32 え? 私がやんの?
こんにちは。こんばんは。
5月に発売したゲームをやっていたら、いつの間にか6月に突入していました。
お久しぶりです。
最近は気温も上がり、虫も飛び回り始めて・・・皆様、いかがお過ごしでしょうか?
私は元気です。
今回のお話は、やっぱり『北の谷』に行かないとダメかー。っとなるお話になります。
最後まで、お楽しみいただければ幸いです。
「うーん・・・この錆を何とかしないとな・・・」
集落へと戻り、一日ほどしっかり休息を取った。
その翌日に、回収した残骸を確認するべく魔改造ランドセルを取り出して、タッチパネルを操作してランドセルに収納されている物を一覧で確認する。
本来なら、時間割表を入れて置くポケットなのだが、魔改造されたこのランドセルでは、タッチパネル式液晶モニターのようになっている・・・。
触り心地はアクリル製の透明シートなんだけどね・・・。
そうして、収納物の名前を確認して行くと『赤錆塗れの埴輪兵器の残骸』というのを見つけた。
最初は赤土色の埴輪だと思っていたが、赤いのは錆の赤だったらしい。
紛らわしい色合いだが、錆の赤だと分かれば納得もできる・・・かな? いや、出来ることにしておこう。なんかもう、異世界製モンスターを理解しろというのが無理過ぎると思うんだ。
アライラを見ているとよく思う。
分かるのではなく、感じる。そういうモノなのだから、とにかくそういう事にしておいて、余計な事は考えない。
・・・思考の放棄だな。やっぱり多少の理解をするために考えることは続けよう。
こんな事を考えてしまって、すでに疲れを感じてしまった。
さて、マリーさんが「ちょっと片付ける仕事がある」と言って、村長が使っているというテントに籠っている。
覗いてみたが、机や棚といったデスクワークをするのに便利な道具類が揃っているテントで、確かに仕事をするなら最適なテントだと思った。
そこで仕事中なので、遠出することはできない。
ということで、アライラを誘って集落の南門付近で埴輪兵の残骸を取り出している現在だ。
〈錆の落とし方ってどうすんの? 岩ダコに吸い込んでもらう感じ?〉
「うーん・・・ん? 岩ダコ?」
え? 岩ダコって、真蛸の事だよね? 地方名が岩ダコだったと思うけれど・・・ん? そうじゃなくて、岩ダコに吸い込んでもらう?
・・・あ、ゲーム的な感じかな?
「・・・・・・ゲームの話し?」
〈ある王国の姫様の伝説の話し〉
それかー。
「うん。アライラならできるんじゃないかな?」
〈吸い込めと!?〉
「いや、邪眼でだよ」
〈あー、そっちねー〉
・・・。
・・・。
〈え? 私がやんの?〉
自分がやるという選択肢を用意もしていないのは、どうかと思うんだが・・・。
「・・・こういう錆を取るとなれば、やっぱり鑢などの道具が必要になると思うんだけど、残骸のサイズが人間のサイズを凌駕しているからね・・・人間用の工具ではムリだね」
〈むぅん・・・ヤスリかー。そういえば、私の作りかけなプラモはどうなったかな・・・せめて棺桶に入れて一緒に燃やしてくれているといいんだけど〉
へぇ・・・プラモ作りとかするんだ。
でも、アライラの事だから有名なガ〇プラとかその辺りなんだろう。母や叔母が、祖父母にボケ防止にはプラモが良いからと、何度か購入していたな。
まだボケる歳じゃない。と、母は殴られ、叔母は蹴飛ばされていたが・・・。
「で? 錆落としはやってくれるのか?」
〈むぅー。一応、やってみるけどもー。期待はしないでね!〉
「期待してないから、やってみてくれ」
〈可愛い笑顔で私の心臓を貫くトキメキがエグ過ぎるんですけどッ!?〉
何を言う。
期待しないでね。と言ったのは君の方だろうに。
〈頼むぞ私! 邪眼クラフト! パパっと綺麗に錆落とし!!〉
・・・その技名で本当にいいのか?って思うような技名だ。
即席で考えているのは分かるけど、テキトー過ぎて心配になる。いつもの事だが・・・。
そうして、ガクッと頭を項垂れてしまいそうになるところで、邪眼が光りを放ち、赤錆に塗れた残骸に照射される。
と、ペロッという擬音を背景に入れてしまいそうなほどに、あっさりと錆が剥けた。
まるで蜜柑の皮を手で剥いたように赤錆が取れているのだから、感心する・・・よりも呆れてモノも言えなくなる。
一言で表現するなら「マジかー」だ。
「こんな錆の落とし方でいいのか?」
〈別によくね?〉
まぁ、錆の下にある鉄が綺麗な状態となって使えるのであればそれでもいいのだろうけど。他人に説明を求められたらどう答えるのが正解なんだろう?
・・・異世界だからね。仕方ないね。でいいか。
〈んで? これでさっそく鍋作り?〉
「いや、その前に鉄材の鑑定をしてくれないか? 鍋の素材に向いているのかも分からないし」
〈おけおけ! 行くぞ! 鑑定!!〉
『HNW-KB1O80(エイチエヌダブル-ケイビーワンオーエイティー)の残骸。異世界ラナトコノにて開発された惑星制圧用量産型戦術機動兵人。新たなる天地にて、原生害獣人種を駆除殲滅するために開発された量産兵器。大気圏突破用戦術機動母艦に積載され、地上を高機動で移動するための馬とセットで運用する。騎馬兵だったものの残骸である。錆も落ちているので製造直後のようにピカピカだ』
「バカにしてんの?」
〈わ、私を睨まないでよ!! 鑑定結果に私はノータッチですーッ!〉
それは分かっているのだけれど、鑑定を発動しているのはアライラなので、ついついイラっとしたら睨んでしまう。
「別に、君を睨んでいるわけじゃない。君の鑑定を睨んでいるだけだ」
〈つまり、私を睨んでいるんじゃん?〉
「・・・まぁ、そうなるか」
俺の気持ち的には、アライラを睨んでいるわけではないのだけれどね。
頭を掻いて、このままでは良くないとため息を吐いた。
正直、アライラの鑑定は融通が利かないことが多い気がする。と、ここ最近は思っていたが、融通が利かないと言うよりは、ネタバレ防止で制限されている。とも考えられるようになった。
そもそも、アライラの鑑定には違和感がある。
俺たちを転生させた自称神の野郎は、邪の男神で、結構いい加減な男であったようだからだ。
マリーさんより聞いた話から、かの神の人物像をイメージすると・・・こんなに長い文章で解説してくれるヤツではない事を確信できる。
むしろ、ダーゼルガーンという神は「鑑定? とりあえず対象の値段を表示しとけばいいか」となるのは間違いないだろう。
アライラの見せてくれたヤツの様子からも、そういう感じになるのは間違いない。
しかし、実際の鑑定は役に立たない事も多いが、対象の情報を解説してくれる貴重な情報源だ。となれば、これはもう・・・第三者の介入があるのは間違いない。
別の神・・・もしくは、このダンジョンのオーナーという魔女の可能性もあるか。
いや、もしかしたらマリーさんの本体であるネフェルマリーという女神が介入した可能性の方が高いかもしれない。今もダーゼルガーンを追い回しているはずだと、マリーさんが言っていたし。
〈おーい?〉
「・・・・・・・・・ん? あ、どうかした?」
〈いや、なんか深刻そうな顔で考え込んでいたから、どうしたのかな?って〉
・・・そうか、ちょっと考え事に意識を持っていかれていたか。
「いや、大したことじゃないよ。鑑定の使い難さにどうにかならないかな?って考えていただけ」
〈あー、マリーさんに相談した方が早くね?〉
確かに!?
マリーさんだって今は違うらしいけれど、元々は神のアバターだったらしいし、邪眼のメンテナンスもしていたから、加護の方も干渉できるはず。
「よし、鑑定に関してはマリーさんが来てからするとして、とりあえずこの残骸を加工してみて欲しいんんだ」
〈・・・加工? 何にすればいいの? 鍋?〉
そうだな・・・いきなり鍋と言っても、アライラがどんな鍋を作るのか分からないし・・・まずは鉄の塊にして見てもらうのがいいだろうか?
いや、でも・・・アライラがイメージしている鍋を作ってもらえばいいのかもしれない。下手に俺が指示を出してもいい結果にはならない気もするし。
「そうだね。とりあえず、アライラが知っている鍋を作って見てくれないか?」
〈おっけー! やっぱり鍋と言ったら中華鍋っしょ!〉
・・・ふーん。
〈よーし、邪眼クラフト! 中華鍋!!〉
先の錆落としと同様に、邪眼が光ると錆が落ちた残骸が光り輝く。
そうして、粘土で工作をしているかのようにグネグネと蠢いて大変気持ち悪い光景だ。が、その形状が中華鍋の物になっていくと、少しだけ安堵した。
こうして、念願の鍋が一つ出来上がる。
〈うーむ。漫画で見ただけの鍋だったけれど、完璧だね!〉
漫画知識か・・・使えるものなら、別に構わないけれども。
「よし。大道人」
アライラのテントに据え置きとなっている大道人に声を掛けると、こちらに近づいてくる。
「すまないけど、あの中華鍋を確認したいから、まずは持ち上げてみてくれ」
「承知しました」
漫画知識によって完成した中華鍋だから、まずは強度チェックとかが必要だと思う。
こういう場合のオチとしては、形だけは完璧。という事になりがちだからだ。詳しい? いいや、予想など簡単だ。そう。アライラを見ていればね。
「では、持ち上げてみますね」
そう言って、大道人が出来上がった鍋を持ち上げてみると・・・。
グシャ
まさに粘土細工を触る際に力加減を間違えたような様子で、握りつぶしてしまった大道人。
「・・・アライラ?」
〈え、私のせい? いや、作ったのは邪眼だから! 私は関係ないね!〉
「漫画で見ただけの鍋って言っていたじゃないか?」
〈そ、そうだけれども!〉
慌てふためくアライラを追い詰めるように、俺は目を細くして一歩にじり寄る。も、大道人が止めに入った。
「待ちください。主様」
その一言で、俺はアライラから大道人へと振り向く。
「この鍋・・・粘土のように柔らかいのですが・・・鉄のようでございます」
・・・。
・・・・・・?
「粘土のように柔らかい鉄ってことですか?」
「はい。妙なことを言っているのは確かですが、主様も触ってみてはいかがでしょう?」
そう言われれば、確かめるためにも自らで触るのが一番だ。
俺は、埴輪兵の残骸から作ったアライラ製中華鍋だったものに触れる。
「うわッ!」
この手が鍋だったものの表面に触れた時、一切の抵抗も受けずに手が沈む。その感覚に恐怖を覚えて、飛び退くようにバックステップで手を離す。
そうしてから自分の手を確認して、無事であることを確かめた。
「な、なんで?」
思わず、アライラを見る。
〈・・・え? いやいや、漫画で見ただけと言っても、さすがに鉄の硬さを間違えるってことは無いよ! フライパンなら家にあったから、触ったことだってあるし!〉
いや、現代のフライパンは・・・いや、いいや。ややこしいだけだから。
「だとすれば、この柔らかさは異常だぞ・・・邪眼が故障しているのかな?」
〈えー・・・またマリーさんにメンテお願いする感じー?〉
「あら? 私のメンテは不満だったかしら?」
俺とアライラの間に、腕を組んで仁王立ちしているマリーさんが居る。
いつの間に来たのだろうか? タイミングが良すぎるが、この人ならタイミングを見計らって登場するだろうな。って予想もできるので、特にツッコミは入れない事にする。
「邪眼で作った中華鍋が、粘土細工のようにグニャグニャになってしまったので、何か邪眼に不具合が出ているのではないか?と、俺がアライラに言ったんです」
俺の説明を受け、マリーさんは組んでいた腕の片方を動かして下顎に指を添えた。
「ふむ・・・妙な話しね・・・」
そう言うと、大道人に持ち上げられた拍子に潰れてしまった中華鍋だった物に歩み寄る。
「ふむ・・・そうね・・・アライラー。ちょっとコレを塊に加工しなさい」
〈え? また私?〉
「私がやるのですか?って確認をしています」
「そうよ。邪眼の不具合で粘土みたいな状態なのか・・・もしくは、この鉄の特性なのか・・・それを知るためには、塊にした方が分かりやすいと思うわ」
「そうか、アライラの鑑定を行うにしても、鍋などの道具に加工してあるモノだと、妙な解説になりかねないからですね?」
前にアライラの前足を鑑定したら『アライラの前足』って結果になったこともあるしね。
〈えー・・・じゃあ、ちょっと試しに〉
「あ、鑑定を試して見るそうです」
「好きにしなさい」
〈鑑定!〉
『中華鍋?だった物体』
〈・・・〉
「・・・と言葉を失っています」
「でしょうね」
アライラの前足。って鑑定結果と同じか・・・。
ん? アレは『自分の前足』って鑑定結果だったかな?
「さて、アライラー。ゲームが好きなのであれば、インゴットに加工してみなさい。アイアンインゴットと言う方が、イメージはしやすいかしら?」
〈おー・・・うん。それなら任せろーッ!〉
なんか、急にやる気だしたな・・・どうし―――あ、マリーさんが俺を睨んでいる。
「あ、えっと、それなら任せてくれ。とやる気を出しています」
「よし」
うーむ。
インゴット・・・って確か・・・そう『金の延べ棒』だったと思う。
前世でいつだったかに調べた覚えがある。現代では、加工された金属・・・金塊みたいな感じの金属類にもインゴットと呼ぶようになっているとかいないとか・・・。
どーだったかな?
〈いくぜ! 邪眼クラフト! インゴット作成!!〉
勢いよく、技を発動させるアライラであるが・・・なぜか周囲をキョロキョロという感じで見回し始める。
そうして、大道人に近づいた。
〈ねぇねぇ、その杖をちょっと貸してちょーだい〉
「え? あっはい・・・どうぞ」
なぜか、大道人から錫杖を借りると、鍋だった物をペチペチとリズムよく叩き始めた。
何をしているのか? 俺にはまるで分からない動作であったが・・・叩くたびに邪眼が光り、叩いて音が出る度に対象物が光る。
そうして、最後に錫杖を空へと翳すと・・・鍋だった物が金塊のような鉄の塊に変形した。
・・・なんでそうなるんだろう?
〈ふぃー。いい仕事してますねー!〉
「それは鑑定し終えてからのセリフだろ」
〈あ、そっか! じゃ、さっそく鑑定だ!〉
『ハニョルトン隕鉄。異世界ラナトコノの鉄隕石から採れる鉄。ハニョルトン博士によって新たに発見された隕石は、これまでにない隕鉄になることが判明した。なんと鉄でありながらも大変柔らかく、粘土のようであるのだ。しかし、当初は使いどころがないゴミ扱いを受けていた。ハニョルトン博士の死後、ノバナシィ博士によって開発された特殊ナノマシンを塗布することで、ナノマシン制御により粘土のように柔らかい性質から、鋼のような硬度に変幻自在の調節ができるようになり、使い勝手が向上した。これにより軍事への利用を目的とした研究が進められた。後に、惑星侵攻作戦の第一段階でハニョルトン隕石を大量にばらまき、第二段階で地上制圧部隊を投下し、その後に隕石回収を行って隕鉄を集めるという手順がとられ、大量の埴輪兵を製造することで作戦は第三段階に移行する。が、とある惑星への攻略作戦においては、地上迎撃システムと陸海空を護る三大亀動要塞の連携によって大多数が撃破され、作戦の変更を余儀なくされた』
〈うわあああああ、読みづらあああああああいッ!!〉
「悲鳴を上げるほどのことかな?」
読みづらいのは同意するけれど、そんな悲鳴を上げることではないだろうに。
〈教科書を読んでいるみたいでさー。拒絶反応が出るんだよねー〉
「えぇ・・・」
拒絶反応って・・・そこまで教科書が嫌いなのか?
〈教科書を構えたら10秒以内に寝る自信があるね!!〉
そっちか・・・そういう人っているよね。
前世の叔母もそうだった。俺が勉強を教えてもらおうとすると、教科書を懐かしんでから中を覗いて・・・欠伸を一つ。寝始める。
・・・結局、祖母や母に教えてもらう。という流れだったな。
かく言う俺も、体育の後や給食の後は眠くなってしかなかったから、アライラの事をとやかく言えない。うーん・・・陽のいい午後の時間は、いつの間にか寝ているんだよね。
「うんうん。さて、このハニョルトン隕鉄なのだけど・・・」
〈無視!?〉
無視もなにも、話しが脱線するから仕方ないだろ?
「っで、埴輪の残骸だった時は硬かったのに、アライラに加工してもらった途端に粘土のように柔らかくなったわけだけれど・・・」
「このままでは鍋の材料にはならないわね」
マリーさんの言う通りで、このままでは当初の目的である調理器具の材料にはならない。
一応は鉄なのだろうけど、粘土と同等ではね・・・なんだってこんな物が存在しているのか・・・。
〈ふーむ・・・伸びる装甲・・・作画崩壊・・・う、頭が〉
アライラも何かを考えているようだが、おそらくは俺では察することもできない事を考えているんだろう。十中八九どうでもいいと思ることだな。
それにしても、谷まで行って持ち帰った鉄材が粘土質とは・・・結局、俺でも知っている鉄はどこで採れるというのか。
「やっぱり、谷の底に降りて採掘しないとダメそうね・・・」
「そうですね。谷の底に降りて・・・谷の底?」
「ええ。あの谷は本来、鉱石を採集する場所だったのよ。モンスターがバグ進化したりする以前の頃は、谷の周辺にも町があったんだけどね」
えぇ・・・。
「私の行動を発端に、多くの悪神が異世界からモンスターを持ち込んだことで、この地を含めて各地が大混乱になったから・・・」
昔を思い出すように、少しだけ後悔と寂しさが感情として見え隠れし始める。
「・・・いや、それはさておき・・・埴輪兵を殴った時の感触は鉄だったから、これで代用できると思ったんだけれどね。ずっとこのダンジョンで管理人をしてきたけれど、埴輪共が珍妙な鉄材で出来ているとは・・・さすがに気づかなかったわ」
管理人と言っても、ダンジョンを周回し続ける仕事のようだし、モンスターを片っ端から研究している余裕も無かったのだろうとは思う。
いや、単に埴輪が見た目からもふざけきっているから、興味すらわかなかったのかも?
・・・うん。なんの興味も無い顔でぶん殴って終わりにしているマリーさんの姿が目に浮かぶ。
「しかし・・・もう一度、あの谷に行くのは・・・でもなぁ・・・うーん」
え? なんでそんなに悩んでいるんだろうか?
マリーさんが俺とアライラを交互に見ながら、腕を組んで考え事をし始める。
〈要するに、もう一回『北の谷』に行けばいいだけなんでしょ?〉
・・・え?
あー、うん。確かにその通りなのだけれども・・・。
「簡単に言うなよ。埴輪騎馬兵にはビーム系が通じないんだからさ」
ビーム攻撃を主体に戦うアライラにとっては、かなり厄介な相手になる。
もう一度行けばいい話であっても、対埴輪戦を考慮した新しい技などを準備していかなくてはダメだろう。
〈いやいやいやいや、確かに? ビームは通じませんでしたけれどもー?〉
ん? なんだい?
〈埴輪を一撃で破壊した新技も! 同時に開発済みなのですよ!!〉
・・・。
・・・・・・。
あー、あのビーム力場を貫通して身体に穴を開けた技のことかな?
でもアレ、最初はビームを放出していたし・・・それにトドメは俺の業火だったし・・・。
〈例え敵が強大であろうとも、挑み倒してこその勇者ですよってね!!〉
またそうやって調子に乗って・・・。
「新技って、あの『ドリルング・ドライバー』とかいう即席技のことだろう?」
〈そうそう! アレがあるのでもう大丈夫!〉
確かに、今までも即席で新技を作っては、何とかしてきたけれども・・・。
「ドリルング? ドリリングではなくて?」
マリーさんが、呟くように声を出す。
しかし、俺はその声を聞き逃すことなく、拾う事に成功していた。
〈ドリリング?〉
アライラも興味を示しながら頭を傾げている。
「マリーさん。ドリリングというのは何ですか?」
「ん? あー、ドリリングとは『穴を開ける』『掘削する』などの意味がある言葉だったはずよ」
そういう言葉があるんだ!?
インターネットで調べると出てくるのだろうか? スマホなどの端末が欲しくなるなぁ。
〈ほぉほぉ・・・ドリリング・・・むーん・・・〉
すると、アライラは唐突に叫び出した。
〈ドリリング・ドライバーッ!! どぅりりんぐぅぅうう・どぅるぁいぶぁぁああッ!!〉
一回目は気合いを込めた感じだが、二回目のは巻き舌というかなんというか・・・バカっぽさを感じるんだが・・・なんなの?その発音・・・
〈 いいぞぉ! コレぇ!! 必殺技にピッタリの語呂だぜーッ! ドリリーング・ドライッバァーッ!!! うひゃー! 楽しい!!〉
・・・あ、マリーさんが苦いモノを食べたような顔をしている。
「あ、マリーさん。ちょっとその、アライラはですね? ドリリング・ドライバーが必殺技っぽい語呂の良さでですね! テンションがあがっていたりするみたいなかんじのようでして」
うるさい!っとか言って殴りかかる前に、説明をしないといけない気がしたので、急いで説明をしたが・・・自分でも何を言っているのか途中から分からなくなってきた。
「あー、そういうこと・・・」
分かってしまうマリーさんも大概ですね。
俺がどんな顔をしていたのかは分からないが、マリーさんがチラッと俺を見て咳払いをしたので、きっと酷い顔をしていたのだろう。
マリーさんが手を叩く。
「はいはい! いつまでも暴れるんじゃない!」
その一言で、暴れる・・・というよりは、大はしゃぎしているだけのアライラがピタッと止まった。
「さっそくだけど、その新技で模擬戦をしてもらうわ」
〈マジで!?〉
あまりにも唐突な話しだな。
「驚いているようだけど、これからもう一度『北の谷』へ行くのよ? 今のままで何とかできると思っているの?」
〈できらぁ!〉
え?
本当にできると思っているのかな? さすがに・・・そう、意地になっているだけだよね?
〈る、るっちゃん・・・ほら、翻訳・・・翻訳・・・〉
「あ・・・できるって言ってます」
「ふむ・・・ならちょっと相手をしてもらおうか・・・ルッタ。ちょっといつもの大道人を一人、私に貸して頂戴」
「分かりました」
マリーさんに言われるまま、俺は大道人を召喚する。
一方で、マリーさんは土の魔法術を使って馬を作った。リアルな造形ではない。見て分かるように土を固めて馬のような形にしただけのものだ。
そんな馬に、大道人を乗せた。
「よし。埴輪騎馬兵はこれでいいか」
うん。となんか一人で肯定しているのがどうにも・・・。
〈ねぇ、アレは私たちをバカにしているってことでいいのかな?〉
「何か考えがあるんだろうから、もう少し待とう」
そうして見ていると、馬に乗せた大道人に錫杖を掲げるように指示を出す。そして、杖の先端に風を集めて円錐形の渦を作ると、コレを槍の穂先として維持するようだ。
その姿から、俺が大道人に持たせる巻蛇槍貫撃を再現しているモノと思われる。
「うん。持っている武器もこれでいいわね」
どうやら、準備が終わったようだ。
「よし! アライラーッ! 模擬戦をやるわ! 対戦相手は地蔵騎馬兵よ!」
・・・。
・・・。
〈そんなのに負けるか―ッ〉
えぇ・・・大道人が乗っているんだから、そんなのって言われるのは心外だな・・・アライラに勝てないのは間違いないけど。
しかし、埴輪騎馬兵に比べても酷いクオリティの低さだ。
即興って感じが拭えないのも、弱そうに見えるポイントだろう。
「どうぜ、そんなのに負けるかーって吠えているのでしょうが、実際に勝ってから言いなさい」
〈よーし! 速攻でぶっ壊してやんぜーッ!〉
▽
こうして、マリーさんの挑発を受けて立つことになったアライラ。
互いに睨み合う試合形式の特訓となるが、地蔵騎馬兵はマリーさんが操作するらしい。果たして、アライラに勝てる要素があるのか?って感じになるが・・・。
〈ドリリング・ドライバーッ!〉
俺の縛鎖閻魔錠からアライラの前足に巻き、そこから邪眼で加工して装備する『ドリリング・ドライバー』という新技だが・・・。
改めて考えてみれば、俺が縛鎖閻魔錠を召喚して前足に巻いているのは無駄だし、巻いてから邪眼で加工しているのも無駄だった。
そして、何よりも無駄なのが・・・。
「ふん!」
マリーさんが操る地蔵騎馬兵は、地蔵の持つ槍でドリリング・ドライバーを一突きされると、そのまま地面に縫い付けられてしまう。
〈ふぐぐ!? 外れない!?〉
見れば、回転する閻魔錠に地蔵騎馬兵の槍が絡まっているよう・・・いや、あえて絡めたのか?
「前回の戦闘で、一度見ている私から言わせてもらえば、無駄だらけね」
〈い、言わせておけば・・・〉
そこからは、なんかもういつもの光景になっていた。
〈おらおらおらおらおらおろおらおらおらおらおらおらおらッ!!〉
「むだむだむだむだむだまだまだむだむだむだむだむだむだッ!!」
・・・これアレだ。
本気でアホなことやってる子供に付き合って遊んでいるお母さんな感じだ・・・マリーさんが若干楽しそうで何よりです。
そうして、まったく『ドリリング・ドライバー』が通じない事に地団駄を踏み始めると、その場にドライバー叩きつけて喚き出す。
〈なーんで止められちゃんだよぉお!!〉
・・・。
・・・・・・ふむ。
「なぁ、一つ提案なんだけど・・・」
〈なによッ!?〉
・・・うん、まぁ・・・イラついている時ってこんなもんだよね。
「・・・いっそのこと、ロケット・パンチにしてしまえばどうだい?」
〈はぁ?〉
「いやさ? ドリリング・ドライバー。って叫んでから鎖を巻いている前足を前面へと突き出しながら突進しているわけだけど・・・直進しかしていないからマリーさんレベルの人なら軌道が読めるんじゃないかな?って思ってさ」
〈・・・それだ!!〉
あ、なんか納得してもらえたようだ?
「そこでまず、縛鎖閻魔錠で鎖を巻くのやめる。代わりに、巻蛇槍貫撃の穂先を射出するから邪眼で制御してもらってドリリング・ドライバーに変身させるんだ」
〈そして、ロケット・パンチのように撃ち出してやればいいッ!!と!?〉
「そう。それ」
方針が決まると、アライラの動きは素早かった。
〈ドリリング・ドライバーッ!!〉
俺が使う巻蛇槍貫撃からコントロールを奪って、邪眼の力を上掛けして『ドリリング・ドライバー』に変身させ、コレを前足で撃ち出す。
どうやら、コレがハマったようだ。
練度が低いため、まだまだマリーさんには通用する技ではない。
しかし、明らかにやり難そうに対応している。そう。アライラの動きを警戒しながら、飛んで来るドリルのドライバーを叩き落としている。
前に、えーっと・・・脳波コントロールできる?って技でビーム・チャクラムを操っていたことから、このロケット・パンチ式『ドリリング・ドライバー』も操れるものと思うんだけど・・・。
〈もう一回だ!!〉
「何発でも撃ち込んできなさい!!」
・・・いつの間にか野球の千本ノック・・・ん? 千本ノックはバットで球を打って取らせる奴だっけ? バッティングの練習と言うのが近いのかな?
アライラの投球練習と言う方が正しいか・・・。
どっちみち、特訓の仕方がオカシイとしか言いようがないし、言い出し辛いので口出ししなかったが。
こうして、数日間も特訓は続く。
「ちがーう!!」
〈ふんぬーッ!〉
俺はただ、巻蛇槍貫撃を作っては射出する役・・・を、黙々とこなすだけである。
それにしても、こういう時の二人はさ? どうしてこう、息ピッタリなんだろうね?
・・・はー、意味あるのかな? この特訓。
次回は・・・このお話の続きとなる『北の谷』へ突撃・・・もしくは、壺外編になります。
【壺外編】も、ようやく敵キャラをどうするか決まりましたので、とりあえずは同時進行で作っていきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




