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35 埴輪勇者のハニワンダー

こんにちは。こんばんは。

このお話で、埴輪系モンスターは一旦終了になる予定です。

未だに第一階層の攻略が進んでいない事に、焦っている今日この頃・・・。

どうしたらいいのか? それが分からない・・・。


最後まで、お楽しみいただけたら、幸いです。

〈ドリリング・ドライバーッ!! ショットガン、スプラッシュ!!〉

 既視感だけはどうしようもない今日この頃となったが、再び『北の谷』へとやって来た俺たちは、埴輪騎馬兵との一騎打ちを秒で終わらせていた。

 その後に来る団体様も、ドリリング・ドライバー・ショットガン・スプラッシュ・・・とかいうドリリング・ドライバーを撃ちだして散弾銃のように広範囲へと拡散させつつ、散弾一発がさらに破裂してドリルを周囲に撒き散らすという凶悪な技で一掃した。

「では、大道人たち! 埴輪兵の回収をお願いします!」

「「「「かしこまりました」」」」

 4人の大道人に、アライラが一掃した埴輪兵の残骸を回収してもらう。

 その間に、アライラの邪眼による記憶再生でスロー再生してもらい、正直、見ていても何が起きているのか分からなかったので解説もしてもらう。

 

 そうして、その発想はどこから来るんだろう?などと感心したが、埴輪の残骸を回収している大道人たちに視線を向けて思考を切り替える。


 本当は6人の大道人を召喚したつもりだったのだが、どういうわけか4人しか召喚できなかった。

 前にここへ来たとき、2人ほど召喚してはいるが・・・もしかして、まだ活動しているのだろうか? どうにも分からないでいる。

 まぁ、分からないのであれば、とりあえず4人に頑張ってもらうしかないだろう。

 残り2人に関しては探す方法を考えればいい。錫杖で大道人の位置を把握することができたりしないか?と試しているが、どうにも反応してくれない。

〈ねぇ? 埴輪の残骸とか回収してどうすんの?〉

 アライラの問いは至極当然のものだろう。

 この土地を縄張りとして活動している埴輪兵器は、その材質が鉄の一種であるものの、異世界製という地球ではまずお目に掛かれない珍品で仕上がっている。

 ハニョルトン隕鉄という鉄材は、粘土のように柔らかいという特性を持っていた。

 そこに、異世界ラナトコノで開発された特殊ナノマシンを塗布することで、硬度調整が可能となり、兵器開発に用いられるようになったらしい。

 まぁ、そんなスゴイ素材で作った兵器が、なんで埴輪なのかは意味不明だけども。


 今回、俺が埴輪の残骸を回収する理由は、このハニョルトン隕鉄と特殊ナノマシンを利用した簡易地蔵を制作できないか?と思っての事だ。

「この残骸を利用して、地蔵を量産したいんだよ」

〈お地蔵さんを?〉

 正直、俺が召喚できる地蔵菩薩大道人は6人が最大だ。

 まだ試したわけではないが、7人目の召喚をしようとすると地獄変が反応してくれないために、無理なのだと理解はできている。

 色々と確かめないといけない事は多いけれど、そう言う事であれば地蔵に用いる材質を変更したりすれば増産は可能なのでは?と思い、残骸の回収を行っているわけだ。

「ただまぁ・・・大道人の召喚が6人までで、違う地蔵なら呼べる感じなんだよな」

〈そうなん?〉

「ああ、さっき大道人を召喚した時も、四人だけしか呼べなかったけれど・・・道標人を呼ぼうか?って考えたら地獄変が反応したんだよね」

〈呼べばいいじゃん?〉

「・・・いや、今はまだ呼ぶ必要性は無いと思うから、やめておいた」

〈ルッタより強いもんね?〉

「そうだな。いろいろと強いからね・・・気が滅入るからね・・・」

 ・・・思えば、道標人はなんであんなに強いんだ?

 大道人はさほどでもないし・・・アレ? 道標人は俺のことを『主殿』って言っていたけれど、大道人は『主様』って呼んでいるな・・・なんの違いがあるんだろうか?

「話を戻すけれど、埴輪の残骸で地蔵を増産できれば、アライラの料理を作る手を増やせると考えているんだ」

〈・・・ん? ルッタが作るんじゃないの?〉

「今だって、丸焼きにするために肉を回転させているのは大道人だろ」

〈そういえばそうだ〉

「この谷で、鉄材を手に入れることができたとして、予定通りに調理器具が完成したとして、それらを扱うのは俺じゃなくて地蔵たちになるから、何とかしてそのための人員を確保しておきたいんだ」

〈大道人がいるのに?〉

「大道人は6人までしか召喚できないから、手が足りない時の補助としてもっと沢山の人手をあらかじめ用意しておきたいんだって話しなんだよ」

〈あー、そういう話かー! ふんふん! なるほどねー〉

 どこから話がスルーされていたんだ?

 会話が成立していたと思ったら、思いっきりスルーされていたとか、なんか気落ちするわ。

「主様。埴輪の残骸を回収し終えました」

「ありがとうございます」

 大道人より作業が終わった報告を受け、俺は礼を述べる。

 回収作業が終わったのであれば、今度こそ『谷』を目指すのみだ。

 いや、先日ようやく到着したと思っていたら、キュアーンとかいうモンスターと遭遇して逃げ帰ることになったから、谷には事実上到達しているわけだな。

 とはいえ、まだ谷底へは降りていないから、今日こそは鉄材の採取を成功させて、アライラ用料理の調理器具を作りたいと思っている。

「よし、谷へ移動再開だ!」

〈むーん・・・埴輪の残骸で作る地蔵・・・つまりは・・・〉

 なにか、考え事をしているようだな・・・。

「おーい、アライラ?」

〈お!? 出発進行! 急がば回れ!〉

 それはつまり遠回りするってこと!? 危険な近道とか無いのに!?





 はるばる来たぜ『北の谷』・・・と、軽快な感じで到達できたのは僥倖だった。

 ここまでに遭遇した埴輪兵は僅かで、先日のキュアーンによる強襲からまだリポップできていないようだった。

 一日あれば復活しているのかと思っていたが、なにか法則のようなモノがあるんだろうか?

〈おや~? 円筒埴輪はまだ倒壊したまんまだねー〉

「ああ、これだけ巨大な構造物だと、リポップするのに時間が掛かるという事なのかもな」

 とんでもない強襲を受けていたわけだし、しばらく休暇をいただきます。と休暇申請を出していても不思議ではない。

 まぁ、このダンジョンがそういう所なのかは不明だけど。

「マリーさん。モンスターのリポップには、なにか法則のようなモノがあるのでしょうか?」

「・・・まぁ、そうね。法則・・・というほどのモノでは無いけれど、リポップ時間にはいくつかのルールがあるのは確かね」

 なるほど、ルール的な設定があるのか。

「そのルールとは?」

「自分で調べなさい。それも修行の一環となるからね」

 ・・・言うと思った。

 前世の母が、まさにこんな感じ・・・である程度までは教えてくれるが、答えは自分で出せ。と言うのだ。

 夏休みの宿題でも朝顔観察日記とか、ペットボトルロケットの飛行実験とか、カブトムシの観察日記とか、インターネットで調べて書き写してしまおうとすると、必ず「自分でしっかりやりなさい」と止められていたからね。

 まぁ、朝顔は種から育てたし、ペットボトルロケットは叔母の方が本気になってしまって俺はオマケになっていたし、カブトムシの観察日記とかは「え? たかが虫がこんな値段なの?」と母が驚いていたし。

 だから、母が叔母にカブトムシを取って来いと言ってお小遣い?を渡していたなぁ・・・。


 ・・・今は余計な事を思い出している時でもないな。


「さて、リポップするルールについては後日改めるとして、とりあえずの脅威は無さそうだし、さっそくと谷底へ降りてみるとしようか」

〈おー! ついに鉄鉱石の採掘ですな! ピッケルをもてーい!〉

 そこはドリリング・ドライバーで良くないかな?

「周辺の安全確認を再度行って、谷底まで移動することにしよう」

 埴輪兵による奇襲を警戒し、大道人四人に周囲をしっかりと見てもらう。その間に、アライラは蜘蛛糸をしっかりと練り編んで、地面に取り付けた。

〈よ! ほ! よっし! これなら大丈夫!〉

「地面の強度も十分そうだ。自重で糸を取り付けた周辺が崩れたりする心配もなさそうだ」

 谷の底へ降りるために、アライラの八本脚で絶壁を掴みながらの歩行は当たり前のこととなるが、足を掛けた絶壁の一部が崩れて、アライラが谷底へと落下する可能性は否めない。

 飛んで降りれば早いとも思ったが、谷には妙な靄が掛かっており視界が悪くなっているために、飛んで降りるのは止めた。

 まずは慎重に降りて、安全の確保に努めるべきだ。

 という事で、飛ばずに降りてもらう・・・はずだった。


〈アライラーッ! いっきまーす!〉

「は?」


 ぴょーん。という擬音を脳内でイメージできる。

 そんな見事な跳び込みで、谷底目指してまっしぐら。ちょっと予想していなかった事態に、ひゅ~。っとか、ひゅわぁ~。ッとか、そんな風切り音だけが俺の耳に届いてくると・・・。

 ずずーん。などという豪快な着地で谷底に到達したのである。

〈はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! あ、足が痺れるぅう!!〉

 どうやら、谷底への着地に失敗してしまったようだ。

 いや、姿勢だけなら成功だろう。八本脚でしっかりと接地できたのだから・・・問題なのは、着地時の衝撃を受け流すタイミングだ。

 足が地に着いた瞬間に、ある程度の屈伸で衝撃を緩和するが、今回はそのタイミングがズレて衝撃が全身に伝わってしまったと思われる。

 足がブルブルと震え、そこから伝播するように身体も震え始めてしまった。

「・・・大丈夫?」

〈ふぐぐ! 大丈夫! でもちょっと休憩を――〉

 不意に、マリーさんがアライラから飛び降りて、すかさず抱えられていた俺は一緒に降りることとなった。

「マリーさん? どうかされたんですか?」

「いや、降ってくるからさ」

 なにが?っと思っていたら、アライラの落下防止で伸ばしてた蜘蛛糸が上から降って来て、彼女の頭にベシィっとぶつかった。

〈ぎゃふん!〉

 ・・・ずっと、出しっ放しにしていたのか。


 その後、アライラは自分の蜘蛛糸を相手にキレ散らかして、八つ当たりで引きちぎったのである。



 さて、気を取り直したアライラに、周囲を索敵してもらう。

「濃霧というには、あまりにも濃すぎるな・・・」

 肉眼で周囲を見渡してみるが、背後の絶壁以外は何も見えないという現状だ。

 周囲に何が居るのかも分からないため、まずは安全確認を含めて索敵を行ってもらっているわけだけど・・・。

〈お!? うーん?〉

 アライラの邪眼が「ビゴーン」などと音を鳴らしたので、何事かと思った。

〈あっちにお地蔵さん反応がある?〉

 ノッシノッシと方向転換して、谷の中央付近と思われる壁とは反対の方に顔を向けた。

「地蔵の?」

〈うーん・・・でもなんか妙な感じ?〉

 俺が召喚した大道人二人であるのかは不明だな。この手にある錫杖を翳しても、特に何も反応しないため、偽装工作の類を疑った。

 しかし、このダンジョンでそんな偽装工作が出来るモンスターなどいるのか?と疑問はある。

 それに、前にここへ訪れた時の大道人二人であるならば、回収して情報を得ておきたい。という思いもある。

「・・・罠の可能性が高いが、確認だけはしておきたいな」

〈おっけー! それじゃあ、ちょっと行ってみますかーッ!〉

 アライラも気にしていることから、ここで無視するように言っても気が散って落ち着かないだろう。なら、罠であっても確認するだけ行動した方がいい。

 足取りも軽く、一切の迷いも無く目的地へと移動を始めるアライラ。

 視界がまったく得られない中で、周囲には埴輪の残骸と思われるモノが増えていく。ここで何があったのか?

 先日のキュアーンによる強襲の名残か?

 はたまた、ここは埴輪の廃棄場なのか?

 そんな疑問を抱いたところで、俺の錫杖がなり始めた。

 俺が鳴らしているわけではない。錫杖がひとりでに音を鳴らし始めた。そして、錫杖の輪が一斉に前方にある巨大な錫杖を向く。

「・・・アレは、大道人用の錫杖だな」

 だいぶボロボロとなっているが、サイズからして間違いない。

 地面に突き刺さっているが、大道人の右手から二の腕半ばまでの右腕が錫杖を掴んだまま転がっている。

〈・・・まさか、地蔵殺人事件!?〉

「いや、一番最初に埴輪兵と戦った後の足止め目的で残した地蔵二人の内の一人の腕だと思う」

〈おー、そんなこともあったねー〉

 そう。

 破損状況から見て、数日は確実に経過した物だ。

「アライラ、錫杖にもう少し接近を。俺の錫杖と接触させて情報を回収したい」

〈おっけー!〉

 ノソノソと錫杖まで接近してくれるアライラであるが、それを許さない音楽が鳴り出した。


≪ずんずんずずんずんずずんずん♪ ハイッ!≫

 スピーカー音声によるBGM?

≪≪じゃじゃんじゃじゃじゃんじゃじゃんじゃじゃん♪ ハイッ≫≫

 音の発生源が増えた!?

≪≪≪だんだんだだんだだだんだんだん♪ ハイッ!≫≫≫

 まさか、囲まれているのか!? だとすれば、すぐにでも離脱しないと危険だ。

「アライラ! すぐに離脱を!」

〈いや! ちょっと待って!〉

 え? 待つのか?

≪≪≪≪ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!!!≫≫≫≫

 手拍子のようなハイッ!の応酬は、そしてパタッと止んだ。


 次の瞬間、周囲から埴輪の残骸が地中より飛び出して、空中にて集合すると粘土のようになって一つの玉となる。


≪権力者が呼ぶ、管理職が呼ぶ、俺を呼ぶッ!≫

≪資源を根こそぎ奪えと命令されるぅ!≫

≪年中無休過労重労環境改善見直し申請書類は人間用のみドチクショーッ!!!≫

≪宇宙統治を支える労働兵器! 我ら惑星侵攻埴輪奇行戦略師団! ただいま現場に到着だッ!!≫


 ・・・え? なに? なんなの?

 と、俺が困惑していると、粘土の玉は回転を始めて遠心力を利用した四つの触角を形成する。と、ピタッと回転を止めてそれらが左右の腕と左右の脚となって体が形作られる。

 最後に、人間を模した頭に埴輪の穴みたいな目と口が出現すると、凸っと鼻が出てきた。


≪誰が呼んだかスーパーヒーローッ!! 埴輪勇者のハニワンダーッ!! っぱダセェわこの名前ぇえ!! 博士のセンスはダサすぎぃい!!!!≫


 ・・・。

 ・・・なんなのコイツ?

「アライラ。鑑定を」

〈かんてーい〉



『ハニワンダー。異世界ラナトコノにて【コッチ・ノバナシィ博士】によって開発された史上初の人型ロボット兵器。ひょんなことから異世界ラナトコノに転移することとなった日本人男性。彼は地球をはるかに凌ぐ科学技術を有する異世界で知識を学び新たな概念を以て新兵器開発を次々に成功させていく。しかし、そんな彼には大きな不満があった。「人型ロボット兵器」が存在していないのだ。開発局の上層部に掛け合ってみると「お金の無駄」「合理性がない」「多用途戦闘機で十分」という返事に不満を抱いていた。というのも、陸海空宇宙の全環境で活用できる多用途戦闘機なる兵器の存在は、圧倒的利便性を示していた。対して、人型ロボット兵器はロマンである。諦められなかった彼は独力で人型ロボット兵器を開発するべく、研究を始めた。そんな中で見つけた【ハニョルトン隕鉄】との出会いは、彼の目的を達成する最高の素材だった。あらゆる分野の技術者たちに協力してもらい、研究に研究を重ねて完成した特殊ナノマシン『ノバナシウム・パウダー』を塗布することによって摩訶不思議な埴輪っぽい兵器が完成する。この驚きの結果から、ノバナシィ博士より「埴輪」と「驚き」を掛け合わせた『ハニワンダー』と名付けられる。ちなみに、なぜ埴輪みたいな姿になったのかは、ノバナシィ博士にも最後まで分からなかった』


 

≪は~にわんだぁあ~♪≫ ←オペラ歌手を意識している?美声。


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 なんだこの物語のあらすじみたいな鑑定結果・・・。え? なに? なんなの? この結果・・・。

〈マジかよ! 続きはどうなるんだ! 鑑定! 続きをプリーズ!〉

「いらん!!」

 確かに気になる導入ではあるけど、今はもう意味不明な情報は必要ない!

 分かったことは、目の前にいる埴輪が、埴輪兵器の第一号。すなわち埴輪初号機という・・・あー、もしかしてアライラ系の敵なのかなー。

≪ようこそだーッ! 害獣人種!≫

 ・・・害獣人種? そういえば、埴輪騎馬兵の鑑定をした時もそういう表記があったな。

≪俺の言葉は分かるまい! だが心せよ! 我ら宇宙統治評議会は、いつでも君たちの隷属を歓迎すると!≫

 ・・・あぁ、侵略者たる人類・・・原生害獣人種・・・そういう構図の世界なのか。

「質問だ! 宇宙統治評議会というのは―――」

≪いくぜぇえーッ! ハニワンダーァア!! ぱーぁあんちぃいい!!!≫

 俺の言葉を丸っと無視して殴りかかってきた。

 けれど、アライラがササッと回避して空振りに終わる。

「話を聞け! おまえの言語は日本語だろう!?」

≪ちぃ! こいつ、早いぞ!! 赤くないのに!!≫

 ・・・会話する気が無いのか!?

≪仕方ない! 蕨手刀を抜きます!!≫

 腰に挿した蕨手刀を引き抜いて、日本の剣道そのものの構えでこちらを睨んでくる。

≪もうやめましょう! こんなことをしていたって! 命が勿体ないだけですよ!!≫

 とか言いながら、物凄い殺気を放って斬りかかってくる。

 当然、アライラはササッと回避する。

≪おいこら! 避けるな!! 当たんないだろうが!!?≫


 もぉお!! なんなんだよコイツはッ!!!!!


 意味不明過ぎて、苛立ちに頭を抱え始めてしまった俺。

「落ち着きなさい」

 マリーさんの凛とした声に、少しだけ冷静さを取り戻す。

「異世界ラナトコノに日本語という言語はない・・・と思うわ。私も詳しくないけど、アレを持ち込んだヤツは日本の事を知らなかったしね」

「・・・どういうことですか?」


「まぁ、つまり・・・犬ならわんわん。猫ならにゃーん。そう言う感じで、あの埴輪勇者のハニワンダーは、ああいう鳴き声のモンスターだと解釈しなさい」


 ・・・俺が聞きたかった事とはズレてしまっているが、そうか、日本語を流暢に喋っているから意味不明過ぎて困惑したが、そういう鳴き声のモンスターなのだとすれば・・・。

≪命は、明日なんだって! 命は、未来なんだって! それを分かるんだよ!!≫

 ・・・何を言っているのか分かるからこそ、やっぱり意味不明過ぎて思考が混乱する。

 加えて、剣道の構えをしているのに、まるでチャンバラレベルの低レベルな剣筋だ。

 アライラも特にリアクションを見せる様子も無く、黙々と蕨手刀の一撃を丁寧に避けている。

≪くそ! まさかここまでの実力者とはな! 俺の剣を避けるとは、害獣人種も日進月歩ってわけか!≫

 ホント・・・なにを言っているんだコイツ・・・。

〈ルッタ。とりあえずドリリング・ドライバーでいいかな?〉

「そうだな。ビーム防御はあるだろうし、ドリリング・ドライバーでいいんじゃないかな?」

 この一撃で戦闘を終わらせる。

 もう、俺の頭にはそれ以外を考えないようにする。

 地獄能・巻蛇槍貫撃をこの手に、アライラが言うドリルを射出してやる。

〈いくぜぇーッ! ドリリング・ドライバーッ!!〉

 もはや自然なフォームで放てるようになっているこの技にハニワンダーは正面から挑んできた。

≪そんな石ころ一つ!≫

 蕨手刀を腰の鞘に納めて、何をするのかと思っていると・・・剣の間合いで蕨手刀を抜刀する。居合斬りだ。

 まさか、ドリリング・ドライバーを切断する事が可能なのか!?


≪ぅあああああああああああ!!!!!!≫

 

 俺の心配とは裏腹に、居合斬りを放ったハニワンダーはドリリング・ドライバーに刀を砕かれ、身体を砕かれ、ドリルの回転で全身を粉砕されていった。

 ・・・。

「なんだったんだ? アレ?」

〈むぅーん。これで終わりかーぁ・・・〉

 え? 何をがっかりしているんだ? むしろ、終わってよかったじゃん?


≪やるじゃないか! まさかここまでデキる奴だとは思っていなかったぜ!!≫


「なに!?」

〈あらー? 第二ラウンドですか!〉

 どことなく嬉しそうだな・・・。

 粉砕されたハニワンダーは、再び中空へと残骸が飛び上がって粘土質から玉となり、そして埴輪の身体を再構成して着地する。

≪こうなったら、埴輪合体をするしかないな!!≫

 埴輪合体?

≪よぉおし! トゥーム・ローバリーッ! 承認だ!≫ ←微妙に低音・・・。

≪了解! トゥーム・ロバリーッ! バン・リリース!≫ ←裏声?

≪よっしゃぁあ!! コフーン・マシーン!! トゥーム・ラゥバリィぃぃぃぃいいいいいッ!!!!≫

 え?

 なんだその一人芝居・・・。


 何が起きるというのか? 分からずに困惑していると、円筒埴輪の残骸から五つの埴輪が飛び出した。

≪犬形ハニワーッ! 馬形ハニワーッ! 猪形ハニワーッ! 牛形ハニワーッ! 鳥形ハニワーッ!≫

 犬、馬、猪、牛、鳥

 それら動物を象った埴輪である『形象埴輪』に分類される大型埴輪兵器がハニワンダーを取り囲むように旋回を始めた。

「マリーさん、アレは一体なんなのですか?」

「・・・私も初めて見るわ」

≪だーっだだっだっだだだだだだだーッ ハイ!!≫

〈おほー! 生合体シーンだ! いいぞーッ!〉

 なんかハニワンダーが自分で歌っているけれど、アライラが興奮しているので無視しておこう。こういう場合の彼女は、何を指示しても嫌がるだろうし・・・。

「初めて見るんですか?」

「いや、ハニワンダーは見回りの際に出てくるから知っていたんだけど、ワンパンチで木端微塵にしてきたから、あんな合体シーンは見たことないのよ」

「・・・そうですか」

≪だーっだっだだだんだだんだっだっだんだーッ ハイハイッ!!!≫

 盛り上がっているな・・・。

「なかなか凝っているわね。トゥームは日本語で『墓』を意味しているし、ローバリー、ロバリー、ラゥバリィは・・・まぁ、多分『強盗』という意味の英語発音でしょうね。つまり、『墓荒し』って言いたいんじゃない?」

 ・・・そうなんだ。

「そして、バン・リリースは・・・たぶん『禁止』の『解放』ってところでしょうから、解禁?って言いたいのかしらね? 英語のテストだったら0点だわ」

≪だーっだだだんだだだんっだだだんだだっだーッ ハイッ!!≫

「最後のコフーン・マシン・・・つまり、合体のために墓荒しをして、古墳の埴輪兵器を使用する。って意図があるのかしらね?」

「分かりません」

≪ハニッ! ワンッ! ダーッ!!≫

〈おー! アンコール! アンコール!〉


 どうやら合体が終わったようなので、改めてハニワンダーを見てみよう。

 先ほどまでのハニワンダーは、他の埴輪兵とさほど違いのない背格好をしていたわけだが、合体を終えたハニワンダーはその身長が二倍ぐらいアップしていた。

 右足に猪形埴輪を。左足に馬形埴輪を。それぞれ脚として変形し、ハニワンダーの股間と連結している。

 右腕に牛形埴輪を。左腕に犬型埴輪を。脚同様に腕へと変形させて連結しているようだ。

 そして、鳥形埴輪は胸部から背部を覆う甲冑のごとく連結したようだ。胸に鳥の顔を象った頭があり、背には鳥形埴輪の翼が展開されてロケット・ブースターのように大火力を噴射して滞空している。

 最後に頭だが・・・日本の鎧武者が被るような兜と、四本の角が額から生えた頭は安心の埴輪顔。

 ちょっと「ホッ」としてしまったことが、悔しいと感じた。


≪待たせたな! 埴輪大勇者のハニワンダーッ!っぱダセェわこの名前! 改名、希望だッ! 博士ッ!≫

 

 ・・・だいぶ見た目が変わったな。

「アライラ。念のため、鑑定をもう一度お願い」

〈お? ほーい。鑑定!〉



『ハニワンダー。異世界ラナトコノにて【コッチ・ノバナシィ博士】によって開発されたコフーン・マシンと合体することで超強化された埴輪勇者。円筒埴輪の投下に成功したことで、惑星への侵攻作戦が劇的に進む中、長きに渡って膠着状態となっていたギガトレンクの防衛線を突き崩すべく、埴輪騎馬兵団が派遣される。ハニワンダーを先頭に物量で敵の防衛線を圧迫していくも、ギガトレンクの集中砲火の脅威によって一進一退を余儀なくされてしまった。コレを打開するべく、ノバナシィ博士が開発予算をもぎ取って完成させた【コフーン・マシン】との超合体により、ハニワンダーは圧倒的な突破力で防衛線を瓦解させ、埴輪騎馬兵団の物量で一気に戦線を押し上げていく。これには上層部も「うっそー」と目を丸くするしかなく、本格的な埴輪兵器量産計画にGOサインが得られるきっかけとなった。その後、敵はハニワンダーに対抗するべくギガトレンクのアップデートを行い、集合合体して人型ロボット兵器になった『ギガトレングァー』に苦戦を強いられる。だが、これまでの戦いでギガトレンクの補充が十分でなかったことと、日本男児のロマンを理解し切れていない形だけの人型ロボットではハニワンダーを越えることが出来なかった。ノバナシィ博士の夢と浪漫と性癖と趣味の全てを注ぎ込んだ傑作器『ハニワンダー』は紙一重の勝利をつかみ取る。これにより、惑星侵攻がより加速度的に進み、原生害獣人種を次第に追い詰めて行くのだった』

 


〈ひゃああ!! 続きだコレぇエ!!〉

 ・・・今日の鑑定は、なんか気合い入り過ぎてないかな?

 いつもなら全く同じ文面になるよね? どうしたの? なんでこんなに熱が入ってんの?

「マリーさん。鑑定に何か細工でもしましたか?」

「バカ言うんじゃないの。浪漫というのは、多くの人間を熱狂させるパワーなのよ」

 ・・・何を言っているんだ? この人。

「ふふ。勇者か・・・懐かしいねぇ。孫と一緒に見た時は、それはもう合体シーンや合体終了時の名乗りで大はしゃぎしてねぇ・・・またカワイイんだよ。ふっふっふ。」

 あ、お祖母ちゃんモードになっていますね。

「敵との死闘には静かになって握り拳を作りながら見守っているし、負けそうになると応援をし始めるんだ。そうして逆転勝利で大喜び・・・ああ、カメラで何枚か撮影したっけねぇ・・・うんうん」

 ・・・つまり、このハニワンダーは地球の勇者・・・に分類される何かしらの作品を色濃く影響されているということなのか?

 まるで分からん。

 でも、俺の知っている勇者って、夏休みに再放送していた少年勇者の大冒険くらいだ。ただ、ハニワンダーのような意味不明な言葉で絶叫したりしてはいなかったよな?


≪さぁ! ここからが本番だ!≫

〈いいぜ! 勇気を以てかかって来いやッ!!〉

 アライラがいつになく昂っている・・・。

 ハニワンダーが牛の腕を翳すように天高くへと突き上げると、手首の袖となっている牛の頭が拳を呑み込むように変形して、拳を包み込む。

 すると、コレが回転を始めた。

≪ホーン! マグナム! フィストぉお!!!≫

 そうして、一度振り下ろしてから拳で殴りかかるように腕を振るって、こちらに向かって突き出された拳が手首から射出されて飛んで来る。

〈ならばこちらも! ドリリング・ドライバーッ!!〉

 言われてみれば、確かにドリリング・ドライバーによく似た攻撃だ。

 牛形埴輪の牛の角が回転する事でドリルの刃みたいになっているし、ロケット・パンチ系の攻撃なのは見たままなのだ。

 そうして、敵のホーン・・・ホーン・・・ホーンほにゃららパンチと、ドリリング・ドライバーが正面から激突する。

 耳に刺さるような不快音を発しながら、互いに一歩も引かない攻撃は・・・そして相殺という形で決着となる。

≪なにッ! 俺の拳と互角だとッ!?≫

〈んなッ! 私のと互角だって!?〉

 ・・・もしかして?

「アライラ。君って趣味がほぼ同じ兄弟か姉妹がいたりする?」

〈は? 私は一人っ子ですぅ!!〉

 そうか、俺の気のせいか・・・。

 趣味に共通するところがあると、人って他人でも似通るものなのかな?

 

 それはそれとして、ドリリング・ドライバーと相殺になったハニワンダーの腕は、超高速で再生が行われていた。

 特殊ナノマシンの特殊性が桁違いだと分かるな。

 まるで生物のように腕から生えてくるのは、ある意味で新種の生命体であると誤認できそうだ。

≪まだまだだ!! お次はコレだぜッ!!≫

 そう叫ぶと、今度は犬形埴輪の腕を天高くへと突き上げて、袖となっていた犬の頭が変形して拳を呑み込んだ。

 それをただこちらに向けて突き出すと、犬の口が180°に開いて中から大砲の砲身みたいな円筒物が飛び出してくる。

「・・・え? 拳はどこにいったんだ?」

 さっき、あの犬の頭が拳を包むように呑み込んでいたが、なんでその下から砲身が出てくるんだろう?

≪ブレス! クラッシュぅぅぅうううッ!!バスターぁぁぁあああッ!!≫

〈ならば! 二連邪眼ビーム改ッ!!〉

 先と同様に、相手を殴るような動作で大砲のこちらに向けて突き出してくると、砲口が爆発の光を放ちつつ、波打つようなエネルギーが表層に波紋を描きながら飛び出してくる。

 対して、アライラの二連邪眼ビーム改が真正面から衝突する。

 互いのエネルギーが干渉し合うことで、放電現象が発生すると谷底に満ちる濃霧が吹き飛ばされていく。

 そうして、二つのエネルギーが融解するように融け始めると、一つに融合して・・・。

「マズい! 後退だ! 飛び退け!!」

〈緊急離脱ジェット!!〉

 八つの邪眼で一気に後方へと退避するアライラ。

 その直後に生じる大爆発は、この谷を大きく揺るがすほどに震動を拡げ、絶壁を砕き、濃霧をかき消して、爆炎と爆煙を周囲に撒き散らして、爆音を反響させていく。

「ハニワンダーはどうなった!?」

〈うーん・・・ちょっと邪眼センサーでも分かんないかなー〉

 であれば、おそらくは無事だろう。

 次の手を考える必要がありそうだが・・・。


≪はぁぁぁぁぁああああああああ!! 俺はぁあ! 負けない!!≫


 爆炎と爆煙を吹き飛ばしながら、自らの全身よりエネルギーを放出して身を晒すハニワンダー。

 古墳マシンと合体して得た超合体形態は、すでにボロボロだ。

 満身創痍というのに過言は無いと思うが・・・。


≪ボア! ブレイクッ! ぶろぉぉおおうぅ!!!≫


 猪形埴輪が変形した脚を振りかぶって、鳥の翼より噴射されているロケット・ブースターの力任せな加速と共に、蹴りを放とうとしているようだ。

〈甘く見過ぎだぜぃ! 八連邪眼バリア!〉

 八つのバリアが重なって、ハニワンダーを阻むべく展開される。

 そこへ猪突猛進と言わんばかりに、止まる気配すらない突撃で蹴りを放ってくるハニワンダー。

〈ここだ! バリア・で・バリィング!!〉

 アライラが展開したバリアに、ハニワンダーの放った蹴りが命中するとき、バリアが三つほど砕けることと引き換えにでもしたように、ハニワンダーの脚を粉砕して吹き飛ばして見せた。

 ・・・今のは、カウンター技か?


≪ぐぁぁぁぁああああああっぐ≫


 谷の絶壁まで吹き飛んだハニワンダーは、砕け散った片足を確認するように見てから、片手で壁を掴みつつ立ち上がる。

 まさに、絶体絶命となったボロボロの主人公・・・みたいな雰囲気を出していた。

≪ま、まさか・・・ここまで強い兵器を開発してくるとはな・・・≫

 ・・・アライラは連中からしたら兵器扱いか。

 まぁ、ギガトレンクなどを思い返せば、納得のいく認識ではある。

≪だがなッ!! 俺は負けない! 負けるわけには行かない! 宇宙の統治を護るため、宇宙の平和を繋ぐため、悪と正義を貫く宇宙統治の救世主!≫

 拳を握り、こちらに向けて突き上げながら叫んでいる。

≪埴輪大勇者のハニワンダーッ!は、何度だって立ち上がる! って博士が設定したから立ち上がるッ!!≫

 ・・・わぁー。台無しだー。

≪本部! こうなれば最終兵器、エンシェント・トゥームの使用許可を!!≫

≪うむッ! エンシェント・トゥーム! ゼンポウコウエンフンッ!! 使用! 承認!!≫ ←低音。

≪了解! ゼンポウコウエンフン!! グレイブ・アクティベイション!!≫ ←裏声。


≪よっしゃぁぁぁあああ!!≫


 今度は何をするつもりなんだろう?

 俺がうんざりしていると、地中から唐突に蕨が生えてきた。蕨手刀のモデルになっていると思われる蕨の姿をした埴輪が、ハニワンダーの足元から突如生えたのだ。

≪わら、びて、とう!!≫

 そう言いながら、右腕を蕨に叩きこんで合体すると、蕨が人の指みたいに展開されて巨大な手を形作った。

 そこへ、上から降ってきた長方形の物体が柄のようなモノを展開すると、蕨の手に収まって一つの形を完成させる。

「ああ、前方後円墳か」

 その構えは、巨大な剣を装備した異様な姿であったが、その形状は確かに前方後円墳と言ってもいいかな?って思えるデザインをしている。

 刃となる四角い刀身が前方。それを掴む丸い拳が後円。そういうことか。


「あだ!」

「ぐえ!」

「うぐ!」

「ぎゃ!」


 唐突に、四人の悲鳴が聞こえたのでそっちに目を向けると、大道人四人が谷底に陥没していた。

「あいたた・・・急に谷が崩れたと思えば・・・」

「よもや、谷底まで落ちてしまうとは・・・」

「おや? なにかクライマックスな雰囲気の現場に遭遇していますが?」

「こう見ると、蜘蛛モンスターを退治しようとする勇者みたいな構図ですな」

 ・・・ある意味で間違っていないのので、特に訂正することはない。

 どうやら、先の戦闘と、ゼンポウコウエンフンの発動で谷の一部が崩壊したようだ。

 これに巻き込まれて、上から大道人たちが落ちてきてしまったわけだな。ちょうどよかった。やって欲しい事があったんだよね。


≪落石か? 後で補修工事を申請しとかないとな! いくぜ! 害獣人種!! コレで決着をつける!!≫


 ・・・地蔵を認識していない?

 ハニワンダーが地蔵たちを石と認識していることに疑問を抱くが、それはまた後日改めることにして、奴の決着をつけるという行動を見る。

 雄たけびを上げながら、空へと飛び上がったハニワンダーは、ゼンポウコウエンフンという巨大な剣を振り上げつつ、こちらをしっかりとロックオンして振り下ろしながら突撃をしてきた。

「アライラ! 一点集束。八連邪眼バスター・ビーム改だ!」

〈え? いいの!?〉

「ああ! 相手が最強で来るのなら、こっちも最強で迎え撃つぞ!」

 俺は錫杖を彼女の頭に突き立てて、魔力を急速充填する。

〈よっしゃぁあッ!! 魔力充填120%! 一点集束! 八連邪眼!! バスターッ!! ビーム!! 改!!!〉

 その輝きは、圧倒的な破壊の一撃を有しており、ハニワンダーぐらいの相手であれば一撃で葬り去る事ができる威力を持つ。

 そんなビームの輝きに照らし尽くされるハニワンダーは。


≪ぅおおおおッ! 出力最大! ビヨンド・ザ・グレイブぅぅううあああああ!!!≫


 一点集束。八連邪眼バスター・ビーム改と真っ向から受けて見せる。

 ビーム防御力場を稼働させ、バスター・ビーム改を割るように切り裂きながらこちらへと加速を掛けて迫ってきた。

〈むぐぐぐ! さすがに、相性が悪いんじゃないかな!?〉

「いいや、そんなことは無い」

 この勝負はアライラが勝つ。

 戦闘が始まったばかりの状態であれば、ハニワンダーにも余裕があっただろう。

 しかし、ここまでの戦闘で使用した技がアライラと相打ちを繰り返し、さらには防がれた上にカウンター技を受けてダメージを負った。

 そんな状態で、特に怪我も負っていないアライラの必殺技を受け切ることなど無理だ。

≪くぅぅぅぅああああああああああ≫

 ゼンポウコウエンフンはビームの熱で融解を始め、ハニワンダーの全身もまた熱で変色していく様子と、悲痛な叫びが聞こえてくる。

 次の瞬間、ハニワンダーはバスター・ビーム改の閃光に呑まれて、大爆発を起こした。

「大道人!」

 俺は、すかさず大道人たちを呼ぶ。

 縛鎖閻魔錠を四人分放ち、コレを受け取る大道人たちは俺の考えを知って素早く動いてくれた。

〈ん? なに? なにしてるん?〉

「まだだ! ハニワンダーが来るぞ!」

〈え!?〉

 爆発の中から、爆炎と爆煙を纏いつつも巨大な剣『ゼンポウコウエンフン』を改めて振り上げてから振り下ろしてくる。


≪俺はッ!! 勝つッ!! 勝たないと予算がもらえないから、かぁぁぁあああああぁつッ!≫


 ノバナシィ博士・・・あなたはだいぶ苦労されたようですね?

「アライラ、八歩後退しろ!! 地獄道・地蔵菩薩巨大大道人!!」

 アライラはすぐさま八歩分だけ後ろへ退いてくれると、大道人の一人が前に躍り出る。その背に向けて錫杖を投げ込み、技を掛けた。

 大道人・アライラーに必要な巨大化ではない。

 アライラと同サイズよりも多少は大きめだが、大道人・アライラーほどの巨体にはならず、埴輪合体によって背丈が伸びたハニワンダーと同サイズになるように調整する。

 そして、もはや軌道修正も効かない状態で、振り下ろされるゼンポウコウエンフン。

≪ちぃ!≫

 舌打ちが聞こえてくるが、もうどうすることもできないようだ。

「地獄門・地蔵合掌巨大道壁」

 俺たちの前に躍り出た地蔵の両手に青い火が灯り、地蔵の防御技が発動してハニワンダーの一撃を受け止め―――。


「ふべッ!」


 ゼンポウコウエンフンが地蔵の頭を鼻先くらいまで裂き割ると、バスター・ビーム改で融解していた刀身が砕けて折れる。

 そして、額に刃が激突するタイミングで、合掌する巨大大道人。

「し、真剣白刃取りは・・・みけいけんでゆえ・・・」

「そうですよね・・・」

 何はともあれ、ハニワンダー最後の一撃を受け止めてくれたことで、ハニワンダーは巨大大道人の足元に落下する。

 着地も取れないほどに、限界だったようだ。


≪・・・ふ。まさか、真剣白刃取りする石っころが、あるとはな・・・≫


 そんな言葉を発した直後、三体の大道人が『地獄能・巻蛇槍貫撃』で三方向からハニワンダーを刺し貫いて粉砕した。

 


 こうして、長いようで短い埴輪勇者との決戦は終了する。

 巨大大道人の頭に残ったゼンポウコウエンフンの刀身を引き抜いて、サイズダウンしながら修復をする。

「今度、真剣白刃取りの特訓が必要ですね」

「主様には頑張っていただかないといけませんな」

「マリー殿。ぜひとも特訓のほどお願い申しげます」

「習得しておけば、きっと役立つことでしょう」

「・・・いいわ! 任せておきなさい!」

「えぇ・・・」

 なんか妙な事になってしまった。

 余計な事をせずに、アライラに全部任せておくべきだったのかもしれない。

〈それにしてもさー?〉

「うん? どうした? アライラ」

〈なんで、最後はお地蔵さんにやらせたん? 私でよくね?〉

 なんで? とぼけているのか? 分かっていないのか? どちらにせよ、イラっとする言葉だな。

「なんでも何も、君、あのハニワンダーはもっと早く倒せただろ?」

〈えー? いやいや、そんなことないって〉

 ・・・。

「そんなことない? アイツの攻撃を余裕な動作でササッと避けていたのにか?」

〈・・・ぁーぉ〉

「避ける動作には切羽詰まった感じが無かった。八歩後退しろと指示したら、しっかり八歩ほど後退できるだけ余裕があったしな」

〈んふーふ〉

「ハッキリと聞くぞ? あのハニワンダー。ノットンより弱かったんだろ?」

〈・・・ノーコメントで〉

 いや、俺の予想は間違えていない。

 鑑定の時点で答えは出ている。だって、あの埴輪合体は洞窟迷宮で戦ったギガトレンクに対抗するための超強化形態だ。

 第一階層に通じる道を護るボスモンスター的位置にいたギガトレンクを倒すための戦闘形態となれば、ヨーロロンとはほぼ互角の戦闘能力になるはずだ。

 加えて、ヨーロロンはビーム系の攻撃はしないから、ギガトレンクと比べても相性は悪い。

 マリーさんの言葉を思い出してみれば、一対一ならヨーロロンとギガトレンクは互角だという話だったはず。つまり、ヨーロロンと一対一なら余裕で倒せるようになったアライラからすれば、ハニワンダーは余裕で倒せる相手のはずだ。

 なのに、どうにも倒そうという姿勢を感じなかった。

「つまり舐めプしてたんだろ?」

〈・・・・・・・・・・えへ♪〉

 なんとなく、テヘペロ♪とかいうリアクションを思い出させる返答を聞き、どうにも我慢できなくなった俺は錫杖でアライラの頭を叩き始める。

〈あたたたたたた! 悪かったよ! 地球でお父さんとお母さんが見せてくれたロボット勇者アニメを思い出して、懐かしくって浸りたくなったんだよーッ!!〉

 ・・・ロボット勇者アニメ?

「ロボット勇者アニメ?」

〈そう! 平成時代のまさにアニメ黄金時代に多くの男児を熱血にさせたロボアニメの勇者伝説さ! お父さんがDVDコレクションをいくつか持っててね? お母さんはイケメンキャラが出る奴をBDコレクションで持ってたから、家族で全シリーズを見たことあるのだよ!〉

 ・・・あ、もしかしてドリリング・ドライバーって。

「アライラ。君が使っているドリリング・ドライバーって・・・」

〈元ネタはそれよ! まぁ? 私なりにアレンジしてるから大丈夫だと思う!〉

 ・・・そうか、なるほど。

 分かっていたことだけど、分かっていなかったようだ。

「そうか・・・すまなかった。八つ当たりした」

〈いやいや・・・まぁ、舐めプしたのは間違いないから・・・私もごめん〉

「ふふ・・・最後に聞きたいことがあるんだけど・・・」

〈うん! なんじゃろか?〉

「ロボット勇者って、あんな風に絶叫すんの?」

〈それが勇者ってもんだからね!〉

 ・・・。

 ・・・・・・そっか。





「主様、こちらから大道人二名の反応を感じます」

 そう言って、四人の大道人が案内してくれたのは、断崖絶壁にポツンとできた穴だった。

 大道人たちが通れる大きさの穴は、洞窟になっているようで・・・大道人たちは特に警戒する様子も無く中へと入っていく。

 しかし、アライラは脚のせいで中に入れなかった。

〈ひー! ちょっと入口を拡げてよーッ!〉

 それは無理そうだったので、ここで留守番をしてもらう事に決まった。

 俺は、大道人の一人に運ばれて洞窟の中へと進む。隣にはマリーさんもいる。

「ふむ・・掘ってまだ日も浅い感じね」

 マリーさんが洞窟を見回してみての評価を口にした。

「これは主様・・・よくぞ来てくださいました」

 その言葉と共に迎えてくれたのは、ところどころに亀裂が入っている片腕しかない大道人だった。残っている片腕には巻蛇槍貫撃が握られており、穂先は土塗れになっている。

「再び来てくださると思っておりましたので、勝手ながら採掘作業を進めておりました」

「こうして再開できたことを、なのよりも嬉しく思います」

 と、両足が砕けて無くなっている大道人が、鉱石の山を背もたれにして座っていた。

「いろいろと、大変だったようですね」

「はい。良き経験ができたとも思っております」

「私たちの経験を主様に伝えるべく、こうして谷底にて潜んでおりました」

 ・・・そうか。

 それなら、しっかりと受け取らないとな。

「それと、私が背もたれにしているこちらは、すべて鉱石でございます」

「掘れば掘るだけ採れるので、もう笑いが止まらん。とはこのことなのかと実感いたしました」

「なお、私は脚が砕けているので、こうして鉱石に付いていた土を払う役に従事しておりました」

「人であれば、いい汗掻いたと笑顔になれそうな労働感でした」

 そ、そうですか・・・。

 でも、そうか・・・とうとうここまで来たんだな。

「とうとう、アライラの料理用調理器具制作のための材料採集の一歩目が終わったんですね」

「はい! そうなります」

「では、二人は主様に修復してもらってください」

「荷物の収納は、私たち四人で行いますので」

「では、さっそくと作業に移りましょう」

「主様。魔改造ランドセルをお願いします」

 それぞれに行動を開始し、俺はボロボロになっていた二人の大道人を修復する。

 やはり、六人の召喚を行って四人しか呼べなかったのは、すでに二人が活動していたからだとか確認ができた。

 つまり、俺が呼べる同一の地蔵は最大で6人まで。

 ・・・となると、もっと地蔵のバリエーションを増やしていかないと戦力が必要になった時が大変かもしれない。

 とりあえず、目的の一つ目はクリアされた。

 帰ったらさっそくと調理器具の制作を―――。

「お?」

 視界がグルッと回った。

「ちょっと!? どうしたというの!?」

 マリーさんが慌てていて、俺はマリーさんに身体を支えられながら倒れたようだ。

「いや、あの、なんか・・・視界が回る・・・し、あれ? えーっと?」

 不意に、マリーさんの手が俺の額に触れる。

「あっつ! ちょっと、人間が出していい熱量を越えた高熱じゃないの!?」

 そ、そうなんだ?

 でも、なんでいきなり?

「えーっと・・・」

 あー、なんかマリーさんの手から冷たい風が吹き出し始めて・・・あー、なんだか気持ちいい。

 けれど、視界がもっと回り始める。

「あぁ・・・これ、ストレス性高体温症に近い症状ね」

「ストレス性?」

「ハニワンダーね。お前には理解不能な言動ばかりで、これまでにないほど疲れてしまったんだわ」

 流暢な日本語を話すモンスターだったから、余計に聞き流せなかったけれども・・・。

「そ、そう・・・いう・・・ことって、あるんですか?」

「あるわ・・・特におまえは、アライラへ魔力の供給もしているし、戦闘指示もだしているからね。疲労が重なりやすいのよ」

 そうなんだ・・・。

「・・・はー。あとは私がやっておいてあげるから、おまえはゆっくり寝なさいな」

「でも・・・」

「いいから、寝る! 疲れた脳を癒すなら、寝るのが一番なの!」

「・・・はい」



 こうして、俺は一週間ほど高熱で寝込むこととなった。










次回は、ついに手に入れた鉄材でアレコレ作るぞ!ってお話になる予定です。


本当は、埴輪巫女などの登場も考えていたのですが・・・やめました。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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