48 でさ? 海にはどうやって潜るん?
こんにちは。こんばんは。
今回は、前回の続きとなるお話です。戦闘などは特にありません。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
〈おー・・・見事な巨大植物〉
「ジャガイモの花だな」
翌日の朝。
昨日は、大人しくなったアライラの横で今度こそレポートを読みこんだ。
暇そうにしいる彼女は、大道人たちとあやとりなどの遊びをし始めて、やはり気が散ってしまったが、先の組体操とかその辺をしなくなってくれたので、その分集中できた。
昼を過ぎて、ようやくレポートを読み終えた俺は、さっそくと畑作りに移行した。
大人しくしていたアライラは寝ていたけれど、畑作りを手伝ってもらうために起きてもらい、作業が始まる。
マリーさんのレポートによれば、畑の範囲は平屋一軒分ぐらいで、アライラと同サイズぐらいの大道人が持つ錫杖を砕いて、畑にする予定の土地を耕してから撒くのが望ましいらしい。
まずは平屋一軒分の広さを縛鎖閻魔錠で決める。と言っても、どの程度なのか分からないのでアライラと話し合って「これくらい」という感覚で決めた。
その範囲を『地獄能・巻蛇槍貫撃』で掘り起こし、土を柔らかくしつつ雑草などは業火で燃やし、石などは万能邪眼で取り除いてもらう。
こうして柔らかくした土を畑っぽい感じに整えて、大道人たちに砕いてもらった錫杖だった物の粉を畑に振りかけた。
そして、畑の中央に種芋を埋めて・・・錫杖を一本だけ突き立てておく。この時、余計な錫杖をは突き立てるな。と注意書きがされていた。
ここまでやったら準備は終わり。あとは大道人で畑の監視させて、一晩待ちましょう。とのこと。
そうして今、作った畑からアライラのサイズに合わせて召喚してある大道人と同じ高さにジャガイモの花が咲いていた。
以前のような超巨大植物ではないが・・・こうして間近で見ると、やっぱり怪獣と同じだよな。
まぁ、以前よりは遥かに小さい花であることは間違いないので、ひとまず安堵する。
「上手くサイズダウンできたようだ」
〈おー。前は私が下敷きにされかけたぐらい大きかったもんねー〉
少なくとも、彼女が寝泊まりする自作テントがペシャンコになるほどの大きさだったもんな。
「主様。配置に付きました」
大道人たちが畑を取り囲み、ジャガイモを引っこ抜く準備が整う。
〈ところでさ? ジャガイモって花が咲いてから引っこ抜くものなん?〉
「え?」
〈漫画知識だけど、ジャガイモって花が咲き終わってから葉っぱが黄ばんだ頃が収穫時期とかだったと思うんだよね〉
そうなの?
「そうなの?」
〈うん。農業系漫画の知識だから、たぶん間違いないよ!〉
・・・本当か? それ本当か??
「本当なのか?」
〈え? そう言われると・・・私もそこまで詳しく覚えてないしー〉
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・うん。
さっそくと収穫しようと思っていたが、それは止めることにしよう。彼女とて明確に覚えているわけではないようだけれど、大きく外れてはいないと思える。
ただ、ここはダンジョンでも『春』という環境にある場所だ。
咲いたジャガイモの花が枯れ、葉っぱが黄ばみ出す時期が訪れるのかは、甚だ疑問ではある。
「アライラ。ジャガイモの収穫時期って、何月ぐらいなのか分かるか?」
〈んー。たしかー。春に植えた奴は6月くらい? 秋に植えたヤツは・・・12月くらいだったかな?〉
やたら詳しいな。
スーパーなどで安売りしているモノを買い求めるだけの俺としては、料理とかし無さそうなアライラがジャガイモの収穫時期などを知っているのは異様に見える。
けど、そういうのって割と普通なのかな?
「まぁ、そのぐらいの時期が収穫時だとするなら、君の邪眼で成長を促進することはできるかな?」
〈・・・どーやろー?〉
「止めておきなさい」
牧場の家屋からマリーさんがこちらへ歩み寄ってくる姿を見つけると、欠伸をかみ殺しながら「やめておけ」と再度俺たちに忠告を発した。
「ルッタの地獄変を用いた畑は、まだまだ情報不足。以前の失敗から、シミュレートを重ねてちょうどいいサイズを割り出したけれど・・・これはまぁ、上手く行った。ということにしておくとしましょう。なので、まずはそこまでにして、成長したジャガイモを回収しなさい」
なるほど。
美味しいジャガイモを食べるための『欲』を出すのではなく、その前段階である程度の情報を集め直すことが重要であるということか。
確かに、上手く行ったからと進め過ぎたら、失敗した時にどの辺りが原因となるのか?を突き詰める時に大変なことになる。
もどかしい。と思えることだが、一歩前進したのなら、進んだ分だけ情報を回収しておかないと再現できない事は多々あるだろう。
〈むーん。でもさー。美味しいのが食べたいじゃん?〉
「美味しいのが食べたいと思っているんでしょうけど、ゲームだって進めるだけ進もうと猛進した結果、育成していなかったキャラを育成しとかないと突破できないボス戦にぶち当たって悲鳴を上げることになるでしょうよ」
〈ぐは・・ぐぉ・・・がッふ・・・や、やめてくれ。それは私に効果が抜群だぁ・・・〉
・・・えぇ。
アライラが声だけで吐血したような様子を演出すると、そのまま何故か急激にやつれたような雰囲気を出し、イジケ始める。
「RPGとか、結構多いのよねぇ・・・」
〈このネタキャラがなんの役に立つんだよ?って思ってたら、主人公と余ったメンバーで攻略しろとかになって詰むっていう罠・・・チクショーッ!!〉
「主人公の親友キャラだからと、攻撃力アップアイテムでステータス強化していたら、序盤で抜けやがったり・・・ちょっと待てって思うわ」
〈うぉーん! チクショーッ! 悔しくなんてないんだからね!〉
この二人、会話してないのに会話が成立しているから凄いよなぁ・・・。
「で? アライラーはなんて言ってんの?」
・・・翻訳する必要性を感じない。けど、一応しておく。
絶対この二人、何か近いモノを持っているよな。血縁だったりしない?かな?
「ということで、今回のジャガイモはこのタイミングで収穫して頂戴」
〈ラジャー! アライラー一等兵。これよりジャガイモ収穫を開始いたします!〉
なんで一等兵?
・・・まぁ、いいか。
「では、前回同様のフォーメーションで。アライラ。前にジャガイモを掘り出した時の技は覚えているか?」
〈・・・なにやったっけ?〉
本当にその場のノリでやってるんだなー。
「うん。なんでもいいからよろしく」
〈おっけー!〉
ということで、大道人たちが畑を取り囲んだ。
そして、畑からそれなりに離れた位置でジャガイモの収穫を開始することとする。畑に近いと、万が一にも畑の範囲を超えた芋だった場合に、俺たちが足元をすくわれることとなる。
だから、こうして安全距離?で収穫を実行するわけだ。
〈いっきまーす! 邪眼! ん? 邪眼ギャザリング! んー。邪眼・・・掘るって英語でなんつーの?〉
「確か・・・ディグだったと思うけど?」
〈邪眼ディグ!・・・うん。邪眼ギャザリング!!〉
語呂が悪いと思って、戻したのか。
〈ジャガイモ収穫一本釣り!!〉
爆発音のような轟音と、縦揺れの結構ヤバい震動が発生すると、畑が爆発したように土を噴き上げて撒き散らし、そこに埋まっていたジャガイモが飛び出して転がる。
なんともアッサリとした結果だが・・・昔話の大きなカブみたいに、皆で引っ張るようなイメージもあったけど、そこは邪眼が優秀だったということで良しとしておこう。
と、ちゃんと掘り出せた事に安堵していたが、噴き上がった土が上から土砂降りで襲い掛かってきたので前言を撤回しよう。
もう少し静かに引っこ抜けないのか!? あ、土が首元から服の中に入った!
「むぐ・・・土が服に入ったので、ちょっとお風呂行ってきます」
「ふむ。やはり風呂か。私も同行しよう」
〈マリーさん!?〉
「一人で大丈夫ですよ!!」
「ち」
〈ち〉
なんで二人で舌打ちしてんだよッ!?
▽
とりあえず、文字通りの土砂降りで頭から土を被ったので、お風呂で軽く流して服を瞬間洗濯でキレイにしてもらい、急いで戻る。
俺が戻ると、アライラは茎をモシャモシャと食べていた。
それ、食べても大丈夫なのか? ジャガイモの芽には毒があると有名だけど、花や葉っぱに茎ってどうなの? 食べられるの?
「マリーさん。アレって食べられるものですか?」
俺は、アライラが食べている様子を指さしながら、マリーさんに問う。
もしかしたらマリーさんがよそ見をしている間に食べているのではないか?と、思ったからだ。
「ん? ああ、私の方で食べておくように指示したのよ」
え・・・マリーさんの指示なの?
「・・・それにしても、根すら伸びていないとは・・・なぜ花だけが咲くのか? まるで意味が分からん。巨大化・・・とも言い難いのが余計に分からん」
・・・ジャガイモもスーパーなどで買うモノには、当然だが花や葉っぱなどついてはいない。このことからも人間が食べられるようなモノでは無いのだろう事は想像できるわけだが。
果たして、食べている本人はアレを美味しいと思っているのだろうか?
「アライラ」
〈うーん? どうかした?〉
「うん。それ、食べても大丈夫なの?」
〈マリーさんが言うには、私には毒とか効かないし、逆に取り込んで自己精製可能なんだって。だから、毒物は積極的に摂取した方が武器になるぞってさ〉
「そう・・・」
〈ちなみに、ジャガイモも毒素とか何に使えるのか知んないけどね!〉
・・・使いどころが分からないのでは、摂取する意味も無い気がするな。
人間でも摂取量で症状が変わるモノだし、ひと舐めするだけで即死するような毒では無かったはずだから、取り込んでおくだけで使い道は後日改めて考えればいいか。
「ちなみに、美味しいの?」
〈微妙〉
ムシャムシャと花や葉っぱに茎を食べるアライラの横で、魔改造ランドセルから『埴輪兵の残骸』を外へと出す。
それらを大道人たちに並べてもらって、状態ごとに整理をしてもらう。
〈なにをしてるん?〉
「うん。この埴輪兵の残骸を用いて、調理器具を作ります」
〈え? 前に中華鍋モドキを作ったらダメだったじゃん?〉
そう。
前に埴輪兵の残骸を使って中華鍋モドキを作った。しかし、埴輪兵に使われている金属材が粘土のように柔らかいという特殊素材であることを知らなかったことによる失敗だ。
でも、今はそういう金属であるのだと知っているし、アライラの『鑑定』という加護によって金属の硬度は操作可能であることも分かっている。
つまり、埴輪であればいいのだ。
「埴輪の姿を残したまま、調理器具として加工すれば・・・たぶん、きっと、おそらく、できるはず!」
〈あー。とにかくやってみよ!てことね?〉
「そう。それ」
俺とアライラでどういう感じの調理器具にするかを話し始めると、埴輪兵の残骸を見上げている道標人が視界に入った。
なんとなく、俺はアライラにちょっと待っていてもらって、道標人に声をかける。
「どうかされましたか?」
「え? いえいえ・・・埴輪なるモノをこの目で見るのは初めてゆえ、独特の造形に見入ってしまいましてね」
「地獄世界には、無いのですか?」
「無い。とは言い切れませぬ。いずれの世界にも、積み重ねてきた歴史がありましょう。我らの世界にも当然、歴史はありますが・・・」
古代の文明というモノを、探していない。ということだろうか。
「地獄世界の人類種は、長命ですゆえ・・・文化や文明という変遷は、なかなかに緩やかなのでございますよ。閻魔大王さえ、ご自分の歳は覚えておりませぬからね・・・誕生日も分かりませぬゆえ、なにかの記念日についでで祝ってもらう程度ですな」
あー。そういう・・・なるほど。
「地球人類種のように、100年ほどで命を終える種族でもない限り、多種多様で波乱万丈な歴史を作るのは難しいでしょう」
長命であることが、良いことか?と言われれば、そういうわけでもないだろう。
仲の良い短命種が、老いて死んでいく様子を見るのは・・・きっと辛いのだろうな。
「ゆえに、抱える罪はなかなかに濃密で、地獄としては大変助かる次第ですな。地球人種の死者を取り扱う機会は多いですが、いつの世にもどういう悪事を働けば、ここまでの罪を濃縮できるのだ?と首を傾げたくなる異常な者がおりますからね。短命種ほど、その傾向は強いのですよ。100年ほどの命ゆえに、生き急ぐのでしょう。地獄にて罰するは腕の見せ所でございます」
「そーですか」
ちょっとこう。しんみりする話なのかなー?って思ったけれど、違うらしい。
「まぁ、こういう面白いモノを見れるのも・・・ならでは。というものでしょう。しかし、これは地球産ではないのですよね? なにゆえ埴輪なのでしょう?」
「地球とは異なる世界の産物ではあるようですけど、作ったのは地球から転移してしまった人物らしいです。ただ、その当人も・・・埴輪になった理由は分からずじまいだったようですが」
「なるほど、摩訶不思議ですな」
「ええ。摩訶不思議ですよね」
と、いうことで・・・埴輪兵の残骸を使って調理器具の作成を行おう。
〈でー? コレをどんな調理器具にするん?〉
「蒸し器だよ」
〈前に作ろうとして失敗したヤツ?」
「うーん。それは蒸籠だね。地獄変を用いて丸いヤツを作ろうとしたのが間違いだったよ」
そう。
前回は錫杖と閻魔錠を用いて、竹製の丸い蒸籠を作ろうとした。
これは失敗したが、ざるそばなどの盛り付けに使われる四角い蒸籠を模しても良かったのだと、後で思いついたことだ。
錫杖をログハウスのように積み重ねて、閻魔錠を編んだグリルモドキを乗せれば出来上がる。というのを考えたけど・・・木材のように石材を削れるのか分からない。
そこで、埴輪兵の残骸だ。
金属製の蒸し器を、アライラの万能邪眼で作成することにしたわけだ。
そう。
さっきも語った気がするけど、埴輪を残したまま加工することができれば、強度を十分に保てるのではないか?と、考えている。
「今回作るのは、金属製の蒸し器。基本的には三段の鍋でね? 一番下はそのままの鍋を、二段目は底が細かい穴の開いている鍋で、三段目が蓋になる。そんな感じの蒸し器を作りたいんだ」
〈ほほぉ・・・そんなんで蒸し器になるん?〉
「なるよ。三段目の鍋に水を入れて沸かし、二段目の底に細かな穴が空いた鍋で食材を蒸す。そして、三段目の蓋で旨味を閉じ込めることで、ふっくらとした美味しい蒸し料理が完成する!」
たぶん。
〈おー。いよっしゃ! やってみようじゃないの!!〉
ふ。
その気になってくれたようで、ひと安心だ。
〈じゃ、ここに並べた埴輪の残骸を全部使っていいわけね!?〉
「ああ。よろしく頼むよ」
〈まかせろー。いくぜ!! 邪眼―――「あ! 埴輪要素を残してね!」―――くっら! え? 埴輪要素?〉
「そう。さっきも言ったけど、埴輪でないとダメっぽいから、埴輪の顔とかを残して欲しいんだよ」
〈あー。うん・・・できるかなー? まぁ、ダメで元々かー〉
そうなんだよな。
邪眼も余計な要素を加えると「意味わかんね」って感じで妙な事をしでかすからな。
前にも、圧縮した魔力を開放することで能力値が増大するとかいうバフ効果の技を使ってみた結果、邪眼はただ圧縮した魔力を身体に流し込むだけしかしなかった。
マリーさんに聞いた話しだと、物凄い勢いで流れたから、下手したら血管が破裂するようにアライラの身体が破裂していた可能性があるのだそうだ。
ただ、即座に駆けつけて吐き出させたので事なきを得たらしい。
今回は、そういうのとは違うので、失敗しても悪影響はないと思うけど・・・。
「イメージとしては寸胴鍋だ。それを三段に分割して、取っ手を付けたような感じにしつつ埴輪の特徴を残して欲しい」
〈む。むーん・・・とにかくやってみるよ! 邪眼クラフト!! 埴輪な蒸し器!! 作成!!〉
・・・まぁ、技名はなんであってもできるかどうかは別問題みたいだから、良しとしよう。
邪眼が光り輝いて、埴輪兵の残骸が次々に光を灯して中空へと浮き上がる。
それらがひと所に集まると、粘土の塊へと変じて・・・まずは巨大な寸胴鍋に姿を変える。と、ここから一段。二段。三段。と鍋になり、二段目の底に細かな穴が空く。
そうして、俺の注文通りに蒸し器が完成すると・・・一段目の蓋に埴輪の顔が生えた。
さらに、二段目と三段目の取っ手が埴輪の腕と脚っぽく変形し・・・ワキワキと動き始める。
〈・・・ねぇ? アレ、大丈夫なヤツ?〉
「え? あ、どうなんだろう?」
埴輪の顔が、そんな風に蓋に生えるとは思っていなかった俺としては、とても不気味な『何か』となってしまって、使うのを躊躇ってしまうな。
それは、大道人たちも同じだったようで・・・。
「ちょっと、触りたくないですね」
「取ってが上下に動くのは、ちょっと危ない気もしますが?」
「攻撃してくるのでは? 埴輪兵の機能が残っているやもしれませぬし」
「とりあえず、強度の確認をいたしませんと・・・」
「では、その大役は言い出しっぺのあなたにお任せを」
「いい案です。任せましたよ」
大道人たちで埴輪兵に触れる者を譲り合っている。
そして、今にも六人で喧嘩を始めてしまいそうな雰囲気へと変じていた。
アレに触れるのは、大道人たちも嫌であるようだ。
「はい。皆さん! じゃんけんで決めましょう! じゃんけんです!」
俺が収拾のつかない事態を終わらせるべく、じゃんけんを提案して終わらせに掛かる。
いつまでやっていても、先には進まないのだ。
「「「「「「さ、最初はぐー! じゃんけん! ポン!!」」」」」」
ということで、負けたモノでじゃんけんを繰り返し、最後の一人が泣く泣く埴輪蒸し器に触れることとなった。
そして、泣きそうな顔で蒸し器に触れる。
「主様。今度は握っても潰れませぬ。アライラー殿の邪眼クラフトにより、錆も落ちてますゆえ、ツルツルで手触りは良いですよ」
「ふむ。アライラ。蜘蛛の糸で包帯を編んでくれ。取っ手に巻き付けて滑らないようにしたい」
〈ほーい〉
巨大な埴輪蒸し器を持ち上げてもらう。
前に作った中華鍋モドキとは違い、握っても潰れないし、持ち上げることも可能。これなら強度は十分だろう。
「となると、後は実際に調理してみて・・・大丈夫であるのか?を確かめる必要があるか」
〈まずは、何で試すん?〉
「マリーさんの調査待ちだな。あのジャガイモを使う」
〈アレを?〉
「そう。ジャガイモって言うのは、光に当てておくと緑色に変色し始めるからね。こうして日光にさらしている以上、早々に消費しておきたい」
〈ほいほい。ならそれでいこう〉
となると、少し暇になるな。
別の食材を使って、調理の実験をしておく方がいいだろうか・・・。
〈ねぇねぇ? ちょっと今さ? ふと思ったんだけど・・・〉
「ん? どうかしたの?」
〈畑で野菜作りを始めるとして、海底ピラミッドにはいつ頃向かうん?〉
「マリーさんが十分に休んだ。と言うまでは、ここで休息だろうね」
〈でさ? 海にはどうやって潜るん? マリーさんが潜水艦を持っているとか?〉
「さすがに潜水艦なんぞ役に立たないだろ・・・怪獣が潜む海だよ? マッチ棒のようにへし折られるだけだよ」
〈ですよねー。すると?〉
「飛行形態と同じで、君に潜水形態をとってもらう事になる」
〈やっぱりー・・・潜水形態って、どうやってなればいいのよ?〉
「・・・飛行形態の潜水版?」
〈邪眼ジェットで海中は進むんかな?〉
「さすがにジェットは無理じゃない? プロペラとかスクリューにして進む的な」
すると、アライラは俺の前にウインドウ画面を展開して、潜水形態のイメージ図を見せてくる。
飛行形態の潜水版ということで、お尻を機首として邪眼ジェットの代わりにスクリューを形作った何とも言えないダサさのある水中戦闘機という感じがある。
〈こんな感じかな?〉
「いやいや。お尻から蜘蛛糸を編んでスクリューにしつつ、邪眼で回転させればいいと思う。で、邪眼はサーチライトのように進行方向を照らして視界を確保するんだ」
俺は、ウインドウ画面をタッチして表示されている潜水形態(仮01)に手を加える。
で、推進力を生む邪眼を後方ではなく前面にし、機首だったお尻に蜘蛛糸のスクリューを作ることで飛行形態とは真逆の姿にするのだ。
〈いやいや。ダサいって・・・ここはこうした方がいいと思うんよ〉
「いやいや。それならここをこういう感じにして、そこからこうしてやると」
〈いやいや。だったらこうしてこうすれば、ほら、こうなるからこうやるんよ〉
「いやいや。ならばこうしてしまおう。ほら、これでこうなるわけだから、それからこれをこうしてやって」
〈いやいや。そこまでやるなら、ここでこう。んで、ここをこう〉
「いやいや――――」
「さっきからイヤイヤと何を連呼しているの?」
マリーさんが俺たちの様子を見て鬱陶しい顔をしつつやって来た。
「あ、いえ・・・ちょっと海底へと向かう潜水形態の相談を」
〈カッコよさと機能性を両立した良デザインを模索しているんだけどねー〉
「ふむ。潜水形態の相談を? どれ、ちょっと見せてみなさい」
そう言って、強引にウインドウを強奪して中身を確認するマリーさん。
ただのお遊びみたいなものだし、あまり大げさに捉えて欲しくはないのだが・・・。
「目的地は海底なのだし、この案であれば『大道人・アライラー』でいいんじゃないかしら?」
俺とアライラでいじりまくったイメージ図を見て、どことなく呆れた顔のマリーさん。
そんな様子から、とんでもない提案をされてしまった。
〈大道人・アライラー再び!!?〉
「えーっと、なぜ? 大道人・アライラーなのでしょうか?」
ここは、やはりしっかりと説明を求めたい。
「なぜか? アライラに地蔵を抱かせて沈もうとするこの図案からすれば、大道人・アライラーが手っ取り早いでしょうが? 違う?」
あー。
潜水形態となれば、どうしても推進力となるスクリューだけでなく、海中へと沈むための重りが必要になる。
それを邪眼で肩代わりしようとするのではなく、地蔵で賄ってしまおう。ということでアレコレと案を出し合っていたわけだが・・・。
そう言われれば、確かに大道人・アライラーというとんちき形態は条件として最適なのかもしれない。
なるほど、俺の頭から完全に消去されていた選択肢だった。
うん。
「却下です。他の方法を考えましょう!」
「では、大道人・アライラーで決定ね」
〈いえーい〉
「嫌だ! 俺はイヤですからね! 違うモノを考えますからね!!」
〈おぉ・・・るっちゃんが年相応の駄々をこねてるぅ〉
「くそ。カメラを構え損ねていたわ。くそ・・・千載一遇の可愛さだったというのに」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・こうして俺は、一週間ほど猶予をもらった。
別の手段を、考えるために。
なんにも思いつかなかったけれど・・・。
次回は、海に潜ります。を予定しています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。




