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47 はい! 六像がっしん!!

こんにちは。こんばんは。

今回は牧場での話が主になります。


最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

〇-夢-〇


「ゆでー」

 いつの年頃だったか?

 見上げるほどに大きいと感じた冷蔵庫。その扉を開くためにピョンピョンと跳ねているぐらいには、小さい頃の風景であるが・・・。

 こうして第三者視点で見ると、台所入口で叔母がスマホを動画撮影モードにして終始蕩けた笑顔になっているのがただ不気味だ。

 ・・・いや、それよりも?

 どうして俺の夢でありながら、これほどに立体的なのだろうか?

 普通、一人称視点での景色になるものだと思うのだが?って考えてみると、これまでに見た夢が何故か第三者視点からの景色だった。

「いすー」

 冷蔵庫の扉を開くことが出来ない。その事実に、何か乗れるものを探すことにした幼い俺は、椅子を引っ張って来て、改めて冷蔵庫の扉に手を掛ける。

 ガチャ。そんな音を立てて開く冷蔵庫の扉は、勢いまで乗っていたために身体が仰け反って椅子から落ちそうになる。

「あッ!? あぶないってば!!」

 叔母が大急ぎで台所の入り口から中へと飛び込み、そして今にも頭から倒れそうになっている幼い俺を抱きかかえる事で落下を阻止した。

「あー、おばー」

「お姉ちゃんだ。間違えるな」

 ・・・そういえば、母に「こいつはオバ。オバ。オバ」と、指差しで教え込まれたことで、叔母をオバーと呼んでいた時期か。

「おね? おねー?」

「いや、その呼び方もちょっと・・・」

 まぁ、うん。そうなるよね・・・。

「ゆでー」

「いや、だから叔母・・・じゃなくて・・・ゆで?」

 開いている冷蔵庫が、開きっぱなしを警告する音を鳴らし始めると、叔母が顔を上げて冷蔵庫の中を覗き込む。

 そこにあるラップを掛けた昨晩の残り物・・・祖母が作ったゆで卵が置かれている。

「あー。ゆで卵が食べたかったのか・・・母さんのゆで卵は・・・っと、●●●にはお祖母ちゃん。のゆで卵は美味しいもんなー」

「ばーちゃ!」

 叔母が「うんうん。ばーちゃのゆで卵は美味しいもんなー」と頷いている。

「で? コレが食べたいの?」

「たべー」

 幼い俺のゆで卵に手を伸ばす様子をジッと見つめたあと、叔母は冷蔵庫からゆで卵を取り出して、それから電子レンジに入れる。

「ちーん?」

「そう! ゆで卵はアツアツホカホカが一番美味い!」

「おー!」

 ・・・確かに、暖かいゆで卵は美味しいけれども。はて? 確か叔母って、卵系統を電子レンジに入れるのは禁止って祖母が怒り狂っていたような?


「えーっと、600ワット三分でいいかな?」

 はー? いやいやいやいや!! それはダメだろ!! ダメだ!! 止めろ!!

 せめてアルミホイル! もしくはマグカップとか、なにか容器に入れて! 水とか!!

「ほい、スタート!」

 ブーン。


 電子レンジが起動すると、それまで地球で生活していた家の景色が、青空と草原が広がる大地に場面を移行する。

 

 あまりにも一瞬の事であり、まるで塗りつぶされるキャンバスのような鮮やかさには驚きに硬直してしまう。

「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉぅ」

 牛の鳴き声。

 そこにはホルスタイン種の『牛』が、こちらをジッと見つめている。

〈君は知るだろう!!〉

「なに!? 突然どうした!?」

 今、この瞬間に俺の背後からアライラと俺の声が響いたことで、さらに振り返る。

 と、なぜかゆで卵の上にゆで卵が乗っていて、それらがボコボコと膨張を始めると、亀裂が生じて煙が噴き出してくる。


 そうして、灼熱色に染まり出すゆで卵が破裂する寸前に・・・。


≪チン≫



〇-起床-〇



「ぅああああああああああああ・・・・・あ?」

 布団から跳び起きて、悲鳴を上げている。と自覚した時には、声が止まった。

 そして、なんにも考えられない状態で、首を動かして周囲を見回してみると・・・そこは見知らぬ部屋の中。

 どことなく子供部屋のような壁の装飾と、どことなく日本ではない意匠の家具に・・・。


「・・・そうか、牧場に到着したのか」

 ため息を吐きながら、無事に生きている自分に安堵しつつ・・・部屋に差し込んでくる朝日に、ただただ春の温もりを感じていた。





 布団から出て、身体が問題なく動くことを確認する。

 マリーさんが言うには、俺の身体は相当な耐久性を持っているらしいので、早々簡単に怪我をすることは無いのだという・・・。

 地獄変を使い過ぎると血を噴いたりするのは、どうなのだろうか?


 さて、まずは自分が覚えている最後の光景を思い出す。

 牧場は目前となったあの場所で、ブォームというホルスタイン種をそのままコピペしたような怪獣サイズの『牛』を避けて移動していたはずだったのだが・・・。

「確か・・・子牛が居て、隠れ蓑結界で身を隠していたのに看破されていたんだよな」

 そして、親牛たちが怒りの声を上げながら・・・そうだ。角が光り輝いてなんか空に伸びあがったと思ったら、撃鉄のように角を頭へ押し込んで・・・それで・・・えーっと。

 そう。目がピカッと光るとレーザーポインターに乗って物凄い殺意の塊が飛来してきて・・・それで・・・えーっと・・・うん。ここで記憶が途絶えているな。

 あの『殺意の塊』はおそらく爆破系の攻撃なのだろう。

 そうだ・・・視界が光りに満ちて何も見えなくなったし、耳も爆発音で何も聞こえなくなったし、鼻も何かが焼ける臭いが押し寄せてきて・・・。

「アライラは無事なのだろうか?」

 アレだけの爆発だ。

 俺は無傷だったとしても、アライラは間違いなく丸焦げになっているだろう。

 ・・・でも、命に別状は無いだろうから、そこまで急ぐ必要もないか? まずはマリーさんと道標人にあの後どうしたのか?を訊ねる方が先かもしれない。

 

 特に考えることもなく、マリーさんなら拳の圧だけで爆発攻撃を吹き飛ばしてしまえるだろうからね。

 伊達や酔狂で、このようなダンジョンの管理人を務めているわけではない。というのは、割と早い段階で分かっていることだ。

 少なくとも、見回りでダンジョンを周回している人なのだから、最強格であるのは確定だろう。

 あの人が居てくれれば安心だ。と、思うところだが・・・コレが結構厳しい人でもある。地球は昭和時代を生きた人だからか? スパルタ教育を肯定している感が強い。

 本当に、ギリギリのタイミングでしか助けてくれない人だから、正直、危険を回避して安全にダンジョン攻略を進めたい。

 だけど、どうにも上手くは進めない・・・。

 やはり、マリーさんの言葉を無視してキャンプするべきだった。

 というか、あの場所にホルスタイン種な牛モンスターを配置しておくのも酷い! 誰だって「まぁ、あの牛なら大丈夫だろ」って思うじゃん?

 思うじゃん!?

「・・・ブォームって、見た目だけホルスタイン種で、中身は別物なのかな?」

 アライラのご飯に最適な姿をしている。とも思ったが、あのような攻撃手段を持つモンスターが、狩れば美味しい牛肉。とはとても思えない。

 食べたら肉が爆発するとか、解体したら身体が爆発して大惨事になる。とか・・・ありそうだ。

 

 となると、牧場周辺のモンスターでアライラのご飯になりそうなモンスターが居ないということになるのでは?

 牧場から西方面は身を隠す結界も看破する牛。

 牧場から南方面はブレイクダンスを生活に取り入れている踊る鶏。

 ・・・北方面は?

 マリーさんは、運が良ければ4種を相手するだけ。運が悪ければ1種を相手することになる。と言っていたけれども・・・実は一番倒しやすいモンスターだったり?

 あとで、北方面に居るモンスターも確認しておこう。選択肢がそれしかないという事も無いが、まずは確認してからでなければ、決められないからね。

「よし。まずはマリーさんに訊ねよう」

 そうして、俺は部屋を出た。



 部屋を出て、廊下を慎重に進みつつどういう施設なのかを観察する。

 一軒家。というには、ちょっとレジャー施設な風味が強い。牧場施設でも事務所的な役割が強いように思える。

 と、階段を見つけたのでそこから階下へと降りると、一階は食堂のように広いリビングがあり、台所が奥に設置されている。

 ちょっと横を見れば、観光案内所のような受付カウンターと言った家具と、ガラス張りの扉が三つほど並んでいるのを確認できる。

 おそらく、事務所兼家。と、いったところか。

「おや? 目が覚めたようね」

「おはようございます。主殿。お体の具合はいかがですかな?」

 テーブルにいくつもの紙が散乱し、メモ書きなども多く見れることから・・・二人で夜通し何かを話し合っていたようだ。

 コップには透明な飲料が注がれており、マリーさんも道標人もコレを飲んでいるようだ。

 お酒だろうか?・・・地蔵って石像だけど、酒を飲むのか?

「おはようございます。お二人とも、徹夜されたのですか?」

「まぁね」

「今後の進み方について、話し合いをしていたのです。主殿もアライラー殿も、まだまだ未熟。海の底を目指すにしても、今のままでは厳しいだろう。というお話ですね」

 うぐ・・・。

 いや、それよりも。

「そもそも、海底を目指すにあたって、潜水する術はあるのでしょうか?」

「それについては、私の方で案があるから大丈夫よ。お前が発案した飛行形態。アレをヒントにしたの。だから、それについては心配しなくていい」

 そ、そうなんだ・・・。

 アライラを潜水艦のようにする。という案であれば、俺も考え付いてはいるけれど、マリーさんはどのようにするのだろう?

 興味がある。

「それよりも、海中に居るモンスターとどう戦うか?が重要なのよね」

「ネタバレ禁止と言われているため、詳細は避けますが・・・戦場が変わるがために、また戦いづらいのだそうですよ」

 なるほど。

 陸上での戦闘。ときおり空中戦をやっていたわけだが・・・水中戦はまだ未経験だ。

 アライラを潜水艦のように潜水形態にして、海中へと進んだ場合・・・当然、海中に居るモンスターとも戦闘になるだろう。

 そうなると、いかにして戦うのか?が重要になるわけか。

「と、話しのネタはたくさんあって、今後をどうするか?で、朝まで話し合いをしてしまったわけね」

 マリーさんが欠伸を一つ。

「私は石像ですゆえ、特に眠気も覚えませんでしたから、寝る。ということを失念していました。申し訳ありませぬ。マリー殿」

「いえいえ。子供らの事を考えるのは、最優先事項ですからね。徹夜ぐらい・・・ちょっとキツイわ」

 ん?

 少しだけ気になったことがあるので、ちょっと周囲の臭いを嗅いでみる。

 透明色の飲料水を二人して飲んでいる様子から、お酒かと思ったが・・・特に酒の臭いがしてこない。まさかと思うが、水なのだろうか?

「どうしたの? 急に臭いを嗅ぎだして・・・」

 俺の突然な行動に、嫌悪感を示すマリーさん。

 当然の反応なので、しっかりと謝ってから弁明をする。

「ごめんなさい。ちょっと、お酒を飲んでいるのかと思っていたのですけど・・・特に酒臭いわけじゃないようなので」

 俺が説明をすると、ちょっとだけバツの悪そうな顔でコップを見るマリーさん。

 前に酔っぱらってハイテンションになっていたから、今回は道標人と夜通し語らいながら酒を飲み交わしたのかと思った。

 と、酒の話しになったら道標人が食いついてくる。

「酒ですか・・・実のところ、何やらダンジョン産のお酒は無いものか?とマリー殿に訊ねたのでございますが、見た目的にダメだろ。と、出し渋られてしまいましてね」

 まぁ、地蔵菩薩像って見た目だけなら子供だもんね。

 石像だからギリギリで許容される気もするが、結構なアウトゾーンだとは思う。

「ダンジョン産というか、この試験大陸で醸造されていた酒はいくつかあるわね。定番のビール。ワインやウイスキーといったお酒もあるけれども・・・いかに石像と言えど、この見た目にお酒はどうかと思うわ」

 ビールやワインにウイスキー。

 それらを楽しむ地蔵菩薩像・・・。

 ―――ジョッキを豪快に持ち上げて一気に飲み干す地蔵「子供用ビールでしたかー」

 ―――ワイングラスを揺らし、香りを楽しむ地蔵「ぶどうジュースですねー」

 ―――ロックグラスに沈む氷を見つめつつ、一口含む地蔵「うーむ。麦茶・・・」

 ・・・ビール以外ならアリかもしれない。

 でも、もうちょっと大人な姿になってからの方がいいのは間違いないだろうけど。

「マリー殿。せっかくの機会ですし、お神酒の代わりという事にして、こちらのダンジョン産を幾つか試飲させてはもらえませぬか?」

「・・・いや、さすがにどうかと」

 なるほど、道標人に混ざり込んでいる地獄の使者は酒好きのようだ。

 俺も、酒を飲む。というほどの事はしていないが、料理を作る時に酒を入れることは多々あるものだ。そこで、酒の味を知っておかないと料理に合わせるのも難しい。

 なので、小さじ一杯分を舌先で一度舐める程度の事はやった。

 地蔵菩薩像へのお供え物として、少量のお酒をお神酒のようにして差し出す分には、特に問題ないとは思うけれどね。

 と、マリーさんと道標人でお酒の試飲を交渉しているようだ。


「・・・ところで、アライラはどうしていますか?」


 二人がちょっと揉め始めたところで、俺はアライラの様子を訊ねてみる。

 やはり、子供みたいな見た目の道標人に酒はダメだ。というマリーさんに駄々っ子のようにしがみつき始めた道標人を見ていられなくなった。

 あと、なんとなく子泣きジジイっぽく見えてきたので不愉快になった。

「あぁ・・・アライラーなら牧場に居るわ。丸焦げになっているけど、大道人が面倒を見ているので心配ないはずよ」

「いえ、丸焦げな上に足を複数欠損してしまっているではありませぬか。心配ないはずもないのでは?」

 マリーさんの言う通りで、アライラが丸焦げになっていると聞いても、大道人が面倒を見ていることは予想で来ているので、特に心配はしていない。

 が、道標人からすれば、どう見ても死ぬ間際の状態になっているのだろう彼女の姿を思い出せば、それは当然のように心配するだろう。

「そう見えるだけで、あの子はかなり神経が図太いから大丈夫なのよ」

 体がバラバラに切り刻まれている状態で冗談を言ってくるぐらいには、神経が図太いのは間違いない。

「はぁ・・・そうでございますか・・・」

 どうにも納得はできていない様子の道標人だが、ここは実際にアライラの元へ行けば分かる事だ。

「では、マリーさん。俺はアライラの修復をして、そのままブォームの調査をしてこようと思っているのですけど、どう思いますか?」

「え? 昨日の今日で、リベンジしようって?」

「そうなります」

「止めておきなさい。お前とて疲労が溜まっているでしょうし、アライラーの治療を終えたら今日は休んでおきなさい」

 ・・・俺がキャンプをしましょう。って言った時は「牧場はすぐそこだから頑張れ」とか言っていた人が、急にどうしたのだろうか?

 まぁ、そう言われると気怠い感じはあるので、あまり無理をできる状態ではない事は間違いないか。

 しかし、彼女のご飯はどこかで必ず調達しないと・・・ストックが無くなってしまう。

 ブォームは見た目こそホルスタイン種の牛だから、きっと食用としては優秀な・・・んー?

「マリーさん」

「うん?」

「ブォームって、食用になりますか?」

「私やお前が食べるというのであれば、無理よ。食用になるのなら、当時の内に狩りつくしているわ」

 まだ、ダンジョン化する前の頃に、狩りつくしているわけか。

 となると、本当に見た目だけがホルスタイン種の牛なのか・・・。

「アライラー・・・正確には蜘蛛のモンスターが食べる分には・・・私も分からない」

 ならば、一匹だけでも狩ることで、アライラが食べられる肉であるかどうかを確かめられるし、確かめる必要がある。

 この牧場を活動拠点とするならば、周辺から食事になりそうなモンスターを狩らねばならない。

 南方面にはマッジデーとデッジマー。

 西方面にはブォーム。

 残すは北と東の海・・・この二つからご飯に最適なモンスターを見つける必要性があるのか。

「ではマリーさん。この牧場で近辺でアライラのご飯になりそうなモンスターとなると・・・どこで調達するのが良いでしょうか?」

「海」

 即答された。

「海と言っても、この牧場を少しだけ南下した先にある浜辺から、海に入るのがおススメね。その辺りまでなら、ヨーロロンと同レベルぐらいのモンスターが多く共生しているから、食べ物には困らないはずよ」

 ヨーロロンと同レベルのモンスターが多く共生しているのか・・・。

 うん。袋叩きにされてボロ雑巾コースだな。


「では、ちょっとアライラを修復して起こしてきます」

 後はもう、彼女にどうするかを聞くのが手っ取り早いだろう。

 こういう場合、ブォームにリベンジするか・・・海に行く。と言い出すだろうから、もっと考えるのはそれからでいい。


「まぁ、待ちなさい」

 そう言って、踵を返した俺の手を引っ張り止めてくるマリーさん。

 まだ何かあるのだろうか?

「いい機会だから、畑作りでもしてみなさい」

 言うと、マリーさん所有の魔改造リュックから紙束が取り出され、俺に手渡してくる。

「ほら、コレよ。前に言ったと思うけど、野菜の栽培を安全に行うためのレポートよ」

 おお!

 アライラの鑑定で『土?』と出たことに焦ったマリーさんが、待ったをかけていた畑作りにGOサインが出た!!

 しかも、安全に栽培できるように調べてくれたのだろうレポートを渡してくれたので、さっそくと中を確認する。

「ほらほら。それを読む前にアライラーを治療してきなさい。それからゆっくり読めばいいわ」

「それもそうですね。気持ちが急いてしまいました」

 やり過ぎて超巨大化したジャガイモ。アレをもっと適切なサイズにできていたならば、アライラが食べるご飯としては最も理想的だった。

 狩りに行かずとも栽培すれば事足りるからだ。

「道標人。ルッタとアライラーをよろしく頼むわ」

「承りました」

「・・・え? マリーさんは一緒に来られないのですか?」

「ええ。私はちょっと行けないわ」

 なんだろう?

 何かやりかけの仕事があったりするのだろうか?

「徹夜したから、寝るわ。明日の朝ぐらいまで起こさないでちょうだい」

 ・・・。

 ・・・・・・夜はちゃんと寝てくださいよ。

 


「そういえば、マリー殿の見立てだと2~3日は寝込むとのことでしたが」

「え? そうなんですか?」

 牧場にいる大道人たちを目指して移動している途中で、道標人からそのような事を言われた。

「いやはや、翌朝には目を覚まされるとは・・・これも成長ゆえでしょうかね?」

「それは、俺にも分かりませんが・・・」

 三日も寝込むほどのダメージでは無かったという事なのかもしれないし・・・後程、マリーさんにも確認をしておくことにしよう。

 

 さて、アライラは大道人たちに囲まれて寝ていた。

 丸焦げで、脚が数本欠損している上に、残っている脚も新聞紙をグシャグシャに潰したように殻が砕けている。

「おはようございます。主様」

「おはようございます。大道人。アライラに変わったところはありますか?」

 大道人六人を含め、俺も道標人もアライラへ注目する。

「この状態からは特に変わっておりません。時折、身体が痙攣しているようですが・・・おそらくは夢で何かが起きているのでしょう」

 ビクッと動くのだろうか?

 彼女が見る夢は、あまり気にしてもしょうがないだろう。

「おーい、アライラ! 朝だよッ!」

〈むーん? あー、あさー? ふあーあだだだだだだだだッ! か、身体が! 全身が! ぐわわわわ〉

 あ、どうやら寝起きの伸びをやろうとして、全身の怪我が響いたようだな。

「昨日の事は覚えているかい?」

〈きのう? えーっと・・・あ、牛か。牛にやられた! あだだだだだだ! 大声ださんといて・・・全身に響くぅ〉

 ・・・二日酔いの叔母が似たような事を言っていたが、自分の大声で痛がっているだけだろうに。

 まぁ、丸焦げな上に甲殻がボロボロなので、それも仕方ないことだろう。

「今から身体を修復するから、ちょっと我慢してくれ」

〈あーい。よろしくー〉


『カタチナセ』


 と、いうことで元通りの姿を取り戻したアライラは・・・やはりサイズダウンした。

〈ふぃー。なんだか身体が軽くなった気分だぃ〉

 そりゃ小さくなっているんだから、そうだろうとも。

〈で? 朝ごはんの時間だよね? ブォームにリベンジ行っとく?〉

「いや、マリーさんに止められたから、行かない。大道人は、二人ほどでウッスの丸焼きをお願いします」

「かしこまりました」

 魔改造ランドセルからウッスを取り出して、それからコンロモドキや肉焼き機モドキなどを取り出して後を任せる。

「では、俺たちはコッチで畑作りをしよう」

〈はたけ?〉

 そう。

 アライラに一通りの説明をして、畑作りに挑むこととする。


〈ふむふむ・・・マリーさんから超巨大化しない程度の栽培方法を調べたレポートを貰ったと〉

「そう」

 紙束を見せて、アライラが覗き込むような姿勢になりつつ〈むーん〉と唸る。

 そうして、周囲を見回した。

〈・・・あれ? ここって牧場の中なん?〉

「そう。マリーさんと道標人が連れてきてくれたようだ」

〈そうなんかー。むーん。ちょっとその辺を散歩してくるわ!〉

「大道人。取り押さえろ」

〈むきゃー! ちょちょちょちょちょ! 鎖が四方八方から飛び出すから逃げようにもどうすればええねん!?〉

 アライラは目がいい。

 しかし、判断力が鈍いために目の良さを活かせていない。

 畑作りから逃げようとするので、取り押さえるべく動き出す大道人を見て、瞬発力を活かした逃亡を図ろうとした。

 そうすることを見越して、縛鎖閻魔錠を発動して地面から包み込むように展開させたが。

 ちなみに、上に跳べば鎖から逃げることはできるが、大道人が待ち構えているので逃げ場など無いのである。

 とはいえ、これは彼女がビームなどの攻撃をしない事が前提だ。

 ここは牧場の中であるということに気が付いてからの行動となるので、下手な攻撃はできないという事は、今日までにマリーさんより散々注意されてきているので、攻撃はない。と確信していた。

 村とかで散々暴れた時にマリーさんからボッコボコにされているのだから、忘れっぽい彼女でも自制してくれると思っていた。

 してくれてよかった。

〈はーなーせー! 畑作りとかめんどいー〉

「全部をやってくれって言うわけじゃないよ。ちょっと眼を貸して欲しいってだけだよ」

〈ぐぬー。ちょっとだけだからねー〉

 うーん。

 もうちょっと協力的でも良くないかなー。

 


 さて、マリーさんの調べによると、前にジャガイモを超巨大化させてしまった要因は魔力の過剰供給であると記されている。

 そのことを丁寧に解説する事から始まり、過剰にならない魔力量の予測値も書かれているが、正直、数値を書かれてもよく分からない。

 しかし、必要な道具類などは指示されているので、これを元に畑を作るとしよう。

 俺がレポートを呼んでいる横で、アライラと大道人六人は何か遊んでいた。

〈はい! 六像がっしん!!〉

「「「「「「ゴッド・アライラー!!!」」」」」」

 何をしてんの!?

 俺が想像した通りに組体操ピラミッドの天辺でシャチホコしているアライラ!!

〈え? これがルッタのイメージしたゴッド・アライラーだったん!?〉

「はい。そうでございます」

〈マジで組体操やんか!?〉

 あ、やっぱりアライラのイメージとは違ったのか。

〈ええか? 私がイメージする六像がっしんちゅーんわなー・・・〉

 き、気になる・・・。

「おぉ・・・いや、コレはちょっとどうかと思いますが?」

「しかし、よく考えられてあるかと」

「頭を球体関節に見立てて、各部を連結させる・・・ふーむ。どうやって固定するので?」

「しかし、顔があちらこちらにくっついているのは不気味では?」

「合体というのですから、六人を各四肢として連結させるのではなく・・・一体の大道人にしてしまう方がよいのでは?」

「腕と足と顔を六人分増やした一体の大型地蔵というのも、阿修羅像みたいで恰好いい気がますよ」

〈浪漫だよ! 浪漫こそがパワーなんだよ!〉

 なにをやってんだろうね・・・あの子らは。


 レポートを読んでいるけれど、気になってしかたないな。

 ここからは、とにかく集中する。気を散らすな。集中するんだ。

〈合体だ! 本物の六像合身を見せてあげるぜ!〉

「あ、お止めくださいアライラー殿」

「たぶん、できません」

〈え? やる前からできないって言っちゃダメなんよ!〉

「いえ、できないのですよ。私たちは召喚された石像ですゆえ、こういった体の改造?みたいなことは、召喚主で無ければできないのです」

〈なにおー! やってみなきゃわかんねーでしょ!?〉

「・・・では、試して見ると良いですよ」

〈よっしゃ! 邪眼合体! 六像がっしん!!・・・くぎゃっほおああああああおあおあおあおああお〉

 

 ・・・さっきからなにをっお!?

「なんでアライラが燃えている!!?」

 見れば、アライラの身体から業火が噴き上がって燃え盛っている。

 もはやレポートを読んでいる場合ではない。

 っていうか、なんで六像合身とかやってんの!? なんでそれをやったら燃えてんの!?

「いったい何をして燃えているんだ!」

「あ、主様・・・我々に何がなんだか?」

「いいから早く消火してください!! 牧場施設が燃えたらマリーさんに殴られますよ!!」

 マリーさんは施設に出る被害だけは許容しない人だ。

 どんな些細なことでも過敏に反応してくるので、バレたら大目玉では済まないだろう。

〈あ、消えた〉

 なんでだよ!!?


〈おー。びっくりしたー。あ? るっちゃんどうしたん?〉

「・・・とりあえず。大人しくていろ」


〈あ、はい〉




次回は、ブォームへの再挑戦。を予定しています。


最後までお楽しみいただき、ありがとうございました。

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