27 そうして私はこうなった
こんにちは。こんばんは。
暖かくなったり寒かったりを繰り返して、なんだか精神的に辛い今日この頃となりました。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか? 私は元気です。
今回は、特に戦闘などは無い日常?回となります。
書いていたら妙に長くなってしまったため、区切ることにしました。
最後まで、お楽しみいただければ、幸いです。
―夢―
「よく見ておきなさいッ!」
そう言うと傘の柄を順手で握り、剣道では基本的な剣の構えを取る。
「こうすれば、剣!」
大きく振りかぶって、傘を振り下ろす。
確かに、そう見れば剣になるとは思うが・・・傘はそういう風に使う物ではない。という事も、今の俺には理解できるが・・・この当時の俺は目を輝かせている。
「こうすれば、槍ッ!」
剣の構え解いて、右手で柄をしっかりと握りつつ傘を地面と水平に倒して身構えると、前面へと突き出した。確かに、槍っぽくも見えるが・・・傘の長さ的には剣の突きと大差はない。
「こうすれば、銃ッ!」
一般的な傘では丸く反っている柄。その丸くなっている部分を掴んで、左手で傘を支えるように構えると、右手人差し指を動かして「バンッバンッ」と発砲音を口で再現している。
すると、丸く反っている柄を反転して、肘を腰にくっつけながら構えを直す。
「これで大砲! ドーンッドーンッ!」
・・・ここ、よく見ると前世の家だな。
ということは、顔が黒塗りで名前も思い出せないこの人は・・・前世の叔母だな。このノリは間違いなく叔母だな。
そして、コレを見て「キャッキャッ」と喜んでいるのは、当時は二歳ぐらいの俺か・・・。
家の庭には、家庭菜園という小さな野草畑がある。よく愚痴っていたな・・・昔は野草もその辺に生えていたモノを摘んで、料理していたモノだがねぇ・・・と。
昨今の環境汚染を懸念して、一年に一回ぐらいは食べたい野草を自宅の庭で育てている。
そんな庭で、幼い俺が叔母に遊んでもらっているようだ。
「さらに! 傘は開けば盾となる!!」
「おーッ!」
・・・幼児の反応って本来はこういう感じか。こっちでの俺は、ちゃんとできていただろうか?
いや、なんとなくできていなかった気がするな。
ふと、転生してからの自分を考え始めると、叔母の顔をぶん殴る女性が現れた。
「私の息子に何を教え込んでるんだテメェ」
・・・アレ? 前世の母ってこういう言葉遣いだったか?
「お、おねえちゃん・・・言葉遣い。言葉遣い。不良時代に戻ってるよ」
顔が黒塗りでいまいち分からないが、叔母の指摘を受けた母が少しだけ固まった様子と、首がわずかに動いたことから、俺をチラッと見たのだと推測する。
「ゴホッ・・・んぅん。私の息子にバカを教えるなよ? 愚妹」
「あんまり変わってないよ? お姉ちゃん」
威圧感だけはまるで引っ込めていないしな。変だな・・・俺が覚えている範囲では、もっとこう・・・マリーさんみたいな言葉遣いだった気がするんだが? 記憶違いだったか?
「細かい事は気にするなッ! 私の子がお前みたいなバカになったらどうしてくれる!?」
「そうやってすぐ私をバカって言う! これでも赤点は取ったことないんだからね!」
「1×1は?」
「2ッ! あ!? 1ッ! 1だからね! 勢い余っただけなんだからね!!」
「うるさい。黙れ。バカ」
うーん。この頃ってこんな感じの姉妹だったか・・・。
「いい加減にしなッ! ご近所に我が家の恥を晒しているんじゃない!」
おっと、ここでお祖母ちゃんが登場するか。
私服姿の叔母と、会社帰り?と思われる女性用スーツ姿の母が、身を強張らせている。それだけで、この家で一番強いのが祖母だと分かる。
「あと●●●! 子供の教育を気にするなら、すぐに殴る癖を直しな!」
「・・・分かっているけど、手っ取り早いのだから仕方ないでしょう?」
「まったく・・・母さんの喧嘩早い性格を完璧に受け継いで・・・」
俺にとっては曾祖母か? 前世の母にとっての祖母だな・・・つか、曾祖母って喧嘩早い人だったのか。
「いいかい? ●●●はこれからの時代を生きる子だ。お前たちの喧嘩はこの子の将来にマイナスの影響となるのだから、まずは自分たちが改めな」
「・・・分かっているわ」
「はーい」
二人はそれぞれに返事をして、祖母はため息を吐いた。
「さぁ、ご飯にしよう。おいで、●●●。お祖母ちゃんのご飯だぞー」
「ごはー! おばーちゃ! わーっ!」
・・・はて? この夢はどんな意味があって見ているのだろうか?
ふーむ・・・。
―起床―
今や我が家のような天井を見る。
体を起こせば、もう何度も感じた春の気持ち良い風を受けた、日が昇る早朝の少し冷たい風だが、どことなく優しいと思う。
平和だな・・・。
もうずっと、この平和な村に永住したいなぁ・・・できないんだけども・・・。
「目が覚めたようね」
俺が使っている部屋の扉・・・じゃなくて、襖が開く。
こうして改めて思うと、古い時代の日本って国は防犯対策がガバガバ過ぎるんだと理解する。襖もそうだけど、天戸も障子も全部が引き戸なのだ。
誰でもスラーっと侵入できる素晴らしきかな思いやりの文化。
「どうされました? その顔・・・」
日本文化の素晴らしさを今更に感じている一方で、マリーさんの顔を見て少し驚いた。
どういうわけか、ちょっと寝不足気味の目とやつれ具合で、顔が気持ち青くなっているようだ。栄養価のあるモノを食べているのか?と心配になる。
「気にしなくていいわ。ちょっと、別の仕事を片付けている最中でね」
別の仕事?
管理人としてのダンジョン見回りかな?
そう言えば、ここのところずっと俺とアライラに付いて来てくれていたからな。本来の仕事が滞っていたのだろう・・・申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。
「あー・・・別に溜まっていた仕事とかではないから、おまえが気にすることではないわ」
「そう・・・ですか?」
「そうよ」
目も充血しているし、休まれた方がいいのは間違いないな。
「私の事はいい。とりあえず、おまえの健康チェックをしたら、しばし寝ることにするから」
「あ、はい」
そうか。俺が起きるのを待っていた感じでもあるわけか。
魔法術を使っての健康チェックは、アライラが使う邪眼センサーのような光の線が体を走るように動いて全身を調べていく。
それと同時に、もはや見慣れた中空に出現するモニターとキーボードで素六する情報を処理していく。
「ふむ・・・とりあえずの問題は無いようね。破損してた臓器も綺麗に治っているようだし・・・血液量も問題ないか」
「・・・そうですか」
不穏な言葉が聞こえたけれど、綺麗に治っているというのだから大丈夫だと信じよう。
「ま、無理と無茶をしないでくれれば、私も楽ができるんだけれどね?」
「・・・分かっていても、出来ない事はありますよ」
このダンジョンのモンスターが異質であるのは、もはや言わずもがな・・・だ。
あらゆる異世界から持ち込まれたモンスターたちだからこそ、混迷を極めた時代は縄張り争いなどが激しかったのではないか?と想像できる。
そういう時代を経て、練磨されたモンスターたちだ・・・魔王と倒すべく転生してきた俺では、太刀打ちできないのも致し方な・・・い?
んー?
そもそも、なんで俺はこんなに弱いのだろうか?
「ほら。何を悩んでいるの?」
俺の頭に、マリーさんの手が乗る。
「いえ、地獄変というチートアイテムを貰ったにもかかわらず、なぜに自分は弱いのか?と」
「なんだ。そんな事で悩んでいたの?」
「そんな事て・・・」
マリーさんが、どことなく前世の祖母を想起させるような笑みを浮かべて、優しい声で教えてくれる。
「地球でもそうだけど、チートを使えるようになったら最強。と言うのは間違いよ」
「そうですか?」
「そう。チートとて、先に使っている者と新しく使い始めた者とでは使い方の熟練度が異なるわ。違う?」
ふむ・・・なんでも経験を積んでいる者の方が、より上手に扱い方を分かっている。ということか?
「このダンジョンにいるモンスターは種類は異なれどチートと言って過言ではない能力を有する奴が大量にいる。そして毎日それらを駆使して生活もしている。対して、おまえはこちらに転生して数年。地獄変に至っては、ここ最近になって本格的に使い始めたばかり。となれば、おまえが雑魚なのは必然でしょう」
確かに。
「だからこそのアライラーよ」
「だからこそ?」
「そう。あの子は・・・まぁ、バカと天才は紙一重の見本みたいな子だけど、洞窟迷宮で5年間は生き延びた」
「そうですね・・・確かに」
「正直、アレでよく生き延びてこれたとは、思うけれどね」
・・・今日までのアライラを思い出し、マリーさんに賛同する。あんな行き当たりばったりで生き延びられたのだから、とんでもない。
「ま、今後の事はアライラーとしっかり話し合いなさい。二週間も寝ていたのだし、無理せずゆっくりと進めばいいわ」
そうだな。まずはアライラと話をしよう。二週間も寝て・・・二週間・・・二週間?
「・・・二週間!?」
言葉の意味を理解して、思わず声を上げてしまった。
「ええ、そうよ? 二週間」
に、二週間も寝ていたのか・・・俺は・・・。
「しっかりと眠ることができたから、身体も十分に休まったはずよ?」
そう言われると、身体が軽いと感じるような気もする・・・かな?
「じゃ、アライラーは任せるわ」
ん? どういうことだろう?
「あの、アライラがどうか・・・」
俺が確認のために声をかけるも、ちょうど襖が閉じてマリーさんが部屋を出て行った後だった。大声を出せば、外まで声は届くと思うが・・・自分で確認する方はいいだろうな。
「それにしても・・・」
二週間とは恐れ入ったは、それで不利益は・・・いや、救助用魔法術具でメッセージを送ることができていないか。
どうしたものか・・・メッセージが滞ったことで、死んだと思われていないだろうか。
・・・。
悩んでも仕方ないか。
とりあえず、アライラと合流しよう。
▽
〈あぁーッ! るっちゃーん!!〉
前足二本でワシャワシャと俺を手招きするような動作をしているアライラを見た。が、鎖で簀巻きにされていることに気づいて、ちょっと回り込むように動いて覗き込む。
傍らに立つ大道人が、俺を見て頭を下げてきたことで、反射的に俺も頭を下げていた。
・・・日本人の慣習というか、なんというか。
「で? 君はなんで簀巻きになっているんだ?」
とにかく、まずは俺の疑問に答えを貰いたいと思うので、アライラに何があったのかを聞くととする。
〈いやはや、話せば長いようで短い三年間・・・〉
「そうか。卒業おめでとう」
俺は踵を返して手を振りながら村長宅への帰路につく。
〈ちょー! まってまてまって! ジョーク! いっつあーじょーっく!〉
「で? なにがあったの?」
アライラは語る。
ノシェルス?を殲滅しようと大技を使った後に、数匹撃ち漏らしがあったので追撃したら、墜落してノットンのライブ会場へと不時着したのだという。
・・・ノシェルス?
「アライラ。ノシェルスってなんだい?」
〈えッ!?〉
・・・なんだ? なんか驚きに固まっている? 蜘蛛の表情って読み取れないので、どう解釈するのが正しいのかが分からない。
が、隣の大道人が「えぇ」て顔をしているので、どうやら俺が記憶を一部覚えていないことに驚いているということか。
二週間も寝ていた事実と、ノシェルスという聞き覚えのない名前のモンスターに、早急に情報を得る必要があると思う。
何があったんだ?
「それで? ノシェルスってなに?」
俺が再度問いかけると、アライラは戸惑う様子で教えてくれる。
〈え? いや・・・ノットンの縄張りを越えた先にある枯れ木の森の眠り虫〉
・・・越冬のために冬眠している虫ってことかな? それとも姫みたいな姿をした虫ってこと? 怪奇的でなんか嫌だな。
ただ、あの辺りは北に程近いから・・・そう、桜も花を咲かせるには気温が低いだろうから、蕾まではついているかもだけれど。
でも、森であるなら・・・そう、通り過ぎるとか飛び越えるとか。すればいいだけだと思うが?
「アライラ。洞窟迷宮で君がやってくれた記憶を映像にして見る技を使って、ノシェルスというモンスターが登場する辺りを見せてくれないかな?」
〈おー? おー・・・あー? いいよ。ちょーっとまってね!〉
・・・忘れてたな? 記憶を映像化する技のこと。
俺が凝視していると、アライラは邪眼の一つを光らせて技を発動する。・・・技名を言っていない気もするが、技が発動するなら細かい事は聞かない事にした。
中空に表示されるモニター。そこには辛うじて見覚えのある冬の枯れ木が並ぶエリアの様子が映し出された。
そうだ。確かにノットンの縄張りを越えた先で、この森?を見た・・・気がする。
〈~~~~♪〉
鼻歌?と思えるような音が響くと、映像が空を映してアライラが飛び去って行く様子を見る。結構な速度で飛び去って行ったように思っていると、太陽を背にUターンしてきて・・・変形?した。
こう・・・飛行形態で戻ってきたと思ったら、クルッと回転して頭を下にエビ反り姿勢で八つの脚を広げている。
〈ーッーッーッ♪〉
と、画面に大道人の顔がヌッとドアップで出現すると、変形?したアライラと背中で合体して空に飛び上がる。
そこに、左手で持っていた巻蛇槍貫撃を構えた。と思ったら、傘のように円錐形の刃をバサッと広げて、画面外から迫る飴のような弾を数発ほど受けて爆発する。
その煙を払いながら出てくると、右手に持った巻蛇槍貫撃を画面枠と水平になるように構えてタイトルバックだ。
『ここまでの☆ARASUZI』
〈すりッぬけっがッ! くーるたびにぶっほ―――〉
俺は、大道人にアライラの頭を抑えるように指示を出す。
大道人は頷き返して、歌い出した彼女の頭に手を乗せて地面に押し付けるように力を込めて抑えてくれた。そうして、彼女の歌を阻止する。
〈な、なにするのさ!?〉
なにって? まずは聞きたいことが山ほどあるんだよねー。
「記憶を見せて欲しいのであって、こういう演出はいらないんだ」
〈べ、別に・・・演出ってわけじゃ・・・〉
「いらないんだ」
〈はい・・・すみません〉
改めて記憶映像を見て行こう。
モットンとの戦闘を終えて、無事に次のエリアとなるノシェルスの森へと到着した。
どうやら、木の中に寄生虫が冬眠しているようで、どういうわけか・・・俺がアライラのバスター・ビームで焼き払うことを指示した。
これだけ広く、木々が分布しているのにバスター・ビームで焼き払うとか・・・何を考えてこんな指示を出したんだろう。
案の定、ビームの範囲外にあった木々から寄生虫であるノシェルスが出てきて・・・飴細工のように綺麗な羽をしているが、本体がグロテスクで目を逸らしてしまう。
場面が変わり、ノシェルスから逃げるために飛び上がると、シャッビンカンと同様に逃げ切れそうにない状況となった。
それをどうにかできると、まさかのアライラが言う。
で? 大道人をアライラの二倍ぐらい大きくしたら、その背に貼りついてドッキング? さっきの演出は実際の出来事に沿っていたのか・・・。誇張表現だと思っていた。
「大道人・アライラー?」
〈むっふーん! カッコいいだろ~ッ!?〉
格好いいかどうかはひとまず横に置こう。傍目から見ても、巨大な石像に大蜘蛛が貼りついている図でしかないので、返答に困る。
しかも、道標人のように俺の声で喋り出した・・・けれど、この口調はアライラのソレだ。
「一応確認する。喋っているのは君か?」
〈えへー。その通り! 大道人を通じて―――〉
「お地蔵さんは、こういう喋り方はしない」
〈・・・え、あ? そ、そう?〉
「そう。お地蔵さんは、こういう喋り方はしない。しないんだ。しないんだ? しないんだよ」
〈う・・・うん。わ、わかった。うん。次は、き、気を付ける・・・ね〉
ふむ。
とりあえずは信じよう。やはり、互いに信用し合うのが一番だろうからね。
そうしていると、大道人・アライラーは空へと飛び上がって、気象操作に近い大技を三連続で使用したようだ。
これほどの規模を三連射されては、さすがに俺の身体がヤバいことになりそうだ。
ダメ押しのように、槍二本を使ってバスター・ビームを発射・・・いや、照射しつつ回転してノシェルスの群れを一掃する。
あのビーム。照射を維持するのにどれだけ魔力を使ったんだろう? 記憶が飛ぶレベルで倒れるのもなんかわかった気がする。
〈ここで、ルッタが気絶したって、マリーさんが言ってた〉
なるほど。
ここで終わりかと思ったら、映像はまだ続く。
撃ち漏らしたノシェルス数匹を追撃して蹴散らし「ごめんね! 強くってさ!」という調子に乗ったセリフを吐いたところでイラっとしていると、俺の魔力供給が制限されたことで、空を飛ぶことが出来なくなったようだ。
煙を噴きながら墜落していく。
「まさかの、ノットンのライブ会場に?」
〈なにを隠そう! そのまさかッ!〉
開き直るな。
と、言ってやりたいと思うが、映像はさらに凄いモノを見せてくれる。
不時着したアライラを取り囲むのは、ノットン雌だ。ノットン雄たちも騒いで動き出すが、雌たちの動きを見て逃げるように会場の端へと退避する。
《こぉーけぇー》
アライラを取り囲んだノットン雌が、一斉に息を吐いた。
鳴き声のように聞こえるが、コレは呼吸音が近いだろう。なんだか、どこかで聞いたことのある呼吸音だとは思うが・・・どこだったか?
すると、ノットン雌たちが一匹の雌に道を開いて、通す。
貫禄がある百戦錬磨の雌。という雰囲気は伝わってくるが、どういう雌なのかは分からない。
ただ、片翼を開くと嘴で羽を一本引き抜く。その羽は、ブドウの房のように宝石が連なっているもので、実に不思議な形状をした宝石羽だった。
それから、宝石羽を投げるように放ると・・・その羽がサイコキネシスでも使っているかのように中空でヴォンボォンと音を響かせながら振り回される。
そうしてアライラへと羽が向けられると、ビームの刃が形成されて輝きだした。
《ひぃ! 邪眼! ランサービーム!!》
羽より伸びるビーム刃の圧にビビったアライラが、先手必勝を掴むためにビームで攻撃をしかける。ものの、ビームセイバーが《ヴォォン》と振るわれると同時に、アライラのビームは弾かれて明後日の方角へと飛んで行った。
それにしても、異常なほどの反応速度だ。
《こぉぉーーけぇぇぇーー》
深呼吸のようにも聞こえる声を聞き、アライラの恐怖は高まったようで・・・。
《は、八連続! 邪眼ビームッ! あ、ランサー!!》
テンパり過ぎー。などと見ていたが、八連続のビームに一切の遅れをとることなく、ビームセイバーはすべてを弾き捌いた。
《こ、このきょりでッ!?》
《こぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおッけぇぇぇぇぇええええええええええええッコォ!!!!!》
ノットン雌が繰り出す怒りの一撃が炸裂すると同時に、映像は途絶えた。
〈そうして、私はこうなった〉
大道人が、簀巻きに使っている鎖をアライラから外す。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・アライラの身体がバラバラと村の広場に転がって、俺は状況の理解が追い付かずに固まってしまった。
「え!? ええ!!??」
すぐにバラバラとなっている部位の一つへ駆け寄って、どういう状態なのかを確認する。
どうやら、縛鎖閻魔錠を身体に通すことで大道人経由で魔力供給を補助しているようだ。これにより、辛うじて死ぬ一秒前ぐらいをキープしている。
これはもう瀕死の重傷などではない。前世の叔母が時折言っていた「案ずるな。致命傷だ」とかいう言葉に匹敵するバカさ加減だ。
そして、切断面を見れば見事な融解具合である。
「よかった。行き当たりばったりでノットン雌と戦わなくて・・・」
やはり、慎重になることは重要であると、アライラの姿を見て確信する。ノリと勢いの結果が今の状態なのだから、今後も慎重に進む姿勢を維持しよう。そうしよう。
〈ってわけで! 早速と治してくださいなーッ〉
・・・。
・・・・・・うん。
「いやだ」
〈なんでさッ!?〉
「だって、こんな目にあっても俺に治してもらえばいいや。って考えで突撃されたら嫌だし」
〈い、いや・・・むーんッ!! 二週間もこのまんまなんだよ!? 大道人も治せないって言うし、マリーさんもルッタが起きるまでに反省と改善を考えておけとか言うしッ!!〉
へぇ・・・反省と改善か。
「よし。なら、その反省と改善を聞かせてよ」
〈む? むふーん! ちょっと調子に乗った! 反省。次は上手くやる!! 改善〉
「それは反省でも改善でもない」
俺は踵を返し、村長宅への帰路につく。
〈あぁあぁあぁーッ!! お願いだから治してよぉお!! ちょっと悪ふざけしただけだよぉお!!〉
はぁ・・・。
「なら、真面目に考えた反省と改善を教えてくれ」
〈・・・とりあえず、頑張ります〉
・・・なにも考えてないんじゃないか。
「まったく・・・リベンジじゃーッ!とか言って、突撃しないと約束してくれ」
〈はーい! 約束!約束ぅ!〉
さすがにイラっとしたので、錫杖を投げつける。が、それを前足で叩き落とされた。
〈むっふー。改善! 改善!〉
「そういうのは実戦でやれッ」
〈しかしねぇ・・・ノットン雌は一匹だけじゃないのだから、リベンジしたら袋叩きにされるだけなのだし・・・〉
・・・なんか釈然としないが、確かにその通りだ。
ノットン雌はライブ会場に群れを成して密集している。その中にリベンジしても袋叩きにされるのは確かだろうな。
そして、アライラの記憶を見る限り・・・ノットン雌は異様に強い。
ノットン雄やモットンと比べても、頭一つ飛びぬけているのではないだろうか?っとはいえ、アライラの記憶映像だけでは断言もできないか。
しかし、この情報を元にして、しっかりと対策を練って挑まなければ返り討ちに遭うのは必至だ。
何はともあれ、アライラを治さない事には話も進まないか。
「もういいよ。とりあえず、治すから動かないでね」
〈わーい!〉
それにしても、見事なバラバラ具合だ。
これでまだ生きているのだから、悪運だけは相当に良いのだろう。蜘蛛に転生したことで、運気の補正が高まっているとかあるのかもしれない。
「大道人。まずは鎖で身体を繋ぎ合わせるから、手伝ってくれ」
俺の声に頷き返してくれる大道人は―――。
〈あーだだだだだッ!〉
なんか、慈悲も感じられない様子で、アライラの身体に繋がっている鎖を引っ張り出す。これで乱暴に切断面を合わせられてしまい、悲鳴を上げていた。
なんか、大道人に恨まれるような事をしたのか? アライラ・・・。
俺は、錫杖を鳴らして魔力を溜める。どっちにしても、やる事はただ一つ。アライラの治療を行う技は『カタチナセ』という謎技だ。俺が転生した時には使うことが出来ていた技になる。
「カタチナセ」
ドロッと、アライラの損傷個所が溶けるように変異すると、溶断されていたパーツが繋がって傷跡も残さずに修復していく。
彼女と出会った時から、何度か使っている技だ。
出会った時のように身体の半分が消滅していると、無事な部位から融通する・・・それだけのダメージを負うと、そうでもなしないと修復できないというわけだから、気を付けたいところだ。
そうしている内に、バラバラだったアライラは元通りの姿を取り戻す。
ただ、気持ち・・・そう、きもーち・・・小さくなったように思う。なんかいつもとサイズ感が違う気がする。気のせいかもしれない。それくらい微妙な変化だ。
〈よっしゃーッ! 復活のアライラーッ!!〉
うん。いつものアライラだな。
「どう? 体の具合は?」
〈大丈夫! 死にかけてから復活すると、パワーアップするのが王道よ!〉
・・・つまり、すこぶる調子がイイ。ってことかな?
「まー。大丈夫ならそれでいいよ」
はぁ・・・なんか疲れた。
「じゃ、今日はこれで解散ってことで・・・」
〈まてーい! やる事はまだあるでしょうが!〉
え?
・・・えーっと?
二週間寝ていた。マリーさんと挨拶はした。アライラの様子を見た。必要な治療などは行った。あとは何があるのだろうか?
〈私のご飯ッ!!〉
「また明日ねー」
〈るっちゃーん!!??〉
次回は、大道人との合体形態をルッタとアライラーで話し合うお話を予定しています。
お話的には、今回の続きとなりますので・・・なるべく早く更新できるように頑張ります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。




