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24 ゴーッ! アライラーッ!

こんにちは。こんばんは。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか? あっという間に年末となりました。

急にやる事が増えて、右往左往していたら月末になっていました。


どうぞ、最後までお楽しみいただければ、幸いです。

〈当機はー、まもなくー、ノットンの縄張り上空に差し掛かりまーす〉

 アライラの上から、下を確認する。

 落ちないように注意しつつ覗き見ると、群れは変わらずにステージで歌い踊るイケメンファイブに黄色い声援を続けているノットン雌と、バックダンサー・・・いや、観客の後ろで踊っている時点でバックダンサーと言うのは違う気もする・・・でも、俺には適切な表現が分からない。

 それにしても、なんだか俺が心配していたのがアホみたいな気になる。

 だって、ノットンたちは一匹たりとも上を見上げないからだ。少しぐらいは上空に異変があると感じて上を見上げるべきではないだろうか?

〈ほらー。やっぱり飛び越えられたーッ〉

「うん。そうだね」

 考えすぎだった。そういうことなんだろうな・・・。だけれど死ぬよりは、無駄だった。の方がマシだ。

〈このまま集落・・・だっけ? あそこまで行っちゃう?〉

「やめてくれ。俺が死ぬ」

 そう言っている間に、鼻血が垂れてきた。

〈・・・なんだか、血が出るのが早過ぎじゃない?〉

「まぁ、ノットンの縄張りを超えるために、ゆっくりと静かに上昇してもらったりしたからな。飛行時間んは結構経っているんだよ」

 そう。

 万が一を考えて、ゆっくりと静かに空へと飛んでもらった。それと同時に、航空モンスターが出るギリギリを見つつだったこともあって、時間を掛け過ぎた。

〈そっかー。じゃ、降りるねーぇん〉

 スィーっと下降を始めるアライラ。

 ノットンの縄張りからも十分に離れた位置に降りているわけだが、邪眼を用いて浮遊できるからこそ、音も無く降下ができるのは便利だな。

 もう少し、大胆に行動してもいいのかもしれない。

 だけれど、俺は今のやり方を変える気はない。アライラが居なかったら、とっくに死んでいただろう事ばかりとはいえ、ノリと勢い任せなどもってのほかだ。

 ・・・でも、もう少しぐらい大胆に行動強いてもいい気はする。


〈れっつごー♪ レッツゴー♪ れっつごぉー♪ いえーい♪〉

 なんの歌なんだろうか?

 ノットンの縄張りを越えて、北へとさらに進むことに成功したことで、アライラは上機嫌のようだ。

 しかし、アライラの声が歌だと分かる俺とは違い、マリーさんは先ほどからイラついている。昆虫種に多い威嚇音に似ているせいで、耳障りなのだという。

 一応、歌っているだけなのだと説明したので、何も言わずにいるけれども・・・不機嫌なのが伝わってくるので冷や汗が止まらない。

 このままだと、マリーさんがキレるのは間違いないだろう。

 と、緊張していた俺だったのだが、アライラの歌と前進が止まったことで意識をこっちに戻す。

「どうした?」

〈・・・やばーい〉

 何がヤバいのか?っと、アライラの視線を追ってみると・・・。

 茶色と黒の毛色をした鶏が一匹・・・それは、ノットンの亜種『モットン』だ。こうして見ると、この鶏は軍鶏だな。

 地球においては、日本にて食用に育成されている鳥だ。江戸時代?のころに輸入されたという話だけれど、その辺りは諸説あるらしい。

 闘鶏とも呼ばれ、賭博目的の飼育が主流だったそうだけど、賭博禁止で一気に廃れたそうな。ただ、食べても美味しいので、そっち関係では飼育が継続されているわけだ。

 ・・・ふ。一度食べてみたいと思って調べたことがある。食べたことないけど。


「っじゃなくて! なんでここにモットンがいるんだ!?」


 軽い現実逃避をしてしまったが、俺たちの行く手を阻む存在を改めて認識した。

 どうしたって目の前にモットンが居るのだから、現実逃避などしている場合でもない。が、ここに来てからはどうにも本能が反射的に逃げ出そうと必死になっているのは否めない。

 ・・・しかし、いきなり襲い掛かってくるものと思っていたが、ジッとこっちを見ているだけで何かを仕掛けてくる様子がない。

 何が目的なのか? 何を考えているのか? なぜ、こんな場所で一匹だけいるのか? 疑問ばかりが頭に浮かんでくる。逃げるとかまるで考え付かない。

 だが、それもモットンの目を見ていたら落ち着いてきた。

「・・・なにも考えていない感じの目をしているんだけど」

 睨み合い。という感じではない・・・これは・・・品定めをされている?

〈ルッタ・・・アイツ、なんか気持ち悪い目つきしているんだけど・・・〉

 あぁ・・・そうか・・・こいつは戦うつまりではいるんだ。

 ただ自分が戦う上で、俺たちが十分な敵になりえるかを品定めしているんだ。

〈うぅ・・・なんか、逃げても大丈夫かな?〉

「いや、アイツは今、俺たちを品定めしているんだと思う」

〈・・・しなさだめ?〉

「ああ。こいつは、俺たちが戦う相手として十分な実力を持っているのか・・・と、俺たちを品定めをしているんだよ」

〈・・・はぁ!? なんなのその上から目線ッ!!〉

 アライラが怒り出した。

 顔だけでは分からないが、怒っていることを表現するようにジタバタと地団駄を踏み出す。


「くぉぉぉぉぉぉっけ」


 それは鳴き声と言うよりも呼吸音のようだった。

 大きいようで静かな声は、同時にその剣を生やす両翼を広げ・・・ゆっくりと揺れ動き出す。

「この動き・・・」

 前世の地球でも見た事がある・・・舞踊と呼ばれる日本芸能の一つ・・・だったと思う。

 まったく同じと言うわけではないだろう。これはそういう舞に似た流れを持つモットンの技であることは確かだ。

 攻撃性のある動作が多いところを見ると、武術系統の技能が組み合わさった特殊舞踊になっている。

 ノットンの動作は激しいモノだったが・・・こっちは真逆の在り様だ。

 亜種ということで、ノットンよりも激しい攻撃をしてくるものと想像していたが―――。

「―――アライラ! 真上に跳べッ!!」

 前方から、悍ましいほどの殺気が押し寄せてきたことで、反射的に指示を叫んでいた。

 対して、アライラは即座に飛び上がってくれる。浮遊を併用して一気に上昇してくれた。これによって、直下を通過するのはモットンの翼。

 先のノットンでも見た地上を滑るようにして移動する能力は共通しているようだ。

 違うのは、ゆっくりとした動作の舞と同時に高速移動をしてくることだろう。ハッキリ言って、移動速度と動作が合っていないから脳がバグる。

 ・・・なんと表現するのが正しいのかも分からないほど、移動速度と舞の動作が合っていない。

 いや、ホント・・・なんなのこの鶏・・・ノットンでも意味わかんないのに、モットンはもっと意味わからないんだ・・・ダジャレを言いたいわけじゃないのに。

「追撃が来る! 右方向へ邪眼ジェット!!」

〈ジェーット!!〉

 加速して移動した直後に通過するモットンの翼。

 アッパーのように翼を突き上げているのかと思えば・・・舞踊をそのままに垂直に移動して振りぬいて来た。そういえば、マリーさんも空中を走って登っていたな。

 それにしても・・・空中に透明の壁でも設置したように滑るような高速移動で追撃してくるのは、どういう技なんだろう? ホント、意味わかんない。

〈アイツ・・・なんなん?〉

「わかんない」

 クルクルと回転しつつ、雪山の斜面を滑るように地表へと落ちていく。

 それにしても、あの攻撃は厄介極まりない。ゆっくりとした動作とは正反対に高速で迫ってくることで、判断が鈍る。迫ってきているのか? 違うのか? 頭痛がしてくる。

 どう見たって日本舞踊に似た動作をしているのに、斬撃の鋭さが日本刀のように輝いている。


〈ちょっと、降りるの嫌なんだけど・・・〉

「ああ、舞と移動速度がアベコベ過ぎて頭痛がしてきた・・・」

 モットンがこちらを見上げると、翼を水平に広げて片足を軸に身を翻す動作をし始める。

〈な、なにかするつもりかな?〉

「ああ、こっちは空中にいるけど、さっきの様に登ってくるのかもしれない」

 モットン。戦闘特化なのは知っていたが、こんなとんでもない戦い方をしてくるとは想像もしていなかった。ノットンの戦闘速度をもう少し激しくしたぐらいだと思っていた。

 だけど、どうだ!? なんだこのモンスターッ!?・・・と思ったけれど、このダンジョンに来てからはこんなことばっかりだ。そこはもう考えることではない。

〈にげるー?〉

「うん、逃げよう」

〈よっしゃ!〉

 邪眼ジェットで加速を行う寸前に、モットンが飛び上がってきた。

 体を回転させて、空を切るように上昇してくるモットンは、剣の翼に風を纏わせて切れ味を上げているだけではない。おそらくだが、空を飛ぶための力も上乗せしているのだろう。

 滑るような移動能力も、滞空能力があるわけではないようだし。

〈あっぶなッ!〉

 ジェットで追撃を回避したアライラが悲鳴を上げる中、モットンはさらに上昇してから急降下しつつ舞による攻撃を行ってくる。

 これと同時に、強い風がこちらへと吹き込んでくる。

 そして、俺の直感が回避しなければ死ぬ。という警鐘を鳴らしまくる。

「急速降下!! 急げッ!!」

〈うっそ!?〉

 俺の指示通りに、アライラは急速降下する。これと入れ替わりで通過する風は、鎌の刃みたいな塊となっていた。

「降りたら左後方へ跳べッ!」

〈ほい!〉

 地上に降りると同時に左後ろへと跳ぶことで、追いかけてきたモットンの横薙ぎされる翼の斬撃を回避した。

「二連続邪眼ビーム!」

〈二連続、邪眼ビーム! 改!!〉

 モットンへの攻撃として、ビーム改を二連続で発射するアライラ。

 対して、高速移動で一発目を回避し、舞で二発目を切り払う。それはノットンの時と同じではあるが、違う点は剣が赤熱色に染まっている事だ。

 熱で空気が仄かに揺れている。


「ビームの威力・・・上がっているな」

〈むふーん! とーぜんッ!〉

 ・・・ちょっと複雑な気分だ。

 マリーさんの魔法術講座を受けた後で、アライラのビームなどを強化する術を相談してみた俺なのだが、あっさりと解決した。

 曰く「アライラーなら、ビームの後ろに『改』を付ければいいでしょう? 改造の『改』よ」と。

 たったそれだけ?

 そんな事で威力が上がるわけがない・・・と思っていたんだけど、普通に威力が上昇しているからため息しか出ない。

 単純なのか? 改造の『改』にはそれだけの力があるのだろうか? 正直、俺にはさっぱりだ。

 しかし、今は目の前の戦いに集中することとしよう。

 ビーム改によって威力が増しているとはいえ、このモットンは見事に切り払っている。それだけ強いのは間違いないが、ここで時間を掛けているわけにもいかないだろう。

 先日とは違い、俺も・・・いや、地蔵の強化方法は分かった事だから、ここで数を増やして一気に叩くべきだ。

「地の深淵に我が力を以て求める」

 モットンは熱を帯びた翼をこちらに向けたまま動かない。

 何を考えているのかも分からない顔をしているから、正直に深読みなど無意味だとは思う。しかし、いつでも行動を指示できるようにしておく必要もある。

 やる事が多すぎて、頭がパンクしそうだな。

「地獄道・地蔵菩薩大道人」

 錫杖を鳴らし、三体分の魔力で一体を召喚する。

 しかし、この感覚は一体分の魔力で召喚していた頃と同じ感覚だな。最近はとんと感じなくなっていたが、血を吐きそうだ。

 アライラのすぐ横に、彼女とほぼ同じサイズの巨大地蔵が地中より現れる。

 錫杖を手に、モットンの攻撃に対応するべく身構えた。


「く? ほ?」


 ・・・え?

 モットンが、唐突に目をパチパチとさせて地蔵を見つめる。


「クォ・・・ぉぉ・・・はぁ・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッケ」


 そして盛大なため息を吐き出しつつ、熱を帯びた翼を上下に振って冷却すると、あっさりとしまってしまう。

 その眼が明らかに俺へと向けられると、露骨にため息を吐いて見せた。

「ハァァァァァっけ」

 なんだろう?

 なんか、俺を見てため息を吐いているように見える。

「はぁぁぁぁぁっけ」

 こちらに背を向けると、そのままノットンたちが集まるライブ会場のクレーターを目指して歩き出した。と、時々立ち止まって振り向いてくる。

「はぁぁぁぁぁっけ」

 そうして、見せつける様に俺を睨んでため息を吐いている。

「なんなんだ!? なんで俺を見て、ため息をこれ見よがしに吐いているんだ!?」

 どうして俺が、あのようにため息を吐かれなければいけないんだ!? 敵を倒すためには有利な状況を作るのは当然だろうに! 二対一で一気に片を付けるつもりだったんだぞ!


「落ち着きなさいよ。ほら、深呼吸」


 マリーさんに頭を撫でられて、俺は一瞬だけ息が止まった。

 そういえば、この人も乗っていたのだ。ド忘れするにも程があると思うが、基本的に口出ししないで観察しているだけだから、途中から忘れがちになる。


「アレは、白けただけよ。おまえに文句を言いながら帰っていくけれどね」


 ・・・・。

「どういうことですか!?」

 カシャッ

 マリーさんは、一眼レフのカメラで待ち構えており、俺が先ほどの言葉に半ギレしながら食いついたタイミングでシャッターを切ってきた。

「・・・なんでカメラを構えているんですか?」

「ふむ。半ギレしている顔をこれく・・・写真に収めて置きたかった・・・だけよ?」

 コレクションしたい。という言葉を呑み込んで、誤魔化しやがったな!

「そろそろ本気で怒りをぶつけてもよろしいでしょうか?」

「まぁ、落ち着きなさい。モットンは戦闘特化よ? あそこで退いてくれたのは僥倖というモノよ」

 ・・・それって、あのまま戦っていたら負けていたのは俺たちという事か?

「あのまま戦っていたら、おまえたちは負けていたわ」

 やっぱりですか。

「あの様子だと、想定よりも手ごたえがあるからテンションが乗ってきたところだった感じね」

「テンションが乗るとどうなるんですか?」

「舞が加速するわ。言うなれば・・・お前世代にはなんといえば分かるかしら?」

「いや、そんな事を聞かれましても・・・」

 マリーさん的には、的確な表現があるのかもしれないけれど・・・モットンの本気?を見ていない俺では判断がつかない。

「ちなみに、マリーさん的にはなんなのですか?」

「昭和時代に一世を風靡した・・・いや、止めて置きましょう。うん。それがいい」

 なんだか顔が急激に真っ赤になったと思ったら、真っ青になってテンションが下がっている。それほどの恥ずかしい思い出なのだろうか?

 その一方で、俺の苛立ちは消えていた。

「ほら。気も落ち着いたのであれば、当初の目的を思い出しなさい」

「・・・はい」

 俺は、アライラに北へ向けて移動を再開するように言い、召喚した大道人をそのままに北を目指すことにした。





「さて、アライラー。地図を出しなさい」

 邪眼から中空に表示されるウインドウに、マリーさんがくれた地図が大画面で表示される。

「ここはすでに、ノットンの縄張りを越えた次のエリアよ。気を引き締めなさい」

 そうか、ノットンの縄張りを越えたか。

 ここらで一息休憩をしたいところだけど、周囲を見回して警戒を強めなければ・・・と、進行方向に見えるのは葉も枯れ落ちた木が並ぶ森?

「アレは、森ですか?」

「そうよ。冬の区画から寒気が流れ込んでくるから、この辺りは春というほどの気温にならないのよ」

 肌寒いですからね。

 しかし、葉も枯れた木々には蕾があるから、咲く間際ってところだろうか。

 もう少し暖かくなったら、きっと綺麗な桜の花とかが咲くんだろうな。もう少し南に行けば、コレが咲く様子を見れるのだろうか?

〈むぅ・・・鑑定するにはもう少し近づかないとダメッぽ〉

「よし、ではもう少し近づいたら鑑定してくれ」

〈ほいほーい〉

 言うな否やダッシュするアライラと、「えッ!?」て顔してから追いかける大道人。

 シュタタタタッと進むアライラに対して、ズッシンッズッシンッと走る大道人・・・やっぱり石像だから重量があるんだよな。

 あっという間に森へ近づくと、アライラは鑑定を行う。

〈よっしゃ! 鑑定ッ!〉


『ノシェルスの木。異世界キリタカクカに生息する植物の一種。春になると桃色の花を咲かせる風物詩。花が咲く直前になると甘い香りを周囲に散布することで食料を誘う。咲く花は飴細工のように美しく、非常に甘い蜜を蓄えている。ただし、蜜は毒の変異であるため食べると死ぬ』


〈おほー。早く咲かないかな?〉

「いや、毒が変異した蜜らしいし、食べたら死ぬんじゃないか?」

 もっと普通の木は無いのか?

 このダンジョンで普通の木を求めることが間違っているのだろうけど、こうして鑑定を見て思うのは・・・『木。普通のどこにでもある木』という簡素な文言を見たいんだ。

〈で? どうするん?〉

「・・・とりあえず、この木が安全なのかを調べる必要がある」

 俺は追い付いてきた大道人に、ノシェルスの木を調べるように先行するよう指示を出す。地獄能・巻蛇槍貫撃を構えさせて、準備は万端だ。

 鑑定では説明されていない何かしらの能力を持っている可能性を考えれば、地蔵菩薩大道人を先行させることは間違っていないだろう。

 アライラほどの速度は無くとも、その巨体による歩幅は十分に移動速度を稼いでいる。

〈それにしても・・・甘い香りと飴細工のような花かー。食べてみたいなー〉

「確かに、食べてみたい気持ちはあるが・・・毒であるなら食べるわけにもいかないぞ」

 飴細工のような花というのが、どういう類の飴細工であるのか?っと、大変興味深い限りである。

 俺だって、その花が咲く様子を見てみたいところだけど、食べたら死ぬという毒の花というのが何とも言えないお約束だと言えるだろう。

 そんな事を考えていると、マリーさんがボソッと言った。

「アライラーなら食べられるわ」

 ・・・。

 ・・・。

〈マジで!?〉

「マジで!?」

 アライラの言葉を翻訳しつつ、俺もマリーさんに問う。

「マジのマジで、アライラーなら食べても大丈夫よ」

「どうしてですか?」

「アライラーは異世界モンスターで最強格の毒蜘蛛モンスターよ?・・・教えてなかったかしら?」

 そういえば・・・そんな話をしたような?

 いや、アレは・・・アライラはまだ子蜘蛛って話をだったような?

「まぁ、いいわ。アライラーはどのような毒も喰らう事で自身の毒として取り込むことが可能なモンスターだからね。食べたのであれば毒で死ぬことは無く・・・自身の体内で同じ毒を精製できるようになるわ」

〈マジかー・・・私ってば、毒マスター! 蜘蛛!!だったかー〉

 いや、それはまた何かのネタなのか?って言うのは、横に置いておくとして・・・アライラだけなら食べても平気なのか・・。

 うーん。俺も食べてみたかったが・・・。

「まぁ、アレが居ない木であればの話しだけど・・・」

 ・・・なんか、聞き捨てならない呟きが聞こえたぞ?

〈え? なんだって?〉

 アライラには聞こえていなかったのか?

「あの、マリーさん? アレが居ない木というのは、どういうことでしょうか?」

 俺が問うのと、マリーさんが「え? 聞こえてたの?」という表情をするのはほぼ同時だった。これだけ近くに居て、騒音も何もなければ聞き取れないほどの小声ではなかったですしね。

 アライラも反応しているのだから、俺の聞き間違いではない事も確かだ。

「・・・言葉の通りよ」

 マリーさんは答えを教えてはくれない。が、答えをくれたことで、俺はアライラに指示を出す。

「アライラ。君が洞窟迷宮で飯を食べるときにやっていた邪眼センサーであの木をすべてチェックしてくれ」

〈今もやってるよ! 焼いても死なない寄生虫とか食べたくないもんね!〉

 と言いつつ、八つの邪眼が虹色に明滅を始めると、森全域を光が突き抜けていく。

 幾重にも重なる光の線が森を縦横無尽に通過して、すべての光が邪眼へと帰還すると・・・情報の集計が行われるようだ。

 邪眼に光の粒が横へ流れるように奇跡を残して動いていく。


〈・・・・・・・・・・・・・ぅげッ〉

 

 なんだか、アライラがドン引きした様子で声を漏らした。

 この直後に、毒々しい色の体毛が逆立ち始めて、全身がブルブルと震えだす。これまでに見たことのない反応だ。

「どうした? なにが分かった?」

〈・・・ぅひー。さすがに全身の毛が逆立つってもんだわねー〉

 言うと、アライラは説明してくれた。

〈虫がいるー〉

「むし?」

〈そう、全部の木じゃないけれど、アレ・・・なんかこう、アレだ。あっちに一匹。あっちの方にも一匹。こう・・・二、三本の間隔を開けて木の中にいる感じ〉

 ・・・うん? つまり、並んでいる木々の中に虫が入っているということか?

「それって、等間隔に虫が木の中に巣食っているということか?」

〈・・・・・・そう! それッ!〉

 だとすると、どこの木にいるのかを把握する必要があるな。

 さらには、モンスターの群れという事になるだろうから、数も知っておくほうがいいだろう。不測の事態に襲われる可能性を考えれば、対処法も検討する必要がある。

「アライラ。センサーで得た情報を地図に反映できるか?」

〈え? えーっと、ちょっと試して見るー〉


 ぴーッぴーろぴ―ッぴろぴーッ♪ ぴっぴろぴーろー♪ ぴっぴろぴー♪


 え? なんだ? この電子音?

 どこから鳴っているんだ? 誰が鳴らして・・・。

「あー、なんか懐かしいわね。電話の取次ぎとかで、待ち時間に受話器から聞こえてきたこともあったわ」

 ・・・マリーさん? なんでそんなシミジミとした顔をなさっているんでしょうか?

 電話の取次ぎ?ってことは、昭和時代のOLをしていた頃に聞いたことがあるわけですか? でも、俺の記憶的には・・・横断歩道の歩行者信号で青の時に流れる音楽だったような?


〈あ! できたーっほいッ!〉


 マリーさんによってアライラにインストールされた地図が再展開すると、俺たちの進路上にある森に赤い点がズラリと並んで表示される。

「アライラ。この赤い点は・・・」

〈ご希望の虫だぜー・・・いや、多過ぎー〉

 森全土に赤い点が分布しているけれど、よくもまぁ、ここまで等間隔に配置できるものだな。

 これがこのエリアを縄張りとしているモンスターであるのなら、何とかして戦わずに通過してしまいたいわけだけれども・・・。

 木の中に虫がいるという事は分かった。

 ならば、どのように対応するのが最良であるのかを考える。

「・・・ウジャウジャいるな」

〈ウジャウジャいるぜー〉

 先行している大道人に、虫が入っている木への接近を指示すると・・・木の蕾が遠目からでも分かるような琥珀色の煙を噴いて散布を始める。

 アレは、甘い蜜の香りなのだろうか?

 大道人は石像であるゆえか・・・琥珀色の煙を浴びても首を傾げるだけで変化はない。なので、巻蛇槍貫撃で木を攻撃させた。

 すると、木の中からドロッと溶けた液体・・・というよりはスライムのような粘性のある溶けた物体が流れ出てくる。

 ちょっと気持ち悪い。

「反撃は無いようだ」

〈むぅーん。トラップ系のモンスターで、直の攻撃能力は無いのかな?〉

 これなら、バスタービーム改を使うことで北への道を簡単に拓けるのではなかろうか?

 空を飛ぶにしても、魔力のドカ食いで俺の身体に負荷がかかるわけだし、バスタービームの方が慣れもあって負荷が少ないから、俺の燃費も抑えられる。

 ・・・アレ? つい数週間前までは大道人一体を維持するのが辛かったはずなんだが?

 ・・・。

 ・・・・・・まぁ、いいや。

「よし! バスタービームで道を拓こう!」

〈え!? いいのッ!?〉

 珍しくアライラが驚いている。

「ああ! 大道人の攻撃に反撃することも無く。木の中で春を待っているだけのモンスターであるようだしな。空を飛ぶよりは、ビームで道を拓いた方が俺への負荷は少ないし・・・」

〈なるほどー。よーっしゃ! そういうことならまかせろぉい!!〉

 以前にも増してやる気を出しているアライラ。今までは俺が止めるように言って来たから、テンションが上がり切らなかったということか・・・。

 相撲の四股を踏むように片側四本の足を振り上げると、ズッシンと音を立てつつ身構える。

 バスタービームの魔力チャージが始まるのを確認して、俺はノシェルスの木を見る。大道人が徒歩でこちらに戻ってくる様子を見た。

 射線は確保できたようだし、これで準備も整った。

「一気にやるぞ!」

〈よっしゃーッ!〉

 八つの目が一斉に光り輝いて、必殺技が炸裂する。


〈八連邪眼! バスタァアッ!! ビィームッ! 改!!〉


 八つの目から、進行方向へと放たれる八つのビーム。以前も思ったが、そのビームは極太だ。こんなとんでもないサイズのビームを八つも放って、俺が生きていることが今更ながら不思議に思う。

 思うのと同時に、血を吐き出した。

「げっほ」

 腹の底からジワッと染みるように痛みが登ってくる。

 いつもの痛みと比べても、圧倒的にキツイのだが・・・あ、『改』だから? 強化型ビームだからキツさも増しているのか。

〈ぃぃぃぃぃやっふぅうううう!!!〉

 今までに聞いたことも無い声で大喜びをしているアライラにちょっと驚きつつ、視界に広がる拓かれた道を見た。

 地面さえも抉るほどの威力と、その土を焼き焦がすほどの熱量で空気がユラユラと歪んで見える。バスタービーム改の範囲に重なっていた木は、ボボボッと音を立てつつ火が燃え上がっている。

 ・・・ちょっと、自然環境を破壊している気分になって罪悪感を覚えた。

〈見た!? 見た!! 私はッ!! 見たっ!!〉

 ・・・あ、はい。

〈これならシャッビンカンも丸焦げにできるってなもんですよって!!〉

「調子に乗るな。アイツらはビームを溶かすほどの溶解液を持っているから、そう上手く行かないよ」

 俺が注意を促すと、露骨に不機嫌となるアライラ。

〈ふーんだ。そういうことは、やってみなきゃわかんねぇえ!!〉

「できるかどうか分からないからこそ!! できなかったときの事を考えて行動するべきなんだよ!!」

 そうして、俺とアライラで口喧嘩を始めた・・・その時だった。


「ほら、敵が来るわよ」


 マリーさんの注意を促す言葉が、俺とアライラの口喧嘩の隙間を穿つ針のごとく刺さる。

 そして、俺とアライラは意識を周囲へと向けた。

〈・・・え?〉

「・・・え?」

 バスタービーム改の範囲外にて、無事だったノシェルスの木が続々と砕けていくと、その中から昆虫種でもはやお馴染みの脚が飛び出して、ノシェルスの木から姿を現していく。

「・・・バカな。この辺りの気温では冬眠中のはずじゃ」

〈ひぃぃいぃぃぃ!!?? 続々と木の中からでてくるぅう!!?〉

 変態を終えて、蛹から出てきた蝶のごとく・・・その美しい羽が飴細工のごとく形作られて羽ばたき始める・・・のだけど、羽に比べると本体がキモイ! これはグロイとも言えるかもしれません!!

 テレビ放送ならモザイクかけてもいいぐらいの放送事故レベルにグロイ姿しているぞ!!

 って思ったけど、蝶って割かし本体はアレな感じだったのを思い出す。

 夏の自由研究で蝶を採集しようと捕まえたが・・・羽の綺麗さよりも本体のキモさに心が折れて、ペットボトルロケットの工作モノに変更した小学生時代を思い出した。

 ・・・でも、なんだかんだで蜘蛛モンスターのアライラには慣れてしまった自分がいると思うと、人間は慣れれば大抵は平気になるんだなぁ。

「現実逃避をしているな!」

 頭を軽く叩かれて、俺は正気に戻る。

「でも、あの! なんで木の中の虫が活動を始めてしまったのでしょうか!?」

「バスタービームの熱よ」

 ・・・ビームの熱?

「これだけの広範囲を焼き払えるビームである以上、熱波はもっと広範囲に拡散していると考えるべきね。それによって、木の中で寝ていたモンスターが春が来たと勘違いをして、活動を始めてしまったのよ」

〈Oh・・・〉

「そんな・・・」

「いや、それぐらいは考え付きなさい。おまえ、賢そうな顔しているわりに、マヌケよね」

 ・・・こんばんは。ルッタ・ハ・マヌケーダです・・・こんにちは。

「そこで落ち込むんじゃない! ほら、アライラに次の行動指示! モンスターなのだから、羽などすぐに定着するぞ!」

 言われて、続々と木の中から出てくるモンスターを見れば、確かに不安定だった羽が続々と形と色が定着していくのが分かる。

「アライラ! まずは鑑定をしてくれ!!」

〈ほ、ほい! 鑑定!!〉


『ノシェルス。異世界キリタカクカに生息する寄生虫の一種。ステンドグラスのように美しく、幻想的な羽は飴細工のように繊細で美味しいと言われている・・・だけである。春になると成虫となって飛び立ち、手ごろな動物に向けて鱗粉を散布する。この鱗粉が付着すると数秒で孵化して毛の中に侵入し、毛根を切除して自身を繋げることで養分を得る。寄生対象が人間である場合、三日で体毛より太くなるため分かりやすいが、大型の獣やモンスターでは見分けがつかない。十分に成長すると、寄生対象の血液を飲み干して成虫になるための寝床であるノシェルスの木を求めて旅に出る』


 ・・・割と冗談にならないガチ系モンスターだった。

 それと、鱗粉が付着すると孵化するって・・・アライラが洞窟迷宮で食べた奴となんか似てるな! アレは液状卵とかいう聞いたことも無い卵だったけど、コイツは鱗粉卵ってこと?

 吸い込んだらどうなるんだろう? 知りたくない!っとか考えている場合じゃないな!!

「ファイターモードだ! 空へ飛び上がれ!!」

〈邪眼ジェット! ファイターモードッ!〉

 二つの目から火が噴き出して、アライラは瞬時に空へと飛び出してくれる。

 それと入れ替わるように、羽が安定し始めたノシェルスが動き出した。その飴細工のように美しい羽を羽ばたかせ始めると、キラキラとした鱗粉のような粉が散布され始める。

「危なかった。あの鱗粉が卵なのだと思うと、ゾッとする」

〈大道人が置き去りだけど、いいの?〉

 言われてみると、大道人がこっちを見上げながら手を小さく振っている。

 こっちとしては好都合。あの大道人でノシェルスを攻撃し、囮となってもらうことで俺たちは逃げ切れる。

 と、大道人に攻撃指示を出す寸前で、ノシェルス達が一斉に羽ばたき出した。

 鱗粉塗れになった大道人は、自らに業火を掛ける事で鱗粉を燃やして対処していく。なるほど、アレで鱗粉対策か・・・さすが地蔵さんだ。

 その横で、俺たちを追うべく飛び上がってくるノシェルスの群れ。

「・・・デジャブだ」

〈シャッビンカンほど速くないから、逃げきれーる!〉

「と、思うじゃん?」

 いつもの事だ。

 飴細工のような羽の先端に、溶けた飴が集まるようにドロリと動くと・・・弾丸のように固形して撃ちだしてくる。

 飛行時に使用していない邪眼で後方に厚いバリアを展開し、弾丸を受け止めた。

〈はいはい。いつもの事。いつものことぉお!!〉

 俺たちの進路を塞ぐように、大型の飴弾丸を放ってくる。これによって、速度を落したり急速旋回などをする必要が出てきて速度が低下する。

 すると、ノシェルス達がどんどん迫ってくる。

〈もう一回! バスタービーム改で!!〉

「ダメだ。ノシェルスがばらけ過ぎている! アレでは、八連邪眼を広範囲で放っても、半分は倒せないぞ!」

〈なんでさッ!?〉

「射線だ。飴弾丸の射線を確保するために、等間隔で編隊を組んでいるんだよ。まさに航空自衛隊並みの精緻な編隊飛行だ!」

 遠目から見たノシェルスは、まさに芸術品と言えるほどに美しい。

 地球において、この蝶を捕獲して標本にしたいと思う者は数多いるだろう・・・だけど、やっぱり本体が気持ち悪い上にグロい。最低だ。俺の両目にオートモザイク処理機能が欲しい。

「何とかして、バスタービーム級の威力を保持したまま、広範囲を殲滅できる技があるといいんだけど」

〈・・・あるよ!〉

 え?

 ・・・え?

 ・・・・・・あるの?

〈あるよ! バスタービームを広範囲でぶっ放す技!!〉

「どうやるんだ!?」

 やっぱり、アライラは凄いな! そんなご都合的な技があるって・・・きっとまた、何かの漫画アニメのネタなんだろうけれど、今はそれに掛けるしかないだろう。

〈それをやるためには! 大道人が必要!〉

「大道人が? それなら大丈夫だ。ノシェルスに無視されたから、まだ健在だぞ」

〈よしきた! なら、大道人を私の二倍ぐらいに大きくして頂戴!〉

 ・・・え!? 巨大化させろって言うのか?

「待て、それをするには大道人に接触している必要がある。遠距離からの巨大化はムリだ!」

〈んもぉお! ちょっと強引だけど、反転して大道人の上空を過ぎるから、ルッタは飛び降りて!〉

 ど、どうしたんだ?

 なんかやけに具体的な作戦を述べている・・・まさか、コレが『覚醒』なのか!

 窮地に追い込まれると、唐突に眠っていた才能とか使っていなかった力などが顕現するというお約束! 生で見られる日がこようとはッ!! ちょっと感激ッ!!

 俺が感動している中で、アライラは邪眼バリアを重ね掛けして反転する。

 そして加速をしてノシェルスの群れを正面から突破して見せると、大道人の上空まであっという間に到達した。

「ほら、降りるわよ」

 マリーさんに首根っこを掴まれて、アライラの上から飛び降りる。

 アライラの加速が掛かり過ぎて、俺は振り落とされないようにしがみついていたから、タイミングよく飛び降りることができなかった。

 ホント、この人が居てくれてよかったと思う。

 

 さて、飛び降りた先で業火で身を守っていた大道人を巨大化させる作業を開始する。

 俺が持つ錫杖を大道人の錫杖に接触させて魔力を追加注入し、そのサイズをアライラの二倍ぐらいになるように巨大化させるわけだ。

 ぐぅーんぐん。と、その身体が巨大化していく様子は、光の巨人が現れる演出にも見える。上から見ていたらだけど・・・。

〈おほー! ぐんぐんカット! 生ぐんぐんカット!〉

 あ、やっぱりそれっぽく見えたのね?

〈よっしゃーッ! 次はルッタがいつも投げてる槍っぽいのをもう一本! 大道人に持たせてあげて!〉

「え? あ、うん・・・わかった」

 両手に槍を持たせるわけか・・・巨大化した大道人のサイズに合わせた錫杖と、縛鎖閻魔錠を巻かねばならないので、だいぶ魔力の消費量が激しいことになるな。

 アライラも継続して飛んでいるから、俺も相当キツイ状態だけど・・・この場を何とかするためにも、やらなきゃいけない。

 魔力をさらに練り上げて、巨大化した大道人に同等の槍をもう一本持たせることで、二刀流を実現する。

 いやしかし、これ相当キツイな・・・汗が止まらない。あ、この汗は血だわ。ゲッホ。

「で、できたぞ!!」

〈なら最後! バンザイさせて! ばんざーい!〉

 意味わかんない! けど、とにかく今はアライラに任せるとしよう。

「大道人! バンザイして待機!」

 指示通りに、大道人が槍を手にした状態でバンザイをする。

 と、空でノシェルスの追撃を凌いでいたアライラが急降下してきた。俺たちの居る場所からは多少遠い位置に降下するが・・・地面に衝突する寸前で機首を起こしたことで地面スレスレを飛行する。

 その勢いで、大道人へと迫る。

「何をする気だ!?」

 あ、なんか前にも同じことを言った気がする。

〈待っていたんだ! この瞬間をッ!!〉

 この瞬間て、大道人に激突するぞ!?


〈大道人!! 合体だぁああ!!!〉

「合体ッ!?」


 スピードを落とすことなく迫ってきたアライラは、地面スレスレを飛行しながら態勢を変えるという曲芸を披露すると、人間で言うところのエビぞり姿勢となって八本の脚を広げた。

 頭を下に向け、お尻を後方へと逸らす。

 その姿勢で、大道人の背に直進してくるアライラは、そして大道人に激突した。

〈ドッキング! ゴーッ! アライラ―ッ!!〉

 グワッシっと、大道人の背に激突しながら八本足でしっかりと抱き着くと、アライラの浮遊による効果なのかは定かじゃないが、激突時に浮いた大道人もろとも飛んで行った。

〈システム連結!!〉

 地面スレスレの高度で飛んでいく大道人の全身に、毒々しい緑色の線が機械的に走って消える。

 そして、大道人の目が開いて光った。

「あいはぶこんとろーる!!」

 

 喋ったぁぁぁあああ!? 大道人が! 道標人のように声を!?


「大道人ッ!! アライラ―ッ!!」

 なんかクルクルと回転しながら意味不明のポージングしつつ名乗りを上げている。何アレ!?

 俺の理解が追い付かないまま、大道人アライラー?が空へと飛翔していく。物凄い速度だ。あんなブーストが出来るものなのか?

「ちょっと、ルッタ? あなた、大丈夫なの?」

「え? なにが・・・ん? 雨?」

 マリーさんの少々上擦った声に振り返った時、肌に雨のような水がバシャバシャと当たってきたことで、俺は空を見上げる。

 しかし、空には雨雲などありはしない。

「雨じゃない。おまえの血よ・・・噴水のように頭から噴き出ているわ」

「あー」

 なんでいきなりこんなことに?

 俺は、急いでアライラを見た。

 大道人のバックパック的な何かになっているアライラの眼・・・四つから火が噴き出している。上昇するための推力として、ジェットを四つ・・・いや、あの火の勢いはロケットっぽい。

 そんな火力を邪眼四つで出しているという事は、大道人の重量を空に持ち上げるために必要であるということか。

「サイクロンドライバーッ! あーんど! ハリケーンランサーッ! うぃず! スパイラルシェイカーッ!!」

 ・・・意味わかって言ってんのか?

 あ、今度は首から血が噴き出てきた。肉が裂けている・・・これヤバい。負荷が許容量を超えているとかそういう話をとうに過ぎているぞ。

 しかし、俺の状態を横に置いても、ノシェルスはサイクロンやハリケーンと言う様に、台風並みの暴風に巻き込まれて中空をキリモミしながら飛んでいる。

 そこにスパイラルシェイカー?とかいう技でアライラの周囲を旋回するように回っているため、もはや逃げることも攻撃することも叶わない状態へと持っていかれていた。

「これでトドメだ!!」

 何をする気でしょう?

 大道人に持たせた二つの槍が、左右に穂先を向けて構えられる。

 すると、円錐形の刃が開いて砲塔の口・・・砲口のような変形が行われると・・・なんだか見覚えのあるビームの光がチャージされている。

「いくぜぇえ! 二連邪眼!」

 ・・・ちょ、ちょっと? それはまさか?

「ダブルランサーッ! ビィームッ!!」

 あ、まっずい・・・アレをやる気だ・・・。

 俺は、遥か上空にいるアライラに向けて、走り出した。

「やめろ! アライラ! お願い!! やめてッ!! アライラぁぁぁぁあああああ―――」

 涙なのか? 血なのか? もはや分からない液体が両目からボロボロと溢れながら、俺は本能的にアレがヤバい物だと理解して叫んでいた。


「バスタァァァァアアアアアアアッ!!!!」

 二つの槍から放たれるバスタービーム改の光が視界を染め上げるのと同時に・・・。


「アキャッ!!!!!!」

 俺の意識は、飛んだ。



次回は、マリーさん視点のお話・・・もしくは、壺外編第二話になる予定です。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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