31 なんでって? カッコいいからだよ
こんにちは。こんばんは。
前回からの続きとなるお話となります。
最後まで、お楽しみいただければ幸いです。
集落の南門を抜け、アライラが寝泊まりしている巨大テントにて合流する。
「おはよう!」
〈おー? おはよー?〉
寝ぼけているようだが、無理矢理でも起こして外に引っ張り出す。テントにて待機している大道人に加え、俺の方でも新たに大道人を召喚して、二人でアライラを外へ放り出す。
そうして、マリーさんが狩って来てくれたウサギ系モンスターを丸焼きにして、アライラの朝食とする。
出発の準備も整ったことで、さっそくと北を目指して移動を開始した。
集落をまっすぐ通過することは、アライラが大きいために難しいとのことで、集落を迂回して北の門前に出る。それから、マリーさんより地図の更新をしてもらい、改めて『北の谷』までのルートを確認する。
「このまま真っ直ぐ北上するわけか」
〈なーんだ・・・すんごく楽じゃん?〉
「バカを言うなよ。この道中にいるだろうモンスターは、きっと手ごわいはずだ。また、一進一退を繰り返すことになる」
〈えー・・・まだ唐揚げはお預けなのー? さすがにちょっとイラっとしてきたんだけどー〉
俺にそれを言われてもね。
「愚痴は無しだ! 行くぞ!」
〈おーッ!〉
▽
などと、勢いで出発してから数時間が経過する。
「アライラ。本当に何も見えないんだな?」
〈見えませーん〉
別に視界が悪いということはない。
よく晴れた冬が残る春の気温と、暖かいのだけど冷たい風に勝てない陽射し。景色はとてもいい。遠くを見れば、岩肌が剝き出しになっている土地へと続いている事が肉眼で確認できる。
山と言うほど高くも無い山?が見え隠れする土地を・・・丘陵地帯と言うのだったかな?
う・・・だいぶ知識が曖昧だな・・・。
雪が積もって見える荒れ地に、小山や丘といったものが続いているようだ。しかし、その奥の方へと目を凝らしていくと・・・白と灰色のカーテンみたいな何かしらで塗りつぶされている様に見える。
この場所からは遠すぎるために、そう見えているだけかもしれないな。
さて、そんな見晴らしのいい景色の中で、俺が「なにも見えないのか?」と、アライラに問いかけたのはモンスターの姿に関してだ。
すでに、集落を発ってから時間が少なからず経過した。
今日までを踏まえて考えると、すでに新しいモンスターが登場していてもいい頃合いなのである。白川郷のような村から北上して、ノットンに遭遇した時のように。
だいたい、このぐらいのタイミングで接敵していたはずだ。
だというのに・・・どういうことか? モンスターの姿が影も形も見当たらないのであった。
「アライラ。邪眼センサーで周囲を索敵。擬態能力を持つモンスターの可能性を見落とすなよ」
〈そういうから、もう10回以上はやってるでしょうが! 広域で!〉
そ、そうだった・・・かな?
そう言われると確かに言っている気がする。ここまでの道中で、得意げに指示していたからな。邪眼センサーで周囲の敵を見逃すな!ってね。
〈んもぅ! ビビり過ぎぃ!!〉
「い、いや・・・いや、ビビっているわけじゃない。これは、要は・・・焦っているんだ」
そうとも、俺はビビっているんじゃない。
〈なんで焦るの?〉
「なんでって・・・集落を出てある程度の距離を進んできたんだぞ? そろそろ、この辺りを縄張りにしているモンスターが現れても、いいはずだろ?」
そうとも、ヨーロロンもノットンも、これぐらいのタイミングで登場していたはずだ。
アライラの眼であれば、俺より遥かに遠くを見ることができるのだから、すでにまだ見ぬモンスターの影を見つけていておかしくは無い。
だというのに、未だに発見できていないのが不安を煽ってくる。
〈うーん。アレじゃね? 冬眠中〉
確かに、集落に居た時から気温はだいぶ低くなっていて、この辺りは冬そのものだと言える気候である。が、それはあくまでも地球での感覚で言えば・・・だ。
異世界からモンスターが運び込まれたのであれば、この辺りの気候でも活動可能なモンスターが居ておかしいことは無い。
空を飛ぶマンモスが居るんだぞ? 雪中で直立不動のスフィンクス(猫)が居てもいいはずだ。
・・・絵面が寒過ぎるな。
「そういえば、アライラは大丈夫なのか?」
〈なにがー?〉
大丈夫そうだな。
「神の加護があるとはいえ、今の君は蜘蛛。冬眠とか、寒さで死んだりとか、あるかもしれないと思っただけだよ」
〈ほー。ま、大丈夫じゃない? 今のところで、別に変化とか無いしー〉
「いいえ、変化なら出ておりますよ」
アライラの横を競歩のような速度で歩く大道人が告げる。
今回、出発の際に大道人を召喚して同行させている。というのも、先のノシェルス戦においては、モットンとの戦闘時に召喚した大道人をそのまま連れていたことで、『大道人・アライラー』という即席の合体形態を可能とした事があるようだったからだ。
つまり、不測の事態に大道人を召喚するのではなく、あらかじめ召喚して置けば、即対応できると考えての事だ。
見渡す限り、草原が続く道のりとなるため、居てくれた方がいいだろうしね。
「大道人。どのような変化が出ていますか?」
「はい。体毛が長く太くなって、まるでモップがモサモサと移動しているかのごとく・・・」
・・・ん? 体毛が?
大道人の指摘を受けて、アライラの体毛を確認する。
確かに、言われてみるとなんだかポイズングリーン色の体毛が太くなっているように感じられる。周囲の警戒に神経を使い過ぎて、気付かなかったな。
それに、この体毛・・・すごく温かい。
〈モップみたいって・・・なんか嫌な感じー〉
「それぐらいなら気にすることも無いさ。モップ犬とか呼ばれる犬もいるわけだし」
〈アレと一緒にしないでよねぇ〉
不貞腐れるアライラであるが、俺は大道人に確認をしておく。
「ところで、大道人。あなたの方でも何か、モンスターの影とか気配などは見たり感じたりしていませんか?」
気にし過ぎなのかもしれないが、気になるモノは気になる。
「そうですね。私の方でも、特に警戒するような事は確認できておりません」
「そうですか・・・」
・・・アライラの言う通り、ビビっているのかもしれないか。
それにしたって、モンスターが居ないのは不気味だ。やっぱり、地中に潜んでいるとか・・・。
〈ねぇねぇ、私、思うんだけどさー〉
「うん? どうかしたのか?」
なぜ、モンスターが未だに出てこないのか?っと考えていると、アライラが言う。
〈モンスターが出てこないのって、この辺りに住んでいる奴がいないからじゃないの?〉
・・・。
・・・・・・。
いや、そんな事はないだろ・・・。
「マリーさん」
「なにかしら?」
アライラの指摘が正しいかどうか、マリーさんに聞いてみることにした。
「もしかして、この近辺には縄張りとして住み着いているモンスターが居ないのでしょうか?」
「そうね。縄張りにしているモンスターは居ないわ」
・・・そうかぁ・・・いなかったのかぁ。
アレだけ周囲を警戒していたというのに、空振りとか・・・なんだか虚しい。
すると、マリーさんが俺の頭を掴む・・・ように、手を置いて撫でてくる。
「集落より北。そして西方面にはモンスターが住み着いていないわ。理由は環境に適応できないから」
この環境に適応できない?
「元々、冬の気候に適応しているモンスターは雑魚を含めて第四階層【冬の区画】に押し込んであるからね。この【春の区画】には、冬の気候に適応できるモンスターは居ないのよ」
なるほど、ノシェルスも冬眠中で、木の中で春を待っているモンスターだったわけだし、こんな環境で活動できるモンスターは居ないってことか。
だとすれば、谷にもモンスターは居ないってことになるかな?
「だけど谷にはモンスターが居るので、気を抜かないように」
・・・なんと?
「谷に、モンスターが居るんですか?」
「居るわ」
この辺りにはいないのにッ!?
「こ、この辺りには居ないのに!? 谷にはいるんですか!?」
「居るわ」
なんてことだ・・・。
これで鉄材となる鉱物を採集するだけの簡単な作業で済むと喜ぶ手前だったのに・・・。
「ちなみに、どんなモンスターが居るんでしょうか?」
「それは見つけてからのお楽しみでしょう」
・・・教えてくれてもいいじゃないですか。
しかし、ここよりさらに北に居るというモンスターとなれば、間違いなく寒冷地に特化したモンスターであることは明白だろう。
それこそ、マンモスとかホッキョクグマとかペンギンとか・・・なんかその辺の・・・。
「考えるだけ無駄か・・・」
先にも考えた通り、空飛ぶマンモスがいるんだから、雪中にスフィンクス(猫)が居てもおかしくはない。むしろ、その可能性が出てきたのではなかろうか?
「・・・頭が痛くなってきた」
「主様。もうすぐ草原を抜けますよ」
大道人の報告を受けて、俺はエリアが変わることを知る。
ちょっと、マリーさんとの話に意識を集中し過ぎていたか? だけど、この辺りに住み着いているモンスターが居ないと分かって、気を抜き過ぎたとも言えるか。
と、俺の鼻から首元までを覆う様に、マフラーが素早く巻かれる。
「ここから先は、呼吸するだけで肺を傷める可能性があるから、マフラーで鼻と口を覆いつつ、首周りをしっかりと温めなさい」
なら、マフラーも先に渡しておいてくれても良かったのでは?
「さぁ、気を引き締めることね」
肩を優しく叩かれて、俺は頷き返した。
「アライラ。この先にはモンスターがいるそうだから、警戒を」
〈りょーかーい〉
「大道人も、アライラのフォローをお願いします」
「承知しました」
エリアを跨ぐ。
草原から土がむき出しの荒れ地へと突入し、周囲を警戒しつつ進んでいく。
「雪が積もっているな」
岩肌が剥き出しになっている丘もチラホラと確認できるし、とにかく寒い場所であると言うの分かる。
〈あ、あそこの壁!〉
「どうした!?」
〈爆破したら隠し通路とか出てきそう!〉
・・・あー。
どこの事かは、ちょっと分からなかったけれど・・・彼女が言わんとしていることは理解した。地球にも結構あるよね。爆弾が手元にあったら投げつけたくなる亀裂の入った壁とかさ。
でもね? 今は自重して欲しい。
てっきりモンスターが現れたのかと思って身構えてしまったんだ。
〈お、前方からモンスターっぽいの来てるよー〉
気が抜ける思いだな。さっきまでもずっと緊張していた・・・ぅん?
〈ルッタ? 前からモンスターっぽいのが来てるんだけどー?〉
「え? あ、邪眼望遠で捉えた姿を、ウインドウ表示で俺にも見えるようにしてくれ!」
〈ほいほーい〉
クッソッ! 思いっきり気を抜いてしまったじゃないか!
俺が内心で悪態をついていると、目の前にアライラの眼が捉えたモンスターの映像がウインドウ表示される。
しかし、まだ姿が黒い影で明確には分かっていない。
ドタタッドタタッドタタッドタタッ
そんな感じの音だけが、響いているのが分かる。
コレは足音だろう。この鳴り方は・・・馬などが走る際にでる音に似ている気がする。影でも、四本足が動いている様子から、予想はできた。
「馬系のモンスターか?」
いや、まだそうと決まったわけではない。
移動する音からして、四足歩行のモンスターで軽快に走ることが出来るタイプなのは間違いないだろう。馬はもちろんだが、牛や豚、羊やヤギと四足歩行できる動物は多種ある。
犬や猫の可能性もあるから、馬と決めるのはまだ早い。
「先手必勝だ! 邪眼ビームで攻撃しつつ、姿を照らしてくれ!」
〈おーらい! 邪眼ビーム・改!〉
邪眼の一つがビームを発射すると、まっすぐに接近してくるモンスターへと飛んでいく。光が描く軌道であれば、直撃することは間違いないだろうと思えた。
しかし、命中するかと思われた時に、モンスターの背と思われる部位が動くのを見る。
ずんぐりむっくりとした影が動くと、その一部に機械の回路を描くような線が走るように光り、装甲板と思われる何かしらがスライドするように動くと、謎の力場を発生させる。
それが、直撃するはずのビームを受け止めると、ビームは渦を巻きながら玉にまとめられて、水飛沫を散らすように半円状の力場に沿って消えて行った。
この現象を前に見たことがある気がする。
いや、少し違っているか・・・洞窟迷宮の最後に戦ったヤツを思い出す。
「まさか、ギガトレンクと同系統のモンスターか?」
ビームを受け止めた際、その光によって一部ではあるものの、姿が照らされた。
赤土色をした馬のような形のモンスターだ。その背に何かを乗せているようであったが、そこまで詳細に全体像を見ることはできなかった。
だが、アレは間違いなく馬系統のモンスターだが・・・その背に何を乗せているのか? まさか巨人を乗せているとか? あるかもしれないな・・・。
「アライラ。鑑定はできるか?」
邪眼による最大望遠でも、まだ姿が明確にならないけれども、鑑定の射程距離とは無関係だ。今は少しでも情報が欲しい。
〈ん? おッ! 射程距離に入った! 鑑定! いっきまーす!〉
『HNW-KB1O80(エイチエヌダブル-ケイビーワンオーエイティー)。異世界ラナトコノにて開発された惑星制圧用量産型戦術機動兵人。新たなる天地にて、原生害獣人種を駆除殲滅するために開発された量産兵器。大気圏突破用戦術機動艇に積載され、地上を高機動で移動するための馬とセットで運用する。騎馬兵モデル。しかし、敵もまた強力な量産兵器で迎撃してくるため、事は計画通りに進まなかった』
機械の型式番号のような名前?
つまりは、兵器系モンスター・・・異世界の名がギガトレンクと同じだったと思うし、新たなる天地。原生害獣人種を駆除殲滅。などの文言から察するに、侵略者たる人類側の兵器。と考えるのが妥当か。
〈なにぃッ!! 埴輪騎馬兵だとぉお!!〉
・・・。
??????
・・・え? どういうこと?
「ハニワ・・・って、埴輪か? あの土人形の?」
〈うん。その埴輪だね〉
・・・今の鑑定結果のどこを見て、埴輪と断定したんだろうか?
「鑑定には『埴輪』なんて一言も書いてないぞ?」
〈なに言ってんの!? HNWって何て読む!?〉
「エイチエヌダブルって―――」
〈ハ・ニ・ワでしょうがッ!!〉
「なんでッ!?」
確かに、そういう考え方もできるとは思うけれど、ただの偶然だろう?
アライラが言うのは、あくまでも地球の話しであって、異世界までそんな言葉遊びが波及しているとは思えないが・・・。
そんな時、邪眼望遠で表示されていたモンスターの影が、正解を告げるように姿をハッキリと映してくれた。
「埴輪の騎馬兵だったぁあ!?」
そんなバカな!
〈ね? 私の言った通りでしょッ?〉
意味が分からない。
なんで埴輪が出てくるんだ? いや、そもそもなんで埴輪が出てくるんだ!? いやいや、落ち着け俺。なんかちょっと思考がおかしくなっているぞ!
「なんでHNWなんて書いてあるんだ! 埴輪と読むなら、普通に『埴輪』でいいだろうが!!」
〈なんでって? カッコいいからだよ〉
・・・イラッときた。
これはアレだな?
間違いなく地球人が異世界ラナトコノに転移・・・もしくは転生して関わっているんだろう? そうだ。そうに違いない。どこのバカだ! こんなバカなモノを作るバカは!!
〈おーい? るっちゃーん?〉
だいたい、なんで埴輪なんてものをチョイスしたんだ! 地球には世界中に人形なんて数あるだろう! こんなデフォルメされたような姿の土人形を兵器として開発するなんて・・・。
「主様? 敵が弓を構えているのですが・・・いいのですか?」
「え?」
俺がすぐさま敵である埴輪騎馬兵が表示されるウインドウに目を戻すと、確かに弓を構えて矢を番えている埴輪の姿が見えた。
弓?
コレはまるで、刀を弓のように伸ばして構えているようだ。そこに光の弦が両端を結び、矢を番えるように構えることで、ビームの矢を射る姿勢となっている。
「アライラ! 横っ飛びで回避だ!」
〈おっけーッ!〉
改めて、埴輪騎馬兵を見る。
赤土色の身体は、上から下まで統一された色をしており、穴を空けられただけにしか見えない両目の黒い穴。口と思われる楕円形の穴が埴輪であることを強調しているかのようだ。
それは、馬も同様にできていることから、アレは地球で言うところの『人形埴輪』と『馬形埴輪』を模して造られたのだろう。
だとするなら『家形埴輪』や『舟形埴輪』もあるのか?
いや、あるはずだ。なるほど、冷静になって考えてみれば、これほどに分かりやすい侵略兵器はない。舟形埴輪で惑星に降下し、人形埴輪と馬形埴輪で土地を制圧。
そのあと、前線基地として家形埴輪を設置して侵攻の足掛かりとするわけか。
理に適っている・・・と言うのが、適切な表現なのかは、ちょっと判断に困る。別に埴輪である必要が無いとも思うからだ。
なんで、埴輪なのだろうか?
〈あーらよっと! この程度の攻撃にやられる私じゃないんだな!〉
横っ飛びで、放たれたビームの矢を回避して見せるアライラ。この様子だと、さほどの脅威でもなさそうだ。
後は、ビームを防がれないようにいかに攻めるか・・・。
「なんだ?」
ゾワッとした感覚が背筋をなぞり、俺はビームの矢を急いで確認する。
横っ飛びで回避した以上、通り過ぎた矢は遠くへと飛んでいくはずだ。っと、思っていたが・・・アライラを通り過ぎてすぐに、矢は玉になる。
「アライラ! 上に跳び上がれ!!」
〈ほぃ?〉
疑問形の声を出しつつも、指示通りに上へと跳び上がってくれる。と、玉になったビームの矢が横っ飛びで回避したアライラの着地点目掛けて、再び矢を形成して飛んできた。
「このまま緊急離脱ジェットだ!!」
〈じぇ、ジェーット!!〉
一気に加速して逃げる。と、横っ飛びでの回避地点で再び玉となったビームの矢が、上に跳んだアライラを追いかけるように再び上に向かって矢を再形成しつつ飛ばしてくる。
そして、緊急離脱ジェットで一気に距離を空けたアライラを追うように、玉となってからビームの矢を再形成して飛ばしてきた。
「ビームで撃ち落とせッ!!」
〈くらえ! 邪眼ビーム・改だ!!〉
最初のビームと同様に、邪眼からビームが発射されて、追ってくるビームの矢と激突する。
この時、まるでバケツ一杯の水をお互いに正面から掛け合ったように、水と水がぶつかり合って生じる水飛沫のようなビームの飛沫を撒き散らした。
「まさか!? 邪眼ビーム・改と同威力なのか!?」
〈マジかーッ!!〉
埴輪騎馬兵のビーム矢による攻撃への対処で、埴輪の様子が分からなくなっていたことは、致命的と言える。
「主様! 埴輪騎馬兵が突進しております!」
大道人から注意を促され、俺とアライラはすぐさま埴輪騎馬兵を見た。
すでに俺の視力でも十分に姿を認識できる距離まで接近しており、今から距離を取ろうとしても、その動作だけで時間を無駄にすることとなる。
と、埴輪騎馬兵が手にしていた弓が形状を変更した。
それは、日本刀のようで刀と言うには、まだ発展途上にあるような形状をしている。その上で、埴輪が持っている武器としての刀を考えると、俺の覚えている知識に引っ掛かるモノがあった。
「蕨手刀か?」
野草の一種に『蕨』という植物がある。
蕨手刀は、その『蕨』の若芽・・・『早蕨』ともいう先端が拳上に巻いたような形状をしているそれに、柄の形状が似ていることからつけられたという説だった気がする。
えーっと・・・あまり詳細を思い出すことが出来ていないが、古墳時代の遺跡から出土している刀剣類だったとは思う。
それを異世界の量産兵器である埴輪騎馬兵が持っているのが、どうにも・・・。
〈わらびてとうってなに!?〉
「奴が持っている武器だ。弓だったはずだけど、変形して刀っぽくなっているだろ?」
〈おー・・・〉
「地球では、古墳時代の遺跡から出土している刀剣類で、つまりは古い日本刀の一種だ」
〈古代のロマンをそのひと振りに!〉
アライラが、何を血迷ったのか前足二本にそれぞれビームを纏わせると、コレを振りかぶりながら埴輪騎馬兵へと突撃を始める。
「ちょっと! やめろ!」
〈いくぜ! 邪眼! ここで会ったが何万年?斬りぃい!!!〉
どうしてそう、技名が適当に・・・いや、前に『一万年と二千年斬り』とか言ってなかったか!?
などと、俺が余計な事を考えている間に、アライラが前足に纏わせたビームで斬りかかった結果は無力化で終わる。
先に邪眼ビームを防いだ謎の力場が展開され、前足に纏わせたビームが力場に接触すると玉にされて受け流される。
反射などされていれば、こちらが不利だったが・・・そうはならずに水のように流れて散っていく。
そうして、蕨手刀を抜刀した埴輪騎馬兵の反撃を、即座に身を低くしてシャカシャカと動くことで空振りさせて見せた。
〈ぅひぃーッ! 今、かすった!? 背中かお尻に掠った!?〉
「大丈夫だ! ちょっと体毛が切れた程度の被害だよ!」
動き方がゴキブリのソレで、とにかく地べたをカサカサと高速移動して埴輪騎馬兵から距離を取る。
一方、埴輪騎馬兵も急ブレーキから前足を地面に強く押し当てて、後ろ足で地面を蹴りつつクルッと反転してこちらに向き直る。
生物としての馬だったなら、今の反転で足が折れていただろうけれど・・・そこは埴輪だから問題ないのか・・・。
睨み合いになる。
「アライラ。ビーム以外で、奴に通用する技はあるか?」
〈反応弾〉
「却下で」
〈そんなー〉
バスター・ビームのエネルギーを詰め込んだ反応弾とか・・・ギガトレンク戦でこりごりだ。一発でもどこまで被害が出るか分かったもんじゃない。
しかし、アレは洞窟だったからこその結果とも言えるとは思う。こう、広い場所で使えばあの時と同様の結果になる。ということはないかもしれない。
・・・いや、アライラの事だ〈八連邪眼・反応弾・改!〉とか言いそうなので、やっぱり却下だ。
「他!」
〈えー・・・えーっと、ポジトロン・ライフル!〉
・・・アレかな?・・・でもアレってビームみたいなモノじゃないかな?
「他」
〈えぇーッそんな急に言われてもなー〉
ダメか。
〈じゃあ! グラビティ・ブラスト!〉
・・・どういう技か想像しにくいが、ギガトレンクに重力対策の防御機能があった気がするな。
「だけど、物は試しか・・・やってみてくれ!」
〈おっしゃーッ! 八連じゃ―――〉
「邪眼は一つだ!」
〈がっふんげっふん! えーっと、邪眼! グラビティ・ブラストぉお!〉
どんな技になるかも分からないのに、いきなり邪眼八つを使おうとするな。って、前にも言ったはずなんだけどな・・・言ってなかったかな?
最近、自分の記憶力が疑わしくて不安しかない。
ちょっと自分の不甲斐なさに気落ちすると、それとは裏腹に空間を歪めて黒い紫のようなビームが、邪眼から発射される。
LEDの三色を捻じって黒く染めたようなビームに、ゲームなら闇属性なんだろう。と推測する。
「なんか、闇色のビームみたいだが?」
〈あれー?〉
見た目こそ、闇色のビームでしかないのだけれど、埴輪騎馬兵の対応は先のビームとは異なって、馬の装甲板が開くことで新たな力場を発生させた。
開き方自体は、ビームの時と同様で機械の回路を思わせる光る線が走ってから装甲が開く感じだが、ビームは埴輪兵。重力ビームは埴輪騎馬。と、役割分担しているように見える。
そうして、重力ビームは発生した力場に絡めとられると、受け流されていく。
「・・・アライラ? 他には?」
〈しるかよーッ!!〉
さすがに咄嗟には出てこないようだ。
しかし、これはマズいな・・・基本がビーム主体の攻撃方法を多用するアライラだから、ビーム系統が防がれてしまうと、どうしようも無くなってしまう。
そうであるなら、奴が近接戦闘にて物理的な手段。蕨手刀を使用してきたことを考えれば、おそらくは物質を使用した攻撃手段であれば防ぐことはできないのだと思う。
つまり、こっちも物質である槍などを用いればいいだけのこと・・・。
「やるしかないか・・・大道人・アライラーを」
〈マジで!? アレは不採用になったはず!〉
そう。
フル装備で万全を期した『大道人・アライラー』はヨーロロンにあっさりと返り討ちにされた。と言うのも、地面に接地している状態からの動作が鈍すぎたからに他ならない。
彼女の記憶を見た限り、空中戦であればノシェルスと戦闘ができていたので、合体してから即座に空へ飛び上がれば、勝利の可能性は十分にある。
だけれども・・・。
空に飛び上がるまでの時間が問題だ。
重すぎるので、邪眼四つを使ったロケット・ブースターで火力任せの打ち上げをしないといけないわけだ。
それを傍観してくれるほど、この埴輪騎馬兵も優しくはないだろう。
「そう、アレは不採用だが・・・プランBを考えて置いた」
〈ぷ、プランB!?〉
そうとも。
アライラが『大道人・アライラー』を諦めきれずにいたことは分かっている。
のちに『六像合身ゴッドアライラー』とかいう・・・どう聞いても組体操しか想像できない謎の合体を提案してくるぐらいには、諦められないようだ。
・・・六人の大道人でピラミッドを作って、天辺に立つ大道人がしゃちほこのように体を逸らしているアライラを持ち上げている絵面しか想像できないんだよな。
彼女は、どんな姿を想像して『六像合身ゴッドアライラー』なんて提案しているのだろうか?
ま。それは横に置く。
俺が考えた『大道人・アライラー』プランBを試して見るタイミングだろう。
本当は、事前に練習をしておきたかったけれど・・・まさかここで騎馬兵が出てくるなど、誰が予想したことか。
「俺の案・・・やってくれるか!?」
〈もちろんだぜーッ! 合体だぁーッ!!〉
おぉ・・・なんかテンションが爆上がりしているな・・・それなら、遠慮なく!
「まずは後方へと飛び退きつつ、粘着力100%の糸を君の頭の上に座布団のように塗ってくれ!」
〈よぉー・・・おー? は?〉
「いいから、早く!」
どうにも、俺の指示が彼女のイメージと食い違っていたようで、反応がものすごく鈍くなってしまった。が、一応は指示通りに後方へと飛び退きつつ粘着力100%の蜘蛛糸を頭に塗ってくれる。
「大道人!」
「しょ、承知しました!」
どうやら、俺の意図は分かってくれているようだ。
ちょっと顔が引き攣っているようだが、今は埴輪騎馬兵を打倒することが優先されるので、動いてくれる。
「大道人のサイズを現状から三分の一ほど小さくする!」
〈へぇ?〉
縛鎖閻魔錠を錫杖より飛ばして、大道人と接続させる。
そうしてから、巨大大道人とは逆の手順でサイズダウンさせた。これによって、重量が減る。
「大道人! 合体だ!」
「・・・了解です」
アライラの頭の上へと跳び上がり、そして正座の姿勢で頭に着地する。と、塗っておいた蜘蛛糸によって、大道人はアライラに接着された。
「これがッ! 大道人・アライラー! プランB! アラクネ形態だッ!!」
「・・・」
「・・・」
〈・・・〉
アレ? なんだろう? マリーさんも大道人もアライラも・・・さらには埴輪騎馬兵さえも、俺を注視しつつ可哀想なモノを見る目を向けてくるんだが?
「どうしたんだ? アライラ? 新形態への合体だろ?」
〈・・・ダサーい〉
ダサいのは仕方ない。
前の『大道人・アライラー』はカッコいいを重視して弱かったのだから、アラクネ形態は実用性重視での合体だ。格好いいかどうかは二の次である。
と、俺が一転攻勢を指示しようとした時、埴輪騎馬兵が動いた。
馬に乗っていた埴輪兵が空へと跳び上がり、全身に機械の回路を彷彿とさせる光を走らせる。これと同時に、馬も同様の光を全身に走らせた。
と、埴輪兵の下半身が上半身より分離し、股関節を縦に割りながら上半身の回路線をなぞる様にスライドしていくと、背中に接続される。
一方で、馬の頭が首ごと分離すると、首元の穴から接続プラグのような機械が出現し、光が埴輪兵の上半身へと伸びた。
〈ガイドビーコンか!〉
「え?」
よく分からないけれども、埴輪兵の上半身がブレることなく埴輪騎馬の接続プラグへと誘導され、これらが接続される。
そして、埴輪兵の背に接続された左右の足。そこに馬の頭と首が分離して左右に接続されると、頭と首はパラボラアンテナのように展開された。
これから、ビーム状の円錐形をした刃が形成されて、肩越しでそれぞれに構えられる。
「ケンタウロス形態!? 下半身を背中に接続させて、四本腕のような武装にしたのかッ!」
〈ルッタは、アレを見習うべきだと思う〉
なるほど、確かに盲点だった。
「よし! 地獄門・地蔵合掌大道壁!」
〈なんで?〉
なんでって、アライラが身習えと言ったんだろうに。
大道人の腕だけを召喚して防御技とする合掌壁。コレを、アラクネ形態となった大道人の背中に召喚すると、さらに錫杖術からの巻蛇槍貫撃へと派生させて装備させた。
「これで四本腕だ! 合掌壁の操作は俺がするので、大道人は右手に槍貫撃を。左手に壁鎖槍を装備してください!」
「了解しました」
〈・・・見習う場所がちがーう〉
「え、どこが?」
これで戦闘能力的には互角になったはず。ビームが防がれてしまう以上は、こうして戦う他に手もないだろうに。
しかし、埴輪騎馬兵がケンタウロス形態になれるのは想定していなかった。
土人形だからこその柔軟な形態変更か? 厄介な・・・。
「さぁ、アライラ。ここからが正念場だ!」
〈もーいいよー。今日は帰ろうよー〉
「どうしたの!? 急にやる気無くしてさ!?」
コレは想定外。
まさかアライラがここまでやる気を失うなんて、想像もしていなかった。
「どちらにしたって、あの埴輪騎馬兵を倒さなければいけないんだぞ! もっとやる気を出してくれ!」
〈へーい・・・ぇーい・・・ぉー〉
コレはダメかもしれない。
埴輪騎馬兵は、蕨手刀の鞘を盾のように構える。っと、鞘は四角い盾へと変形した。
これで、奴も武装はほぼ同じになった。右手に蕨手刀。左手に盾。背中より左右に円錐形の刃を形成したビームの槍だ。
さらにケンタウロス形態へと合体しているので、四本足。
だが、それがこっちも同じこと。
アライラと大道人のアラクネ形態である現在、右手に槍を。左手に傘形状の盾を。さらに背中から合掌壁を伸ばして左右の手に槍を持たせている。
そして、蜘蛛のモンスターであるアライラの脚は八本だ。この安定感は、彼女だからこそだろう。
「アライラ。大道人のサイズは小さくなっているとはいえ、重量はまだ十分重いはずだ」
〈うん。結構あるねー〉
返答にやる気が感じられないな。
「マリーさんの魔法術講座でインストールしてもらった身体能力向上魔法術は使えるな?」
〈・・・使えるけどさー〉
前に、アライラのバフ技を実験した際に、マリーさんから魔法術講座を受けた。
座学が苦手だというアライラは、マリーさんの手作り紙芝居風授業を寝て過ごしたことで、割と乱暴な手段で魔法術を覚え込まされたのである。
それが、地図をインストールした時同様の手段だ。
能力を向上させる魔法術を一通り、情報体として用意してくれたマリーさんは、寝ているアライラの眼に乱暴に突き刺して覚えさせたのである。
まぁ、マリーさんとアライラによる口喧嘩になったのは言うまでもないが、最終的にはマリーさんのお母さんオーラに気圧されて、アライラが引き下がって終わりになったけれども。
さすが、昭和時代に三児の母だったという人だけの事はある。と、俺も腰が引けた。
そんな魔法術は、アライラがあまり使いたがらないので使われてこなかった。
「ここが使い時だ。邪眼で発動させて、君の運動能力を底上げしてくれ」
〈ぅいー。邪眼魔法術・・・ポテンシャル・ブーストー〉
さっきから、やる気が一切感じられないな・・・そんなに俺の考えたアラクネ形態はダメだろうか?
そんなやる気は横に置くかのごとく、邪眼は魔法術を起動してアライラの身体能力を向上させるバフを使ってくれる。
うん。本人とは別個でよかったね。
「カッコよくともダサくとも! やるしかないからやってくれ!!」
〈そうかもしれないけれどさー〉
彼女も分かっていることだろう。
こうして、槍と盾を構えた地蔵に合わせて、敵である埴輪騎馬兵へと突進を始めてくれた。
「騎馬戦の始まりだ!」
〈運動会かよー〉
アライラのテンションが低い分、俺が盛り上げていくべきだろうと思って、がんばっているけれど・・・正直、俺の性分ではないので辛くなってきた。
埴輪騎馬兵と大道人・アライラー・アラクネ形態・・・なんか長いな。もう少し、短い名前は・・・っと、そんな事を考えている場合でもないか!
初手は、互いに盾と盾とぶつけ合う。
八本足の突進と、四本足の突進が互角となったことに驚きを隠せないが、よく見たら馬の背から装甲板が開いてロケットブースターのような装置が飛び出している。
これが噴射する推進力で、足りない四本分の踏ん張りを補っていたようだ。
〈ふぐぐぐ! ちょっと! ロケットブースターとか反則だろうが!〉
「ルール無用の殺し合いだからな!」
盾と盾の押し合いは拮抗しているため、腕を振るって相手を横倒しにしようと試みるも、埴輪騎馬兵も同様の攻撃を仕掛けてきたことで、互いに立ち位置を交換するような動作で終わってしまう。
「一転! 攻勢に出るぞ!」
「承知!」
立ち位置の入れ替え時に、ぶつかり合っていた盾と盾が離れたことで、今度は槍で突く攻撃を開始する。も、埴輪兵の振るう蕨手刀で払われてしまう。
「来るか!」
槍が払われたことで、埴輪兵の背から延びる二つの槍がこちらを攻撃してくる。が、こちらにも大道人の背に展開させておいた合掌壁を用いて槍を装備させているので、俺が操作して迎撃することとなる。
槍には業火を灯しているため、ビームの槍を受けたとしてもすぐに融解することはない・・・はず。
ちょっとだけ不安が過ぎるモノの、業火を灯した槍は埴輪兵のビーム槍と激突して受け止めて見せた。
しかし、火花が散って結構危険な状況であることに変わりはない。
「アライラ! ステップを踏んで撹乱しつつ背後に回り込んでくれ!」
〈へいへいほー〉
へいへいほー?とかいうリズムでステップを踏むアライラのゆったりのんびりした動作に埴輪兵が攻撃を激しくしてくるも、どういうわけか俺たちが居ない位置へ攻撃をしていた。
〈残像だ!〉
え? 今のが? でも、像は残っていなかったはず・・・。
〈邪眼ビーム!〉
がら空きとなった背後に回り込んだことで、アライラが邪眼ビームを発射する。
本当は、地蔵の槍で足を攻撃したかったのだが・・・これは止む無しだ。この近距離であれば、ビームを防ぐ力場も作用しまい・・・。
邪眼ビームが装甲に命中すると、滑るように装甲の上を通過して飛んで行った。
〈くぁー! なんじゃそりゃあああああああああああああッ!!!〉
君が叫ばなければ、きっと俺が叫んでいただろう。
何だアレ? まるで雨水を弾くワックスでも掛かっているかのように、ビームが「つるるるー」って具合に滑って行ったぞ?
〈あたいゆるせねーッ! 人をおちょくりおってからにぃい!!!〉
ムキーッて言いながら地団駄を踏むが・・・ちょっと前を見て欲しい。
「回避だ! 後ろに跳べ!」
〈え?〉
遅かった。
俺も指示が遅かったから、コレは俺の責任だろう。
埴輪騎馬兵は、すぐさま方向転換をして突撃してくると、前足を持ち上げてからアライラの顔へと思いっきり叩きつけてくる。スタンプのような蹴りと言うべきか・・・。
〈ふぐっふ〉
体重が掛かった一撃は、アライラを強引に地べたに叩き伏せる勢いがあり、これによってムリヤリに地面へと沈むこととなる。
そうして、間髪入れない蕨手刀と二本の槍による連撃。
「大道人!」
「行きます!」
俺と大道人で、埴輪兵の攻撃を真っ向から防ぎつつわずかに手が止まったところで反撃に出る。が、アライラが動けないので、攻め続けることが出来ない。
すぐに攻守が入れ替わり、互いの武器の激突する音が響き、振動が全身を揺らしてくる。
「アライラ! 立てッ! さすがに俺と大道人だけじゃ無理だ!」
〈・・・ルッタ〉
俺の名を呼ぶのと同時に、後ろへと飛び退くアライラ。
飛び退く際に、地面に亀裂が生じていたが・・・アライラは必要以上に力んでいたという事か?
〈私の腕に、ドリルランスを装備してッ!!〉
あ、声に怒りが滲み出ている・・・。
それで腕っていうと、前足・・・あ、右前足を突き出してきた。そこにドリルランス・・・つまりは巻蛇槍貫撃を巻けってことか?
「地獄門・縛鎖閻魔錠!」
以前、ノットン雄との戦いで、防御のために前足へ鎖を巻いたことがあったと思い、それと同じ要領で前足に巻いていく。
すると、閻魔錠のコントロールがアライラに奪われた。
〈あいはぶこんとろーる〉
着地しつつ、アライラは邪眼を複数輝かせて呟くと、続けて言った。
〈ドリルング・ドライバァァアアッ!!〉
前足に巻いた閻魔錠が解かれると、前足を軸棒とするように螺旋形状に鎖が並び始め、コレがドリルのように前足を軸として回転を始める。
さらに、鎖の隙間からビーム刃と思われるモノが噴き出しているのを見た。
しかし、俺の思考はアライラが言った技の名前に持っていかれる。
「ドリルング?・ドライバー? ドリルングってなんだ?」
俺の疑問は呟き程度であったため、アライラの気合が籠った声音にかき消されていく。
その間に、装備された槍を構えて埴輪騎馬兵へと突撃するアライラである。
対して、埴輪騎馬兵はビームを防ぐ力場を展開して、さらに盾も構えつつ自らも突撃してくる。
ビームを無力化し、盾で槍の一撃を受け流すことで、カウンターを狙っていると思われた。が、敵の思惑はアライラの一撃によって穴を空けられる。
力場に接触した『ドリルング?・ドライバー』は案の定、ビームが力場の影響で消えてしまうものの、鎖の回転は止まることが無いので力場を突き破って突進していく。
その直後に、埴輪騎馬兵が構えていた盾と激突する。
これで受け流されると思われたが、槍を構成する鎖の一部が瞬時に盾に巻き付いたことで、盾ごと回転した。
これによって埴輪騎馬兵の盾を、それを持つ手ごと捻じり切った。
その勢いを殺すことなく、盾ごと相手の身体に槍を突き入れる。と、盾が砕けて回転する刃が埴輪騎馬兵の身体・・・馬の下半身の一部を砕きながら内部へとダメージを負わせたようだ。
〈ルッタ! 業火!〉
「え? あ、業火!!」
まさかアライラから指示を受けるとは思っていなかったので、反応がだいぶ遅くなってしまった。けれど、ドリルが内部に侵入したことによるダメージなのか?
明らかに動作が鈍くなっていることで、間に合った。
埴輪騎馬兵の全身から青い火が噴き出して、全身が業火に包まれていく。
「滅却!!」
アライラが『ドリルング・ドライバー』とかいう武装を手放して、埴輪騎馬兵から飛び退くのを見てから、俺は『業火・滅却』の滅却を起動する。
そうして、埴輪騎馬兵を包む業火が消え・・・その身体は力なく横倒しになって、砕けた。
〈ふん。テメーの敗因はたった一つ。私を怒らせたことだぜ〉
・・・格好つけているけれども、もっと最初からそうしてくれれば怒る必要もなかったんじゃないかと思うんだ。
まぁ、それを言っても意味がないので言わないが・・・。
「ほら、ルッタ。早くあの残骸を回収しなさいな」
手を叩いて、俺に促してくるマリーさん。
そうして、俺がマリーさんを見ると、叩いていた手を止めて埴輪騎馬兵の今や残骸となったソレを指さした。
「アレを回収するんですか?」
〈食べられないと思うんだよね〉
「アレが、目当ての鉄材になるモノよ」
「えッ!?」
〈えッ!?〉
アライラの食事を作るための材料が、あの埴輪なのか!?
「いろいろと聞きたいことはあるだろうけれど、早く回収してしまいなさい。この辺りを巡回している埴輪兵が倒れたのだから、すぐに偵察兵がやってくるわ」
それはマズい!
「アライラ! 残骸を回収するから近づいてくれ!」
〈りょーかーい!〉
シャカシャカと残骸まで移動してくれると、地面に伏せてくれる。
そうして、俺は急いでアライラの上から転げ落ちて・・・急ぎ過ぎた結果だが・・・ランドセルを開きながら残骸を回収していく。
手が足りないので、大道人を二体ほど召喚して残骸をかき集めてもらった。
ドドドドドダダダダダダダドドドドドドドダダダダダダダドドドドドドドッッッッ
「何の音だ?」
「ルッタ! 早くしなさい! 偵察兵どころか、中隊規模で来ているわ!!」
対応早過ぎじゃないかな!?
「ささ、主様!」
回収を手伝ってくれた大道人の一人が、俺をアライラの頭の上に運び上げてくれる。
「私たちで足止めをいたしますゆえ、主様とアライラー殿は飛行形態にて、この場を即時離脱してください」
「ありがとう! 大道人!」
二人の大道人は、錫杖を構えて谷より接近中の敵部隊へと向き直る。
そんな二人の背を見送るように、俺たちは撤退する。
〈緊急離脱ジェーット!〉
集落の方角へとお尻を向けて、アライラが一気に空へと飛び上がる。
そして十分な高度に達したところで、飛行形態に移行した。ここまでくれば、もう大丈夫だろう。
なんて思ったのが、フラグだったのだとすぐに気が付いた。
アライラと合体している頭の上の大道人が、ただ一言。
「谷より、無数の矢が接近していますが・・・どうしますか?」
キラキラ光るお星さま。なんて表現がピッタリな時間ではないので、アレはビームの矢だろう。
それがとんでもない数で空に射られたようで、大きく円弧を描きながらこちらに接近してきていた。
「・・・アライラ。全速力で逃げるんだ」
〈言われなくてもやりますよってね!!〉
使っていない邪眼も全部使って加速する。
だが、よくよく考えてみれば、埴輪兵が使ったビームの矢は追尾式だ。
圧倒的速度で集落まで逃げてきたが・・・ビームの矢は集落へと押し寄せてきた。
〈しつこ過ぎるでしょうが!!〉
アライラが悲鳴をあげている横で、マリーさんがため息を吐きながら言う。
「これも修行よ。がんばりなさい」
と言うと、アライラを持ち上げてビームの矢に向けて投げたのである。
・・・俺ごと。
〈ちょおおおおっ!!!!〉
「こ、これはさすがに!」
こうして、俺たちは迫るビームの矢を迎撃することとなる。
少なくとも、回避ではビームが衰えることがないので、邪眼ビーム改と同等の威力を持つ攻撃でなければいけない。
ビーム改では、常に一発を当てなければいけないため、無数の矢を迎撃するには非効率的だ。
そこで『邪眼殺法・手裏剣機動ビーム刃』を使うこととする。
強力なビームの刃は邪眼ビーム改に劣るモノではないし、単発の邪眼ビーム改よりは隙が生まれにくい利点がある。
こういう感じで、邪眼殺法・手裏剣機動ビーム刃でビームの矢を迎撃し続けた・・・が、どうしてもビーム刃を展開している本体は刃に対して側面が隙だらけになることを失念していた。
しかも、アラクネ形態のために大道人が接着されているため、重心が狂って手裏剣の回転が上手くできず、楕円形で振り回されているような状態になってしまったことで、むしろ隙だらけになっていた。
泣き言を言っている間は無いので、俺と大道人でその隙を埋めつつ、ひたすらに迎撃し続けた。
〈なんか、毎度こんなんばっかりぃ・・・〉
「・・・いつものことになりつつあるな」
途中、大道人がビームの矢で砕かれてしまったが、これで狂っていた重心が回復し、手裏剣機動のキレが戻ったことでラストスパートとなる。
こうして、やり切った俺たちは地面に抱き着くようにして眠った。
もう、本当に疲れた・・・。
次回は、手に入れた鉄材を加工する?お話を予定していますが・・・。
【壺外編】も次の話を作っている最中ですが、登場する敵キャラがまったくどうしたら良いか分からなくて止まっている状況です。
何を考えているのか分からないキャラ。ってどう書けばいいのか・・・。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




