51 海底ピラミッドへ
こんにちは。こんばんは。
皆様いかがお過ごしですか? 私は体調不良でしばしぶっ倒れていましたが、なんとか回復しました。
今回は、前回の続きで「海底ピラミッドを目指す」お話になります。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
冷たい海の底。
というと、わりと定番な表現だと思うわけだが・・・今現在の俺個人が抱く感想を言わせてもらうと、海底というのは熱い場所だった。
〈次から次へとぉお!!〉
もう幾度目かの『八連邪眼・バスター・トーピード』で魚の群れを吹き飛ばしたアライラが、さすがに疲れたような声になっている。
海底ピラミッドまでの距離を移動するだけのはずが、多種多様の魚モンスターが入れ替わり立ち代わり襲い掛かってくるので、休む間も無く戦い続けている。
ちなみに、俺も5回ほど吐血しているが、マリーさんが治癒魔法術?で治療してくれるのでなんとか戦闘を続行できていた。
しかしながら、そろそろどこかで休憩がしたい。
死角から襲い掛かってきたヒラメみたいな魚モンスターに『地獄能・巻蛇槍貫撃』を叩きこんで、周囲を改めて見回す。
本当に、雑多な魚ばかりだ。
一匹一匹を鑑定している余裕すらないために、どんな攻撃方法を持っているのかも分からないし、ここまでにそういったモノを見ている間も無かった。
ただ、とにかく先手必勝で攻撃を繰り返し、どうにか敵の攻撃を受ける前に叩き潰すことに成功しているだけだ。
〈こういう場合、安全地帯みたいなのが設置されてるはずなんだけどなぁー〉
「そうなのか?」
〈そうだよ。連戦ばかりじゃプレイヤーが疲れちゃうじゃん? すると、面倒くさくなってもういいや。ってリタイアしちゃんだよね。私とか!〉
君の実体験か。
こちらを遠巻きにしている魚モンスターたちは、ここに来て俺たちが一筋縄では狩れない相手だと気づいたのだろうか?
今なら、休憩する時間を取れるかもしれない。と考えたが、隙を見せたら襲い掛かってくるだろうから、結局休むことはできない。
と、魚モンスターたちが一斉に同じ方角に顔を向けだした。
「ん? なんだ?」
〈おー? なんやろか?〉
こちらを囲んでいた魚モンスターたちが一斉に同じ方角を見る。という異様な光景に、俺も何を見ているのかと確認するべく顔を向ける。
アライラの邪眼センサーでも、まだ何かの情報を拾えていないようだが・・・。
「この方角は・・・海底ピラミッドの方か」
マリーさんが展開してくれているマップを確認して、そんな方向に何を見ているのか?と首を傾げる。
すると、魚モンスターたちは一斉に方向転換して逃げ去った。
「・・・はぁ。なんか、とんでもない怪物が出てきそうだな」
〈いつものことじゃん?〉
「そうだね。いつもの事だね」
海底にも居るのだろうか? キュアーンのようなとんでもないモンスターが・・・。
そんな、どこか諦めにも似た感情を抱きつつ、海底ピラミッドの方角を凝視していると・・・邪眼センサーが接近してくる魚を捉える。
〈お? この魚はちっこい!〉
「早まっちゃだめだ。その場合、群れの可能性が高い」
俺の予想通りで、邪眼センサーが続々と小型の魚を捉えて、表示してくれる。
〈わー。すごいかずー〉
アライラが途方に暮れた声を上げる中、俺は邪眼センサーが拾った接近中の魚に注目する。
この造形は、ニシン・・・いや、サバに近いか? もし、サバであるなら何匹か捉えてアライラのご飯にできるかもしれないな。
「アライラ。鑑定をお願い」
〈お? ほいほい。鑑定!〉
『ビャルトレスポット。 異世界デトッポに生息している炸裂魚の一種。危険を察知すると鱗を意図的に切り離すことができ、爆弾として攻撃にも防御に使用可能という優れもの。船が上を通ろうものなら、鱗を魚雷のように操作して攻撃してくる海の無差別爆弾魔である。ちなみに、食用にはならない』
なんてこった。
最後の『ちなみに』がすごいイラっとくるな。俺の意図を見透かされているようで、本当にイラっとくるなぁ。
〈うあー! 爆弾魔が群れで迫ってくるとか、悪夢かよーッ!!〉
「そういわれれば、確かに」
鑑定の最後『ちなみに』に意識を持っていかれて、ちょっと接近中のモンスターに対して意識が薄れていた。
海の無差別爆弾魔というのであれば、攻撃方法は爆発系。
鱗を魚雷のように使うという説明があることからも、おそらくはそれだけでは無いだろう。初見殺しな攻撃方法を必ず持っているはずだ。
「先手必勝だ。八連邪眼・バスター・トーピードで一掃するぞ!」
〈ですよねー! 八連邪眼! バスター・トーピード!!〉
八つの邪眼からバスターな魚雷が発射され、これら全てがビヤ・・・ビャルと・・・爆弾魚へと殺到する。
そうして、爆弾魚の群れを丸ごと吹き飛ばせるように包囲するように接近し、ある程度まで近づいたところで爆発する。
爆発の直後に、周囲へと広がる雷撃にも似た破壊エネルギーが群れの魚を続々と呑み込んで広範囲を破壊しつくしてくれるわけだが・・・。
バスターな魚雷が爆発するのとほぼ同時に、爆弾魚が鱗を離脱させているのを見た。
群れの外周に居る爆弾魚たちが、鱗を一斉に離脱させるのと前後して魚雷の爆発に合わせて鱗もまた爆発することで、バスターな魚雷が放つ破壊エネルギーの方向を無理やりに捻じ曲げて見せた。
「あの鱗・・・指向性爆発ができるのか」
〈んが!? なんか数が減っていないんですけど!?〉
そうか、鑑定にあった『鱗の切り離し』と『爆弾として攻撃と防御に使う』というのは、こういうことか。
「爆発反応装甲・・・リアクティブアーマーってことか・・・」
〈んん!!? リアクティブアーマー!? なんで魚に!?〉
確かに、魚がなんでそんな防御技を使うのか知らないが、これは一筋縄ではいかないモンスターであることは明白になったな。
しかも、俺の見間違いで無ければ鱗の爆発には指向性・・・任意の方向へと爆発を放っていたように見える。魚雷の爆発によるダメージをこれで防いでいたから、おそらく間違いない。
つまり、あの鱗は攻守に優れた爆弾魚の武器そのもの。
厄介だな・・・。
「あとは、離脱させた鱗がどの程度で復活するのか?が、問題か」
〈もう復活してるっぽいけど?〉
「は?」
俺が間抜けな声を上げたのに合わせたように、爆弾魚の鱗が一斉に離脱して小型魚雷のように突進してくる。
キラキラとした小さな鱗の数は、実に数が多過ぎて対処するのが難しい攻撃だ。
「八連邪眼バリアを!」
〈八連邪眼バリア!〉
バリアを展開して、殺到する鱗魚雷を正面から受けて防ぐ。
その衝撃は、そこまで強い爆発では無いと判断できる。これなら、装甲の厚い潜水艦でも早々に沈むことは無いだろう。
しかし、数の暴力が安堵することを許さない。
連続して激突しては爆発する鱗魚雷によって、バリアが続々と砕かれていく。
「アライラ! バリアの椀子そばだ! 砕かれたバリアの自動補充を!」
〈あ、えーっと、技名なんつったかな? えーっと、邪眼バリア・椀子そば!だっけ?〉
唐突に指示されてすぐに思い出せないようだけど、邪眼がバリアを砕かれるたびに補充し始めてくれたので、機能自体は大丈夫だと思う。
「なんだこの異常な鱗魚雷は? いつまで放てるんだ?」
自身の鱗を離脱させて放つ攻撃だとしても、数が異常だ。
バリアの椀子そばに対し、鱗の椀子そばでもやっているのか?と、そんな事あるはずないと思いつつも、魚雷が途絶える気配がないせいで焦りが出てくる。
バリアが破壊されたら即再展開。という椀子そばのようにおかわりを繰り返すのは、負担が大きい。椀子そばのように胃袋が膨れるわけでないが、疲労と負荷に伴う俺自身へのダメージ。
ここまでの連戦でバスターな魚雷を多用し続けたことも相まって、だいぶキツイのが現状だ。
「アライラ! バリアの数を二つほど減らして、爆弾魚の身体を調べてくれ! 鱗の再生とか補充とか何かしらの現象が起きているはずだ!」
〈お、おう! えーっと、邪眼・・・えーっと? あ、邪眼アナライズ!〉
邪眼の一つからレーザーポインターのような光線が発射されると、爆弾魚の一匹に命中する。と、その身体が虹色にキラキラと光っているようで、何かしらの調査・・・いや、分析か?が行われているように見える。
と、中空にマリーさんとは別のウインドウが開いて爆弾魚の情報を表示してくれた。
「・・・な!? 鱗がコンマ秒で再生する!?」
とんでもない調査結果を見て、鱗を魚雷として連続発射している理由に納得もした。
意外にも詳細情報が表示されており、体液がニトログリセリンに近い成分をしているとか、肉がダイナマイトみたいなものだとか、骨がプラスチック爆弾みたいなモノとか・・・全身爆弾で構成されたとんでもない魚だと知れた。
〈おー。邪眼てこういう使い方もできたんね?〉
「鑑定がこういう情報をくれれば文句ないんだけどな?」
今はそんな文句を言っている場合でもないだろう。
「こういう仕様なら、根競べなど意味がない。一気に殲滅するぞ!」
〈え? でもどうやって?〉
バスター・トーピードは鱗をリアクティブアーマーにして防がれてしまったわけだが、それならビームによる圧倒的熱量で丸ごと焼き切ってしまえばいいだろう。
「バスター・ビームを使う」
〈え? 大丈夫なん?〉
「先の水中用というのは、なんか変なことになったから、今回は普通にバスター・ビームを使うんだ」
〈でも、水蒸気爆発とかそういう感じの事が起きたりしないかな?〉
「そうなったらそうなっただろう。群れを相手にするんだから、広範囲を吹き飛ばせるなら好都合さ」
〈それもそっか! よーし、やったるでー〉
「まずは連中の攻撃を中断させる。ドリリング・ドライバーと壁鎖槍で連中を攻撃するから、鱗魚雷が止んだら即座にバスター・ビームを準備だ」
〈了解!〉
バリアを維持したまま爆弾魚の群れを一掃するだけのバスター・ビームは放てない。なので、どうにかして連中の攻撃を中断させる必要がある。
そのためにも、巨大道人に装備させている武器を活用するのが一番だろう。
「ドリリングッドライバーッ!!」
槍を前面へと突き出すように、円錐の刃を爆弾魚の群れに向けて射出する。
鱗魚雷を巻き込みながら群れへと飛び込んでいくドリリング・ドライバーは。確かに群れへと突入して、次々に爆弾魚を巻き込んでミンチにしてくれるが、その都度爆発を起こすために群れが散り散りとなって分散してしまう。
「ち。全身が爆弾だから、一匹倒せば爆発するか!」
〈でも、鱗魚雷は止まった!〉
すぐにでもバスター・ビームを放った方がいいだろう。
「魔力の急速充填!」
〈充填率120%! 八連邪眼!! バスタァアッ!! ビィイームッ改!!〉
分散した爆弾魚を一匹でも多く消し飛ばすために、八つの邪眼がある程度の範囲に分散して撃ち込まれる。そうして、群れが確かにビームに焼かれてその数を一気に減らした。
〈って、普通にビームが通るやんけ!?〉
「あ、確かに・・・」
アライラに言われて再認識したが、特に水蒸気爆発とか起こることなくビームが海中を通った。
〈だー! 気を使って別の技を使わなくてもよかったんじゃん!!〉
「やっぱり、海水もダンジョン用とかになっているとか、そういうことなのかな?」
気にするだけ無駄な気がする。
さて、これによって群れの規模がだいぶ縮小されたわけだが・・・ここで気を抜くわけにも行かない。
一度は分散した群れも、残存する魚が再び集まって群れを形成し、行動を再開することは目に見えている。
だからこそ、集まった所で一気に叩きたい。
「アライラ! 連中が再集結して群れになったと同時に、バスター・ビームで仕留めてくれ!」
〈オッケーッ!〉
魔力の再充填は完了している。
すぐにでも八連邪眼バスター・ビーム改を放てる段階にはある。
俺の狙い通り、爆弾魚は群れをズタズタにされて分散していたが、残存する魚たちが再び集結して群れを形成し始めた。
「今だ!」
〈これでトドメ!! 八連邪眼!! バスタァァアア! ビィィィイイイムッ!改!!〉
八つのバスター・ビームがそして爆弾魚の群れを一網打尽に―――。
集結した爆弾魚が一斉に鱗を離脱させると、これらが群れの前面へと移動してバスター・ビームを受け止める壁となり、一斉に爆発してビームを拡散してみせた。
「なッ! 対応してきた!?」
〈それだけじゃないよ!〉
アライラの指摘を受けて、爆発の向こう側から現れた巨大魚に目を剥いた。
それは、爆弾魚が密集率を高めて一匹の巨大魚に変じた姿だったからだ。いや、一匹の巨大魚に変じた。というのは間違いか。
鱗を離脱させて、剥き出しになった肉を互いに密着させた爆弾魚は、コンマ秒で再生する鱗を利用して互いを連結させているようだ。
これにより、群れでありながら一匹の巨大魚へと姿を変じたように見せている。いわば『群魚』とでも呼ぶか?
巨大な群魚は、こちらに頭を向けるとその口を開いた。そして、口内にて鱗が離脱して密集し、それら一つ一つの爆発を一個のエネルギーとして集束させて、ブレス攻撃と見紛うような攻撃を放ってくる。
「壁鎖槍!」
傘を開いて業火を纏い、回転させることでブレス攻撃を周囲へと分散させながら防ぎきる。
しかし、威力がバスター・ビーム並みにあることを直感的に悟り、連続して受けたらこっちが耐久できないと見切る。
〈マジかッ!? ロボでもないのに合体連結するとか!・・・とくに珍しくも無いかー?〉
「こんなのが他にもたくさんいるってこと?」
〈ゲームなら割と居るっしょ?〉
そっかー。わりといるのかー。
疲労感が強まった。
視界が火花を散らしたように明るくなったり暗くなったりしているし、頭痛も始まった。いろいろ限界に近いのかもしれないが、まだここで我を手放すのは良くない。
だから、巨大群魚がブレス攻撃のために口を開いた瞬間を狙って『巻蛇傘盾壁鎖槍』の傘をドリリング・ドライバーのように撃ち込んだ。
巨大な口の中に飛び込む傘。
それを見てから、業火を発動させつつ。
「拡張!」
傘を拡張してヤツの口よりも大きくし、傘の骨先端を釣り針のように尖らせた上に返しを鎖と業火で再現する。
それらが、ヤツを構成する爆弾魚を貫通してしっかりと捉えた。
「これでぇえ!!」
無理矢理引っ張って、近くの岩場に叩きつける。
連結している分、一個の個体と化しているからこそ、逃げることもできずに振り回される。
「ドリリングゥ!! ドライバァァアアアアアアッ!!!」
魔力を込めに込め、この全身を襲う疲労感を払うために気力を込める。
この一撃を身体に受けた爆弾魚は、次の瞬間には連結する全個体が、波紋が広がるように爆発を始め、連鎖的に周囲を破壊しながら光を放ち続ける。
喰らわせていた『巻蛇傘盾壁鎖槍』と、ドリリング・ドライバーとなっていた『巻蛇槍貫撃』を回収し、海底ピラミッドを目指して移動を再開する。
とはいえ、前のシーラカンスモドキのように追いかけてこられても困るので、後ろを何度も振り返りながら警戒を強めた。
「ふぅ・・・何とかなった」
〈最後の一発はなんだったん? 私のドリリング・ドライバーとは気合の込め方が違う感じだったけど?〉
「あぁ・・・疲労感と魔力と業火を込めた一撃だよ。なるほど、なんだかスカッとした気分だ」
アライラが度々〈バスタぁぁああ〉とか〈どぅおりりんぐぅぅううう〉とか言うのは、こういうスカッとした気分を味わうためのなのかも知れない。と思うと、恥ずかしいとかそういう考えは捨てた方がいいだろう。
正直、大声で叫ぶって気持ちいいな。うん。結構マジで。
!?
「アライラ。八連邪眼バリアを展開!」
〈え? は、八連邪眼バリア!〉
これに合わせて傘を再び開いて拡張し、巨大道人の姿を覆えるぐらいに展開することで海底のオブジェクト化を狙う。
「邪眼センサーで周囲の情報を収集してくれ」
〈ほい。邪眼センサー〉
ピコーン。
そんな音が広がると共に、大量のモンスター反応が接近していることが判明する。
〈・・・わー。団体様だー〉
「待って、この動き方は・・・俺たちを目指しているわけじゃなさそうだ」
〈え?〉
接近してくる反応は、確かにこちらに向けて移動してきているのだが・・・固唾を呑んで待っていると、続々と俺たちを通過して奥の方へと消えて行く。
そうして、ゆっくりと後方へと振り返ってみると・・・何やら光が明滅を繰り返しているような様子が見れた。
アライラの邪眼を最大望遠と、邪眼センサーの合わせ技で情報を取得する。
どうやら、巨大群魚の爆弾魚と謎のモンスターが戦っているようだが・・・。邪眼センサーが拾った新手の姿が・・・またこれは・・・。
〈ウニかな?〉
そう。
壁紙モニターに輪郭表示される新手のモンスターは、どこをどう見てもウニの姿をしている。丸い玉みたいな本体に無数の棘が生えているようなアレだ。
「ウニっぽいフグって可能性は?」
〈なくね?〉
海底をゴロゴロと転がっている様子からも、魚っぽさはないので期待するだけ無駄か。
ウニの群れが爆弾魚へ殺到したのであれば、気がそちらに向いている間に俺たちは海底ピラミッドを目指す方がいいだろう。
擬態である傘を通常サイズに戻し、バリアを減らして立ち上がる。
そうして進行方向へと向き直って歩き出した時、岩場の影から飛び出してくるウニが一匹。
「・・・あ」
そんな声を漏らしつつ、前進する歩を止めると・・・岩場の影から飛び出して来たウニもまた、驚いたような急停止をして・・・互いに動けなくなった。
先ほど殺到していたウニたちから出遅れていた個体か?
どうする? 後手になる前に叩くか・・・いや、まずは。
「アライラ。鑑定を!」
〈鑑定!〉
『ヴー二ーブーリー。異世界ラナトコノにて建造されたウニ型戦術駆動機雷兵器。侵略者たる人類を撃滅するために海洋守護を目的として開発された自立行動型の兵器である。敵『多目的戦闘機』というあらゆる環境を踏破する万能兵器は、海洋資源にも魔の手を伸ばして来た。美しい海を汚す侵略者共に好き勝手をさせないようにするべく、今日も海底を転がって敵を撃滅し続ける。ただ唯一の問題点は海洋生物と敵『多目的戦闘機』の区別がつかないために、今日も海洋生物は理不尽な撃滅に遭っていた』
「なんで欠陥兵器を投入するんだよ!」
〈侵略者はおまえらじゃい!!〉
思わずツッコミを入れてしまいたくなるほど、どうしようもない欠陥兵器が、こうして登場するとは予想もしていなかった。
ハニワンダーといい、コイツといい、かの異世界は地球を凌駕する科学技術を持っているのに、なんだってこんなポンコツしか作れないんだ?
ギガトレンクにも、何かとんでもない欠陥があったんだろうか・・・。
とはいえ、今は目の前に現れたウニ兵器の対応をどうするか・・・に意識を集中させた方がいいだろう。
海洋生物と多目的戦闘機とかいう兵器の違いが分からないらしいから、俺たちをどのように認識しているのかが気がかりだ。
攻撃するべきか、動かないで岩のフリをするべきか・・・。
悩んでいる間に、敵はこちらを敵性存在と判断した様だった。
ウニの棘部分が数本発光すると、ここからビームのような物が発射される。
ただ、それはビーム?と疑問符が浮かんでしまうもので、どういうわけか雷撃のようにグネグネとジグザグな動作でこちらに向かってくるモノだった。
なんかこう・・・「びびびびびびッ」て、効果音を添えて上げたくなる感じの光線だ。
しかし、そんな感想と同時に「アレを受けるな!」という条件反射とも言える危機回避本能が全力で警鐘を鳴らしまくってもいる。
左手の『巻蛇傘盾壁鎖槍』の傘を左方向へと向けて、先にやった緊急回避で加速する。
なんとも間抜けな攻撃なれど、受けてはいけない危険な攻撃であるのなら、このまま逃げるが得策だろう。とはいえ、相手が逃がしてはくれないようだ。
ウニはこちらに向き直ると、その場で高速回転を始めた。
砂地を滑っているかのように海水を巻き込んで回転するウニは、そして火花を散らしながら一気にこちらへと突進してくる。
なんとも滅茶苦茶な発進速度だが、これだとあっさり追い付かれてしまうために傘を閉じて着地しつつ、右手の『巻蛇槍貫撃』と左手の『巻蛇傘盾壁鎖槍』の二つを揃え並べるように構えて槍貫撃を右回転。傘盾壁鎖槍を左回転にして迫るウニの側面へと叩きこむ。
巻き込んだ海水が丸ノコギリの刃と見紛うような形状となっていたものの、左右の回転を側面からぶつけたことでコレを崩し、突進してきたウニもまたメジャーリーグ級のホームランで遠ざける。
が、吹っ飛ばされながらも先と同じジグザグ動く奇妙なビームを放ってきた。
「ええい! アライラ!! 邪眼バスター・ビーム改で迎撃してくれ!」
〈あいよ! 邪眼! バスター・ビーム改!!〉
迫る謎ビームに、正面より衝突する邪眼バスター・ビーム。
ウニの放つビームがどのようなモノなのかは分からないが、単純な威力で見ればバスター・ビームの方が上のはずだ。
と、次の瞬間には目を疑うような現象が起こった。
激突したバスター・ビームが謎ビームによって固形化していったのだ。
その見た目は、バルーン・アート?で使う棒状の風船を彷彿とさせる質感となり、バスター・ビーム改がどういうわけか海底に落着して砂地を一気に熱した。
「なんだあのビーム」
〈それよりるっちゃん! 海水が沸騰してるよ!!〉
言われてみれば、砂地を熱し、その下の地面を熱し、それらの熱が海水を一気に沸騰させて―――。
「八連邪眼バリアを!」
〈八連邪眼! バリア!!〉
大爆発を起こした。
これが水蒸気爆発という奴なのか? それともバルーン・アート用のバルーンモドキになった物体が自動的に爆弾と化すのかは定かじゃない。
アライラに八連邪眼バリアの指示が遅かったら、こっちも危なかっただろう。
これはもう、悠長にしてはいられない。都合のいい事に、先の大爆発で土砂が噴き上がって砂煙のように周囲を覆い隠してくれている。
離脱するなら今がチャンスだろう。
「この場を離脱するぞ!」
〈え? なんで?〉
「この爆発を見て・・・いや、まぁ何とも言えないけど、ウニ兵器たちが気づかないわけがないからな!」
〈あ、そうか!〉
俺はすぐさま左手に持つ『巻蛇傘盾壁鎖槍』の傘を広げ、その状態で思いっきり振るった。すると、傘がバサッとひっくり返る。
〈え? なんで傘を壊してんの!?〉
「移動速度を上げる必要がある! コレを乗り物にするんだ!」
〈え? え?〉
説明をしている暇がない。
傘をひっくり返した槍の柄頭を、右手に持つ『巻蛇槍貫撃』の柄頭と重ね合わせる。
「連結」
重ねた錫杖の輪が『連結』することによって一つの輪となり、二本の槍は一本の槍となる。
そして、ひっくり返した傘を補強するべく鎖を増やして編み込み、円錐形の刃をドリリング・ドライバーのドリルに変形させ、巨大道人を槍の柄に跨がせる。
イメージとしては魔女の箒だ。しかし、巨大道人を乗せるには少し柄が細い。
「補強!」
魔力を追加で流し込んで、柄を太く頑強にした。
「アライラ! 君の技名をちょっと借りるぞ!」
〈ぅん!?〉
「ドリリング・ドライブッ! ロケット・ブースターッ!!」
急いでいるため、悠長に名前を考えている場合ではない。
俺の勘が正しいのなら、すでに大量のウニが迫ってきているのだ。ここで名前をどうするか?などとのんびりしている時間は無いのである。
俺の切羽詰まった声に反応し、ロケットノズルと化したひっくり返した傘から業火が噴射され、機首となるドリリング・ドライブが高速回転で海水を掘削してくれることで、水の抵抗を気にせず一気に発進してくれる。
そうして、大爆発によって生じていた広範囲に散る土砂の煙幕から飛び出して、海底ピラミッドへと移動を再開した俺たちであるが・・・。
〈邪眼センサーに感アリ!っか! るっちゃんが言った通りなんですけどぉおお!!!〉
後方から大量のウニ兵器たちが高速回転で海底を爆走しながら追いかけてきている事が、邪眼センサーによって証明された。
とんでもない数だ。マップ表示すれば「表示限界です」とか出そうな数が押し寄せてくる。
ドリリング・ドライブで前方の岩を粉砕しつつ掘削して通過する後方で、それら岩場をジャンプ台にでもするかのようにウニ兵器たちがブワァアッと飛び上がった。
〈まっじかよぉーん! わーお!!〉
海水を巻き込んだ丸ノコギリ攻撃で強襲してくる個体を、右足を海底に一瞬だけ付けることでわずかに横に滑るように移動して回避する。続けて同様に襲い掛かってくる連中も、左足を一瞬だけ海底に擦らせて横滑りしながら回避する。
そうして速度がわずかに落ちたのを好機としたのか、加速するウニ兵器の二個小隊が回り込んで、俺たちを挟み撃ちにしようと左右から突撃を敢行する。
これに、両足で海底を叩くことで跳躍し、直下で正面衝突するウニ兵器たちが爆発四散する。
「アライラ! バスター・トーピードを放出! 発射しなくていい! 捨てる感じで!!」
〈え!? は? えっと!?〉
「早くして!! 八連だからね!!」
〈は、八連邪眼! バスター・トーピード! 放出!!〉
八つの邪眼からバスターな魚雷が飛び出すと、普通であれば敵を攻撃するために突進していくわけだが、今回はただ放出してもらっただけなので後方へと流れていく。
と、跳躍した俺たちを追って跳躍してきたウニ兵器たちが魚雷に激突して爆散していく。
「次は前方に二連邪眼でバスター・ビーム改!」
〈ドリリング・ドライブにぶつかるよ!?〉
「それでいいんだよ!」
〈ええい! 二連邪眼バスター・ビーム改!!〉
アライラから発射されたバスタービームが、ドリリング・ドライブに激突すると、コレをドリルが巻き取って刃の一部として合体し、バスター・ドリリング・ドライブとなった。
そうして、正面に回り込んで襲い掛かってくるウニ兵器らをナマス切りにして突破する。
「もっと集中して! 数が多いんだから、俺の指示にすぐさま従ってくれ!!」
〈はい!〉
マリーさんが表示してくれるマップを確認し、海底ピラミッドに向かっていることをしっかりと意識しながらウニ兵器たちの猛攻を掻い潜る。
「・・・マズい」
そんな事を呟いたマリーさんが、俺の頭に手を乗せると・・・。
「ぁあっつ!!・・・人間が出して良い温度じゃないわッ!! ええい!」
あ、なんか急に頭がひんやりしてきた。
すっごい気持ちいい。
「うっそだろ・・・凍結魔法術で瞬間冷凍しているのに瞬間解凍されるんだけど・・・」
「・・・主殿、すでに人間をやめておられたのですな・・・」
失敬な!
今はそっちにツッコミを入れている場合ではないので放置させてもらうけども!
なんだろう?
マリーさんに頭を冷やしてもらったら、急に視界がクリアになってきた。
さっきまではなんとなくで動いていたけれど、ウニ兵器の動きが見える。不思議だ。人間の視界は前方だけのはずなのに、なぜか全方位を視認できる。
一匹一匹の動きが目で追えている。
もしかして、コレが人間本来の性能という奴なのだろうか?
これほどの情報処理能力を有しているのだとすれば、確かに普段はリミッターのようなもので能力が発揮されないようになっているのも頷ける。
「マリー殿。主殿の全身から血が噴き出ているのですが!?」
「地獄変の過剰使用よ! この状況では止めるのもままならない!!」
目的地には確実に近づいている。
このままウニ兵器たちの猛追を掻い潜ることが出来れば・・・いや、目的地に到達したとしても、ウニ兵器たちが引き下がるとは思えない。
これだけの大群をどうやって一掃するのか? それを考えていなかった。
右へ左へ、滑るように横移動しながら襲い来るウニ兵器の猛攻を捌き、時には急減速して自身を回転させることで後方から迫っていた連中を薙ぎ払って数を減らす。
そうして包囲して襲い掛かってくるタイミングに合わせて、再びブースターを最大出力で点火することで、業火に焼かれたウニ兵器が水圧に負けて圧壊し、ドリリング・ドライブに掘削されたウニが爆散する。
再加速によって包囲を突破し、それでもしつこく追いかけて来る彼らに魚雷をプレゼント。
まさかとは思うけど、こんな欠陥兵器を異世界ラナトコノの原生住民たちは散布しまくったのか? そうとしか思えない数がいるのは、もはや悪夢だろ。
〈るっちゃん! もうすぐ海底ピラミッドに着くよ!〉
「そうか!」
後は、後方から追ってくるウニ兵器をどのように対処するか・・・。
そんな時、ピラミッドのさらに向こう側から何かが揺らめいて、何かが海底ピラミッドの頭上を越えて、何かがこちらへと迫ってきた。
〈え? なに? なにあれ?〉
「・・・昆布?」
そうだ。
この独特の揺れ方をするウネウネとした見た目と黒を基調とした緑色の長い物体は『昆布』だ。
日本近郊に生息していた物が、世界中で大繁殖をしているとかニュースで見たが・・・あれはワカメの方だったっけ?
今、こうして壁紙モニター越しに見る昆布のサイズは、そんないつか見たニュース特集の海藻など比較対象にもならない怪獣サイズ。
そんな怪獣昆布の縁が光りを灯す。
「・・・アレは? 発光機関・・・昆布じゃないのか? 深海生物!?」
「ルッタ! アレには攻撃をしないでちょうだい! アライラーもビビって邪眼ビームなどを撃っちゃダメよッ!!」
マリーさんが注意を促すと、巨大昆布がゆっくりと俺たちの頭上に移動する。
そして、昆布の先端・・・それが生物の頭であるかのように動くと、俺たちの後方から迫るウニ兵器へ何かを放った。
その刹那、後方の大地ごとウニがさいの目切りとなって、来た道を押し返されるように遥か後方へと吹っ飛んでいく。
左足を地に突き入れるようにしてブレーキを掛けつつ、そうして吹っ飛んでいく後方を見つめながら停止した。
「・・・たった一撃で」
〈アレだけの数を・・・〉
今の俺たちでは、そんな芸当は不可能だ。
それと同時に、あの一瞬の攻撃が放たれた時に感じた圧にも覚えがある。
「・・・この昆布・・・もしかして・・・」
脳裏に浮かぶは、ダンジョン入口で遭遇した【麒麟モドキ】・・・つまり【神殺しの獣】だ。
「ルッタ。ちょっと私の声を外に出せる?」
マリーさんに肩を掴まれて、意識を戻した。
「え? ええ・・・そうであれば、錫杖に触れてください。俺の方で制御します」
促して、錫杖に触れてもらう。
マリーさんの声を外に出すよう調整した。
「あー。あー。ダンジョン管理人のマリーよ! ウィッチに言われて、海底ピラミッドの見回りに来たわ! 前みたいに攻撃はしないでよッ!!」
え? 前に攻撃されたの?
――ひゅーぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――
ん?
「マリーさん。何か音が・・・」
「ヤツの鳴き声みたいなモノね。蛇が使う威嚇音に近いモノなんだけど・・・私には何を言ってんのか分からないのよ」
なるほど。
威嚇されているということか?
〈ウィッチから話は聞いている。って、言ってるよー〉
・・・なんと?
「え? アライラ。何を言ってるのか分かるのか!?」
〈え? うん。なんか分かるけど? え、分からんの?〉
「マリーさん! アライラが分かるそうですよ!」
「え!? マジでッ!? 通訳! すぐに通訳してちょうだい!」
〈えーっと、中に、得体が知れないのがいるから、気を付けろ。って言ってるー〉
「海底ピラミッドに、得体の知れないのが居るから気を付けろ。と言っているらしいです」
「得体の知れないのがいる? そんなはずは・・・誰かが居るはずなんてないのに?」
マリーさん以外の神達は、全員がこの世界から出て行って・・・このダンジョン管理は押し付けられたのだと言っていたから、確かに誰かが居るというのは不自然だ。
となると・・・。
「バグモンスターが居るってことでは?」
「・・・そうなるか」
ここまで来て、バグモンスターの相手をさせられるのか・・・いや、そもそも海底ピラミッドに行くよう言ったのはマリーさんなのだし、その辺りは任せてしまってもいいような気がする。
そう考えれば、少しは気も楽だ。
「ところで、マリーさん」
「ん?」
「こちらのモンスターは・・・もしかして、俺たちが遭遇した【麒麟】や、都を守っているという【青龍】と同じ感じだったりしますか?」
「・・・そうね。紹介しておきましょう」
マリーさんは、一度咳払いをしてから紹介してくれた。
「コイツは、この第一階層で『海底ピラミッド』を守護しているウィッチが使役する【神殺しの獣】の一体で、名を【リヴァイアサン】というわ」
・・・。
・・・・・・。
「・・・・・・・・・リヴァイアサン!?」
〈・・・・・・・・・リヴァイアサン!?〉
この巨大な昆布モンスターがッ!!?
うそでしょ!?
次回は、ピラミッドの中へ。を予定しています。
皆さん、体調不良にはお気をつけて。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




