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42 てってれー♪ いしのつりざおー♪

こんにちは。こんばんは。

早いもので、初投稿から2年が経過しようとしています。

少しは文章力が上がっただろうか?と思うところですが、成長したとは思えない今日この頃。

どれだけ時間が掛かろうと、この作品だけは投げ出さずにキッチリ書きたいと思っております。


今回のお話は、新たな活動拠点となる北の村から始まるお話となります。


最後まで、お楽しみいただければ幸いです。

 ここ第一階層【春の区画】も最北の村は雪に覆われていた。

 朝起きて、宿舎代わりに使っている村長宅を出ると、まさに白銀の世界と言っても過言ではない風景を楽しめる。

 誰もいない村だからこそ、誰かが歩いた跡のない綺麗な雪が広がっていて、思わず飛び込みたくなる。

 と、意気揚々と外へ飛び出して見ると・・・なぜか雪かきが始まる村風景に、俺はマリーさんへ大急ぎで話を聞きに行った。

「あー。ダンジョンとしての環境維持機能・・・とでも思ってスルーしておきなさい。かつて、この村で生活していた人間の習慣を、村自体が再現しているのよ」

 ・・・どうにもそれ以外の理由がありそうな様子ではあったが、話すのが面倒。というよりは、どう説明したらいいか分からない。という印象を受けたので、聞かない事にした。

 とにかく、村の施設を保全するために、ダンジョンが自動でやってくれているのだそうだ。

 何気に凄いな・・・。

 ただ、誰かがいるわけでもないのにシャベルやスコップなどで雪を退かしているように、雪かきされていく様子は怪奇現象と言って差し支えないものだと思える。

 人間の習慣を再現していると言っても、ここまで的確にできるものなのか?

 雪の降り方積もり方に法則性があるのか? それとも、過去の村と同じになるように設定されているのか? はたまた、高性能なAIみたいなものがあって、常に思考しながら雪かきをしているのか?

 ・・・。


〈ま。ダンジョンなんだし。考えても仕方なくね?〉

 

 村の外に、北西の集落で建てた巨大テントを新規に建て直して、ここで寝泊まりするアライラは言う。

 ウッスの丸焼きを骨ごとムシャムシャバリバリ食べながら、俺の感じた疑問に対して素晴らしいほどなんにも考えていない答えをくれる。

 とりあえず、この妙な違和感だけを覚えておく事にして、考える事は保留にしておくこととする。

「アライラー殿の言う事も確かでしょう。このダンジョンを作ったウィッチ?なる人物に聞く以外には答えもでますまい」

「やはり。そうなのでしょうね・・・」

 俺からすれば湯舟と言って差し支えのない浴槽を、アライラの横に置く大道人。

 水を温めて湯にしたコレを、アライラがグビッと一気飲みする。その様子から、升にしか見えないサイズ比に感心する。

〈でー? 今日はどうするん? さっそく冒険するん?〉

「乗り気だね?」

〈いやはや、雪ですよ? 雪・・・私なんて、小学生と中学生の修学旅行っぽい遠足?かなんかで行ったきりですもん!〉

「旅行とかで行かなかったの?」

〈ダメダメ。うちはお父さんもお母さんも『コミケに参加する』から旅行費は同人誌購入資金に充ててるんで、旅行とか行ったことないよ〉

「コミケ・・・あの夏と冬にやるヤツだよね?」

〈そうそれ。私も小さい頃に連れていかれたんだけどさ? なんかこう・・・会場の熱気?に当てられたて吐いちゃったらしくて・・・以来、コミケの時期は祖父ちゃん祖母ちゃんに預けられてたんよ。中学くらいまで〉

「へぇ・・・遊園地とかは?」

〈・・・行ったことない〉

「そっか」

 俺は一応、有名どころの遊園地は行ったことある。というのは言わないでおこう。

 祖父母に連れられて観光地もいくつか巡った事がある。というのも言わないでおくとしよう。

〈くぁー! かの有名な夢の国に一回も行かずに死んでんのか私は!!?〉

 それはそれで、なんだか不憫な・・・。

〈・・・まぁ、死ななきゃ来ることもできない異世界転生というガチのファンタジーを体験しているんだから、どっこいってことでどうかな?〉

「・・・それで君が納得できるなら、いいんじゃないか?」

〈じゃ、どっこいということで! HAHAHA!!〉

 あまり、この話を長引かせるのもよろしくない。

 そろそろ本題に移るとしよう・・・うん。


「さて、とりあえずは村周辺の探索をしようと思うんだけど、どうかな?」

〈はーい! 私『雪だるま』とか『かまくら』とか作ってみたーい!!〉

 ・・・俺、探索しようと思うんだけど?って聞いたと思うんだけど?

 探索よりも、遊ぼうってことか?

 別に悪い話では無いのだが・・・先にやっておきたいことがあるんだよね。

「先に、君のご飯になるモンスターを探しておきたいんだけど」

〈ウッスがあるやん?〉

「大量に狩ったのは確かだが、数には限りがある。こういう場合、非常食や保存食としてなるべく消費を減らして置き、長期でご飯の補充が出来ない場合などに消費するのが理想的だと思う」

〈・・・そっか、マジックランドセルに入れておけば、消費期限も賞味期限もインフィニット!つまりはジャスティス!〉

 ・・・あ、うん。そう? そうだね。期限が無いのは確かに正義だと思う。

 しかし、いつも唐突だな・・・何が言いたいのだろうか?

「えーっと、使う期限が無制限になるというのは、確かにジャスティス?だね」

〈・・・で? どの辺を探索するん?〉

 どうしてそう。話の変え方が唐突というか、乱暴なんだろうか?

 俺は、何か反応を間違えたんだろうか?

「えーっと、マリーさんに聞いたんだけど・・・この村の近くに湖があるそうなんだ。行ってみないか?」

〈おー・・・お!? 湖ってことは氷が張られてるってことだから、むふーッ! スケートできるやん!! 私やったことないねん! こらテンションあがるでーッ!!〉

 ・・・なぜに関東風関西弁?

 何はともあれ・・・探索に出ることが決まって何よりだ。

「じゃあ、マリーさんを呼んでくるよ」

〈いってらー♪〉





 村を出て東からやや南に移動すると、湖はある。

 辺り一帯は雪に覆われているが、空気感・・・というのか? なんだか春の様相を感じさせる場所になっていることで、どことなく神秘的に感じられた。

 そんな湖には、厚い氷が張られている。

〈おー・・・やっぱり乗ったら割れちゃうかな?〉

「さすがに無理じゃないかな? 怪獣サイズを支えられる氷ともなれば、氷山ぐらいは必要だと思う」

 見事な氷が湖の蓋になっているけれども、これに乗るというのは・・・。

「でも、これならワカサギ釣りとかはできるはず・・・ 」

「それは無理ね」

 ワカサギ料理を調べるためにインターネットで検索すると、ワカサギ釣りというのが真っ先に出てくる。なので、何度か調べたことはある。

 ちょっとやってみたいな~。とは思ったけれども・・・。

「ムリなんですか?」

「無理よ。だって、この湖には大型淡水魚しかいないからね」

 ・・・大型淡水魚。

「それは、アレですよね? アライラみたいな怪獣サイズの淡水魚ってことですよね?」

「そうよ。人間的大型淡水魚では無いわ。怪獣サイズ淡水魚よ」

 なら、そう言ってくれれば確認する必要はないのですが・・・。

 しかし、それならそれで淡水魚を狩ってアライラのご飯にするのが手っ取り早いだろう。

 村からも比較的に近い場所にある湖で、ダンジョンの性質上から倒したモンスターは翌日にはリポップしている。

 食料の安定供給という面で考えれば、理想的な狩場ではなかろうか?

「アライラ? しばらく魚メインのご飯でも大丈夫?」

〈・・・まぁ、美味しくてお腹いっぱいになれば・・・つか、ここずっと丸焼きばっかりやんけ〉

 そうなんだよね。

 調味料とか無いから、結局は丸焼きになるんだよね。

 上手に焼けましたー♪ が、アライラも気に入っているようだし・・・下処理も慣れたものだ。

「では、さっそくと湖の淡水魚を釣ろうか」

〈ふ。ならば私の釣り力を見せる時だね!!〉

 釣り力?

「アライラ。釣りってやったことあるの?」

〈任せろ! ネトゲのミニゲームで大漁なんてちょちょいのちょいやで!!〉

「止めろ。ちょっと下がれ」

〈辛辣!?〉

 ここで今にも湖に突撃しそうなアライラを後方へと下がらせる。

 今、もっとも優先してやるべきことは何か? そう。彼女の釣りに対する知識を確認する事だ。

「ネトゲのミニゲームだと、どういう感じで釣りをするんだ?」

〈え? いや、普通にアイテム。普通の釣り竿。使う。キャラが竿を持ってひゅーん。とエサ?を水の中にぽちゃん。しばしの待ち時間。浮きがびくびく。ここでヒットバーが表示されて、ババン!!とタイミングよくヒット範囲でエンターキーをたーん!と・・・あ、ゲームパッドならAボタンとかその辺ね!〉

「うん。君は釣りすんな」

〈なんで!?〉

「そんなんで魚が釣れるものか」

〈邪眼にやってもらえば、再現は可能!・・・たぶん〉

 ・・・。

 ・・・・・・否定したいけど、彼女の邪眼ならミニゲームを完全再現してしまいそうで否定できないのが、どうにも歯痒い。

「なら、まずは釣り竿だ。君が使う竿なんて無いだろ?」

〈それなら、大道人を召喚して、その錫杖を拝借すれば良くね?〉

「・・・確かに」

〈エサは、蜘蛛糸を虫っぽく固めて、ぽいーって感じで。あ、釣り糸も私の蜘蛛糸で!〉

「・・・冴えてるね」

〈ふふーん! そういう・・・アレは漫画だったかな? アニメだったかな? を見たことある気がするからね。完璧よ!〉

 気がするだけで、そこまでできるって・・・何かの才能なのかな?

 まぁ、必要なモノはとりあえずサクッと集まるので、さっそくと準備に取り掛かる。

「ルッタ。大道人を召喚するなら、六人呼んでおきなさい」

 大道人の召喚を始めようとしたタイミングで、マリーさんから忠告を受ける。

「六人ですか?」

「そうよ。この辺りを縄張りにしているモンスターは居ないけれど、湖に接近するモンスターは時折現れるの。村の魔除けは効果を発揮しているけれどね? 湖に沿って移動してくる個体もいるから、村に接近されることがあるのよ」

 そうか。

 つまりは大道人を六人ほど召喚して置いて、周辺を警戒させておけ。ということか。

「分かりました。大道人を六人召喚して、周辺の警戒をしたいと思います」

 

 準備は、とても簡単に済んだ。

 大道人を六人。錫杖を一本多めに用意してアライラに渡す。

 地蔵たちは周辺警戒のために、等間隔で配置する。

〈邪眼クラフト! 釣り竿!!〉

 錫杖。蜘蛛糸。この二つが邪眼の力によって一つに組み合わさり・・・。


〈てってれー♪ いしのつりざおー♪・・・おー・・・むーん〉


 錫杖の特徴である輪が柄頭となり、先端となった部位に蜘蛛糸が接続されて釣り糸のように垂れ下がるシンプルな釣り竿となる。

 なるんだけど・・・。

「それ、竿なの?」

〈むーん〉

 釣り竿と言えば、しなる事が重要のはず。

 アライラもそのことは分かっているようで、石の釣り竿を先ほどから前足を器用に使ってへし折るように力を加えている。

 もちろん、折るつもりはないから弱い力を加えているが・・・釣り竿はまったく曲がる気配がない。

〈・・・ま、釣れればいいっしょ!〉

「そうだね」

 続けて、釣り針とエサだが・・・。

〈ふっふっふ! 邪眼クラフト!! 出でよルアーッ! オル〇イザーッ!!〉

 使用した材料は『地獄門・縛鎖閻魔錠』だ。

 コレを使ってルアーを作るのだと言うので、どういう物ができるのか興味があった。

「クラフトって言っているのに、出でよ?はおかしいんじゃ?」

〈まま、そこは気にせんといて! でも、ほらで来た! 石のルアー!・・・おっも〉

 そりゃ石なんだから重いでしょう。

〈うーん。こいつ浮くのかな? ルアーの形は原作通りにできてるはずやけども・・・〉

「いや、それなら木を使って作れば、浮くんじゃないの?」

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

〈その手があったか!〉

 気づいていなかったのか・・・。

 アライラは周囲を見回して、手近な木を引っこ抜く。それを邪眼クラフトで丸ごとルアーにクラフトしてしまった。

 で、釣り針の方は閻魔錠を再加工して、木のルアーに取り付ける。

〈テッテレー♪ アライラーは木のルアー!をDIYした!! いえーい♪〉

 楽しそうに、ルアーを釣り糸に結び付けて、釣り竿を担ぐと湖に接近する。

 そうして、俺は根本的な事に問題が残っているのだと気が付いた。というか、気が付かなかったことが恥ずかしいと思える。

〈よーし! 釣りゲーの始まりだぁあ!!〉

「待った! 氷だ! 氷があるから、ルアーを投げても意味ない!!」

 俺が声を張り上げるのと、アライラがルアーを投擲?するのは同時だった。

 

 ひゅーん。こん。ぽて・・・。


 氷の上に、ただ転がるだけのルアー。なんとなく「いってー。氷の上に落とすなよなぁ」と文句を言われているような気がして居た堪れなくなる。

 だが、次の瞬間。

 氷を砕いて飛び出してくる怪獣サイズの魚が現れた。

〈みーたーかーッ!! すべては私の計算通りだぜッ!!〉

「・・・・・・・・・・鑑定」

〈そ、そうね! 鑑定!! かんてーい!!〉



『ハンナマウル。異世界バキマオーに生息する淡水魚。真冬の湖以外には生息できない魚で、ぷりぷりとした身は引き締まっていて程よい弾力と甘みを楽しめることから、刺身が推奨されるがおススメできない。鍋や焼きにすると臭みが増すため、人気がない。鱗や背びれ尾びれに骨などは生活用品や防具の素材となるので高値で取引されている』



〈くぅーッ! 結構な引きの強さじゃないですか!!〉

「・・・刺身が推奨なのに、おススメ出来ない?とはどういうことだろうか?」

 鍋ものにしたり、焼き魚にすると臭みが増すというのは・・・まぁ、異世界モンスターの特徴なのだろうとひとまず置くとして・・・刺身が推奨なのにおススメできない?

 トンチか?

 いや、この鑑定は肝心な情報は出さない主義だから、もしかしたら推奨するがおススメしない。というのは然したる問題ではないのだろう。


 つまり、食べるなら刺身がいいけれど、食べること自体はおススメしない。ということか?


〈くぅぅぅ! お、おかしい! ミニゲームと違って、なんか釣り上がんないんですけど!?〉

 ・・・あのさぁ。

「ミニゲームだと、どういう感じで釣り上がるんだい?」

〈え? こう・・・バシャバシャって感じの効果音とエフェクトが上がって、バシャーンと水の中から飛び出してくる感じで、ゲットだぜーッ! てなるんよ〉

 ・・・そのミニゲーム、釣りをやったことない人が作っていないかな?

 とはいえ、俺も偉そうにどうこう言えるほど釣りの知識はない。

 ただ、ルアーを使った釣りは魚が左右に動くので、竿をしっかり操作しないと糸を切られてしまう。という話は聞いたことがある。

 水上へ飛び跳ねることで、糸を切れやすくしたりする事もしてくるとか?

 ダメだな。アライラへ「こうしろ!」とは言えない。となれば、これはもう手っ取り早く済ませてしまわないとダメだろう。

「アライラ! 邪眼のサイコキネシスみたいな技で魚を浮かせるんだ!」

〈お!? 邪眼・・・マジックだっけ? サイキックだっけ?〉

「どっちでもいいでしょ!?」

〈ええい、邪眼サイキック! サイコキネシス・・・あ、語呂が悪い! 邪眼マジック! サイコキネシス! うーん・・・なんかしっくりこないなー。前に使った時はなんて言ったっけ?〉

 ・・・なんて言ってたかな?

 そんなこんなで首を傾げていると、邪眼によるサイコキネシスが発動してハンナマウルが水上へと浮上した。

 その姿は・・・。

〈アレって、鯉じゃね?〉

「ああ。たしかに、アレは鯉・・・でも、ナマズにも似ているような・・・」

 錦鯉のような色鮮やかさはなく、濁った川の水みたいな暗い色合いの身体をした魚。しかし、鯉と断言するには・・・どことなくナマズみたいな印象を受ける。

 おそらく、口元の左右から出ている髭が原因だろう。また、全体的な体形?というのが、鯉というよりもナマズに見えることからも、判断に迷う。

 ここまでくればナマズなのでは?と思わなくも無いのだが、なぜか第一印象が『鯉』になるから、不思議だ。

〈あ! しまった!!〉

「どうしたの?」

 空中へと浮上したハンナマウルが抵抗するように暴れている様子を見つめていると、アライラが思い出したように叫び出した。

〈忘れていたんだ! 魚を釣った時の言葉を!!〉

「・・・釣った時の言葉?」

 言うや否や、アライラは再びハンナマウルを水へ戻す。

「え? 何やって―――」

 アライラのやっている事がよく分からないでいると・・・。

〈ふぃぃぃぃぃぃっシュッ!!〉

 偉く勢いと巻き舌っぽい発音で、再びハンナマウルを水上へと勢いよく浮上させるアライラ。

〈ふふ。これがお約束なのよね〉

「そーなんだー」

 こんな事で釣りあげた魚を戻して、もう一度釣り上げるとか・・・拷問では?

「まぁいいや。さっそくご飯にしてしまおう」

〈おっけー! いーまこっちに引き寄せるからねー♪〉


「主様! 東南方向よりモンスターの接近を確認しました! ご注意を!!」


 釣り糸を手繰って、こちらに引き寄せようとした時・・・まさかのモンスター接近。

〈ちぃ! 間の悪い!!〉

 アライラが大道人が指し示す方角に向き直りつつ身構える。

 俺もまた、彼女の頭の上で錫杖を構えた。

「アライラ。何が接近しているか、目視できるか?」

〈ちょい待ってね・・・邪眼カメラ・アイ! 出撃!!〉

 目を模した塊が邪眼より射出されると、モンスターが接近してくる方角へと飛んでいく。そうして、カメラ・アイが捉えた映像を俺にも見えるようウインドウ表示で開いてくれた。

 その映像から、確かにモンスターが接近してくるのは確認できるが・・・。

〈ずんぐりむっくりしてるね?〉

「この姿・・・まさか、マーモットか!?」

 俺が、映像に映っているモンスターの正体を口にした時、シュバッと飛び上がったマーモットと思われるモンスターが湖へと着地する。

 するのだが・・・当然のように着地した氷が砕けて入水していた。

〈なんあれ?〉

 もはやカメラも必要ない。

 肉眼で確認できるそのモンスターは、必死にジタバタ暴れて氷を砕きまくってから、何とか岸に上がっていた。

「マーモット・・・に似ているけど、さすがにちょっと・・・」

 マーモット。

 確か、テレビで紹介されていた動物でもどことなく愛嬌がある。ということで、ちょっと有名だったはずだ。

 齧歯類・・・で、リス系だけどマーモット族とかいうカテゴリだったかな?

 生息域は山岳地帯とテレビでは紹介されていたはずだが・・・そこは異世界モンスターなのだろうから、違っているのは当然か。

〈あー。マーモットって『ああああああああああッ』って鳴き声のおもしろ動物だよね?〉

「え? なにそれ、知らないんだけど」

〈え!? 動画サイトで紹介されてた鳴き声は『ああああああああああッ』だったけど?〉

 ・・・いや、それって。

「それ、多分映像と音声は別物を合成したヤツだと思うよ」

〈なぬ!?〉

 テレビで紹介されていたマーモットの鳴き声は、もっとこう・・・やかましいって感じの・・・。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああッ」


〈・・・〉

「・・・」

 今、あのマーモット似モンスターが絶叫した?

〈ほらー。やっぱり『ああああッ』じゃん〉

「いやまって、今の、やっぱりアイツが叫んだの?」

〈叫んでたよ〉

 ・・・面倒くさい鳴き声を。

 しかし、先ほどの絶叫で水に濡れていた体毛が一瞬で乾燥されたように、水気が失せてフワフワを取り戻す。

 今のはなんなのだろうか?

 声で振動を発生させて体毛が吸った水分を雑巾絞りのように、排出したのだろうか?

 それとも、何かしらのチート能力? 前に戦ったウッスのような技の類なのだろうか?

〈まー。それはそれとして、魚は回収しよう。私のご飯だからね〉

 邪眼サイコキネシスで、回収を早めるアライラであるが・・・おそらく、あのマーモットに似たモンスターの狙いは、釣り上げたハンナマウルなのではないだろうか?

 現に、出現したモンスターは水に足先を付けて、冷たい事に身を震わせながらハンナマウルを見つめている。

 それがアライラに手繰り寄せられているのを見て、頭がこちらを向いたことからも分かる。

「アライラ。多分、こっちに来るよ」

〈え? マジ?〉


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああッ」


 こちらに向かって絶叫すると、二足歩行でドタドタとした不格好な姿勢で走り出す。これが思いのほか速度が出ているようで、どう見ても鈍重系の動作なのに、あっという間に大道人に肉迫していた。

「こ、こやつ!?」

 どうやら、大道人も俺と同じ感想を抱いたようで、動作からは想像し難い間合いを詰める速度に判断を誤ったようだ。

 次の瞬間、マーモットモドキがジャブのように拳を連続で叩きこんでくる。

 その攻撃姿勢は、ボクシングのモノではなく・・・拳法を彷彿とさせる大地に足を打ち付けたような腰の落とし方と、拳への威力を乗せる上体の動かし方をしている。

 結果、大道人の頭が拳一発で顔の一部が砕かれ、二発目で首から捥げて転がり落ちる。三発目で胴体に亀裂が生じ、四発目で砕かれて倒れ込んだ。

〈むむ。拳を一瞬で四発も叩きこんでいる・・・おそろしく速い拳打。私じゃないと見逃しちゃうね〉

「・・・いや、俺にも見えたのでそこまで速くは無いよ」

〈マジかー〉

 しかし、こんな会話をしている余裕があるのは・・・。

 マーモットモドキが大道人を殴った拳を無事な方の手で摩ったり、息を吹きかけたりして痛がっているからである。

 さすがに、石像を殴ると痛がるのか・・・。

〈・・・なんだろう? どこかで見たことのある痛がり方してる〉

「俺が知る限りだと、昔の香港映画だな。BS放送の昔懐かし香港映画特集で放送していたのをお祖母ちゃんと見たことあるからね」

〈ふーん? いや、私はアニメで見たような?〉

「まぁ、それは置いといて・・・うん。鑑定を頼むよ」

〈あ、そうそれ。なんかノリと勢いが良すぎて忘れてた。鑑定!〉



『タン・ラン・トー。異世界ケッテモに生息するタン目、ラン科、トー属の四足歩行っぽい二足歩行生物。見た目だけならズングリムックリしたモフモフ動物であるが、その下に隠された鍛え抜かれしマッスルによって繰り出される拳と蹴りは山を砕くとされており、伝説となるが、山を空手チョップで割ったというモノがある。真偽は不明。独特の鳴き声は威嚇なのか分かっていないが、不意に叫び出すのでビックリすること間違いなし。一部の狩人たちからは『せんせい』と呼ばれているらしい』



 ・・・う、うん。とにかく、格闘系モンスターなのは分かった。

〈うーん。とりあえず、カンフー系モンスターってことでOK?〉

「まぁ、さっきの様子から見ても・・・それでいいと思う」

 見た目こそ、ずんぐりむっくりしているが・・・大道人をあっさりと破壊した威力は本物だ。

 侮るわけには行かないだろう。

〈まぁ、でも・・・攻略法は分かっちゃったもんね!〉

「え!?」

 この短時間でタン・ラン・トー・・・区切るの面倒だから『タンラントー』でいいか。

 この短時間でタンラントーの攻略法を看破しただって? どうしたんだ? 今日はやけに冴えているんじゃないか?

 俺が驚いている間に、彼女は邪眼サイコキネシスで引き寄せて置いたハンナマウルを、タンラントーへと投げた。

〈ほーら! 譲ったげるからお家にお帰りよ!!〉

 あ。そういうことか。

 ルアーを外したハンナマウルを、タンラントーへと飛ばす。と、タンラントーはコレを受け止めて目を輝かせた。

〈大事に食べなねー〉

「くんふー」

 サイコキネシスが切れて、バタバタと暴れるハンナマウルをしっかりと抱えるタンラントーは、スキップしながら来た道を戻っていった。

 ・・・。

 ・・・・・・ああいうモンスターも居るのか。

〈うーん。じゃ、もう一匹釣りましょか〉

 ルアーの状態を確認して、邪眼で補修することで再使用を可能とし、竿を振るってルアーを飛ばす。そうして氷が砕けて水面が見える湖へとルアーは飛んでいき・・・。

 氷の上に落ちた。

「・・・ナイスシュート」

〈うん。ちょっち黙ってて〉

 先のようにハンナマウルが反応して飛びつくことは無く、邪眼サイコキネシスでルアーを水中へと落として魚が掛かるのを待つ。

 待つのを見ていて思ったことは、ルアーってそういう使い方するモノじゃないよな?ということ。

「あのさ。ルアーって疑似餌なんだから、泳がなければ意味ないのでは?」

〈そうしたいんだけど、リールが無いから無理じゃね?〉

 ・・・リール? ああ、リールか。糸を巻き取るヤツ・・・そういえば、釣り竿の手元にハンドル付きの奴が付いているんだったか?

 リールって聞くと、真っ先に手芸の方を思い出してしまうな・・・。

 そうして俺の意識が逸れていると、どうやらハンナマウルが食いついたようで。

〈お? おーッ! ふぃぃぃぃぃぃぃっしゅぅぅぅぅぅ!!!!〉

 なんでその掛け声だけは無駄に発音良いのかなッ!?

〈からのサイコキネシス! げっちゅう!!〉

 ・・・え、それでいいなら釣りをする必要なくないか?

「初めから、それで魚を捕まえてしまえばよくない?」

〈え? それじゃ釣りにならないじゃん?〉

 ・・・この話は、するだけ無駄なのだと結論を得た。


 そこそこに捕獲したハンナマウルの内臓を取り出して、邪眼ビームで焼却したあと、錫杖を口から差し込んで身体を貫通させ、焚火のように起こした火の回りに突き立てて焼く。

 正直、刺身が推奨だおススメしない。という鑑定の文言から、きっとよくない事が起こるので、焼くことにした。

 そうして、焼けたハンナマウルをバリバリと食べるアライラ。

〈たまには魚も悪くないね!〉

 どうやら、マズくは無いらしい。


「ふむ・・・やはりアライラは大丈夫か」


 そんなマリーさんの呟きを聞き、無視できなかった俺は尋ねる。

「どういう意味ですか?」

「・・・まぁ、ハンナマウルっていう魚には毒素が含まれていてね。戦闘能力がない分、食べても食べたヤツが損をする魚モンスターなのよ」

 あ。

 言われてみれば、モンスターのはずなのに戦闘にならなかったな・・・。

「鑑定にもあった通りで、鍋や焼き魚・・・つまり火を通すと臭みが増して食べるのが辛いのだけど、刺身は絶品らしいのね。しかし、食べると一週間はトイレに引きこもらないと生活が出来なくなるほどの状態異常を引き起こすわ」

 ・・・食事時に話すことではないですね。

〈・・・つまり、私ってばお腹を下しちゃう感じ?〉

「アライラは腹痛に見舞われるのでしょうか?」

「大丈夫よ。火を通りしてあるから、毒素は分解されている。代わりに臭みが増して一口食べれば思わず吐き出してしまうって話しなのだけど・・・アライラは平気そうだからね」

「そうか。アライラの身体は、あらゆる毒を取り込んでも平気な蜘蛛モンスターなのでしたね」

「そう。毒素が原因の臭みだから、アライラには効果がないのでしょう。大したものだわ」

〈・・・でも待って? そうすると・・・さっきのマーモットは?〉

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・マリーさんが静かに合掌して、一礼していた。


「ハンナマウルを渡したのってアライラだから、あとで恨まれそうな気がするんだが?」

〈・・・うへぇ。フラグ建てるのはヤメテくれぃ〉



次回は、北東の海を目指すためのお話を予定しております。


壺外編は、しばらくお待ちください。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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