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49 海に潜る術

こんにちは。こんばんは。

今回のお話は、海に潜るための準備をするお話になります。


最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

 一週間。

 俺は、必死に考えた。

 大道人・アライラー以外で海中に潜る効率的な方法を・・・。

 

 畑でできたジャガイモは、成長と言うよりも巨大化しただけのものである。というマリーさんの調査報告を受け、毎日違う野菜を植えて検証を行う。

 そして、いずれも花や葉っぱを急成長させるものの、引っこ抜いてみると巨大化しただけの野菜が出てくるという結果になった。

 ということで、マリーさんは言う。

「考えるだけ無駄ね。巨大化する。それで結論としましょう」

「投げ捨てないでくださいよ!」

 こうして、無事にアライラ用の食料は自給自足できるようになり、埴輪蒸し器で調理してみると、コレが美味しいということで一週間は日替わり野菜蒸しで過ごしてもらう。

 

 この一週間で得た最大の情報は・・・埴輪蒸し器が「あー」と言いながら目や鼻と口などの穴から蒸気を噴いていたことだろうか。

 ・・・声がした瞬間にビビって、腰が引けた。

 大道人たちもドン引きしていたので、間違いなく気持ち悪いと感じた瞬間だった。





 牧場から真っ直ぐ東に移動すると、海が見渡せるわけだが・・・ここは断崖絶壁だ。

 普通に考えれば、こんな場所から海に入るなど自殺行為でしかないのだが、今日という日に限りそれは問題にならない。

 なぜならば、大道人・アライラーだからだ。

 従来のアライラと同サイズな大道人をさらに巨大化させて、アライラが背中にくっつくという形態は、今回は廃止された。

 なぜなら、今回もっとも重要なのは『ルッタが乗る空間』だからである。

 つまり、俺が海底に行くまでどうするか?ということだ。アライラのバリアで守ってもらう手もあるが、海中にはモンスターがいるため邪眼の使用数を一個でも節約したいのが本音。

 となると、俺が大道人に搭乗するという案が、マリーさんより提出された。

〈コックピットを増設するん!? ハイッ!! 私も乗りたい!!〉

 真っ先に反応したのは、当然のように彼女であるが・・・今はそれを無視してマリーさんの話を促した。

「正直なところ、私は魔法術で空気の確保と水圧対策は可能だから、海底でもどこでも移動可能よ」

「私は石像ですゆえ、水圧にはどこまで耐えられるか分かりませぬが・・・まぁ、素でも大丈夫でしょう」

〈私は潜水形態で潜れるぜ!〉

 ・・・羨ましいとか思ってないからな!? なッ!!?

 

 こういう感じで、俺以外は海に潜る術を持つという事態に直面し、結局は俺が足手まといみたいになっているのが悔しい。

 しかし、だからこその『大道人・アライラー』なのだとマリーさんは語る。

「任せない。地球は昭和時代からアニメを見て来た私よ? こういう時の『こんなこともあろうかと!』は星の数ほど見て来たつもりよ!」

「つもりのままでいてください」

 マリーさん。やはりこの人もオタクに分類していいのではないだろうか? 本人は否定しているが。

「ということで、私から『大道人・アライラー』に新形態を提案するわ!」

〈新形態!?〉

 新形態。それは新しい形態ということ。

 夢が膨らむ単語であるのは確かだろう。変形する車とか飛行機って、興味無くてもカッコいいとは思うんだからさ。

「そのイメージ図が・・・これよ!」

 いつもの中空に展開されるウインドウ。

 これに、大道人・アライラーの新形態『潜水形態』とメモ書きされた画が表示される。

 そして、アライラが露骨に嫌そうな声を上げた。

〈うっわ・・・だっさ・・・マジかよ・・・〉

 アライラがいつになく辛辣なのは、まぁ、分からなくもない。

 マリーさんが提案する新形態とは、大道人・アライラー用に巨大化させた大道人の頭にアライラを乗せて帽子みたいにするというものだ。

 うーん。

 スーパーな配管工ブラザーズの変身帽子みたいなデザインだと、パッと見で思う。

「あの、マリーさん」

「何か?」

「俺は、どこに乗るんです・・・か?」

「ふむ」

 俺の問いに頷き返すと、違うウインドウが追加で展開されて・・・帽子状態のアライラを退けた時の巨大大道人・・・いや、もう面倒だから巨大道人にしよう。

 巨大道人の頭の天辺に居るという設定が記されている。

「・・・え? なんで俺が大道人の頭のてっぺんに?」

「アライラへの魔力急速充填などを行う時、おまえがすぐに触れることのできる位置に居ないとダメでしょう? それらを考慮して、アライラを帽子みたいに大道人に被せ、その下にお前を配置するのが効果的であると判断したわ」

 判断したわ。で、こんな設定を考えてもらわれても困るんだが・・・。

「あの、つまり、巨大道人の頭頂を削って、入るスペースを作る。ということですか?」

「その通りよ。コクピットを作るみたいなものね」

 ・・・えぇ。

 すると、ウインドウの画面が切り替わって大道人の頭頂部をアップにし、ここに人が入れる空間を作るという説明分と共にイラストが示された。

 ワンルームくらいの広さに人が三人ほど入っている画だ。

「・・・あの、三人ぐらい入れる広さの空間で描かれているようですが?」

「そうよ。ルッタ。道標人。私。の三人ね」

 あれー?

 この二人は特に何をしなくても自力で潜れる術があるとか言っていたはずなんだけどなー?

 なんで便乗するつもり満々なんだろうなー?


 いや、ここで苛立ちに気持ちを引っ張られるのは良くない。深呼吸をしよう。

 大道人・アライラーの新しい可能性をマリーさんが提示してくれているのだから、ここでキレてしまうのはダメだろう。

 そも、別にキレてないし? だから「ちょっとキレてませぬか?」「ちょっとキレ始めてるわね」と二人でヒソヒソと露骨に聞こえる話をしないで欲しい。

「まぁ、それはともかくとして・・・大道人・アライラーとなれば、コントロールはアライラに奪取されるわけですから、海に入ったら袋叩きにされませんか?」

〈ふ。同じ過ちを繰り返すほど、私はバカじゃないんだぜ?〉

「結局、ヨーロロンに何度挑んでも勝てなかっただろ」

〈むーん〉

 そう。

 アライラはヨーロロンに敗北してる。それもアッサリと。

 大道人・アライラーという形態が持っている最大の弱点は重量だ。重すぎるために機動力が低く、ヨーロロンを相手に完敗するほどだ。

 元々、蜘蛛モンスターの身体で俊敏な動作が可能であるアライラだが、判断が遅いので俊敏性を相殺しているところがある。

 つまり、俊敏性など皆無な地蔵で判断の遅いアライラでは、棒立ちで敵の攻撃を受けてしまうのだ。

 ・・・まぁ、無理矢理に空へ飛ぶこともできるが、魔力の消費量が凄まじいために俺の身体が長時間を維持できないことだろう。

「その辺りの心配も、道標人と話し合って解決しているわ」

 マリーさんのドヤ顔を見てから、道標人のドヤ顔を見る。

 この二人、なんだか異様にノリノリだ・・・いや、これはウキウキとしているのか?

「お任せください。主殿。マリー殿に相談されまして、大変素晴らしい解決策をご用意いたしました!」

 ・・・。

 ・・・・・・胡散臭いセールスマンみたいな言葉だ。

「他ならぬ道標人の言葉です。まず、俺は何をするんですか?」

 ジッと。

 ただ道標人をしばし見続けていると、なぜか道標人が落ち着きを無くしてソワソワとし出した。そして、マリーさんが冷や汗を掻き始めているの見て、どうかしたのかと思う。

「そ、そうね。とりあえずは、大道人・アライラー用の巨大な大道人を用意してちょうだい。理想としては、大道人を六人呼ぶだけの魔力で一人を作ってもらいたいわ」

 ふむ。

 海底に沈めるわけだから、水圧に耐えられるだけの強度を持たせたいわけか。

 それで、より強力な巨大道人を必要にする。なるほど、であれば現在の俺が込められるだけの魔力を大道人に込めてみるのが一番だろう。

 まず、一人の大道人に込められる最大魔力を調整する。

 錫杖を鳴らして魔力を集め、最大値まで到達したところで錫杖を地面に突き立てる。息を吐いた。

「召喚をしないの?」

「はい。海底まで下りるわけですから、生半可な大道人ではダメでしょう? であれば、ちょっと時間はかかりますが、今の俺で仕上げられる最強の大道人を作ろう。と思いました」

 新たに錫杖を用意し、これに先と同様の魔力を込めて突き立てる。

 六人分の魔力を込めた錫杖が、そうして並ぶ。

〈むぅ・・・凄まじい魔力量・・・魔力量に上限がないって、十分チートだね〉

「一度に使える魔力量には上限があるよ。よく血反吐を吐いているだろ? アレが上限オーバーした結果だと思ってくれればいい」

〈あ、そうなんだ〉

 特に気にしていないようだ。

 それに上限オーバーするたびに上限が上がっているようだから、無理無茶無謀を繰り返し続ければバスター・ビームを連発してもケロッとしていられるようになるかもしれない。

 

 こうして、魔力を最大まで込めた錫杖を六本用意し終え、一本ずつ引っこ抜いて抱きかかえる。


「・・・地の深淵に、我が力を以て求める」

 マリーさんが顔を輝かせながらカメラを構え、俺の周囲を駆けずり回るようにしてあらゆる角度からシャッターを切って興奮していた。

 錫杖を抱えているだけなのになぁ・・・。

「地獄道・地蔵菩薩巨大道人」

 六本の錫杖が一本の大きな錫杖に合体すると、地中より巨大な手が飛び出して錫杖を掴む。

 そうして、大道人・アライラー用の巨大道人が地中から出てくる姿は、まさに特撮モノの登場シーンと言っても過言ではないだろう。

 それも遠くからの風景映像などではない。

 まさに足元から出てきた人間視点での迫力だ。これはすごい。怪獣などが地中から出てきた場合の居合わせた人視点というのは、なかなか描かれるモノでは無いだろう。

 カッコいい!と思うものの、すぐに出てきたのが地蔵であるのだと認識し直して、素に戻ってしまった・・・今度、アライラに頼んで再現してみようかな?

  地中から出現した大蜘蛛怪獣・・・一瞬で食べられて地中に引き込まれてしまいそうな気がする。

〈おほー! なかなかカッコいい登場じゃん!〉

「うむ。実に素晴らしい迫力ですな。ここまで大きい石像は地獄世界にもありませぬ。生物ならば、ちらほらいますが」

 ちらほら居るんだ・・・巨大道人と同等の怪獣的存在・・・。

 気になる所ではあるけれど、今は優先することがある。

「それで? 頭頂を削って人が三人乗り込めるスペースを作るのですよね?」

「そうよ。さっそく乗せてもらうとしましょう」

 巨大道人にしゃがんでもらい、手を降ろしてもらう。

 そうして俺たちの前に差し出される手であるが・・・ロッククライムしないと手の平まで登るのは困難だろう。

 今の俺にできるのかな?と思ったが、マリーさんが俺を抱えてくれた。

 こうして手の平に移動すると、巨大道人が手を頭に近づけてくれる。その動作がまた何とも言えない迫力を持っており、山頂から飛び降りて滑空しながら山肌や崖を下っていくのは、こういう感覚なのかもしれない。と思った。

 

 と、ちょっとビビりながらも巨大道人の頭頂に飛び移り、マリーさんが天辺まで連れて来てくれる。

「ここが大道人の頭頂ね」

「ふーむ。絶景ですな」

「思ったよりも石の手触りが強いですね・・・こう、ツルツルしているものと思っていました」

 墓石のようにキラキラとしているイメージだったが、こうして触れてみるとザラっとしていて磨いたような光沢などない。

 むしろ、素肌で滑ったりしようものなら、身体が擦り卸されてしまいそうな荒い表面だ。

「これもまた、主殿が生み出したるものです。どのような地蔵をモデルとしているのか?それは定かではありませぬが、このような石肌は、主殿がイメージする地蔵の手触りなどが再現されているはずです。おそらく、一番最初に触れた地蔵が再現されているのでは?」

 一番最初となると、たぶん、道標人を召喚した時に見た夢。

 前世で叔母に連れられた山道で見かけた地蔵。アレに何かしらで触れていたのかもしれない。俺自身に記憶があるわけじゃないし、幼い頃の事を第三者視点で夢に見ているという異質な状況であるのは不明だ。

 それでも、そうして見た夢の光景は確かに『そういえば、幼い頃にこんな事があったな』と思えるような事ばかりだ。

 ・・・これも、何かしらの加護が影響しているのだろうか? しかし、そんな影響する加護をもらった覚えはないが。

「さぁ! とにかく削って加工しましょう。手を加える以上は、ルッタと道標人でしかできないのでしょう? なら、チャチャッとやってちょうだい」

 マリーさんに促されたので、俺は道標人と打ち合わせをして、とにかく部屋みたいな面倒くさいイメージを止めて、お風呂を作るようなイメージで削ることにした。

 大浴場。そんな感じのスペースを道標人と作っていく。

「ちょっと! これでは浅いわ! お風呂を作っているんじゃないのよ!」

 ・・・そうですね。

 という事で、道標人とさらに深く削って整えていく。

 時間にして、だいたい一時間ぐらいだろうか? ガリガリと削り、マリーさんには風の魔法術で出たカスを取り除いてもらう。そうして出来上がったスペースを見回す。

「とりあえず、ワンルームくらいの大きさにはなりましたね!」

「はい。これだけ広ければ十分かと・・・あとは・・・」

 そう言うと、道標人はマリーさんを見る。

「任せなさい。すでに必要なモノは揃えてあるわ!!」

 と、マリーさんが取り出したのは自前の魔改造登山リュック。

 ここからなぜかカーペットを取り出して、スペース内に広げる。それから、ベッド用マットレスを複数取り出して、スペース内に並べていく。

 そうして、再びカーペットを並べたマットレスの上に敷いていく。

「・・・え? 何をしているんですか?」

「何?って・・・石の床じゃ脚とかお尻が痛くなるでしょう? 快適に過ごせるようにマットレスなどを敷いているのよ」

「やはり、旅は時に快適な時間が必要でしょうな」

 ・・・。

 ・・・・・・この二人。ノリノリである。

〈いーなー。そこにお菓子とかもあれば最高にグダグダできるやん。あとゲーム機とかも用意してくれれば、私は引きこもって20年くらいは外に出なくなるね!〉

 ・・・。

 ・・・・・・ちょっと今、口を開いたら暴言しかでそうにないので止めておこう。

〈あ・・・はい。ごめんなさい。ちょっと黙ってますねー〉

 俺と目が合った瞬間に、アライラが引き下がっていく。どうしたというのか?

 

「あとは、地獄変を壁に貼りつけるとしましょう」

「え!?」

 アライラが引き下がっていくのを見守っていると、道標人がなんかちょっと意味を理解するのに時間を必要とする発言をした。

 そうして、マリーさんが楽し気にカーペットを敷いている横で、地獄変を取り出す。

 手で握れる程度の地獄変を、なぜか壁に押し当てていた。

「ふむ・・・サイズはだいたいこのくらいですかな?」

 呟くと同時に、地獄変が巨大化を始めて、壁一面に巻物の紙が重なるぐらいのサイズに変貌していく。

 そして、巻物を広げながら紙を壁に貼りつけていくのだ。壁紙を貼るような感じで、どんどんマリーさんと道標人によるコーディネイトが進められていく。

 つまり、俺一人が状況についていけていないのである。

「さぁ、主殿。最後の仕上げでございますよ」

 地獄変という巻物を壁紙にし終え、道標人が俺の手を引いて巨大道人の正面方向に連れていかれる。

「さぁ、ここに錫杖を二本ほど突き立ててくださいませ」

「なぜ?」

「いわゆる操縦桿という奴でございます。マリー殿のお話だと、それで巨大道人は主殿が操縦できるようになるはずなのだそうです」

「・・・え? そこは道標人の案なのでは?」

「いえいえ、私はロボットアニメなるものは見たことがございませぬ。主殿の知識には多少ございますが、錫杖二本で自在に動かせるとは、とてもとても」

 ・・・いや、道標人が言うのであれば、まず無理でしょう?

 なにを言っているんだこの人は・・・などと思っていると、マリーさんが腕組しながら俺に言ってきた。

「いいからやってみなさい。正直、海底では悠長なことをしている暇はないはずだから、判断力の高いルッタが直に操作する必要があるわ。大道人・アライラーでコントロールを奪ったアライラーが、ヨーロロンにボロ負けしている以上、大道人・アライラーはルッタが操縦した方がいいのよ」

〈異議あり! るっちゃんは私たちに比べたらロボット知識には乏しい! よって、操縦は難しい!〉

「・・・ルッタ?」

「あ・・・えっと、俺はロボット知識が乏しいので、操縦するのは無理だ。と・・・」

 まぁ、確かに? 俺にはそういう知識がないも同然ではあるよ?

 でもさ? そもそも操縦桿二本で動くロボットなんてあるわけないじゃん? ロボットの動作というのは、とても複雑なモノなんだ。動作をインプットしたボタン操作だって、数パターン用意するのは大変なはず。

 それを、錫杖二本で操縦桿代わりにするとか・・・。

「アライラー。昭和のロボットアニメなら、それが可能なのよ!」

〈ハッ!!?〉

 え? アライラが思いっきり〈失念していた!〉と言わんばかりのリアクションを・・・。

「アライラーにどれだけの知識があるか分からないが、突拍子もない作品こそ昭和の花形と言えよう。数多くの名作と迷作を世に生み出し、数十年とシリーズが作り続けられたり、時代ごとにリメイクされたり、まさに昭和という可能性が生み出した夢は、今も時代に合わせて語り継がれるほどのパワーを持っている! そのパワーを! 私たちで再現しようって話しをしているのよ!」

 ・・・うん。まったく意味が分からん。

 というか、さっきまでしていた話しとなんにも関係がないと思うのですが?

〈く・・・何も言い返せねぇ!!〉

 ッ!? い、言い返せないんだ・・・。

「どうやら、話しもまとまった様子。ささ、主殿? 物は試しと言いますし、ささ、さっそくと」

 何一つとしてまとまっていないのに、まとまった事にして先に進めようとする。なんだかもう、なんだかなぁ・・・。

 ええい。

 とにかく錫杖二本を操縦桿っぽくなるよう、突き立てればいいんだろ。

 

 ってことで、錫杖二本を突き立てた。

 そこにマリーさんがすかさず座椅子を設置する。雰囲気だけなら、コクピットのシートっぽくなったけど、なんだこの・・・なんだろう?

 なんかもう、俺、頭が痛くなってきたんだ。

 そう、これはもう、なんかこう・・・。

「よし! これで完成」

「おめでとうございます。これで昭和ロボットが再現されるのですね!?」

「私の考えが正しければ、これでイケるはずよ! さぁ、ルッタ! さっそくと操縦してみなさい!」

 ・・・そもそも、大道人が自立して動いてくれるのだから、俺がどうこうする必要はないと思うんだけど。

 早くしろ。そんな圧を感じたので、マリーさんが設置してくれた座椅子に座り、操縦桿代わりの錫杖二本をそれぞれ左右の手で握る。

「で? これでどうしろと?」

「まずは一歩前進とか、腕を振り上げるとか、そういう単純動作でも試してみなさい」

 一歩前進と、腕を振り上げる?

 どうやって――――。


 動いた。


 マリーさんに言われた動作を脳裏に思い浮かべるのとほぼ同時に、巨大道人が一歩前進し、両腕を振り上げて拳が頭より高い位置にくる。

「えー・・・・・・」

「やりましたよ。マリー殿!」

「やったわね! 道標人!!」

 あまりの事に俺は呆然としたが、マリーさんと道標人はハイタッチしながら成功を喜んでいる。

 きっと、俺がアレコレ考えている時間には、この二人は大道人・アライラーの新形態で意見を出し合って煮詰めていたのだろう。

 

「・・・道標人。しばらくここをお願いします」

「え? あ、どうかされましたか?」

「ちょっと疲れてしまいました。しばし休みます。あとをお願いします」

「あ、はい。では、微調整などはこちらでやっておきますので、主殿はしばしご休憩ください」

「ほら、ルッタ。毛布よ。使いなさい」

「ありがとうございます」



〇マリー視点〇



「やっぱり、寝たわね」

「マリー殿の予想通りでしたな」

 分かっていた事だ。

 ルッタにとって理解し難い事が起こると、それを受け入れるために休息を必要とする。情報の整理が必要なのだ。

 そして、情報の整理ができると起きて、なぜかすんなりと受け入れている。

 その辺りが、どうにも不思議な子ではある。

「まぁ、途中から寝不足みたいな顔つきになってきましたからね」

「あの子にとっては興味のない事柄だからね。誰でもそうだけど、まるで興味がない事に関しては覚える気すら起きないのが人というモノ。むしろ、ルッタは頑張っている方ね」

 私が地球で生活していた頃は、趣味が合わない奴などたくさんいたものだ。そして、自分の趣味を理解して欲しくて語りまくるヤツも大勢いたもんだ。

 そういう奴ほど、他人の趣味とか聞こうともしないからな。

 現代がどうなっているか知らないが、まぁ、そう変わる事でもないでしょうね。

「さて、微調整とやらはどうかしら?」

「ええ。やはり主殿でないとラグ無しでは動かせませぬ」

 ルッタに代わって巨大大道人・・・ん? 巨大道人とか呼んでいたか? まぁいいか・・・を操縦してみる道標人は、この動作を確認してから返答してくれた。

「しかし、私が思っていた以上に反応が遅れますな」

「でしょうね」

「原因がお分かりで?」

「それは道標人も分かっていることでしょうよ」

「まぁ、そうですね・・・」

 大道人はルッタの召喚した石像だが、地蔵の姿を模した分身体だ。

 錫杖を二本突き立てて操縦桿の代わりにする。というのは、どだい無理な話であることを私とて理解している。

 けれど、これに関してはルッタならできることだ。

 言ってしまえば、大道人とルッタは同一人物なのだから。錫杖を突き立てれば完全同調できるのは自明の理。

 なにせ、アライラーに錫杖を突き立てた状態であれば、魔力の急速充填が可能となるわけだし・・・大道人が感知したモノはルッタにラグ無しで伝達され、ルッタの思考もラグ無しで大道人に伝達される。

 道標人の場合は、不純物が混ざっているために同調率が低下しているせいで、大道人の反応が悪くなっているわけだ。

「しかし、昭和のロボットアニメなどを引き合いに出さずとも、大道人と主殿が錫杖を通じて意思伝達が可能であるということを教えればよいだけでは?」

「それでもいいのだけど、今後を考えれば思考の柔軟性をわずかでもアップさせておきたいのよ」

 あんなこといいな。できるといいな。でも、そんなこと『できるわけないじゃん!』な思考回路を、わずかでも『できるかもしれないじゃん?』に向かせることが重要だ。

 ワーンの時にその傾向が見えたので、ここらで後押ししておきたい。

 うーん。

 しかし、ちょっと強引過ぎたとは・・・思っているけれどね。

 

「ところで、私にも操縦させてほしいんだけど?」

「無理ですな」

「・・・地獄変があればできるのかな?」

「マリー殿に適性はありませぬゆえ、諦めなされ」

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・くそぅ。


 


次回は、海底ピラミッドを目指して。を予定しています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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