50 もっと魂を込めて叫ぶんだよ!
こんにちは。こんばんは。
今回のお話は、海底ピラミッドを目指して・・・。の、お話です。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
〈うひゃー。海の水が冷たーい♪〉
マリーさんの勧めにより、牧場を出て少し南下した所にある浜辺から海に潜ることとなった。
現在、俺は『大道人・アライラー新形態』に搭乗している。
乗客としてではない。何がどうしてパイロットというポジションでの搭乗だ・・・飛行機の操縦免許とか必要だったりしないかな?
しかし、飛行機には計器類はもちろん、多種多様なボタンやレバーなどが並んでいるが・・・この大道人・アライラーには操縦桿代わりの錫杖が二本だけなので、初心者にも安心設計となっている。
・・・なんで操縦桿二本で動いているのかが、分からないんだけども。
マリーさんがロボットだと言うので、たぶん今の大道人はロボットに分類されるのだろうけど、ならばもっとそういう雰囲気のコックピットにするべきだった。
どう見てもワンルームで一面ガラス張りっぽくなっているから、ちょっと脳がバグる。
「ほほぉ! 水族館とやらは、こういう感じとなるのでしょうか?」
道標人が、室内に表示されている海中の景色を見て上機嫌だった。しかし、ライトアップされていないので暗い上に濁って見える。
これは、道標人が壁紙のように貼り付けた地獄変という巻物によるものだ。
なぜか『大道人・アライラー』に合体したら、壁紙が外の景色を表示し出した・・・これもどういう仕組みなのか分からない。
合体は前と同じく〈ドッキング! ゴーッ! アライラーッ!〉と叫びながら飛び上がり、前と違うのは巨大道人の頭に貼り付くということ。
これにより〈・・・やっぱダサーい〉とアライラが不満たらたらだったが、無視することに。
現在、巨大道人はアライラーを帽子として頭に乗せて・・・いや、被っている状態だ。
そして、海中での戦闘を考慮して右手に『地獄能・巻蛇槍貫撃』を。左手に『地獄能・巻蛇傘盾壁鎖槍』を装備する。
「ところでアライラ。息とか大丈夫なのか?」
〈ん? そう言われれば、息苦しくないね?〉
アライラには、神の加護で『環境即適応』というモノがある。
これが海中での活動に適した状態にしているという事も考えられるが・・・正直、これはこれで万能過ぎる加護な気がする。呼吸とかどうしているんだ?
大丈夫であるならば、それ以上を聞いても意味はないだろう。こうして見れば、アライラの加護である『万能邪眼』『環境即適応』の二つは正しくチート能力だと思える。
どうして『鑑定』だけがポ〇モン図鑑みたくなっているのかは、謎だが・・・。
こうして海底という環境まで下りてきても、彼女は平然と巨大道人の帽子でいる。さらには、邪眼センサーで周囲の情報を収集してくれるので、コックピットのモニターに地形情報が線画で表示されていた。
水族館のように綺麗な水中を見られると良かったが、そうはいかないようだ。
さて、海底に着地してから周囲を見回しつつ、アライラの邪眼一つをサーチライトにして周囲を照らしてみる。
邪眼センサーが収集した情報の線画表示された地形に、ライトが当たった分だけ色が付いた。
「地球に居るような魚類は、居ないんですね」
「そうね。通常の生物は根こそぎ外に持ち出してあるから、ダンジョン内にはモンスターしか居ないわ。前にも言った気がするけどね」
「改めて、確認しただけです」
もしかしたら、海などには取りこぼしがいるかも知れない。などと思っただけだ。
しかし、やはり神様というだけあるのだろう。海藻なども綺麗に姿が見えず、岩や砂などが広がっているだけだ。
これだけ綺麗な海底なのに、水は濁るものなのか? 水槽のようにクリアな視界にならないのは海底だからなのか?
ダンジョンだからこその演出なのかもしれないか。
「ところで、海底ピラミッドの位置は分かりますか? ちょっと、分かり辛いのでガイドマップなどを表示していただけると助かるのですが?」
「ああ、そうね。今、表示するわ」
マリーさんが中空にウインドウを開いて現在地と目的地を表示してくれる。
なるほど、そっちへ移動すれば海底ピラミッドがあるわけか。と、位置が分かったので、そちらの方向へ巨大道人を歩かせた。
・・・いや、アライラと合体して『大道人・アライラー』なのだから、そう呼ぶべきだろうか? でも、彼女が操作しているわけでもないしな。
うん。巨大道人でいいな。呼びやすい。
脚を動かすたびに感じる重量感。
海底を踏みつける度に感じる浮遊感。
・・・動きづらい。
「動かし辛いでしょう? 水中ならではね。人間なら身体が浮いて歩くことすらままならないはずよ」
「巨大道人は自重で沈んで行く分、まだ歩きやすい感じです」
ずしーん。ずしーん。
まさに巨大な物体が歩行するような重量感は、どこか気持ちがいい。
しかし、やっぱり操縦桿二本を掴んでいるだけで動くというのは、違和感しかないな・・・せめて建機などにあるハンドルやフットペダルなどが無駄に配置されてくれる方が、雰囲気が出て納得もしやすいんだが・・・。
座椅子に座って杖を握るだけというのが、なんかこう・・・うん。考えるのは止めよう。考えるだけ疲労感が増していく。
・・・そうは思っても、考えてしまうことってあるよね?
〈むーん。なんとなくミシミシと締め付けられるような圧があるわ〉
海底なので、相当な水圧が掛かっているのだろう。
「・・・アライラ。邪眼二つを使ってバリアを巨大道人ごと全身に張ってくれ。いつものドーム型じゃなくていい。頭の天辺から足の先までをピッタリ貼り付けるような感じで」
〈ほーい。二連邪眼バリア・スーツ!〉
一瞬だけ、巨大道人の視界がキラキラと光ったかと思うと、さっきまで感じていた海水が纏わりつく感じが軽減される。
バリアで水圧が軽減されたことで、動作がより楽になったか。
〈にしても、モンスターが居なくね?〉
「いつも通り、牧場に張られている魔除けが効いているんだと思うよ。もう少し進めば、モンスターが出てくるはずだ」
「そうね。この辺りはまだ、牧場に展開されている魔除けの効力でモンスターが居ないだけよ。ただし、海を含めて水中のモンスターは、陸上モンスターと比べて縄張りの意識が低いわ。魔除けの効力が届かない場所へ出ると、多種のモンスターが同時に襲い掛かってくることもある。気を付けなさい」
なんと・・・。
〈むぅ・・・つまりこれは、ボスラッシュステージなのでは?〉
ボスラッシュステージ!?
「あの、アライラさん? それはつまり、ボスレベルの強敵が怒涛の勢いで連続登場するステージ。という解釈で合ってます?」
〈うん。それ〉
・・・無理ですね。
「マリーさん。万が一の時は、海上まで引き上げてもらえますか?」
「ルッタなら、マリアナ海溝に沈めたって水圧に耐えられるから大丈夫よ」
「大丈夫の意味が実に不明なのですが?」
「あ、息の問題があったな・・・やっぱりダメか?」
「マリー殿? そういう問題でも無いかと・・・」
そうです。もっと言ってやってください。道標人! 頑張れ!
ゆら・・・。
「ん?」
今、何かユラッと動いた気がした。
モニターに映る景色を見つめ、正面に視線を戻して一点に集中する。そして、一気に力を抜いて視野を広げた。
そこに、ぼんやりと見えてくるのは・・・砂地に隠れた平べったい魚の輪郭。
「そこか・・・ドリリング・ドライバー」
右手の『地獄能・巻蛇槍貫撃』を前面に押し出しつつ、アライラが必殺技を発音する。
と、槍の円錐形をした刃が射出されて、前方・・・俺が捉えた隠れている魚を目掛けて飛んでいく。このとき、刃の回収がしやすいように鎖でしっかりと繋いである。
有線式ドリリング・ドライバーだ。繋いでいるのは鎖だけど。
〈なんやそのドリリング・ドライバー! もっと魂を込めて叫ぶんだよ! ほら! ドリリーングッ!! どぅらいばぁぁああーッ!! はい! ご一緒に!〉
やっている場合ではない。
俺の放ったドリリング・ドライバーが腑抜けているとしても、攻撃であることに変わりはないのだ。砂地に隠れている平べったい魚に命中したドリルは、その肉を抉って貫通する。
しかし、モンスターはその場で横回転を始めると、姿を隠していた時の倍近い面積まで身体を伸ばしたのである。
〈うげ!? なんかモンスターがおるやん!?〉
「まさか、アライラーの邪眼センサーでも見つからないモンスターを見つけたの!?」
「ほぉ・・・これは・・・」
なんか周囲が一様に驚いているが、本当に悠長に驚いている場合ではないのだ。
すぐに後退しつつ飛び跳ねることで、足元を斬り祓うように回転しつつ迫ってくる魚を回避する。と、すぐ傍にあった岩がスパッと切れてしまった。
ヒレなどが刃物となっていて、平べったい魚が横回転することでヒレをより鋭利な刃物として伸びているのだろう。遠心力を利用したヒレの攻撃転用というわけだ。
「アライラ! 鑑定をしてくれ!」
〈え? あ、鑑定!〉
『ポロフラッフ。異世界バキマオーに生息しているカレイの一種。世界的に分布するどこにでもいる魚。漁獲量が世界トップで、どれだけ獲っても絶滅しない魚としてスラムの住民でも買える最安値世界ナンバーワン。しかし、厄介な事にヒレなどが刃物となっており、回転することでスライサーのごとくなんでも切り刻めてしまうことで、漁師の網。釣り糸。諸々を切断してしまう事から大変嫌われている。世界中で獲れるため、世界各国に料理のレシピが存在しており、その数は一年間毎日違う料理にして食べられる世界記録を得るほど。漁師の敵は食卓の味方だった』
・・・そりゃ毎日ご飯を作る側からすれば、一年中同じ食材でも違う料理にして出せるというのは魅力的な話だけれども。
〈こういうのって『雑魚』って言うんだよね! ざーこ!〉
「違う。いろんな種類の小魚が入り混じった箱売りされている物を雑魚って言うんだ。とはいえ、俺もそういう売り物を見たことは無いから、間違えているかもしれない」
〈あ、うん。そーすか〉
などと話している間に『巻蛇槍貫撃』を反転して襲い掛かってきたポロフラッフの頭に突き立てて仕留める。
動きは単純なほど単調で、特に脅威とも感じないレベルだ。
「しかし、初手が身を隠しているタイプの魚モンスターとは・・・まだ居るな・・・ジッとこっちを窺っている感じか?」
〈うぇ!? なんでわかるん? 見えてるん?〉
「いや、見ているわけじゃないけど、アライラの邪眼センサーから収集している情報と、ライトを当てた時の色とかでなんとなく・・・ってところかな」
〈へぇー。じゃ、どうする? 一匹づつ捌いて私のご飯にするん?〉
「いや、今はそういう時じゃないし、一気に殲滅するぞ」
〈バスター? バスター?〉
「・・・水中でビームとか大丈夫なのか? 水が瞬間蒸発とかして爆発したりしない?」
〈むーん・・・あ、水中用ビームライフルとかそういうのあるし、水中用!ってつければイケる!〉
「えぇ・・・まぁ、物は試しか。じゃあ、それで頼む」
〈おっしゃあ! 邪眼! 水中用!! バスター・ビーム!!!〉
ピカッと光るはビームの発射光。
しかし、いつもなら極太なビームの光線は、糸のように細い線となって海中に消えて行く。
〈・・・?〉
「・・・?」
正直、ピカッと光ったまでは認識できたのだが、糸のように細い線が海中に消えて行ったことで、何が起きたのかが分からなかった。
不発のように見えて、さすがに水中用。ではムリがあったのだと思う。
その直後だ。
正面の海水が筒状に切り取られたように光の線が走ってズレたのである。
「まずい」
この瞬間、左手に持つ『巻蛇傘盾壁鎖槍』の傘を展開して正面へと大急ぎで突き出した。と、同時に『ズレ』た海水が瞬く間に蒸発して爆発を始めると、押し出されるようにして爆発が前方へと移動を始め、砂地ごと海底を焦土にしながら飛んで行った。
数秒後には、海水が流れ込んで『ズレ』ていた空間が何事も無かったかのように埋まっていく。
「・・・アライラさん?」
〈むーん〉
ちょっと、これは危険すぎるので、とりあえずグレードを落して『邪眼ビーム』にする。しかし・・・。
〈邪眼! 水中用ビーム!〉
ボシューなどという音を立てて消えてしまう。
これはダメそうだ。というか、この海水は地球のような海水とも何かが違うのか? いや、自然環境を再現したダンジョン式の海水なのだとすれば、何かが違うのは当然なのかもしれない。
水中用。というのが間違っているのか? 海水が特殊だからバスター・ビームやビームを発射した時の反応が妙な事になっているのか?
〈ええい! 邪眼! 魚雷・バスターッ!!〉
「魚雷・バスター!?」
俺が考えている間に、アライラがまたも新技を叫ぶ。
なんとなく、第一印象は魚雷を迎撃する技っぽく聞こえる。などと思っていると、邪眼は特に反応を示さない。
〈むが!? 迎撃する魚雷を確認できません!? なんやそら!?〉
邪眼の感性が俺と同じだったということに、どうしても悔しい気持ちが湧き上がってくるのはどうしてなのだろうか?
あのクソ神と俺が同レベルだと言われた気がする。
いや、これはもしかすると?
「アライラ。魚雷バスターとか言いながら、魚雷を迎撃するイメージを持ったんじゃないか!?」
〈・・・あ、コレじゃ迎撃するみたいじゃね? うひゃひゃとか思ったりしてないよー。全然してなーい〉
していたわけだ。
「マリーさん! 魚雷を英語でなんて言いますか!?」
「え? あー、トーピード・・・だったかと思うわ」
「アライラ! トーピードだ! 邪眼、バスター・トーピードでやり直しだ!」
〈よっしゃ!! 邪眼! バスターッ! トォーピードッ!!〉
カッコいい感じの発音を探ったけど、〈トォー〉まで発音して〈あ、これダメだ〉と思って発音を普通にしたな?
邪眼が光ると、テレビなどで見たことのある魚雷が邪眼より射出され、スクリューで海水を掻いて加速していく。
コレが、ポロフラッフに命中すると、周囲に雷撃を放ったかのように電気が迸るような光を瞬かせながら着弾点周囲を爆発させ、破壊エネルギーを周囲に拡散することで被害範囲を広く巻き込んでいく。
しかし、同時に物凄い光を放つため、リスクを伴う事も分かる。
「モンスターが来るかもしれない。アライラ! 邪眼センサーで周囲の索敵を!」
〈え、あ、邪眼センサー!〉
ピコーン。
そんな音が鳴ると共に、モニターに周囲の地形情報が更新され・・・無数の魚影が輪郭で追加表示されていく。
〈うっげ!?〉
魚モンスターが大量に接近中ということだ。
それなら、こちらに接近される前にある程度まで数を減らしておきたいところだ。
「アライラ。八連邪眼でバスター・トーピードを八方向へ放ってくれ! 数を減らしたい」
〈おっけ!〉
「一点集束じゃないぞ!? 八連邪眼だ。一斉射だぞ」
〈お、おう! 八連邪眼!! バスター・トーピードッ! 一斉射!!〉
八つの邪眼から、一斉に発射されるバスターな魚雷は、俺の指示通りに八方向へと進んでいく。そして、その全てが接近中のモンスターに命中し、周囲を広範囲に巻き込んで数を減らしてくれる。
だが、数が多いので続々と群がってきた。
〈じ、次弾装填!?〉
「まだ撃つなッ! ある程度を捌いてからだ」
巻蛇槍貫撃を振り上げて、正面から突撃を仕掛けてくる魚モンスターの頭に叩きつける。
〈鑑定する!?〉
「数が多過ぎる! 次弾をいつでも発射できるように!」
〈あいよ!〉
左右の槍を振り回して、迫るモンスターを叩き払っている状況だ。なんだってこっちへ向かってくるのか? 敵と認識されているのか? 縄張り意識は低いという話だけど・・・別の理由か?
大口を開いて襲い掛かってくるのはアンコウに似た魚だ。
左手に持つ『巻蛇傘盾壁鎖槍』の傘を開いて、迫ってくる大口に突っ込んで留めようとするが、口の方が大きい事を即座に気づく。
「拡張!」
傘を大きくしたりする時間が無いので、閻魔錠を傘の骨の先端から召喚して網のように鎖を結びつつ丸呑みされることを防いだ。
同時に『巻蛇槍貫撃』同様に傘を高速回転させてアンコウ似の魚モンスターを回転させつつ振り払うべく振り回す。
と、こちらの右横・・・海底から密かに接近しているモンスターに気づいた。
邪眼センサーが反応していないものの、モニターに映し出される周辺地形の輪郭線に乱れが生じたのを見逃さない。
ちょうどいい。そう思いつつ、アンコウ似の魚モンスターをそちらへと叩きつける。
叩きつけた際に、砂地に同化していた色が崩れてタコが姿を現した。
水生生物でもタコやイカは、周囲に自分を溶け込ませる擬態能力を持っているのは知っているが、こうしてギリギリまで近づかれているのを目の当たりにすると、油断している暇は無いのだと改める。
本当に、ボスラッシュみたいだ。
そんな感想を思いつつ、ドリリング・ドライバーをタコに打ち込んでドリルを貫通させると、刃と繋いでいる鎖をそのままに鎖鎌のように振り回すことにした。
重量があるため、ハンマー投げの要領で振り回し、センサーで探知した魚影が密集しているポイント目掛けて投げ飛ばす。
投げ飛ばすと言うと、持っている物を手放すように聞こえるが・・・ここで武器を手放すほど馬鹿じゃない。
もちろん、ドリルをタコから離脱させて、タコだけを飛ばした。閻魔錠という鎖を巻いて作ったドリルなので、業火を噴射することで無理や引っこ抜いたのである。
・・・あ、その手があった。
と、先のハンマー投げで周囲の魚が散って間合いが開いたことで、一掃する機会を得る。
「次弾! 魚雷を発射!!」
〈八連邪眼! バスター・トーピード!!〉
邪眼八つから一斉射される魚雷型バスター・・・いや、バスターな魚雷がモンスターの群れを広範囲で吹き飛ばしてくれる。
爆発による衝撃で押し流されそうになるが『巻蛇傘盾壁鎖槍』で受け流す。
そして、傘の回転を止めて骨の先・・・露先というんだったかな?・・・から業火を噴射することで推進力を得て、巨大道人は海中で加速して目的地までの移動速度を上昇させた。
業火は厳密には『火』ではない。
概念的なモノであって『火』のように見えているだけのモノだが・・・用途としては『火』として扱う事が多いために忘れがちだ。
しかし、コレを用いれば水を熱することなく推進力に転用できるので、改めて便利な技だと思う。
〈・・・ッにしても! 魔除けの効果範囲を出たら、群がり過ぎじゃね!? るっちゃん。なんか美味しいモノでももってんじゃないの!?〉
「そんなバカな! アライラの食料となるモノは魔改造ランドセルに収納しているんだ。いくら何でも気づかれるはずがない」
〈じゃ、なんでこんなに魚が群がってくるんだよー〉
「魚が群がってくる理由・・・エサになる何かが、巨大道人にあると考えるしか・・・」
「もしや、頭に被っておられるアライラー殿をエサと見ているのでは?」
「・・・アライラかッ!!」
〈・・・あたしかいッ!!〉
盲点だった。
魚って蜘蛛とかを食べる事があるのか?って思うが、基本的に水の中に入ってきたなら食べられないサイズではない限り、食べるか。
なら、隠れ蓑結界術を使えば身を隠すことはできるだろうか?
いや、匂いが水中に溶け出てしまうと、気付かれるか? サメは海中に溶けた血の臭いも嗅ぎつけられると言うし・・・。
〈あ! るっちゃん! なんかひと際大きな反応が接近してくる!〉
「なに!?」
すぐに邪眼センサーが捉えた大型の反応を確認する。
サーチライトをそちらに向けると、体表面が鏡で出来ているかのように光を反射した。しかし、その姿もハッキリと見える。
「あのヒレの数・・・それと、姿かたちは・・・」
〈シーラカンス?〉
そう。
こちらに接近してくる魚モンスターは、見た目こそ全身鎧で防御を固めたシーラカンスという印象を強く受ける。
いわゆる『フルアーマー』と言えるだろう見た目だ。
「アライラ。鑑定を」
〈鑑定!〉
『ペルヤッキャニッシェン。異世界デトッポに生息する決闘魚の一種。全身を謎の金属で固めている全身鎧の魚で、金属は綿並みに軽く、超合金よりも硬い。という特徴を持ち、海上へ引き上げると砂のように崩れてしまうという謎の魚である。一説によれば、一定の水圧下に無いと身体を維持できないとされているが、それを証明することはできていない。海洋学者が目を輝かせて研究しようとするが、生きている状態で捕獲することが出来ないために自ら潜って研究しようとするも、今日も助手たちが全力で止めにかかる』
「なるほど、海上まで吹っ飛ばしてしまえばいいのか」
珍しく倒し方を教えてくれる鑑定結果だ。
こういう感じで、毎度しっかりと教えてくれると助かるのだが・・・そうとも。この鑑定がそんなに素直であるはずがない。
「アライラ! バスター・トーピードを!」
〈おっけー! 邪眼、バスター・トーピード!〉
一発のバスター・魚雷が、接近するシーラカンスモドキに突進し、特に回避行動などを見せることなく命中する。
しかし、爆発したバスターなエネルギーがシーラカンスの鎧みたいな外装に吸収されて消えて行くのを見た。
「エネルギー吸収能力があるのか?」
〈うっへぇ・・・こういう敵って、吸収限界まで魔力を吸わせ続けるのが攻略法だったりするんだよね!〉
それはそうかもしれない。
しかし、そういうのはエネルギーの吸収量に上限がある場合に限られる。俺のように、魔力が尽きることなく湧き続ける者がいるように、どれだけエネルギーを流し込んでも際限なく吸収し続ける存在がいても不思議はない。
下手に我慢比べみたいなことをするのは、危険だろう。
「ドリリング・ドライバー」
俺が『巻蛇槍貫撃』をシーラカンスモドキに向け、ドリルを発射して攻撃を仕掛ける。が、ドリルは金属に接触した音を発しつつも、傷をつけることも出来ずに滑って軌道を外していく。
間違いなく、接触面に傷は無い。
もしくは、傷はついたが瞬時に修復されているという可能性もあるか? 謎金属ということは、どういう機能が備わっていても不思議ではないからな。
いずれにしても、ドリリング・ドライバーも通じないという事は確かだ。
と、シーラカンスモドキの鱗?とみられる輪郭が光りを放ち始めると、まるでジェット機のノズルから噴射される火のようにエネルギーを放射し始めた。
それと同時に、海水を殴りつけるかのように加速して、一気に俺たちへと突撃してくるのである。
悠長にしていられないため、傘そのものをノズルに見立てることで、業火を噴射する。その火力を以て推進力とし、強引にシーラカンスモドキの突進を回避する。
奴の突進攻撃を回避することに成功するも、シーラカンスのようなヒレを使う事で減速・・・からの方向転換を巧みに行い、再び加速して突撃を仕掛けてくる。
「ええい! 地蔵合掌巨大道壁!!」
足元より巨大な腕が飛び出して、突進してきたシーラカンスモドキを合掌時に鷲掴みにすることで受け止める。
こう、グワシッ!て感じで受け止める。
しかし、加速力があるために、止めたはいいが腕のあちこちに負荷が掛かって今にも砕けそうになっている。
「だけど! こうすれば!!」
俺は、逃げるのではなくシーラカンスモドキへと接近して、その口に槍を突き入れる。ここから無理矢理に口を開かせる。
その開いた口にアライラを突っ込む勢いで頭を寄せる。
「アライラ! バスター・トーピードを一点集束で撃ち込んでくれ!!」
お願いすると同時に、天上である彼女の腹?というか、脚の付け根辺りかな?・・・に錫杖を突き刺して魔力の急速充填を行った。
〈おっしゃ!! 魔力充填120%!! 一点集束! 八連邪眼!! バスター・トーピード!!〉
八つの邪眼から一点に集束されたバスターな魚雷は、そしてシーラカンスモドキの口から体内へと突入してくれる。
「離脱する!」
〈おまかせーッ!〉
体内に超強力な一撃を放ったのだから、あとはもう爆発四散するだけだ。
だから、両手に持つ槍を使って業火を噴射し、一気に距離を稼ぐため加速をする。
しかし、俺が予想した結果は訪れない。
「あれ?」
〈爆発しない?〉
逃げるために背を向けていたが、爆発したような反応を得ることが出来なかったため、逃げるのを止めて後ろを振り返る。
と、全身からエネルギーを放出し、エラや目からもエネルギーが噴出している様子でこちらを加速して追いかけて来るシーラカンスモドキを見てしまった。
〈ホラー展開!?〉
「バカな・・・体内まで謎金属でできているのか!?」
生物なら、大概は体内を攻撃すれば死ぬはずなのに・・・こいつは体内まで鎧になっているようだ。いや、だからこそ海上へ引き上げると砂みたいに崩れてしまうのか?
あの勢いでは『地蔵合掌巨大道壁』は砕かれてしまったのだろうと納得できる。
すぐさま四つん這いになって姿勢を低くすることで、その上を通過するシーラカンスモドキ。
そんなに機敏には動けないことは、最初の突撃で分かっているので、まずは回避を優先する。そして、今度こそあれを倒す術を。
こちらを通過してから、減速と方向転換で向き直り、先ほどでは無くとも再びエネルギーを放射して加速し、突撃を敢行してくる。
それに合わせて、俺は鎖を巻いた。
「地獄門・縛鎖閻魔錠!」
海底より飛び出すは、錠の頭に鎖の身体を持つ蛇だ。
巨大道人で召喚しているからか? そのサイズは巨大道人用に調整されているようで、シーラカンスモドキに巻き付くことで縛り上げ、拘束してくれる。
推進力となる部分が鎖によって塞がれたことで、一気に減速するシーラカンスモドキ。
「さらに、業火!」
鎖から業火を噴出させ、コレを以て鱗?から放出されるエネルギーを焼き払うことで推進力を打ち消すことを狙う。
そして・・・。
「地獄変」
新たに地獄変を巨大道人の手に召喚し、コレを「地獄道・地蔵菩薩錫杖術」で錫杖に変異させる。そして、新たな「地獄門・縛鎖閻魔錠」を召喚して錫杖に巻き付けることで、「地獄能・巻蛇槍貫撃」にした。
この新しく用意したモノを、閻魔錠に縛られて身動きが出来ずに海底に沈んで転がっているシーラカンスモドキの『縛鎖閻魔錠』と繋げる。
「アライラ。ドリリング・ドライバーで海上まで打ち上げてくれ」
〈・・・は!? 私がやっていいの!!?〉
「この一発だけね?」
コントロールを交代し、彼女は大興奮で絶叫した。
「どぉりりぃぃぃんぐぅう!!!! どぅらぁぁあいぶぁああああああああああああ!!!!!」
なるほど・・・コレが魂を込めた一撃という奴なのか・・・。
ちょっと俺には、真似できないなぁ・・・恥ずかしいし・・・。
とはいえ、彼女の気合が籠り過ぎた一撃は、あっという間に視認できなくなってシーラカンスモドキを連れて行ってくれた。
〈ふひぃー。なんか溜まっていたストレスを全部吐き出せた感じでスッキリした!〉
「それは何より」
再び巨大道人のコントロールを取り戻し、マリーさんが表示し続けてくれるウインドウを確認して目的地と現在地を知る。
ウインドウの表示だけを見れば、結構近い場所まで来ているが・・・実際にはまだまだ遠い。
ここまでくるのに、何匹の魚モンスターを相手しただろうか? 忙しくてちょっと曖昧になっている。
「それにしても、ここまで魚モンスターと戦わなかったせいか・・・怒涛の勢いで登場するな」
〈あー。湖に居たヤツ以外じゃ見てないもんね? この階層だと〉
「元が人間用の陸地だからだとは思うけどね」
怪獣サイズのモンスターたちからすれば、陸地は人間スケールなので小さく感じるはずだ。
今、俺がロボットのように操縦している巨大道人も、陸上では相当なサイズで歩くと重量があり過ぎて動作が鈍すぎたからな。
だというのに、この巨大道人を易々と上回るサイズの魚モンスターが次から次へと出てきたから厄介だ。
〈思うんやけど? 普通に潜水艦モードだったら、あっという間に食われてたんじゃね?〉
「たしかに・・・」
果たして、俺たちは海底ピラミッドに到達できるのだろうか?
・・・どこかで休憩はしたいな。
次回は、海底ピラミッドに到着。を予定しています。
ちなみに、ルッタが放つ『ドリリング・ドライバー』は、バネで飛ばすオモチャのロケットパンチみたいなアッサリした感じなので、アライラーが〈もっと魂を込めろ〉と文句を言った流れです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




