表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/59

05ダンジョン攻略・・・のまえに

こんにちは。こんばんは。

蜘蛛ちゃんの名前がなかなか決められず、候補を作り過ぎて余計に決められなくなってしまいました。なんとなく響きがいい名前を選んだつもりです。

〈で? なんか忘れていたけど、なんで私ってば蜘蛛に転生しちゃったと思う?〉

 ・・・そういえばそういう話をしていたんだった。

〈でー? なんでなん?〉

 ふむ、それほど難しい話ではないからな。

「あくまでも推測だけれど、どうか怒らずに聞いて欲しい」

 一拍の間を開けて、俺は続けた。

「結論から言うと、君は俺をココへ落とすための駒として転生させたんだと思われる」

〈・・・コマ? 日本の伝統的なオモチャの? 紐を巻いてこう・・・〉

「うんうん。その独楽じゃない。将棋とかチェスなどに使われる方の駒だよ」

 沈黙。

〈え? どういうこと?〉

 ああ、ちょっと本能的に理解したくないという思いがあるな。

「さっきの回想を見て気づいたと思うが、ツルハシや魔法術などを使っても掘れない場所に行き当たっていたんだ」

〈そう言ってたね〉

「その場所を砕いて、底を抜くには相当な力が必要になるとは、思わないか?」

〈・・・確かに、すんごい地震が起こって崩れた先は長い縦穴で・・・ん?〉

 ここまで行けば分かったと思うが、一応説明を続けようか。

「あの直下型地震?と思われる揺れは、まさに君と麒麟似の怪物が戦闘を始めたころ合いだと思わないか?」

〈・・・〉

 ち、沈黙してしまった。

 ど、どうする。たぶんもう、彼女は理解しているはずだが・・・いや、説明は続けよう。

「そもそも、数十分も落下するほどの長い縦穴だ。これを底から登ることが出来る生物と言えば、君が思いつく限りでどれだけいる?」

〈・・・〉

 は、反応がない。どうする? 反応を待つか・・・。

「こ、これだけの長さを、君は数日かけて登ったと言っていたね。時間はかかるが、蜘蛛の君なら登れたわけだ」

 さぁ、これでもう答えは出たはずだ・・・。

〈そういう事か・・・そういう事なのか・・・むぅん・・・むぅん〉

 蜘蛛さんはその場に伏せるように身を小さくすると、なにやら唸り始めた。

 その様子は、力を溜めているような感じを受け、少しだけ距離を取ることにする。

「ここがどういう場所なのかは定かではないが、この世界では隠されているダンジョンである可能性は十分だ。君を使って俺を落としたことからも、予想はできる」

 というか、こんな大きな蜘蛛のモンスターが生息している時点で、ここがダンジョンの類であることは間違いない。

 なにせ、外の世界には大型の動物は生息していても、蜘蛛でこれほどの巨躯を誇る生物は未確認だからだ。

 生息しているのは地球で確認されている動物ばかりだ。サイズだけが地球の5倍近い感じだが。

 すると、さっきまで唸って何かを考えていた蜘蛛さんが立ち上がって言う。

〈えーっと、状況を整理しよう。私の名前は苦悩 難。女子高校生。ある日、通学途中でサラリーマンのおっさんにタックルされて階段を落ち、目が覚めたら・・・蜘蛛に転生していた!〉

 へー。

「で? 迷宮探偵クナンとでも言うつもりか?」

〈先読みしないでちょうだいよ! 必死に考えたのに!〉

 落ち込んでいるのかと思えば、くだらないことを考えていたわけだ。

「そんな運命のルーレットも回らないような事を考えているのが悪い」

〈そんなー〉

 はぁ、まったく。

 ・・・名前か。

「そういえば、君の名前は?」

〈名前?〉

「そう、これから長い付き合いになりそうだし、蜘蛛さんと呼ぶのもどうかと思うし、名前は知っておきたいとおもうんだが・・・」

 まさか『苦悩 難』とか言うのが本名でもないだろう。ネタなのは間違いないだろうし、自分を冷静にするためにふざけてみただけだろうし・・・。

〈名前か・・・名前・・・なまえー〉

 何を悩むことがあるのだろうか?って思うが、生まれてから生きるのに必死だったと言っていたので、自分の転生後の名前を決めてもいなかったのだろうな。

「今の名前が無いのであれば、前世の名前でもいいが?」

〈・・・ルッタはさ。前世の名前は憶えているの?〉

 なんだ? 突然・・・そりゃ、記憶を保持したまま転生しているのだから・・・前世の名前?

「・・・言われてみると、前世の名前が出てこないな」

〈あ、やっぱり〉

 待て、自分の名前だけじゃない。

 親や親類の名前はもちろん、顔も黒塗りされたように思い出せなくなっている。これは・・・

「蜘蛛さん。日本の総理大臣の名前とか思い出せるか?」

〈・・・えーっと、総理大臣の名前・・・えーっと、あ、思い出せないね〉

 やはりか。

 自分だけでなく、地球に置ける人物名がまるで思い出せない。

〈うーん。漫画アニメのキャラ名なら思い出せるね。孫悟空とか〉

「・・・まぁ、その辺の名前は多種多様な作品に登場する名前だからな」

 そうか、人物名は思い出せないけれど、キャラクター名は思い出せるのか。

「とりあえず、名前が無いのであればさっき君が言っていた『苦悩 難』でいいかい?」

〈いいわけねーだろ!〉

「なら、『クナン』君でいいかな?」

〈いいわけねーだろ!!〉

 まぁ、そうだよね。

 なら、名前か・・・うん? そういえば・・・。

「蜘蛛さんは前世でネトゲをしていたんだよね?」

 俺がそれを言うと、蜘蛛さんは「!」というアイコンを頭の上に出現させた。邪眼の一つが光ったので、邪眼で出現させたんだろう。芸が細かい子だな。

〈そうか! 私がネトゲで遊んでいたアバターの名前を使えばいいんだ!〉

 そうそう。たぶん、それが一番間違いない選択だろう。

〈わっはっはっは! そうと決まれば私のことは『アライラー』と呼んで欲しい!〉

 アライラー? 響きはいいかもしれないな。

〈ふふ、我が名はアライラー!! アラクネそのものだ!〉

「いや、蜘蛛だろ」

 アラクネはと言えば、蜘蛛と人間が融合したようなキメラ的モンスターを指す。だから、人間の身体がくっついていない彼女は蜘蛛である。

「じゃあ、アライラ。これからよろしく」

〈のんのん! アライラー。りぴーとあふたーみー。アライラー〉

 その最後に伸ばす発音にこだわりがあるというのか? ちょっと面倒なこだわりをお持ちのようだ。

「普通に名前を呼ぶ上で、アライラって言うほうが楽なんだけど? ダメ?」

 ジッと俺を見てくる蜘蛛さんが、そしてなんか唸る。

〈んんッ! なんか今、可愛い感じだったから許す! でもでも、公式にはアライラー! いい? アライラー! OK?〉

「ああ、わかったよ」

 ここで書類を書くような場面などないだろうし、その辺はスルーしておこう。





 さて、それでは改めて話を進めていくことにしよう。

「さっそくだけど、ここを脱出するためにこれからどうしようか?って話をしたいんだけど」

〈そう言われてもさー。生まれてから今日まで必死に迷路みたいな洞窟を駆け回り続けて、時には死にかけ、時には食われかけながらも、ここまでやって来たんですよこれがね!〉

 そうだよな。

 あそこに見える入口のような穴。

 そして人工的に作られたような広大な吹き抜けの空間。

 ここを登った先に横穴があって、さらに縦穴へと続いていたとなれば、脱出路となるのは間違いないのだけれど・・・。

〈ねぇねぇ? ルッタが落ちてきた縦穴を登って脱出しようよ!〉

 そう。それがもっとも確実に外に出らえる道なのだけども・・・そうなんだけれども・・・。

「その場合、間違いなく麒麟似の怪物が再登場するぞ」

〈・・・ふ、なんだそんなこと〉

 お! なにか対抗手段があるというのか?

〈ルッタと巨大お地蔵さんがいれば、あんなの楽勝って奴よ!〉

「それムリ」

 ガーンって擬音文字を・・・邪眼で出現させるのはやめてくれないかな・・・。

〈な、なんでムリ!?〉

「なんでも何も、あの麒麟似の怪物と戦うには、俺が弱すぎてダメだ」

 そもそも、戦うためのチートアイテム?である地獄変を使い慣れていないのだ。生まれてからこそこそと使ってみたことはあるけれど、あんな怪物と戦うのは難しい。

「やろうと思えば、巨大地蔵を出して戦うこともできるとは思う」

〈よし! それで十分だ!〉

「ただ、1分くらいしか地蔵を持続していられないから」

〈アンビリカルケーブル断線!〉

「電力の問題じゃない。俺の身体が負荷に耐えられないんだ」

〈負荷?〉

 そう、この地獄変。なんだかよくわからないんだが、使用者の身体に物凄い負荷をかけてくるのだ。使っていると全身の肉が裂けて血が噴き出るぐらいには、キツイ。

「魔力だけなら、自称神の加護で湧き続ける永久機関となっているけれど、身体は普通の人間だからか、地獄変というアイテムを使用していると過負荷で肉が裂けるし、血が噴き出るんだ」

〈Oh・・・〉

 アライラには申し訳ないけど、麒麟似の怪物と戦闘になったとして、果たして1分以内に倒せる相手であるか・・・わからん。

「そう、あれは俺が一歳・・・いや、二歳ぐらいの時なんだけど・・・」

〈よし、そういう事であれば仕方ない! ここはダンジョンなんだろうし、正攻法で脱出をしようじゃないか!〉

 ・・・回想を阻止してきたか。

 ま、正攻法で脱出を試みるというのは賛成だ。

「うん。俺もその方がいいと思う」

〈お、それまたなんで?〉

「この場所がダンジョンであるとするなら、このチートアイテムを使いこなせるようにする目的で、自称神が仕組んだことだろうから・・・だ」

 そう。魔王復活までは時間がある。その間に貰ったチートアイテムを使い慣れておきたいとは思っていた。

 こうして謎の地下空間に落ちることになったのは、偶然ではないはずだ。

 神による仕込み。

 ここで修行して、魔王という生物兵器を倒せるように道具の使い方を身に着けろ。ということだろう。なら、ダンジョン攻略こそが正解のはず。

 攻略し終えた時、俺は異世界無双なチート転生者になっているはずだ。

 ・・・うん。悪くない。

〈あのクソ神か・・・むぅ・・・脱出したら、絶対に殴ってやる。右ストレートでぶん殴る。まっすぐ行ってぶん殴るわ〉

 ・・・やる気、十分のようですね。

「だけど、麒麟似の怪物が出てこなければ、もう一度縦穴を登って脱出・・・が理想的なんだけどね」

〈出てくるよねー〉

「ああ、出てくるだろうねー」

 まず間違いないだろう。次に戦闘になった場合は、見逃してはくれないだろうしな。

 

 さて、そうと決まればダンジョン攻略だ。

 アライラが教えてくれた入口のように整えられた穴から突入できるのだとすれば、その前にやって置きたいことがある。

 オーバーオールの腰に巻いたベルトには、いくつかのポーチが備え付けてある。

 そのうちの一つを開いて、タバコのように巻かれている紙を取り出した。コレがうまく起動すれば、外へ連絡が取れるようになるはずである。

〈・・・なにそれ?〉

 アライラの問いに頷き返す。

「これは救助用魔法術具だ。俺が世話になっていた前伯爵さまお抱えの魔法術師に作ってもらった道具で、遭難したりと何かしらの危機に陥った場合に使用することで、魔法術具の位置特定と使用者との連絡が取れるようになるんだ」

 俺の血を採取して、インクに混ぜ込み、呪文のようなモノを吹き込みつつ術式陣を書き込まれている羊皮紙だ。魔法術を刻むなら、一番効果的であるらしい。

〈転送系の脱出装置じゃないの?〉

「残念だけど、違う」

〈なんだそっかー〉

 そう思うだろうけどれ、転送系の魔法術は国で厳しく制限している状態だ。一介の魔法術師では使用許可は下りないし、そもそも転送魔法術に関する術式は知ることもできない。

「転送魔法術は、国で使用制限をかけているんだ。腕の足りない魔法術師が使って事故が多発したことがあるとか、殺人の道具に悪用されたとか、事情があるらしいよ」

〈ふーん〉

 興味ない感じだな。

「それに、コレが脱出用の転送魔法術具であったとしたら、俺一人分だろうから・・・」

〈あ、私はここに取り残される!〉

「そういう事だ」

〈あっぶねー。せっかくルッタと出会えて外に出る希望が見えたのに、置いてきぼりにされるところだった!〉

 ま、そうなるね。

「というわけで、外と連絡を取って俺の無事を知らせたい」

〈どして?〉

「死んだと思われて、葬儀とか済ませられても困るだろ。外に出てどちらさまですか?ってなれば、俺を証明するのに手間暇かかるだろうし」

〈そこはDNA鑑定とかで照合すればすぐじゃね?〉

「この世界は、地球のような高度な科学技術はまだないんだ。俺という人間の真偽を確かめる術はほぼないんだよ」

〈そっか、ここを脱出して家に帰っても、ルッタは死んだ。もういない! だけど、俺の思い出に生き続ける!って状況だと、いろいろ説明するのも大変だよね〉

「そういう事だな」

 なんか、途中で芝居かかったことを言い出したけど、そこはスルーでいいだろう。

「で、この魔法術具は俺の血を垂らすだけで起動するようにセットしてくれているらしいから、血を取るためにナイフか針が欲しいんだ」

 生憎と、俺はそういう道具を持ち合わせていない。

 刃物は危険だからと、護衛騎士に取り上げられているからだ。

〈・・・それは私に言ってどうするの?〉

「君の万能邪眼で、ナイフか針を出して欲しいんだよ」

〈噛めばよくない? こう、口寄せの術!って感じにガリッと〉

「・・・それ、凄く痛いんだぞ」

 皮を破って、肉を裂くほどに噛みつかねばならないのだ。これが痛くないわけがない。

〈そっか、でも・・・私も私で使い慣れてないから、加減を間違えちゃうかもしれないよ?〉

「それならそれでいいよ。何事も練習ってね」

 俺は左手を差し出した。

「指の先に針を刺す感じでお願い」

 そんな俺の左手に顔を近づけてくるアライラ。

〈おっけー。うーん・・・邪眼!・・・ん? 針って英語でニードルだっけ?〉

「ああ、針は―――」

 俺がアライラの確認を肯定しようとしたとき、杭のような物が俺の指・・・ではなく手のひらに突き刺さって貫通した。

 皮を裂き、肉を裂き、骨を強引に押しのけて、杭が俺の手のひらに突き刺さる。

「わああああああああああああ!!!!!!!!」

「ひゃあああああああああああ!!!!!!!!」

 邪眼の力で出現した杭は、すぐに消えてしまったけれども・・・俺の手に空いた穴はふさがらない。血が物凄い勢いで噴き出てくる。

 しかも、右手に持っていた魔法術具は、驚いた拍子に落としてしまい、俺の血を浸るほど浴びている。

 あ、術式陣が光りだした。これって起動したという反応だと言っていたな。

〈ど、どどどど、どないするのん!?〉

「お、落ち着け。まずは落ち着け。君の邪眼で止血と治療をするんだ」

 なんか、アライラが軽いパニック状態で暴れだしてしまった。彼女の声が聞こえていなければ、血を見て興奮したモンスターにしか見えないのが恐ろしい。

 まぁ・・・そのおかげで、俺は冷静になれたんだけれども。

〈止血!? 治療!? どうするの! それってなんなの!? なにするの!?〉

 ダメだー。まるっきり思考できてないよこの子・・・。

 いや、待てよ。

 たしか、彼女の邪眼は想像と妄想を具現させる云々と言っていたよな・・・。

「アライラ! 君は天才外科医だ! その腕は神の手だ! スーパードクターだ!」

 なんでもいい! とにかく彼女に何かしらのイメージを持たせることが、重要だろう。これで落ち着きを取り戻せるかは定かではないが・・・。

〈報酬は1000万だ〉

「・・・あ、はい」

 この子、実はとんでもなくヤバい子なのではなかろうか?

次はいよいよダンジョン突入・・・できるといいのですが・・・。

読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ