一投』という一撃必殺の威力が笑えるほど強すぎるせいで、コレに負けないように『巻蛇転刃斬鎖槍』に魔力を込めて業火を強める必要があった。

 椀子そばならぬ椀子業火だな・・・。

 一回の補充量が半端じゃない。椀子といいながら、随時かけそばを補充しているような・・・。

「げほ・・・このぉ!!」

 意識が飛びかけている。これ以上の戦闘継続は無理だ。

 どこかに、隙は?

 なにかに、きっかけは?

 気持ちが焦る。あと、何回打ち合えるだろうか?

 ここまでやって、攻撃力だけはクレイセンゼイマムの『一投』が上という事実に、このダンジョンがクソな仕様なのを再認識させられる。

 仮にテレビゲームだったら、攻略不可能ゲームになるぞ。

 

 そうして、悪態をついていた時だった・・・。

 クレイセンゼイマムの『一投』と幾度目かの激突をした時、その槍の一部が破損したことで『巻蛇転刃斬鎖槍』が噛みつくように食い込んだ。

 と、その瞬間を超反応したクレイセンゼイマムが、槍を振り上げて見せる。

「縛鎖閻魔錠!!」

 槍を振り上げられたことで、俺の『巻蛇転刃斬鎖槍』も引っ張られるようにして持ち上げられてしまうが、絶対に手放すことだけはしない。

 即座に『地獄門・縛鎖閻魔錠』を召喚して、柄と手を縛り固めることで武器を奪われる事を防ぎ、巨大道人の重量を持ち上げられないクレイセンゼイマムとの綱引きみたいな状態へ移行する。

 しかし、それは刹那の間でしかない。

 押してダメなら引いてみろ。引いてダメなら?とはよく言ったモノだ。

 引いて武器を取り上げられないなら、押して食い込んだ刃を強引に外してきたのである。

「な!?」

 取られまいと、俺の方でも引っ張っていたことで・・・急に外れた勢いを加えて槍は頭上高くへと振り上がって、巨大道人の身体が大きく仰け反り隙が生じてしまう。


≪もぉぉぉぉぉおおおおおいいいいいいいいいよぉぉおぉぉぉおおぉぉおぉ≫

 

 渾身の一突きを放つクレイセンゼイマム。

 だが、その瞬間に槍を持つ腕が内部で破裂したような音と共に破砕音も響く。

 そうして、巨大道人の頭を貫くために放たれた槍の軌道が下がり、その『一投』は胸へと突き刺さって圧倒的な熱量で胸を蒸発させて穴を開けてくれる。

 これが、最後の好機となった。

「アライラ!! 『巻蛇転刃斬鎖槍』の回転刃に、八連邪眼バスター・ビームを巻いてくれ!!」

〈おぅよ!! 一撃必殺ッ!! 八連邪眼! バスター・スライス・ビーム刃!!〉

 なんだそれ?

 直後・・・『巻蛇転刃斬鎖槍』の回転刃に綺麗だと思えるほどの虹色に輝く薄刃が業火と一体化するように重なって、高速回転が光速回転へと加速する。

 同時に、俺の身体から血が爆発したような勢いで噴き出たりもするが・・・。

〈これでぇぇぇぇぇええええ〉

「終われッ!!」

 今の俺の心境を、まんま叫んでいた。


 振り上がっていた槍を、ただ真っ直ぐに振り下ろすだけの動作となったが・・・虹色のビーム刃を纏う『巻蛇転刃斬鎖槍』はクレイセンゼイマムの頭から股間部までを音もなく切断し、鎖の刃が掘削音を響かせて体を砕き、破壊した。

 そうして、スクラップを両断した刃が地面を抉って・・・回転と共に停止する。

 

 巨大道人を貫いた槍は、光が泡のように弾けて消え・・・槍は静かに砕けて散っていく。


 ・・・綺麗な虹色の薄刃だったけど、回転したらゲーミングPCの冷却ファンみたいだったなぁ。

 はは・・・彼女らしいね・・・。

 


 俺は、そして気絶した。




次回は、VS ノイズ。を予定しています。


疲労しているルッタ君を表現しつつ、クレイセンゼイマムが強いことを表現しつつ・・・が、しっかりと描けているといいのですが。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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