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28 そ、そなことなぃよ

 こんにちは。こんばんは。

 誤字脱字の報告をしてくださった方。ありがとうございました。

 報告の有無がどこにどのように表示されるのか知らなかったので、まるで気づきませんでした。


 今回は前回の続きとなりますが、自分が思っていた以上に時間が掛かってしまいました。終わりが上手く書けず、雑になってしまったと思います。申し訳ありません。


 どうぞ、最後までお楽しみいただければ、幸いです。

『・・・っと、録音はこれで始まっているのだったかな?・・・こほん。あーあー、やぁ、ルッタ。返信ありがとう。父さんはとっても―――』

『―――あなた! 取り扱い説明書を持ってきたわ』

『ありがとう。これでメッセージの編集は―――』

『まずは、こっちの術式に魔力を流して・・・』

『え? あ、ちょっ! リソ――――』

 ブツッ。

 こんな感じで終了した俺のメッセージに対する返信の第一弾。

 ・・・なんだかなー。


 二週間も寝ていたらしい俺は、マリーさんに言われて救助用魔法術具の確認を行った。

 すでに既読であったが、それはマリーさんが返信するために内容を確認したからだという。驚くことに、大道人が俺に代わってメッセージを録音してくれたらしい。

「喋れたんだ?」

「はい。強化をいただきましたので、道標人と同様に喋ることができるようになったのです」

 うーん。

 強化すると地蔵は喋ることが出来るようになるわけか・・・マリーさんにも確認したが、地蔵と俺の声は間違いなく同じらしい。

 なので、これからも大怪我で寝込んだ時は、代理がいるのでメッセージの返信は心配しなくてよくなった・・・とはならない。

 結局のところ、後でメッセージに矛盾が生じないよう確認しないといけないから、手間が余計にかかっている。

 なるべく、倒れることの無いように気を付けなければ・・・。

「それにしても、当たり障りのないやり取りだな」

「はい。マリー様との話し合いで、そういう方針になりました」

 とはいえ、ちょっと油断して大怪我しました。とか送信しなくても良かったのではなかろうか? 向こうからの返信が『大丈夫なのか!?』というモノだったから大変だ。

 なにを言っているのか分からなくて、何度か繰り返して聴いた。やっぱり何を言っているのか分からなかったが・・・。

 とにかく、凄い心配している。心配し過ぎて冷静さを欠いている。そんな感じのメッセージは、とても嬉しい反面、なんだかワザとらしくて胡散臭さを感じてしまう。

 どことなく、三文芝居レベルに感じる。

 心配してくれるこの世界の両親には申し訳ないけれど・・・。


「さて、今日は何をしようかな?」

〈ご飯ッ! お腹空いたんだってばよーッ〉

 ・・・そういえば、二週間も何を食べていたんだ?

「この二週間は、何を食べていたんだ?」

〈大道人が沸かしてくれた水〉

 えぇ・・・それはお湯というのではないの?

「つまり、お湯だけ?」

〈そう、その通り〉

「なんで?」

〈ほら、ノットン雌にバラバラにされちゃったでしょ? マリーさんが、固形物はダメ。水でも飲んでおけー。って言うんだよ!? せめてルッタの火で調理してよ!って言ったら、大道人が水を沸かしてくれた〉

 ふーむ。

 そういえば、モンスターは基本的に魔力を摂取していると言っていた気がするな。

 なるほど、水を沸かすことで魔力を込めてアライラに呑ませた・・・うん? んん?

「どうやって沸かしたんだ?」

〈それ〉

 アライラが前足で指し示す先には、えーっと・・・浴槽? 木製の浴槽だよな?

〈マリーさん曰く、お風呂だってさ〉

 浴槽だった・・・アライラと比べると、升のようだな。

 これに水を汲んで、大道人が火にかけることで魔力湯となり、アライラの延命に繋がったわけか?

 とはいえ、直火では桶・・・いや浴槽がダメになってしまうかもしれないから、先日に用意したグリル?モドキを挟んで火から離したんだとは思うが。

 ・・・これ、上手く使えれば蒸し料理が・・・ムリか。アライラのサイズには小さ過ぎる。

 しかし、閻魔錠で輪を作り・・・同様のモノを複数用意して重ねてから、アライラの蜘蛛糸で固めて防水処理を施し、鎖をを編んだ網を底にして繋ぎ合わせれば・・・できるかもしれない。

 あとは、鍋を作る事ができれば、蒸し料理も可能になる。

 これはアレだな。

 まずは地獄変で得られる材料で蒸籠モドキが作れるかを試して見るのがいいだろう。そうして上手いこと出来上がった時は、アライラ用の蒸籠を作って・・・。

 何を料理する? 肉か?

 肉まんとか作る? ちょっと材料が手に入るかも分からないな。このダンジョン。モンスターのサイズはどれも怪獣クラスだけど、食材のサイズは人間大しか見たことがない。

 まさか、怪獣クラスの野菜モンスターとか居るとも思えないし・・・コレがフラグになって、遭遇できれば御の字だけど。今、フラグをへし折った気もするから五分五分としておく。

 うん。上手いこと蒸籠モドキが試作できたなら、ジャガイモを蒸かしてじゃがバターとしゃれ込もう。

「ま、そのうち機会もあるか」

〈え? なにが?〉

 さて、今日は何をしようかな?とか思ったけれど、やることは決まっている。

「外に出るよ。まずはアライラのご飯だけれど、ヨーロロンを狩りに行こう」

〈ひゃっはーッ! 地上戦ではボッコボコにされたが、今は違う!〉

「・・・まだ、根に持っているの?」

〈にちゃあ〉

 ・・・悪い笑みをイメージしているんだろうけど・・・地面に落ちるとジュっと音が鳴る涎が落ちる。

「涎を垂らすな。危ないだろ!」

〈ごめん〉





〈で? マリーさんも来るんだ?〉

「ああ。当然だろ・・・」

 今日までに、なんど助けてもらったことか。

 今現在の俺は子供だし、保護者に居てもらう必要は大いにある。あと、何かあった時は助けてもらえる。甘えるな。とか言われると思うが、俺とてアライラと何とかできるならそうしたいが・・・。

 俺の意思に関わらず、ノリと勢いに引きずられて幾度も死にかけているから、声を掛けずにはいられない。

 ダンジョンに行くなら、何を持っていくか?と問われるならば、マリーさんを連れて行くと即答する。たとえ「誰だよ?」と言われても、今の俺は「マリーさんを連れて行く」と即答する。

「君といると、不意に死にかけるからな」

〈そっかー〉

 まるで他人事のようだ・・・いや、誰のせいだ!? 誰のッ!!

 先日なんて、記憶が飛ぶほどの負荷で倒れたんだぞ? マリーさんが居なかったらどうなってたか、想像に難くないだろ・・・無いよね?

〈ところでさー? 空から奇襲を掛けないの?〉

「ああ、今回はね」

〈なんで?〉

「先日、君が使った『大道人・アライラー』という形態を直にみたいからだ」

〈おっほ! まかせんしゃい! ヨーロロンなぞ、我が超人殺法で瞬殺して見せようぞ!〉

 ・・・。

 ・・・・・・何言ってんだ? この子。

「今の君だと、大蜘蛛殺法の方が正しいと思うんだが?」

〈のんのん! 私が『大道人・アライラー』なれば、人型になるわけで、つまりは超人なのですよ!〉

 ・・・アライラの鑑定によれば、今の俺が超人に分類される人種なのだが? 俺が実行する殺法であれば、超人殺法も正しいと思うんだけど、大道人と合体した形態だと・・・なんと分類するんだろう?

 ゴーレム種とか、石像人? あ、意味わからん事になるから、この思考は放棄しよう。

「やる事は、身体測定みたいなモノだよ」

〈うぅ・・・今朝食べたご飯が、傷んでいたようだ・・・お、おなかがぁ〉

「二週間、お湯しか飲んでないんじゃないの?」

〈・・・・・・お水が傷んでいたよーだー。おなかがー〉

「はいはい」

 アライラの場合なら、腐っていても毒の一種ということで問題なく食べることができるはずだ。

 しかも、大道人が沸かした湯を呑んだのだから、腹を下すことなぞあるはずもない。つまり、仮病であることは明白。

 相手するのもバカバカしい。

「いいかい? 現段階での『大道人・アライラー』は、俺の記憶が飛ぶほどの負荷が掛かるのだから、本来なら使用禁止。ボツ案にするべき形態なんだよ」

〈つまり、採用されてしまえばいいのだろう?〉

 ・・・なんか、キザッたらしい言葉遣いだな?

「すごい自信だね」

〈今さらヨーロロンに負ける私ではないのだよ〉

 ふーん。


「さて、ヨーロロンの群れが目視できる場所まで来ました」

〈おほー。私のごはんー♪〉

「で? 前と同じく、一匹だけ誘導してやればいいのかしら?」

 マリーさんが腕を組みながら面倒くさいと言いたげな目で俺を見ながら確認を取ってくる。

 出発前にお願いしておいたことなので、それで間違っていない。

「はい。それでお願いします」

〈ちょっと? 私まだ大道人と合体してないよ?〉

「まだ、合体は必要ない。まずは、君自身がどれだけ動けるのかを見るんだよ」

〈なんでさ?〉

「だって『大道人・アライラー』と比較するから、まずは素の状態から見ないとダメだろ?」

〈む・・・む・・・そういうもん?〉

「そういうもん」

〈そっかー。ならがんばるー〉

 なんか、やる気ない感じだな。

 俺とアライラでこれからやる事の話をしている間に、マリーさんはお願いした通りにヨーロロンの誘導をしてくれる。

「ほら、ヨーロロンを一匹引っ張ってきたから、そろそろ戦闘準備をしなさい」

「あ、はい。分かりました。アライラ、頼む」

〈ほーい〉

 新たな形態『大道人・アライラー』の今後も使用していくために、ここでその有用性を見せてもらう必要がある。そのための力試しだ。

 今回は、魔力の制限を行わない。俺はマリーさんの横で見ているが、前回と違って魔力は好きに使っていいと言ってある。

〈ぐへへーッ・・・久しぶりだなぁ? ヨーロロンちゃん?〉

 前足をワキワキと動かしながら、実に危ない人っぽい声音でにじり寄る。一方、特に何も感じていないのか? とても平静な様子でいるヨーロロン。

 弱肉強食のダンジョンであるからか? 肝が据わっているようだ。

 ただ、前は震えていたように思うんだけど・・・記憶違いかな?

〈さぁッ! 行くぞッ!! モフモフしちゃうぜッ!!〉

 ひゅん。という風切り音をかすかに残して、アライラはヨーロロンの背後に回り込んだ。

〈残像だッ〉

 ・・・それ、攻撃を受けたように見せて回避していた。って演出の技だよね?

 あと、瞬間移動みたいな移動速度ではあったけれど、残像などどこにもなかったぞ? 何を以て残像とか言っているんだろう?

 ま、言ってみたかっただけだろうけれども。

〈邪眼ビーム改!〉

 直後、邪眼の一つからビームが発射され、ヨーロロンは一撃で倒された。

 どうやら、肛門からビームを通してまっすぐ頭を貫通するように撃ったようだな。

「ふむ。残像?は無駄だったけれど、それ以外はマシになったわね」

「あ、やっぱり残像?でしたか」

「それはそうでしょう? どこに像が残っていたと言うつもり?」

「返す言葉は、ありませんね」

〈こらそこ! ちょっとぐらい褒めろよねッ!!〉

 大丈夫だ。

 残像?以外はちゃんと褒めているよ。マリーさんはね。

「では、次は『大道人・アライラー』でやってもらうかな」

〈まかせろーい! 本番だ! 腕がなるぜーッ!〉

 カンカンカンと自分の前足を叩き合わせて、なぜか音を鳴らしている。カンカンカンとか、どうやって鳴らしてるんだ?

 それにしても、鮮やかに倒したものだ。

 ・・・間違いなく、アライラは強くなっている。けれど、俺はどうだろうか?

「じゃあ・・・地獄道・地蔵菩薩大道人」

 まずは、いつも召喚している大道人を呼び出す。

〈普通のサイズじゃん〉

「そうだよ。君の記憶でも、通常状態から巨大化させて、それからドッキング。だっただろ?」

〈・・・うん! そうだった!〉

 忘れてたみたいだ。

 さて、マリーさんにお願いしておいたことパート2は、大道人の巨大化時に掛かる負荷の測定。いつも中空に表示するウインドウで何かやっているから、お願いした。

 さて、次は大道人を二倍近く巨大化させるわけだが・・・どうやったんだろう?

 なにかしらで技を発動させたのかな? それとも魔力を込めただけか・・・まずは魔力を込めて見るか。

「えーっと、こう・・・かな?」

 とりあえず、魔力を流し込むことにした。

 錫杖を突き立てて、地獄変を通じて魔力を大道人に追加していく。そうすることで、大道人はグングンと大きくなっていった。


 ・・・これアレだな。

 空気を入れた風船みたいだ。マリーさんが言ったように、魔力ポンプという表現は正確無比のようだ。なんだか虚しい気持ちになるけれども。

「アライラ。合体していいよ」

〈よっしゃーッ! 待っていたぜ!〉

 ぴょーん。と跳ねて、大道人の背に貼りついたアライラは、そして大道人と接続したようだ。

「あいはぶこんとろーる!」

 ふむ。

「大道人・アライラー!」

 ・・・ふむ。

「いえーい! どや? どや!? コレが『大道人・アライラー』だぜーッ!」

 ・・・・・・うん。

「声を変更しよう」

「え?」

「ちょっと、そこを動かないでくれ」

「え? えーっと? 声の変更とか必要ある?」

「ある」

「いやいや、別によくない? 私のラブリーぃなお地蔵さんは、きっと人気急上昇するってばね!」

「黙れ。動くな。声を出すなッ」

「ごめんなさい」

 その場に正座をしてもらって、大道人の肩によじ登る。

 首辺りに錫杖を当てて、地獄変で声帯の調整を行えないかと試行錯誤を繰り返す。しかし、難しいな。アライラの声を大道人で再現するのは・・・。

 絶対音感とかあれば、もっと楽なのだろうけれど・・・そんなモノはないので、調整するたびに発声をしてもらう。

「ねーぇ? そこまでこだわる必要なくない?」

「ある」

「あ、はい」

 繰り返し「あいうえお」と発声をしてもらったことで、微調整を行う。

「よし、できた」

「マジで?」

「どうでしょう? マリーさん。アライラの声で調整できていると思いませんか!?」

 自分の声というものは、自分で聞いても分からないものだ。他人の印象と自分の印象ではいろいろと異なるから、アライラに聞くよりもマリーさんに聞くのが確かだと思った。

 しかし・・・。

「私に聞かれても困るんだけど?」

「え? なんでです?」

「私が知っているのは、虫が発する音だからよ」

 ・・・そうか。アライラの声を聞いているのは俺だけだった・・・。

「じゃ、これで完成ということで」

「投げやり過ぎぃ!!」

 何はともあれ、これでようやく『大道人・アライラー』の評価ができそうだ。

「さぁ! やってやるぜぇえ!!」

 ・・・ダメだ。今すぐ、あの口を潰したい。

 見た目が地蔵であるのがダメなのかもしれない。造形をアライラの顔を変えてしまえば、なんとも思わないか・・・。

 蜘蛛地蔵? どこの邪神像だ・・・。

「マリーさん。もう一度ヨーロロンをお願いします」

「・・・自分で妥協したのだから、最後まで我慢しなさいよ?」

「・・・はい」

 今すぐに、あの口を潰してやりたいが・・・マリーさんに釘を刺されてしまったので我慢しよう。

 マリーさんは俺の様子を見て、一度頷く。と、ゆっくりと歩き出てヨーロロンへ魔法術を行使する。指を鳴らして発動する技は、幻覚を見せるものであるらしい。

 誘導されて、こちらに接近してくるヨーロロンを見て、マリーさんはアライラへ注意を促した。

「アライラー。準備はできているの?」

「もちの・・・ろ? あ、武器がない!?」

 武器? いや、錫杖を持っているだろう。

「ルッタ! 武器出して!」

「錫杖があるだろ?」

「いやいや! ほら! 鎖を巻いたドリルランスだよ!!」

 ドリルランス・・・て、巻蛇槍貫撃と呼んでいたから、ドリルランスとか言われて一瞬だけイメージが結びつかなかった。

「ルッタさーん!?」

「ああ・・・大道人のコントロールを得ているんだし、自分で作れるんじゃないの?」

 あいはぶこんとろーる。とか言っていたし、出来るんじゃないかな?って思うんだけども。

「え? そうなの? えーっと、地の?深淵に・・・わがちからをもって・・・求める?」

 ・・・。

 ・・・。

「ほら、ヨーロロンが到着したわ」

「えぁ!?」

 マリーさんの言葉を受けて、アライラと俺はそっちを見る。

 確かに、そこにはすでにヨーロロンが到着していて、こちらをロックオンしていて、唾を吐く準備をしていた。

 アライラが「あ」っという間に、大道人の顔へ唾が吐きつけられる。その衝撃で頭が傾き背中から倒れ込みそうになるものの、つま先立ちや仰け反って倒れるのを堪えた。

 が、奮戦虚しく背中から倒れ込んだ。

「ぎゃあああああ!! 体が潰れるぅぅぅぅううううう!!」

 ・・・背中に貼りついているのが本体だもんな。

「脱出ッ! 四連邪眼! ロケットブースターッ!!」

 邪眼から噴射される火によって、大道人・アライラーは動き出す。それはもう・・・地面を抉りながら横滑りするように動く。

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!!!!!!!!」

 そして、アライラのお尻が地面を深く抉ると、これがつっかえ棒のように引っ掛かって動きが一時的に止まった。が、ロケットブースターの勢いは止まらない。

 エビぞりしていた身体が、折れてはいけない方向へと折れていく様子を見せつつ、バキッと破砕音が鳴ってから静かになる。

 サバ折りと表現するのが一番わかりやすい気がするな・・・。

 ロケットの火も同時に消えて・・・アライラは泡を噴きながら力なく・・・巨大石像の下敷きになった。

「ぎゃ・・・ぎゃ・・・」

 大道人の背から足が離れ、それぞれが痙攣している様にピクピクと動いている様子は・・・。

「・・・アレ、マズいですよね?」

「・・・そうね。割とマズいわね」

 俺とマリーさんは、動かなくなったアライラへと駆け寄り、状態の確認を行う。

 一方で、ヨーロロンはため息を吐くように一息吐くと、周囲を見回してから群れがある方へと歩き出す。群れを探して、見つけたので歩き去ってくれたようだ。

 ・・・ヨーロロンて、空気が読めるモンスターなんだな。って改めて思った。



〈なーんで、私ばっかりこんなんなーん!?〉

 カタチナセ。で、治療したことために重大事とならず、こうして元気に不平不満を叫んでいた。

 以前も、ヨーロロンとの戦闘時にボロボロにされていたが、あの時は魔力供給に制限を掛けていたことも原因だったかと思う。しかし、今回はそういうのを抜きにしてこれだ。

 意気揚々と『大道人・アライラー』の有用性をアピールしようとして、結果が惨敗とはね。

「だいたいさぁ? なんで倒れた状態でロケットブースターなんて使ったの?」

〈え? いやぁ・・・それは・・・ふ。こう、ブワッて感じで跳ね起きる・・・って言うのかな? そんでクルッと回転しながらスチャッ!と着地する。まさに魅せアクション!〉

「・・・ふーん。だったら、ロケットの火は下に向けなきゃダメじゃない?」

〈うぐ・・・〉

「今回の失敗は、邪眼の向きに合わせてロケットを噴射したことと、巨大な大道人が重すぎて飛び上がらなかったことだと思う」

〈そ、そーですねー〉


「ということで、君が提案する新形態『大道人・アライラー』は不採用ということで」

〈なん・・・だと・・・〉


 ・・・驚いているんだよね? 嘆いているのかな?

 こうして正面からアライラ・・・というよりは蜘蛛のモンスターである顔を見ていても、表情はまるで掴めない。差分とやらが分からないので、声のニュアンス的に・・・驚いている。で合ってるかなぁ?

〈だ、大道人・アライラーの真髄は空中戦にあるんだよ!〉

「へー」

〈あ、明日! 明日もう一度ここに来てください。本当の『大道人・アライラー』をご覧に入れましょう〉

 ・・・ふーん。

「分かった。明日、もう一度ね?」

 


 翌日。

 大道人・アライラーとなって空に飛び上がったものの。

 空中戦を披露すると言って航空モンスターが居るだろう上空へと飛び上がっていったが・・・アンカーラにあっさりと糞型焼夷爆弾で丸焼きにされて撃墜された。


 その次の日。

 ノットン雄を軽く倒して見せる。と言って、俺が出せる武器をフル装備して挑んだが、あっさりとサイコロステーキ・アライラーにされてしまい、マリーさんに救出してもらって事なきを得た。

 もちろん、村に帰還後は説教されて大泣きしていた。

 

 それでも諦めない不屈の根性には驚かされる・・・が、そろそろ俺は辛くなってきた。


 そのまた次の日。

「そろそろ止めない?」

「まだだ、まだ終われないよ!!」

 巨大な大道人と合体して、なぜか筋トレをしているアライラである。

「・・・でさ? なんで筋トレしているの?」

「ぅふっふっふ。私はこれまで、運動という運動をしてこなかったのだッ」

「うん? そうなんだ?」

 まぁ? 前世でも太っていたようであるし、運動はしていなかったんだろうね。

「そんな私が、ここで真面目にトレーニングを行えば・・・間違いなく潜在的な力が覚醒して、ゴールデンなアライラーにパワーアップ!するかもしれないッ!」

 

 ・・・ない。ない。


「もうそろそろ、諦めようよ」

「そんな決定権がルッタにあるのか!」

 あるんだよなー。俺の意思というよりは、身体が・・・と言うべきなんだろうけど・・・。

 そう思っていると、吐血する。ゲッホ。

「わっ!?」

「連日、使い過ぎなんだよ。体がちょっと苦しいんだ」

 四連邪眼ロケットブースターもそうだし、ランサービームとかアレダーコレダー・・・違う気がするけど、今はいいか。

 とにかく、妙な技を連発するし・・・一晩寝たぐらいでは疲れが取れないし・・・。

「まだこれくらいで済んでいるのは、一晩眠って休憩できているからだと思うんだけど・・・さすがに連日これだと、蓄積ダメージ?みたいな感じで辛いんだ」

「むーん」

 え? そこで悩むの?

「現段階だと、その『大道人・アライラー』は早すぎるんだ。もう少し用途が定まってから、改めて研究しようよ」

「むぅーーーーーーんん」

 そんなに諦めたくないのか・・・。


「ちなみに、筋トレするなら背中の本体でやらなきゃ意味ないだろ・・・」

「そ、そなことなぃよ」

 

 結局、アライラが諦めたのは・・・ヨーロロンにリベンジしてあっけなく返り討ちにされた後日であった。

 ちなみに、ゴールデンなアライラーには覚醒しなかった。



〈るったーッ! いい事思いついたーぁ!〉

 ・・・ろくでもない事だろうな。

〈お地蔵さん六人を使ってッ! 六像合身ゴッド・アライラーッ!てのはどう!? どうどう!?〉

 ・・・。

 ・・・・・・。

「組体操でもするの?」

〈しないよ!?〉


 今日は、とても平和に過ごせたのでした。

 はー。






 次回は、唐突なボス級モンスターとの戦闘を予定しています。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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