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40 邪眼奥義!!

あけましておめでとうございます。

ご挨拶が遅れてしまいましたことをお詫び申し上げます。こんにちは。こんばんは。


今年もよろしくお願いします。

更新は遅めですが、がんばって続けていきたいと思います。


今回のお話は、前回の続きとなります。

最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

「では、このまま北へ移動するとしましょうか」

 マリーさんの判断を受け、俺たちはさらなる北を目指して移動を始めた。

 俺が使った地獄変の技『咀嚼谷』によって、谷に溜まっていたキュアーンの吐瀉物は一掃できたが・・・それら以外の場所に飛び散ったモノが残っている事を考慮して、エリアをグルリと一周することで汚物処理を行った。

 その結果、一通りの吐瀉物は綺麗に掃除できたので次に進むこととなる。

 アライラの『邪眼・浄化ビーム』によって、細々とした吐瀉物を片っ端から掃除して回ったわけだが・・・。

「前に使った『汚物は消毒だビーム』と何が違うんだ?」

〈・・・さぁ? 同じじゃね?〉

 そんなやり取りをしつつ、特に大きなトラブルが発生しなかったのは一安心だ。

 吐瀉物の処理が進んだことで、このエリアに満ちていた溶解性の空気も薄まったうようだ。

 展開しているバリアの溶ける勢いが無くなってきた。

 

 さて、そうして谷沿いに北上していくと・・・エリアの境目に到着した。

 マリーさんの話を聞くと、この谷に沿って北上していく先にはキュアーンの寝床となっている鉱山があるらしい。

 なんだか地域によって取れる物が違うという配置の仕方は、テレビゲームのような印象を受けるな。

 そんな疑問も、ここが試験大陸だったから。で片付くものらしい。

 というのも、この世界における春夏秋冬が正常に機能するかを確かめるために、四つの区画を用意したからだ。

 各季節で分けたとはいえ、各区画には人が住む。

 なので、各土地を行き来せずとも生活ができるように、北海道と同じぐらいの土地で全てを賄えるようにアレコレと配置した結果なのだそう。

 ただ、それはそれでいろいろと問題も多かったらしいけど。


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


〈わー、デジャブ〉

「確かに」

 キュアーンが寝床にしているという鉱山を目指して北上し、次のエリアとの境目に到達したことで見覚えのある異様な雰囲気に立ち止まった。

 またバリアを複数展開して空気を清浄化しつつ移動していかねばならないのは、割とキツイ。

 しかも、修行も兼ねているためにマリーさんからの支援はない。

 俺が限界だと見て、交代はしてくれるけれども・・・休憩と言って先に進むのを止めてくる。

〈むーん・・・るっちゃん。体調は大丈夫そ?〉

「ああ、今のところは大丈夫だけど・・・入ってみて溶解力を確認しないと、ハッキリした事は言えないな」

 そう。

 バリアが溶けて無くなる速度とバリアの補充が重要だ。

 なにせ、アライラが展開するバリアは俺が魔力供給することによって連続使用できる代物だからだ。彼女一人でバリアの連続展開はムリなのは間違いない。

 ・・・前にヨーロロン戦で早々に魔力切れしてフルボッコにされていたからな。

 おそらく、彼女の魔力量はバスター・ビーム一発分・・・邪眼一つにつき一発分だと考えても、本体合わせて9発分だと予測はしている。

 回復方法は休息することと、おそらくは食事。

 モンスターを捕食することで、血肉を魔力に変換しつつ、モンスターの持つ魔力も吸い上げているという感じか。

 いずれにせよ、俺抜きで戦うとなると相当に自己管理が必要になる。

 だから、俺が早々に血を吐いて倒れてしまうと、バリアが維持できなくて詰む。頑張るしかない。やせ我慢は得意・・・でもないけど、歯を食いしばるのは割とよくやっている。

 ・・・特にこのダンジョンでアライラと合流してからは、そんな毎日を送っているからな。

 ・・・・・・いや、血反吐ばかりな気もする?


〈ほんじゃッ! いっちょトライしてみましょか!〉

「・・・うん? うん。確かにやってみるしかないからね。よし、進もうか」

 意を決して、俺たちには未踏の地となる新たなエリアへと進入する。そして、入った先は・・・やはりそこかしこから煙が立ち上っていた。

 その光景は、埴輪兵たちが縄張りとしているエリアの惨状とほぼ同じもので、あらゆるものが溶けて液状化し、物によっては蒸発して空気に混ざっているモノもあるようだ。

〈ふぁー・・・さっきまでの小さい山から次第に大きくなってく感じだね〉

「ああ、どうやら断崖絶壁の谷から山間の谷に変わっていく感じだな・・・」

〈こういうのも『谷』でいいもんなの?〉

「正直、俺にもよく分からない。谷って広義的に考えると、周囲より標高が低くなった地形が、溝状に細長く伸びている所の総称・・・だったはずだから、標高の高い山と山の間にある溝のような地形は谷で合ってるはずだ」

〈・・・へぇ〉


 あ、また聞き流しているな。

 ・・・ちょっと勉強味が出てくるとすぐに聞き流し始めるんだからなぁ。

 仕方ない。俺とて偉そうに教えられるような学力があるわけでもないし、ここは目の前の課題をクリアするべく意識を切り替えていくとしよう。

 まずは状況の確認。

 先にも述べた通り、エリア全体で煙が立ち上っている。

 何もかもが溶けてしまったことで、得体の知れない液状化した何かが水溜まりになっているのは不気味だ。モンスターの類では無いと思いたい。

 そして、液状化した何かしらの一部が蒸発して空気に混ざっているのだろう。

 アライラの言う通り、このまま谷に沿って北上をしていくと、背の高い山が連なり始めている。山岳地帯というのが適格か?

 ・・・標高がどの程度か分からないので、とりあえず山岳地帯としておこうか。

 これだけの山々が連なっていて、禿山?というのもおかしな話だが・・・ここが北の地方で、本来は雪が降っている場所だったのだと考えれば・・・。


「マリーさん。もしかして、このエリアは雪山だったのでは?」

「・・・そうよ。本来は、年間でほぼ晴れることの無い吹雪に見舞われている雪山エリア。それがここだったのだけど・・・見事に雪雲ごと溶けて無くなっているわね」

 ・・・雲って溶けるモノなのか?

 まるで綿あめみたいだなー。って思ったけど、本気であんな感じで溶けてしまったのだろうか?

「前のエリア・・・『北の谷』でも言ったけれど、冬の区画と隣接していたことで、寒気が流れ込んでいた上に、この辺りは標高も高い山が増えるため、気温はさらに低くなる。今はキュアーンの吐瀉物で気温がアレだけど、解決すればまた極寒の地になるから気を付けるように」

「はい」

「あー、それとモンスターは住み着いていないから、そこは安心していいわ」

「あ、はい」

 ここが【春の区画】であるからこそ、冬の気候では活動できないモンスターばかりである。

 それが唯一の朗報だ。

 前のエリアに居た埴輪騎馬兵のような敵を気にせず、汚物処理に専念できる。

 それはそれとして・・・。


「マリーさん。ここから先も、この服装で大丈夫なのでしょうか?」


 集落にて渡されたマリーさんお手製の服を見せて、ここからの気候でも大丈夫なのかを確認しておくのは重要だろう。

 現段階では、寒気さえも溶けてしまっているような気温ではあるが、問題を解決した後は本来の環境に戻るはず。

 そうなると、この服装で大丈夫なのか不安になる。

「大丈夫よ。私が作った物だもの。何も心配しなくていい。けれど、どうしても寒いようであれば言いなさい。まだ、追加でいろいろと用意してあるからね・・・ちょっと重ね着するから、動きづらくなるとは思うけど」

「・・・そうなんですね。では、その時はおねがいします」

 ・・・いろいろと作ってあるらしい。

 重ね着するということは、下着の類か? はたまた上着?

 まぁ、今は考えずともいいだろう。


「それじゃ、アライラ。汚物処理を始めよう」

〈ほーい〉

 前と同じく、ドーム状にバリアを展開している中で使用していない邪眼を用いて吐瀉物を浄化する効果を持つビームを放つ。

〈邪眼・浄化ビーム!〉

 その一撃が吐瀉物に命中すると、ジュワーって感じの蒸気?のようなモノを拡散させて中空へと消えて行く。

 だが、その消え方に疑問があった。

 テレビ画面などでノイズが生じる時のドット抜けみたいな様子を見せていることだ。

 アライラが放つ浄化ビームは、ダンジョンに何かしらの負荷を掛けているのだろうか? それによるバグの発生が加速しているという可能性はないだろうか?

 

〈浄化ビーム! 浄化ビーム! じょーかびーむ・・・言うの疲れたー。ちょっときゅーけー〉


 音声入力式の攻撃というのも大変だな・・・。

 まぁ、慌てて作業する事でもないのだから、細目に休憩を挟むことは否定しない。

〈なんか、もっと楽に処理する技とかないかんね?〉

「作業効率を上げる技か・・・」

 確かに、浄化ビームで浄化できる吐瀉物の量は少ない。

 一発で処理できる範囲は・・・日本の一軒家何個分だろう? 正直、アライラのサイズから考えるのがちょっと難しい。

 とにかく、東京ドーム何個分。とかそういう感じでまとめて処理できれば、効率はいいだろうな。

 そうなると、どういう技がいいのか?という話になる。

「アライラ。前にウッスを一斉に攻撃した技があるだろ?」

〈おー? あ、フルバーストね? アレはマルチロックオンからビーム連射の技だから、一斉攻撃ってわけじゃないんだけども・・・〉

 しかし、ビームを連呼しないで大多数を一撃で仕留めた技なのだから、アレでいい気もするが?

〈あの技は、空を飛んでいないと効率悪いのよねー。広範囲の敵を狙い撃つからさ〉

「なるほど・・・確かに広範囲を見渡せる位置に自身を置く必要があったか・・・じゃあ、ダメか」

 いい技だと思ったけれど、空を飛ぶとなると邪眼の数が足りないな。

 すると、アライラが自ら空を飛ぶ必要がなく、空中から広範囲にビームを拡散させる技が望ましいということになるか?

 ・・・うん。アレなら効果的な気がする。


「アライラ。クラスター爆弾だ」

〈・・・クラスター爆弾? なんやそれ?〉

 え、知らないのか?

 リアルで存在している兵器だから、彼女が好きな漫画やアニメなら当然のように出てくると思ったんだけど・・・。

「えーっと、ニュースの簡易的な説明ぐらいしか知らないけど、コンテナに小さい爆弾を大量に詰めて打ち出して、コレを空中で開放してばら撒くんだ。地上を広範囲に攻撃する兵器・・・だったと思う」

〈ふーん・・・ショットガンの爆弾版みたいな?〉

 ・・・似ていると言われれば、確かに似ている気もするけれど。

「ショットガンの爆弾版みたいな感じで間違いじゃないと思うけど、コンテナに詰めて一定の距離を飛ばさないと、自滅する危険性があるから気を付けて欲しい」

 ショットガンは銃口から広範囲に拡散していくイメージだけど・・・コレを爆弾でやられたら至近距離で爆発してしまうだろうから・・・こう、なんというか・・・道連れ技みたいになるな。

〈おー。確かにショットガンの爆弾版だと、自分も危ないか・・・えーっとコンテナに詰めた爆弾・・・お? なんかそんな感じの武装を使っているシーンがあったかも〉

 ・・・あるのか。

〈ちょーっと待ってね? 今ちょーっと思い出してみるわ〉

「うん。とりあえずよろしく」

 アライラが〈うーん〉と唸る事・・・時間にして15分程度だろうか?

 マリーさんにクラスター爆弾風の浄化ビームで広範囲を一掃する案を相談し、これに対して「悪い案ではないけれど・・・ふむ・・・」と何やら懸念が残る感じの様子だ。

 そんな感じでこの案を実行するかどうかの相談をしていると、アライラが動き出す。


〈思い出した! デン〇ロビ〇ムだ!〉


 ・・・デン〇ロビ〇ム。ラン科の植物でギリシャ語が由来だったはず。インターネットで調べたことがある・・・って、そういえば検索した時にロボットの画像が真っ先にヒットしたな。

 それの事かな?

「・・・なるほど、あのロボットが使う武装なのか」

〈あれ!? るっちゃん知ってるん!?〉

「いや、まぁ・・・花の方をインターネットで調べた時にね。ロボットの画像がね」

〈・・・あーー、確かに出るわねー〉

 ちょっとがっかりしている様子だ・・・なんだか、申し訳ない気持ちになる。

〈じゃ、ちゃちゃっとクラスター爆弾で汚物を爆撃しちゃいますかねー〉

「うん。とりあえずよろしく」

 どことなくテンションの下がった様子ではあるが、技のイメージは固まっている様子だ。


〈八連邪眼!!―――〉

 しまった! 八連邪眼は止めないと!!

〈むあ!? エラーッ!?って、そうだったー! 今バリアとか張ってるんだった!!〉

 あ、よかった。

 邪眼の方で止めてくれたか。

〈むぅ・・・るっちゃん。八連はムリっぽい〉

「そのようだね・・・邪眼一つ分でいいから、まずは試しの一発でやってみて」

 俺が地球にてみたことのあるクラスター爆弾と、アライラがイメージしているクラスター爆弾では別物の可能性は十分にある。

 どれほどの威力になるのかも分からないため、こういう新しい技を使う場合は、まず邪眼一つで試してもらわないと・・・。

 隙あらば八連邪眼でヒャッハーしたがるから困る。


〈邪眼! 浄化ビーム式・クラスター・ボム!!〉


 彼女にしては、名前に奇抜さが足りない気がする。

 まぁ、テンションも下がっているようなので、技名も大人しい感じになっているのだろうけど。

 だが、彼女のテンションとは裏腹に・・・邪眼から射出された物は異彩を放っていた。

「・・・三角形のコンテナ?」

 巨大な三角形の筒に見えるビームが、アライラの邪眼から飛び出していくと・・・吐瀉物が撒き散らされている上空に差し掛かったところで三つの面から小さなビームの球が三方向へ射出されていく。

 左右と下方へ撒かれるように、ビームの球が地上へと落ちていくと・・・爆発が連続して起こった。

 まるでタコ焼きのような丸形状の爆発が、連続して地上で発生する。

「・・・俺のイメージした爆発と違うな」

〈え? そーなん?〉

 こう・・・コンテナが空中で分解するように開いて、中に詰め込まれた爆弾がばら撒かれる。ってイメージだったんだけど・・・。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ


 って感じの爆音が響き、爆発の光が連続して発生している事で明滅しているように見えだした。

 その上、吐瀉物を浄化しつつ地表を抉っているように見えることから、相当にヤバい攻撃なのは理解した。

 やっぱり、試しで一発にしておいて正解だった・・・けど、一発だけで被害が尋常じゃない。

 コレを八連で放とうとしていたってことは・・・ギガトレンク戦の二の舞になっていた可能性が大いにある。

 ・・・危なかった。


〈あるぇ?〉


 ・・・ホッと一息吐くのも束の間のこと。

 アライラがとっても不穏な声を漏らしている。

「どうか・・・したの?」

〈うーん・・うん。なんか爆発の継続時間がさ? 長いなーって〉

 ・・・。

 ・・・・・・確かに。

 いかに小型の爆弾を大量に放出していたとしても、爆発は一回で消えるはずだ。連続で巻かれたとはいえ、すでに小型のビーム爆弾は撒き終わっている。

 それら全てが爆発もし終えているはずなのに、未だに『ドドドドドドドドッ』と爆発が続いている。

 アライラが首を傾げる・・・心象的に・・・首を傾げているだろう状況が発生しているということは、今、継続して爆発しているのは想定していないこと。

 つまり、ヤバい事が起きる。


 確信した直後に、今、いつまでも爆発し続けている爆発が、一斉に空中へ飛び上がった。


 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・あ、あまりにも突拍子もない様子に思考が停止してしまった!?

「アライラ! 後退しろ! 何かが起こるぞ!」

〈ほぁ!? ビックリした! バックしまーす! バックしまーす!〉

 空中へと飛び上がる爆発を見上げつつ、アライラがシャカシャカと後退することで距離を開けてくれるが、その爆発は一層の輝きを増していく。

 と、それらすべての爆発が一所に重なり合うように集結し、集束していく。


「・・・ふむ。アライラーの攻撃によって生じているエネルギーを得て、新たなモンスターが生まれようとしているわ」


 え・・・そういうことって起きるんですか?

「そういうことって、起きるんですか?」

「ダンジョン化してからは一度も無いけどね。バグ進化と【神殺しの獣】が出現したダンジョン化前は、私たちの攻防で生じたエネルギーを正体不明の何かしらが取り込んで、まったく新しいモンスターを生み出していたの」

 そんな話は聞いたこともないんですけど?

「まさか、ダンジョン化しても発生するとはね・・・外に出しておくわけには行かないから、この現象も壺に閉じ込めていたわけか」

 あー、発生することはないだろうって思っていたわけですね?

 つまり、これもバグの一種であると解釈していいわけですね・・・くっそ。

「気をつけなさい。この現象で発生したモンスターは、今の青龍の元になったヤツだからね」

 ・・・うん?

 今、この現象で発生したモンスターは、今の青龍って言った?

「あの・・・今の青龍というのは・・・この第一階層で都を守護している【神殺しの獣・青龍】ってことであっていますか?」

「そうよ。厳密には【神殺しの獣】にバグ進化する前のヤツだけどね」


 つまり、いきなり【神殺しの獣】が出てきたわけではないと・・・。


 そうして話をしていると、一つに束なった爆発が黒い塊に変じると、ブラックホールのような吸引現象を始める。

 周囲にあるモノを何もかも呑み込むように、吐瀉物や空気を取り込んでいく。

「マリーさん! アレもバグかなにかですか!?」

「そうよ! ああやってモンスターを生み出すために何かしらの足りないモノを取り込むために、ブラックホールのような現象を起こすわ!」

 つまり、さっきの爆発だけではモンスターを生み出す何かが足りていないという事か。

 そうなると、バグを消去する効果のある攻撃をすれば、あのブラックホールは消える可能性もあるだろうか?

 いや、こういう場合は下手な干渉が不正解である場合も多いはずだ。

「ちなみに、アレを攻撃したりするのは適切でしょうか?」

「・・・どうなのかしらね? あの時は、アレを消滅させるために善悪混合で合体攻撃を放ったからね」

 それはつまり・・・結果は今の『青龍』へと進化する元となったモンスターの誕生を促してしまった可能性が高いわけですか。

〈善悪の合体攻撃・・・光と闇が合わさって最強! いいね! 邪眼四つずつで光と闇の合体バスター・ビームとか撃ってみる?〉

「やめてくれ。その技は俺の臓腑を破壊するに違いない」

 想像しなくても、断言できる結果だけは容易に想像できてしまうのが恐ろしい。


 光と闇が合わさって最強か・・・最凶の間違いでは?


「ここは成り行きを見守ろう」

〈それはそれでヤバいのが出てくる気もするけど?〉

「そうは言っても、先達がちょっかい出してやらかしていると言っているのだから、俺たちは傍観した結果を見ておくのがいいんだよ」

 そうして、どっちがまだマシなのかをマリーさんに判断してもらう。

 正解か不正解・・・どちらか選択肢を確立させておくことは、今後の俺たちにとっても重要な情報になる。

 より良い答えを求めるために、情報を集める必要はあるのだから。


「出るわ」


 マリーさんの一言で、俺とアライラはブラックホールが消える瞬間を見た。

 そうして、残ったモノは・・・白い筒・・・のような・・・うーん?

〈なんか、生物っぽくはないよね?〉

「ああ、無機物・・・と言う感じでもないけど・・・筒?」

 円筒形の何かが宙に浮いており、生物的な気配を一切感じ取れないことからも、モンスターではない。と思えるわけだが・・・。

 とりあえず、モンスターではない。と仮定して、出現した物体の正体を知るべく行動した方がいいか。

「アライラ。アレを調べるから、慎重に接近を試みて欲しい」

〈おっけー。そろーり・・・と、そーろり・・・どっちがいい?〉

 どう違うんだ?

 首を傾げた直後、円筒形の物体が動いた。

〈ぅおっふ! くくくくく、くるかーッ!!〉

 後ろへ飛び退きつつ、前足を持ち上げて蜘蛛の威嚇行動を示すアライラ。

 一方で、動き出した円筒形の物体は・・・その表面がスラーッと剥がれだす。

「アレって・・・」

 円筒形の物体表面が薄地の紙みたいに剥がれだすと、まるでリボンのようにシュルルルルルルと剥がれ落ちつつ空に広がっていく。

 そうして、最後に残ったのは・・・。


〈トイレットペーパー?〉


 そう。

 どう見直しても、それは『トイレットペーパー』だった。

 最後に残ったモノはトイレットペーパーの芯で、白い薄地の紙が全て引き出されたように空中に波打つように広がっている。

 これだけ見ると、長い身体を持つ蛇・・・というか、龍のような印象を受けるが・・・。

「なんでトイレットペーパーなんだろうか?」

〈はー・・・でも、弱そうじゃね?〉

 確かに、モンスターとしては雑魚っぽく見える。見えるんだけども・・・。

「今日までに、雑魚っぽいモンスターと戦ってフルボッコにされたのは?」

〈何を隠そうこの私ッ!!・・・むーん〉

 あ、ちょっと落ち込んだ。

「マリーさん、アレをどう見ますか!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・意味わかんないわ。トイレットペーパー以外に答えようがない」

 マリーさんが頭痛に苛まれているような顔になっている・・・。

 意味どころか、理解不能という感じか。

 でも、それは仕方ない事のように思える。

 白く薄く長い身体?だけを見れば、ふんどしなどの布か何かとも思えるだろう・・・けれど、その先端に付いている物は、紛うことなきトイレットペーパーの芯だ。

 故に、俺の脳はアレを『トイレットペーパー』であると判断しているし、断定している。

 もはや、モンスターであるかどうかは、別物だ。

「そうだ! 鑑定を! アライラ! 鑑定を!」

〈そうだ! 鑑定! おねがい鑑定! めっちゃおねがーい!!〉


『トイレットペーパー・・・の見た目をしたモンスター? 新種の誕生である? おめでとう?』


 鑑定がバグっているよね!?

〈鑑定までバグっちゃった感じやん!?〉

 そうだね。

 後でマリーさんにメンテナンスしてもらおう。たぶん、さほど意味もないだろうけど。

「マリーさん。援護をお願いできますか!?」

「・・・いいわ。任せない」

「お願いします。・・・やるぞ! アライラッ!!」

〈おーっし!! 一撃必殺で終わらせてやんよ!!〉

 一撃必殺て・・・いや、敵の情報がまるでないのだから、一撃必殺の方がリスク回避としては適切なのかもしれない。

「よし。一点集束の八連邪眼で、バスター・ビーム改だ」

〈え!? いいの!?〉

 驚くの!?

「こんなトイレットペーパーみたいなモンスターが出てきたんだ。中途半端な小手調べをするよりも、一撃必殺で一気に片付けた方がいいはずだ」

〈でも、バリアが無いと身体が溶けるんじゃね?〉

「そうでもない。ほら、空を見上げてごらん」

 先ほどまで、キュアーンの吐瀉物でエリア全体が溶解していたが、空には雲が出現して少しずつ厚みを増して言っている。

 草木も溶けて無くなっていたが、すでに芽が出始めているところが見えている。

 それらは、トイレットペーパーが出現した直後から、環境の回復が始まっているようだ。

〈雲が出てる・・・あ、バリアが溶けてない!!〉

「そうだ。あのトイレットペーパーが出現してから、展開していたバリアは溶けていないんだ」

〈なるほど! つまり、バリアはいらないってわけね!〉

 服を脱ぎ捨てるかのように、アライラはバリアを解除して戦闘モードに移行する。

 その八つある邪眼が一斉に光りを放ち、トイレットペーパー・・・型モンスターに向けて技を叫ぶ。

〈魔力充填! 120%!!〉

 相変わらず無茶苦茶だけど、彼女に突き立てた錫杖を通じて俺の魔力がごっそりと持っていかれる。お腹が痛い。むぅ・・・。

 そうして、八つの邪眼からエネルギーが飛び出して、遠方にて一つに束なっていく。

〈一点集束!! 八連邪眼!! バスタァアァアッ・・・びぃぃいいっむ!! あ、改ッ!!!〉

 一撃必殺を狙った渾身の必殺技を叫ぶアライラ。

 付け足したように『改』を叫んでいたが、どうやら頭から忘れていたようだ。そのせいか、バスター・ビームは最初こそ『改』では無かったが、発射直後に『改』に修正される。

 俺にも余計な負荷が掛かったようで、内臓が熱くなった。


 と、この一撃に対してトイレットペーパー型モンスターが取った行動はヒラヒラと空中で揺れる薄い紙のような体をトイレットペーパーの芯で巻き取る事だった。

 芯が回転を始めると、薄い紙のような体が巻き取られて新品のようなトイレットペーパーに戻る。

 その直後、芯から火が噴射されると一気に上空へと飛び上がって見せた。

〈え!?〉

 ロケットブースターのような火力で強引に上昇して見せたトイレットペーパーは・・・いや、なんか、名前が長いなぁ・・・トイレットペーパー型モンスターは、そうやってバスター・ビームを回避してみせる。

「アライラ! バスター・ビームの軌道を変更できたりしないか!?」

〈え? どうやんの!?〉

「ほら! こう、腕を振ったら敵目掛けて曲がったりする感じで!」

〈・・・まがーれ!!〉

 前足を振り上げながら、アライラは叫ぶ。

 しかし、バスター・ビームはまっすぐに飛んで行って・・・爆発四散した。

〈だめっぽい〉

「そうみたいだね」

 それにしても、あんな推進力を持っているのであれば、大技はおそらく無駄になる。

 こちらが大技を放った後で、回避のためにロケットブースターのごとき推進力を噴射して、強引な上昇を行ったことを考えれば、パワー勝負に持ち込むのは不利だ。

「手裏剣機動だ。あの回避力に大技は無駄になる」

〈おっけーッ! 邪眼殺法! 手裏剣機動・ビーム刃!!〉

 空へと飛び上がって、その身体を手裏剣のごとく回転させながら一気に上昇していく。

 狙うはトイレットペーパー型モンスター。

 俺は彼女から振り落とされないように錫杖を突き立ててから閻魔錠で身体を縛る。あとはもう踏ん張る。

 歯を食いしばっている中で、トイレットペーパー型モンスターは再びその身体を解いて芯から目いっぱい引き出した紙のように、身体を空に投げ出していく。

 と、再び回転を始めるトイレットペーパー型モンスターだが、先ほどとは違って身体を巻き取る回転ではない。

 まるで渦を巻くように白い紙ごと回転を始めて・・・うずまき模様の風車みたいな回転を始める。

 そうして、こちらの手裏剣機動と同様に空飛ぶ円盤・・・つまりはUFOみたいな動作でアライラ目掛けて突撃してきた。

〈やろう! 上等だぜッ!!〉

 手裏剣とうずまき模様の風車。という構図の激突が生じると・・・こちらのビーム刃がごっそりと削り取られている事に気づいた。

「まずい! ビームが紙のような体とぶつかって削り取られている!! 離脱しろ! 脚までやられるぞ!!」

〈うひッ!!?〉

 俺の言葉を聞いて、すぐさまヤツから離れるアライラは、そして手裏剣機動を止めて地上へと着地する。痛がらない様子から、脚は無事のようだ。

〈なんなんよ!? アイツぅ・・・〉

「トイレットペーパーみたいな見た目だけど、やっぱり雑魚じゃないな・・・」

 本当に、見た目通りの雑魚なら良かったのにな・・・こうも強いと俺の脳がバグってしまいそうだ。

 だが、ここまでで二つ分かった。

 一つ目は、トイレットペーパーの芯みたいな部分は推進力を生み出せる何かしらの器官?機関?・・・日本語って難しいな・・・そもそも、アレは生物なのか機械なのか・・・分かんないしな。

 二つ目は、紙のように薄地となっている身体は、アライラのビームを削り取れる特殊な素材であるということだ。

 まだ、どういう仕組みなのかは不明だけど、おろし金のようなモノなのか、サメ肌のようなものなのか、アライラの身体をも削れるのであれば接近戦は危険だろう。

 ・・・となると、どうやって倒そうかな?

「アライラ。ドリリング・ドライバーを・・・ヤツがどういう対応をするか見たい」

〈おっけーッ! ドリリングぅう!! どぅうらいぶぁぁぁああああああ!!〉

 気合を入れたいのは分かるけど・・・まぁ、いいや。

 気合を込めて、渾身の一撃となるドリリング・ドライバーを打ち出す。


 これに対するヤツの対応は、まるで新体操を見ているような行動に出た。

 うずまき模様の風車みたいに回転していたヤツは、その薄地の身体を渦を描くように回転させながら前に突き出して来たのだ。

 リボン競技だったろうか?

 詳しくないのだけど、棒を回転させるように振るう事で、リボンに渦を描かせる技があったと思う。それと同様に芯を回転させながら、身体を突き出して来た。

 迫るドリリング・ドライバーの回転方向と速度を合わせたリボンは、そして一気に引き絞られてドリリング・ドライバーをラッピングする。

 これと同時に、さらなる力を加えて圧を掛け、ドリリング・ドライバーを圧壊することで無力化した。

「・・・ヤバいな。アイツ、相当頭がいいぞ」

〈マジで!?〉

 マジのマジで頭がいい。

 どこに脳みそがあるのかも分からないけど、頭がよくなければドリリング・ドライバーをあのような方法で潰すことはできないだろう。

〈うっわ! アイツがこっち来るよ!?〉

「攻撃の回避は任せる! ちょっとだけ、アイツを倒す方法を考えたい!」

〈ひぃぃぃぃ!〉

 悲鳴を上げているアライラであるが、不思議なほど余裕のある動作でヤツの攻撃を回避している。

 その紙のように薄い身体を鞭のように振り回す攻撃は、縄跳びでもするような感覚で跳んで、伏せて、脚で逃げて見せる。

 次に、身体を槍のように突き立てて来ると、ステップを踏むように軽やかな動作で回避した。

 さらに、身体を束ねて攻撃範囲を拡大した圧し潰す攻撃は、邪眼ジェットで逃げ切って見せる。

 ・・・もしかしなくても、俺の指示が無くても問題ないのでは?

〈まだなん!? いくら私でも回避とかしてらんないよ!〉

「・・・もしかして、アイツの動きが目で追えるの?」

〈え? まー、見えてるけど?〉

 ・・・そうか。

 見えているのか・・・なら、カウンターを合わせるのもできそうか?

「アライラ。奴を倒す策を思いついた・・・よろこべ、新技になるぞ!」

〈え!? る、るっちゃんの新技・・・だいじょうぶなん?〉

 なんで不安気なんだ?

「大丈夫だ! 手裏剣機動の新技だ。ビーム刃をドリリング・ドライバーに変更する!」

〈おー・・・それ、新技って言うよりは、派生技か発展技じゃね?〉

「細かい事は気にするな。って君がよく言っているだろ?」

〈・・・それもそっか! よっし! やったるでッ!!〉

 俺が真っ先にやったことは、錫杖を四本追加することだ。

 地獄変の巻物を召喚し、コレを『地獄道・地蔵菩薩錫杖術』で錫杖に変えること。それを四回・・・効率悪いな。一気にできないものか・・・。

 そして、それぞれの錫杖に『地獄能・巻蛇槍貫撃』を発動させて、円錐形に鎖を巻いた槍を用意する。

 四つの槍の柄頭となった錫杖の輪。

 これに縛鎖閻魔錠を取り付けて、アライラに合図を送る。

「槍の準備はできた! 手裏剣機動・ドリル刃を発動してくれ!」

〈え!? 手裏剣機動・ドリル刃!!? だっさ! るっちゃんそれダサいって!!〉

「言っている場合か!? あとで君のひらめきで直していいから! 今は技を!!」

 トイレットペーパー型モンスターの猛攻をヒョイヒョイ回避している中での文句。ずいぶんと余裕があるようだけど・・・まさか、すでに名前を考えてあるのか?

 前も『回転すればほにゃらら』的な名前だったのが、数秒?後ぐらいには『手裏剣機動・ビーム刃』とかいう名前に変更していたので、その辺の閃きは感心するが・・・。


〈いっくぜ! 邪眼殺法!! SHURIKENマニューバッ!! ドゥリリングッドゥラァイブッ!!〉


 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・ええい!!

 言いたい事を呑み込んで、俺は四つの槍を四方へ投げる。

 投げた直後に、取り付けて置いた鎖に魔力を追加で流し込み、そのサイズをビーム刃の代わりが務まるように巨大化させた。

 これらのコントロールが邪眼に移行すると、すべてがドリリング・ドライバーへと変形してビーム刃を発生させていた四方の脚に装着された。

〈くらいやがれぇえぇい!!!〉

 渾身の一喝と共に、ヤツへと再度突撃するアライラであるが・・・。

 ヤツは、激突を回避するために身体を巻き取って新品みたいなトイレットペーパー状態になると、火を噴いて軌道を逸らした。

 ビーム刃の時はぶつかってきたヤツが、ドリルに変わった途端に激突を避けたわけだ。

「追えるか!?」

〈ええい!! 空中サンダー・ドリフトでゲス!!〉

 言うや否や、急な横滑りからの斜め移動による加速前進でヤツを追うアライラ。無駄な動作をしているようにも感じるが、まるでピンポン玉のように・・・うん?

 え? ドリフト?

 ジグザグに動いているだけなのに? ドリフト?

 しかし、意外にも速度が上昇している上にジグザグ飛行であるためか、ヤツも逃げる動作には戸惑いが生じているようだ。

 地上のような平面的なジグザグではなく、空中という立体でのジグザグは一定の方向ではない。

 特にアライラは、手裏剣機動と言いながらも縦に跳ねたりするような動作を加えているため、ジグザグの予測がとても困難だ。

 なので、俺はさっきから身体が縦横斜めに振り回されている。錫杖を彼女に突き立てて鎖で身体を結んでおいて良かったと思う。無駄に頑丈な身体なので、千切れたりしないから・・・痛いけど。

「アライラ! 奴は必ずこちらの隙に自身を飛び込ませてくるはずだ! 邪眼カメラ・アイを腹・・・いや、脚の付け根付近に設置するんだ!」

〈マジか!? カメラ・アイ!〉

 彼女の邪眼による技として作られたカメラ・アイが、身体を移動して足の付け根部分へと再設置される。

 その直後だった。

 トイレットペーパー型モンスターは、こちらの動作に隙が生じたモノと判断したようで・・・。

 アライラの懐・・・脚の付け根側へとこれまでにない火力を噴射して飛び込んできた。

〈お!〉

「今だ!! 叩き潰せ!!」

 カメラ・アイが捉えた映像は、空中に表示されるモニターによって俺にも確認できるようになっている。

 必ず懐に飛び込んでくると踏んでいた。

 何せ、彼女の背には俺・・・というよりも、マリーさんがいるために絶対避けるはずだからだ。この階層にいるモンスターはワンパンでどうとでもできるという人がいるのだから、飛び込んでくるとは思えない。

 ならば・・・というわけだが・・・まさか、このタイミングで飛び込んでくるとはね。

 

 四方へと向いていたそれぞれの脚を折りたたむようして、目の前に出現した虫を叩き潰すかのように、四つのドリリング・ドライバーがトイレット・ペーパー型モンスターへと叩きこまれた。

 飛び込んだ直後であるためか、回避行動に移り損ねてしまったヤツは、それでも身体をわずかに解いてうずまき模様の風車みたいに回転することで四方から叩き合わさるドリリング・ドライバーの攻撃に抵抗して見せる。

 本当に頭がいい。

 あの紙みたいに薄い身体に、ビーム的なエネルギーを纏わせてまでいる・・・。

 四つのドリリング・ドライバーと風車の回転が互いを削り合って、閃光のような火花を発生させていた。

「逃がすかッ!!」

 この技において、ドリリング・ドライバーにはまだ錫杖がくっついている。

 彼女のドリリング・ドライバーに干渉しないよう注意を払いつつ、錫杖にさらなる魔力を流して、『地獄門・縛鎖閻魔錠』を発動した。

 コレを四方から伸ばして、トイレットペーパー型モンスターに巻き付ける。

 とはいえ、ヤツはビーム的なエネルギーを身体に纏わせているので、俺の方でも業火で鎖をコーティングすることで対抗した。

 しかし、鎖を巻きつけることには成功しても、このまま削り合いでは埒が明かない。

〈あちちちちち! どりりりんぐどらいばいがあつつつつつつつちちちちちちちッ!!〉

 え? あ、ドリリング・ドライバーが熱を持ってしまって熱いってことか?

 どうする? 彼女の耐久ではあまり長くはもたないだろう。熱で脚がもげてしまうかもしれない。

 

 どうする? どうする? どうする? ど・・・ドリリング・ドライバー。


「アライラ! 射出しろ!! ロケットパンチ方式だ!!」

〈おぉおッ!! ならば!! 邪眼奥義!!!〉

 ・・・え?

〈どぉーりりんぐぅう!! バスターッ!! ブレイカァァァァアアアアッシュゥゥゥウウウウトッ!!〉

 ぐは・・・。

 ごほ・・・げっほ・・・ごぇ・・・ごぉほ・・・ご・・・ぐぇふ・・・は・・・ほ・・・。

 ま、まずい・・・身体のいたる所から血が噴き出してる・・・ちょ、いったい何をイメージして?


 一方で、モニターに表示されている彼女の視界では、四つのドリリング・ドライバーが確かに射出されていたのだが・・・。

 見ると、射出されるドリリング・ドライバーにはバスター・ビームが加わっており、撃ち出すための推進力として四発分が追加されたようだ。

 さらに、手裏剣機動による回転が加わっているために、四つのバスター・ビームが螺旋状に絡まりながら加速していく。

 四つのドリリング・ドライバーの回転と、まとめて回転する力で地上へと撃ちだされた奥義は、そして地中へとヤツを沈めていくと・・・。

〈スタッ!〉

 キリッとした声音で着地する彼女は、奥義の落着地点を確認してから背を向けるように回転する。

 そして、決めポーズのように仁王立ちして見せた直後に、大爆発が背後から発生した。なるほど、だから奥義なのか・・・。

 と、感心していたのだが、爆発で飛んできた塊が彼女を襲ったために押し出されて吹っ飛ばされることになる。


〈ぎゃああああああああああああッ!!なんでこうなるぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅうううううううん〉


 調子に乗ったからだな・・・。

 などと、爆風にキリモミされながら地上を転がって、脚が折れたり、腰が捻じれてしまったアライラが泣き喚いているのを見ながら・・・思った。


 ・・・はぁ、マジで強敵だったな。トイレットペーパー・・・型モンスター。





 谷を進む。

 次第に天候は雪となり、辺り一帯が雪景色となっていく中を谷に沿って進んでいく。

 そうして、最北端となる鉱山エリアまでやって来た。

 やはりキュアーンの吐瀉物で大惨事となっているエリアであるため、再びバリアを展開して突入することになる。

 しかし、キュアーンの吐瀉物は想定よりも少なく、どうやらトイレットペーパー型モンスターと戦ったエリアが一番被害が大きかったようだ。

 溶解力もさほど高くないため、バリアの入れ替えにも余裕ができる。

「キュアーンは、鉱山に穴を掘って寝床にしているから、山を登っても意味はない」

 という教え通りに、谷に沿って進んでいくと大穴が空いていた。

 アライラでも余裕で入れるサイズの大穴へと進入し、中を確認して行く。と、その最奥からうめき声のような鳴き声が聞こえて来た。

〈お腹が痛くて辛いときの声に似ている・・・〉

 彼女はそういう声を出すという事なのか? それとも雰囲気が似ているということなのか?

 ところどころに残っている吐瀉物を浄化ビームで処理しつつ、奥へ、奥へと進んでいく俺たち。


「ぎゅおおおおおあああああああおおおおおおおお」


 苦しそうな声がより一層の圧を増していく。

 そんな中で最奥に到達した俺たちが見たモノとは・・・。

〈わー。アレってクラゲの干物じゃね?〉

「・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだね」

 からっからに干上がている乾物と化したキュアーンが、吐瀉物に塗れた姿で寝転がって・・・いや、沈んでいる。

 一応、マリーさんに確認しようと視線を移したが・・・俺は静かにキュアーンの乾物へと視線を戻した。

 ・・・マリーさんは目を点にした上に口を開いた様子で『ぽかーん』とした感じで固まっていた。

 たぶん、マリーさんはコイツを倒すまで相当な時間を掛けたんだろう。かなりの強敵だったのは間違いなく・・・それが今や乾物と化していることが受け入れがたいのかもしれない。

「マリーさん。この場合って、乾物と言うのが正しいですか? 干物と言うのが正しいですか?」

「好きな方でいいんじゃないかしら・・・」

 あ、どこか気落ちしている声音だ・・・やっぱりショックだったんだな。


「ぎゅお・・・お? ぎゅあーお・・・ぎゅあ、ぎゅぎゅ・・・ぎゅおぉ・・・」


 なんか、俺たちに気が付いたようで、触手の一本を持ち上げてこちらに向けると手招きするように動かしてくる。

 アレはつまりどういうことだろうか?

〈ちょうどいいところに来た。ちょっと俺を殺してくれ。回復できねぇ・・・頼む〉

「え!? アライラ!?? キュアーンの言っている事が分かるのか!?」

〈いんや、テキトーにアテレコしてみた〉

「二度とするな」

 モンスター同士で通じる何かがあるのかと思ってしまったじゃないか。

 ・・・ふぅ。

 とりあえず、トドメを刺すのが一番だろうけどね。

「アライラ。俺たちの後始末はこれでおしまいにしようか」

〈おっけー〉

 改めて、魔力をアライラへと流し込む。

「魔力充填!」


〈一点集束! 八連邪眼!! バスター・ビーム改!! フルパワーだッ!!!〉


 今現在の彼女が放てる最大の一撃。

 乾物というか、干物と言うのか・・・そんな一瞬で蒸発しそうな弱った状態であるにも関わらず、バスター・ビーム改フルパワーで消し飛ばすのに数十秒を要した。

 やはり、キュアーンは第一階層において格が違うモンスターであるようだ。

 こうなると、キュアーンレベルのモンスターを倒すためにはさらなる威力が必要になる。それこそ、バスター・ビーム改2などのバージョンアップは早急に必要だろう。

 ・・・そして俺が血を吐いて倒れるんだろうなぁ・・・いやだなぁ・・・はー。


 ため息を吐いている間に、キュアーンは跡形もなく消し飛んだ。

 そうして残ったモノは、鉱山を貫通して海が見えるようになった地下空間。冷たい潮風が吹き込んできて、俺は思わず震えてしまった。

 うん、寒い。



〈大勝利!って喜べないね・・・〉

「そうだね。一応、狙い通りに弱らせることはできたけど、厄介な副産物が多過ぎたからね」

 結局、環境異常の修復作業として、キュアーンの吐瀉物処理で最北端まで来てしまった。結果としては、西の村から北まで攻略できた・・・と解釈することもできる。

 ただ、なんかこう・・・攻略したという感動を得られないのが・・・まぁ、その・・・。


「この鉱山をまっすぐ南下した先に、北の町があるわ」


 新しい拠点となる先住民たちの残した町があるという。

 元々は鉱山から取れる鉱物をやり取りするための町で、鍛冶師や商人なども多くが住居を構えていたことで、大きくなったのだという。

 第一階層でも一番の賑わいを見せた町だそうだ。

 ただ、雪に覆われる土地でもあるため、異世界モンスターが縄張り争いをするようになってからは人口が激減したことで、倒れてしまった家屋も多いのだとか。

 なので、町の規模にしては家屋の数は少ないらしい。

 多くが雪で潰れているそうだ。

 とはいえ、近くには湖もあるそうで、淡水魚を用いた魚料理も美味しい町だったという。

〈いえーいッ! あったらしいまちだーッ♪〉

「そうか、なんだかんだで次の拠点に到着できたのか・・・」

 北の町を目指していたわけではないけれど、こうして次へと進めたことは嬉しい限りだ。何気に、起きたまま到達できたのは初めてな気がするな。

 これまでを思い出すと・・・目が覚めたら知っているような知らない天井ばかりだったし。

 

 うん! すごい楽しみッ!!




次回は【壺外編】か、北の町と周辺調査。を予定しております。



最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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