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23 こんなこともあろうかとッ!

 こんにちは。こんばんは。

 まったく何も思いつかなくて、ずっと下書きを繰り返していましたが・・・ようやく形になったと思います。

 ルッタとアライラーが微妙に強くなるためのお話となりますが、微妙に強くなるというのが難しくてどう書けばいいのか分からないまま書いております。

 やっぱり、物語を書くのは難しいということを痛感するばかりです。


 最後までお楽しみいただければ、幸いです。

 

 空から地を照らす太陽を見上げて、俺はため息を吐いた。

 東門を出て、村からはさほども離れていない草原にて、俺は体育座りをしながらほぼ何も考えずに時間を過ごしていた。

 そんな俺に、アライラが歩いて近づいてくる。朝ごはんを食べ終えたようだ。

〈ねぇー?〉

「うん?」

 俺が返事をすると、彼女は沈黙するだけで続きを言葉にしない。

 ジィ―。っと、俺を見つめてくるだけだ。なんだろう? 獲物を狩る蜘蛛のように、なんだか観察されている様でちょっと落ち着かないんだけども。

 だけど、考えることは別にあるので、すぐに思考が最初に戻る。

「はぁー」

 ため息が止まらない。

 北を目指して出発したのはいいものの、ヨーロロンとほぼ同等と思われるモンスターを相手にして、思っていた以上に北へ進めない現状に気落ちしている。

 精神的な疲労なのだろうか? 身も心も重く感じる。

 マリーさんの用意してくれた地図。これに記された「比較的安全に北を目指せるルート」の進路にはノットンという鶏種のモンスターがおり、一匹なら対処できるが群れを相手にするのはムリとして撤退した。

 ならばと、縄張りを迂回すれば上手く北へ抜けられるのではないか?と思ったが、シャッビンカンという渡り鳥に擬態した昆虫種によって阻まれた。

 俺とアライラでは対処が出来ず、マリーさんに助けられて逃げ延びたわけだ。だけどさ? ビームを溶かす溶解液なる攻撃手段を持つって・・・ビームって溶けるの? どうなの?

 今はやめておこう。

 右回りがダメなら左回りを試すのが普通かもだが、右回りがアレなのだから左回りも似たり寄ったりなんだろうなー。ヤだなー。

 いっそのこと、村に引きこもって、残りの人生を静かに過ごしたい。


〈ねー?〉

「なーにー?」

 力無く返事をすると、アライラは言葉を続ける。

〈右回りで迂回するんでしょ? 今ならあの虫も居なくなったわけだしさッ!〉

「いると思うぞ」

〈・・・え!?〉

 俺は、アライラに問う。

「ヨーロロンはさ。俺たちがこの【春の区画】と呼ばれた第一階層に来た当初から、マリーさんが君の朝ごはんとして毎日、狩ってくれていたモンスターだよね?」

〈うん。それはそうだけど・・・それとなんか関係ある?〉

「ある。・・・俺たちもご飯のために狩ってきただろう?」

〈そーねー〉

「それでさ? ヨーロロンの数は、どれだけ減ったと思う?」

〈・・・え? えーっと・・・そう言われてみると・・・減っているようには・・・〉

「そうだ。減っていない」

〈え?〉

「ヨーロロンはまったく減っていない。狩った直後は確かに減っているんだけど、次の日にご飯の調達で向かうと・・・数が復活しているんだ」

〈うぇ!? オカルト!!〉

「いやいや、ダンジョンなんだよ? ゲーム的にはリポップでしょ?」

〈あー・・・リポップか。確かにダンジョンモンスターのお約束だよね! ゲーム的だけど!〉

 そうなんだよなー。

「Lvとか能力値とか、そういう表示も表記もないこの世界なのに、リポップしていると考えるのはオカシイ気もするんだけどさ・・・でも、そうと考えれば数が減らない事の説明はできる」

〈ふーん〉

 まぁ、だいたいの予想はできている。

 このダンジョンは、神々の天敵である【神殺しの獣】というバグモンスターを世界から隔離して詰め込んだ壺の中。

 つまりは、災厄が封印されている壺なのだ。

 地球で言えば『パンドラの箱』と呼ばれる神話に登場した道具に等しい。まぁ、神さまを問答無用で無力化し、無効化してしまう上に、アバターを貫通して本体を殺すという最凶最悪の事態を招く。

 正しく『災厄』となる存在だ。

 そのダンジョンでモンスターが死ぬと? それは世界から隔離されている以上は、壺の中で循環されるものと見ていい。

 つまりは、死体も、魂も、決してこのダンジョン・・・いや、壺の中から外に出ることはできないようになっている。

 さらに、バグ進化の条件がよく分からないのだから、死んでしばらくしたらバグ進化して復活する。という可能性だってあるだろう。

 そう考えれば、死んでもすぐに復活させて、何事もなかったかのように過ごさせれば、何かしらのバグとかが出ない・・・ように調整されているのだろうな。


 ・・・なんの根拠もない予想だけども。大方、そういう理由だと思っている。


 この予想から考えられることは・・・マリーさんによって一掃されたシャッビンカンはすでに復活していて、今もいつもと変わらずに縄張りで獲物が来るのを待っているんだろうさ。

 仮に、もう一度シャッビンカンを殲滅して先へと進むことが出来ても、退路の確保ができるとは思えない。これが一番の問題だろう。

 アイツらは音速飛行が可能であるから、撤退時に空を飛んでも追ってくるのは想像に難くない。

 せめて、俺たちがマリーさんくらい無双できればよかったんだけどねー。


「そういうわけだから、今日は互いの現状を把握して、改善するために考えよう」

〈唐突!?〉


 まず、現状を把握するためにやることは・・・。

「とりあえず、現段階で俺たちが使用している技の確認をしよう」

〈はい! 邪眼ビームが使える!〉

「そういう意味じゃないよ」

〈じゃあなんなの?〉

「君の邪眼ビームは、現状でモンスターを倒すことが出来なくなっている。それと、俺の巻蛇槍貫撃もなんだか弱いし・・・ここで見直しておきたいんだ」

〈はぁ? 別に倒せないわけじゃないし! ちょっと敵のレベルが高いだけだしー! 倒せるビームを撃てばいいだけだしぃ!〉

 ・・・あ? 今、倒せるビームが撃てるって言ったか?

「撃てるのか? ヨーロロン。ノットン。シャッビンカン。を倒せるビームを?」

〈・・・う、撃てるー・・・かなー?〉

 声が上ずっている? なんだかビビっているようにも見えるが・・・何にビビっているんだ?

 いや、それよりも話を進めよう。

「撃てるというのなら、それを見せて欲しいと思う」

〈どうするの?〉

「俺は大道人を召喚して、地獄能・巻蛇槍貫撃を投げるから、君には邪眼ビームを含むビーム系の技で撃ち落として欲しいんだ」

〈・・・技比べ?〉

「うん、そんな感じだね」

 俺が使う技『地獄能・巻蛇槍貫撃』は弱い。

 ギガトレンクとの一戦で、俺が呼び出していた地蔵菩薩道標人が使ていた巻蛇槍貫撃は、ただの一撃で破壊することが出来ていた。

 それからすると、俺の使う巻蛇槍貫撃は圧倒的に弱い。

 なぜ、弱いのか? それを確かめるためにも、アライラのビームにぶつけるのが最良だと思える。

「大道人には、君目掛けてまっすぐに投擲してもらうから、君はビームで迎撃してくれ」

〈りょーかー・・・いや待って! それだとビームを外したら私に刺さるじゃん!?〉

 ・・・確かに、刺さるな。

「よ、より実戦的にすることで、命中率向上と、緊急回避の特訓になる?」

〈なんで疑問形なの?〉

「君に言いつつ、自分にも確認しているだけだ」

〈ふーん〉

「じゃ、はじめるぞー」

〈投げやり!?〉

 え? それはギャグで言ってる? それとも真面目に言ってる?

 わからん!

「大道人! 言った通りにやってくれ!」

〈問答無用!? どんとこーい!〉

 アライラから十分に距離を取ってもらっている大道人が、俺の記憶にある限りで槍投げ競技を模倣して投げてもらう。

 大道人からアライラの位置まで槍を届かせるために、多少の放物線を描くように飛ぶ。

 これに対し、八つある邪眼の一つが光った。

〈邪眼ビーム!〉

 技名を発音しないと撃つことが出来ないのか?と疑問を覚えたが、イメージが重要であるため、言葉にして発したほうが使いやすいのかもしれない。

 彼女が放ったビームは、大道人に投げてもらった槍をあっという間に融解させてみせる。


〈どや! どーや! どやろか!〉

「ああ・・・うん」

 威力は十分にある。ように見えたが、実際にはヨーロロンを含めて邪眼ビームで仕留めることはできていなかった。

 ノットンとて、このビームで傷を負わせられたが、倒すには至っていない。

 だとすると、俺の槍が相当弱いという事になる。がだ、この技は洞窟迷宮にてギガトレンクを一撃で破壊した技なのだけど・・・。

 俺が呼び出した地蔵菩薩道標人が使用して見せてくれた技でもある。

 だというのに、俺が使う槍は弱過ぎるのが納得できない。道標人が使っていた槍と何が違うのか?

「・・・いっそのこと、道標人を召喚して教えてもらうか?」

 道に迷ったら、いつでも呼んでくれ。と言っていた・・・気がする。

「うーん・・・今が道に迷っている状態と言えば、間違いでもないけれど」

 しかし・・・道標人を呼び出したら苛烈な稽古を強いられる気がするし、洞窟迷宮でもボッコボコにされたし・・・そういえば、首を折られたんだった。

 ・・・。

 うん。やめておこうっと!

「あ!」

〈え!?〉

 そうだ、一つ思い出した。

 地蔵菩薩道標人を召喚した当初は、喋る事ができない地蔵だった。が、後に魔力を追加供給したことで、喋ることができるようになった。

 その時の説明だと、俺が・・・まぁいい。召喚時に魔力の量が少ないせいで、喋ることが出来なかったと言っていたはずだ。俺が未熟であるための結果ということだな。


 ・・・そうとも、俺は雑魚じゃない。未熟なだけ。未熟なだけ。


 ま、それは置いておくとして、この巻蛇槍貫撃でも同じことが言えるのではなかろうか?

 つまり、槍一本分の魔力では、本来の性能を発揮できていない。ということ。

「・・・アライラ。もう一回やるぞ」

〈どんとこい!〉

 今度は槍を二本作るつもりで魔力を注入し、ただ一本の槍を作り、大道人に持たせる。

「大道人。さっきと同様に巻蛇槍貫撃をアライラへ投げてくれ」

 俺の指示に頷き返すと、先と同じ投擲姿勢で槍を放物線を描くように投げてくれた。

 対して、アライラは余裕で対応する。

〈落ちろ! 邪眼ビーム!!〉

 なんか、格好つけているけれども・・・ビーム自体はさっきと何も変わらないものだ。いったい、どんなイメージをしているのだろうな。

 放たれるビームが、巻蛇槍貫撃に命中すると・・・さっきとは異なり、撃墜されることなくビームに耐え切った。

 円錐形の刃である縛鎖閻魔錠は赤熱色に染まり、白い煙を吹いているようだが、大道人の投げた勢いは衰える様子は無い。

〈んぇ!?〉

「回避だ!」

〈そうでした!〉

 ビームで撃ち落とせなかったことに驚いたようで、固まってしまったアライラ。だが、俺の一声で軽やかなステップを踏みつつ回避する。

 そうして、槍はアライラのいなくなった位置に落着し、土を融解させつつ草を燃やし始めた。

「あ、やばい・・・アライラ、邪眼で消火してくれ」

〈ぅへーい〉

 邪眼の一つが光ると、超局所的な雨雲が発生する。これがゲリラ豪雨のごとく雨を降らして一気に鎮火してくれた。本当に万能邪眼は万能だな・・・こういうの見ると羨ましくなってしまう。

〈名付けて! 邪眼、ピンポイント・ゲリラ豪雨!!〉

「まんまじゃないか」

〈いい名前が思いつかなかったんだよー〉

 俺のお願いを受けて、アライラが咄嗟に使った技だからか。

 ・・・いや、そもそもそういうのはあまり考えていない気もする。いままでだって似たような感じで技名を使っているもんな。


〈ところでさ?〉

「うん?」

 なんだろうか?

〈今のは何をしたん?〉

 何を・・・って、槍のことかな?

「さっき投げた槍の事?」

〈そう! それ! 一回目の槍はあっさりと破壊できたのに、二回目の槍はできなかったからさー。どうやったのかなー?って思ってね〉

 なるほど、当然の疑問か。

「ギガトレンク前の隠し通路を開く辺りの事は、覚えているか?」

〈・・・はぁ?〉

 覚えていないか・・・割と、忘れっぽいもんなぁ・・・君。

〈あ! あの時か! お地蔵残がルッタと同じ声で喋った時のことね!?〉

「・・・そういえば、俺と地蔵って同じ声だったか」

 自分で自分の声を聞くと違和感が凄いんだけども・・・まぁ、その辺はいいや。

「あの時、地蔵は魔力が足りないからと、追加を求めて来ただろ?」

〈そうそう。ルッタが雑魚過ぎて声が出ないから、魔力を追加してもらって喋れるようになったんだよね?〉

「はい。そうですね」

 はい、終了。もういいです。おわり。次。次いくぞー。

「大道人。三投目いくぞ」

〈また唐突!?〉

「アライラ。さっきと同じ槍を投げるから、今度は君が撃ち落としてみろ」

 八つ当たり気味で三投目を投げる構えを取る。

 これは、アライラのビームをより強くするためでもあるから・・・と思ったが、よくよく考えてみると、彼女は「邪眼」と言った後に変な名前を付けるとビームの威力が変わるんだよな。

 ノットンの時も「トドメのビーム」と・・・言ってたかな? ビームで手傷を負わせていたが、大道人で取り押さえていた際に、頭を吹っ飛ばしたビームで使っていたな。

〈その前にさ! どうやったの!? さっきの槍!〉

「・・・二本分の魔力で一本の槍を作ったんだ」

〈二本分の魔力で? 一本?〉

「そう、槍+槍=槍という方程式で作った槍だったわけだ」

 なんか色々オカシイけれど、なんかもう面倒くさくなった・・・なったんだけど、アライラが予想外の考えに行き着く。

〈・・・うん。チャージ系の技っぽいかな? チャージランスは凶悪よねー〉

 アライラさん? なんのお話をされているのでしょうか? 今の足し算でどんな答えが出たの?

〈ルッタ! 三回目を投げてちょーだい!〉

「え? あ、うん。大道人」

 アライラが催促してくるとは思わなかったが、俺は大道人に合図を送る。

 コレを見て、三投目の槍投げが行われた。先と同様にアライラ目掛けて槍は飛んでいく。

〈いっくぞーッ! 邪眼、チャージビームゥ! バスターァア!!〉

 なッ!? 新技!?

 バスタービームとは異なる技? チャージビームバスターとは!?

 俺が前のめりに見つめていると・・・アライラの邪眼からビームが弾となって出現し、これにさらなる魔力が集まってビームが重なるようにチャージされていく。

 だけど・・・チャージ速度・・・おっそいな。

「アライラ! 早く撃つんだ!」

〈いや! でも! チャージが! まにあわ――――〉


 大道人の投げた槍は・・・そしてアライラの身体に突き刺さった。

〈はぎゃああああああああああああ!!!!!〉


 巻蛇槍貫撃が突き刺さって三秒ぐらい後に、チャージが完了したビームが轟音をまき散らしながら発射された。

 ・・・やっぱり、ぶっつけ本番で試さなくて良かった。





「――さて、次だ!」

〈えーッ! まだやるのーッ!?〉

 アライラに突き刺さった槍は、貫通することは無かった。

 突き刺さる前に穂先の回転を止めていたため、ドリルのように肉を削り取って貫通することは避けられた。致命傷は避けられたというわけだな。

 ちなみに、次と言ったが・・・もうビームと槍をぶつけ合わせることはしない。

 結果として、アライラにダメージを与えてしまったのだから、気分転換と思考の切り替えも兼ねて違う事を試したい。

 あと、アライラの怪我は俺が『カタチナセ』という謎技で修復した。


「安心しろって、もう槍とビームの技比べはしないからさ」

〈あ、そうなん?〉

「ああ、最後に使ったチャージビームバスターというのは、後程じっくり検討するとして・・・今は違う事をして一度忘れよう」

 そうとも、上手く行かないことを延々と続けていたって、上手く行くとは限らないからな・・・ならば、いっそのことまるで違うことをして、気分を変えてみようと思った。 

〈で? なにするん?〉

「ああ、次は付与魔法とかその辺りだな」

〈おお! バフかーッ! 確かに、一時的でも能力向上ができたら、便利よねー♪〉

「そう。実はこの間のノットン戦で君が使った防御強化を見て、身体能力向上の強化が出来れば便利だよなーって思ったから、いい機会なので今から試して見たいと思う」

 前世のネット小説でも、わりと多いジャンルの話しだったし。アライラであれば、俺よりもその手の技は詳しいだろうから、サクッとできるようになるだろうさ。

 しかし、俺の考えは少し甘かったらしい。

〈うーん・・・でもねぇ〉

 どういうわけか、アライラが難しい顔を・・・うん。難しい顔をして唸っている。

「どうかしたのか?」

〈うん。確かにバフが効けば便利なんだけどさ? 実はルッタと出会う前にいくつか試してるんだよね〉

 ・・・なんですと?

〈こう・・・攻撃力を倍にする魔法とか、機動力アップとか、そういう感じのゲーム的な補助魔法は邪眼で試して見たんだよ〉

 へぇ・・・そういうのを試していたんだな・・・。

〈でもさ・・・まるで効果が無かったから・・・やめたんだよねー〉

 効果が無かった?

 ・・・そうなると、なんで効果が無かったのか?という疑問が生まれるな。

「効果が無かったというけれど、使った技はどんな感じなんだ?」

〈どんな・・・って言われても・・・ゲーム的に、能力を倍にする補助魔法だけど?〉

 ・・・倍・・・か。

「なら、それだと効果は出ないだろ」

〈え!? なんで!?〉

「なんでも何も、ゲーム的なステータスが数値化されていない世界で、能力を倍にすると言ってもね」

〈・・・たしかに!〉

 そう、彼女がイメージした補助魔法は、おそらく能力値を倍にする効果なのだろう。

 ゲーム的に考えればそうなるわけだが、この世界は地球準拠らしいので・・・Lvなどを始め、あらゆるステータスが数値化していないから、能力値を倍にすることはムリだろう。

「というか、そういうのも洞窟迷宮で確認し合ったと思うんだけど?」

〈・・・したっけ?〉

 ・・・俺が記憶を捏造している可能性も否めないので、なんにも答えられない。

「まぁ、いいや・・・数値的な能力向上系は、この世界では無意味だと考えよう。なら、それ以外の強化方法であれば、有効かもしれない」

〈おお! 例えば?〉

「いや、それは俺よりも君の方が詳しいだろ?」

〈・・・あ、そう言われるとそうかも?〉

 そうだ。

 彼女の知る漫画アニメの知識を参考にして、この世界で再現可能な技を邪眼で使うしかない。

〈むぅーん・・・だけどさー。そういうのもいろいろあるし、一言で強化方法とか言われてもねー〉

 そうか、あくまでも指針が欲しいというわけだな?

「そういうなら、一つの例として『火事場のバカ力』はどうだろうか?」

〈おッ? ハッスルマッスル!〉

 はぁ?

「何を連想したのかは知らないけれど・・・『火事場のバカ力』というのは、危機的状況などでアドレナリンが異常分泌されることで、通常ではありえないパワーを発揮すること。っていう説明が、科学的に存在しているモノだな。俺の覚えてる知識が正しいかは・・・横に置いておく」

〈ははぁ・・・つまり?〉

「屁理屈でも空想でもいいから、何かしらでそれっぽい説明が存在している強化方法はないか?ってことだよ」

 思考を放棄しているな? 面倒くさくなったんだろうね。俺も面倒くさいって思っているからね!

〈・・・なるほどー。そうなると・・・ロボット系なら結構あるかなー?〉

 ロボット系?

 あー・・・そういえば、メカニック解説とかいう本が書店などで売られていることもあるよな。

〈って言っても、そういうのは詳しくないんだよねー。お父さんがロボット系は好きだから、たまに熱く語っているのを聞くぐらいだけどー〉

 君のお父さん。もしかしなくてもオタク系なのかな?

〈えーっと、何があったかなー? あ、そういえば珍しくお母さんが熱く語っていたのがあったなー〉

 ・・・もしかして、君のお母さんはオタク系? つまり、ご両親でオタク? そうか、アライラがオタク系なのは両親の影響ってことなのかな?

「それは、強化方法の話しなのか?」

〈その通り! その名も・・・ト〇ンザム!!〉 


 ・・・・・・んんんん????


「いや、車が強化にどう繋がるんだ?」

〈車?〉

 え? ト〇ンザムって車だろう?

 昭和時代のスーパーカーで、日本でも人気沸騰したと聞いたことがあるぞ。

 ・・・とはいえ、今では一部のマニアがコレクションとしている車で、希少になっている。とも聞いたような気がする。

 前世の叔母の職場の先輩男性が、叔母をデートに誘った際に乗ってきた車だ。

 趣味だと言っていたな。

「そう、車。昭和時代に流行った古い外国車だったはず・・・」

〈違うよー。この機能を発動すると、短時間だけど機体性能が大幅に向上するんだよね! 攻撃力、防御力、機動力が強化されるから、メッチャ強いのだ!〉

 へぇー。

 ま、同じ名前でも時代ごとに用途が変わる事ってあるだろうし、細かいことを気にしては身が持たないな。そういう強化名だと覚えておこうっと。

〈ただ、発動するまでに粒子を圧縮しながらチャージしないといけない事と、使用後は全性能値が大幅ダウンする弱体化が付いているんだけどね〉

 なるほど、ハイリスクがあるのか・・・一時的な超強化を見込める反動としては、妥当か。

〈ま! それも後年になると『弱体化?なにそれおいしいの?』って言うぐらいには、バカスカと使ってデメリット描写が無くなるんだけどね!〉

 へぇー。どういう反応をしてあげたらいいのか・・・分からないや。

 笑えばいいのかな?


 しかし、それの解説などがあるならば、アライラでもできるかもしれない。

 粒子・・・が何なのかは分からないが、動力源となるエネルギーであるならば、この世界では魔力で代用が可能だろう。

 後は、圧縮か。

 洞窟迷宮で超巨大ミミズ・・・名前を忘れたけれど・・・の肉団子を圧縮して、俺が食べることもできないぐらい硬くしていたから・・・食べてみたかったなぁ。

 思考が逸れた。

 圧縮自体は、洞窟迷宮で実践済みだから・・・多分、その応用でどうとでもできるはずだ。

「まぁ、話を戻そう。その粒子の代わりを魔力でできそうか?」

〈うん。できると思う〉

「なら、後は圧縮してみるだけだな」

〈うんうん! さっそくやってみるよ!〉


「待ったッ!!」


 俺は、大声でアライラがやろうとしている事を止める。

〈・・・え? なんで?〉

「やってみる前に、俺から条件を出させてくれ」

〈う・・・うん?〉

「八連邪眼でやらないこと!」

〈ギクゥ!!〉

 あ、やっぱり。邪眼八つで一斉に魔力を圧縮しようとしていたな?

 ノリと勢いで圧縮してやろうという考えだったんだろうけど、俺からしたら冗談じゃ済まない話だ。

「やる気だったな?」

〈そ、そそそ、そんなことないよ!?〉

 おもいっきりしどろもどろになっているじゃないか。

「・・・まずは試しだと言ってるんだよ? 八つの邪眼で一気にやってどうする」

〈ふっ! ふっふっふ! オクタドライブ!って感じでカッコいい!!〉

「それをバカって言うんだ」

〈バカとはなんだい!? カッコいいは正義なんだぞ! ロマンなんだぞ!〉

 ・・・いや、ロマンで危険極まりない行動をされては俺の命がいくつあっても足りないんだよね。

「あのさぁ? 確かに俺は君のような知識は無いけれど、それでも『お約束』っていうのは多少知っているんだぞ」

 そうとも、よく分からないエネルギーをどうのこうのするという事は・・・。

〈ルッタは次に、爆発オチになる!と言う〉

「そういうのは大抵、爆発オチに・・・分かっているなら言うなよ」

〈えーっ! そこは『爆発オチに・・・ハッ!』ってなるとこだよね!?〉

「なんで?」

〈くぉのーッ! 男子必読の漫画だろうがよぉお!〉

「なにが?」

 まるで分からん。

 アライラは何を怒っているんだろうか? 俺がそういう方面に無知なのは、もう知っているだろうに。

「まぁいいけどさ。爆発オチとしてギャグで終わるなら、それでもかまわないよ? だけど、このダンジョンだとギャグで終わるのか、ガチで終わるのか分からないからやりたくないんだよ」

〈でも私、このダンジョンに生息しているモンスターですし?〉

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・君はダンジョンモンスターなのかもしれないが、俺は違うぞ?

 アレ? アライラって死んでもリポップできるんじゃないか? どこでリポップするのかは定かじゃないが、別に死んでも大丈夫なのでは?

 可能性は十分にあるな。

「わかった。八連邪眼で盛大な汚い花火を打ち上げてくれ。俺は村に帰っているからね」

〈わーッ! ちょっと待ってよ! 一人で試すのはさびしーよーッ!〉

 邪眼が光ると、俺の身体が宙へと持ち上がって動けなくなる。これは洞窟迷宮で見せたサイコキネシスか!

「死ぬなら一人で死んでくれ! 俺を巻き込むなッ!」

〈旅は道連れ、世は情け!って言うじゃんよーッ!〉

「死への旅路に付き合ってられるか! 放せーッ! ギャグっでもガチでも死にたくないんだ!」

〈ほらほら! 飴ちゃんあげるからさ!〉

「大道人。アライラをミンチにしてくれッ」

〈まてぇーい!!!〉





〈はい。っというわけで、邪眼一個で魔力の圧縮をしたいとおもいまーす〉

「わー、ぱちぱち」

〈せめて拍手してよー〉

「いいから早く始めろ」

 とりあえず、俺が付き合うのであれば邪眼は一つだけで魔力の圧縮を行う事で話がついた。

 無視して八連を使おうとした場合は、大道人六人で錫杖を突き刺してでも止めると言って脅しもかけた。少なくとも、地獄変を用いた技の強化方法は分かったので、なんとかなるだろう。

 ・・・ただ、大道人三体分で一体を召喚し、これを六人用意したので俺自身も頭がクラクラしている。きっつい。あ、血が喉を通って口から飛び出して来た。

〈・・・大丈夫? 血を吐いてるけど〉

「まだ大丈夫。万が一の事故に備えるならば、大道人も強化する必要があるし、それぞれに地獄変を持たせることで、状況に応じて対処できるようにしておいただけだ」

〈マリーさんを呼んで来たらどう?〉

「まぁ、今回は大丈夫さ。邪眼一つ潰せば止められるはず」

〈いや、しれっと私の目を潰す発言すんなし。こわいわい〉

 しかし、暴走した物は叩き潰すと高確率で止まるのだろう? なら、即断即決で潰すだけだ。躊躇うことなどない・・・死ぬよりマシだろ。

〈ま、いいや。さっそく始めるよっと〉

「ああ、いつでもどうぞ」

 俺が錫杖を構えつつ、アライラが行動を開始する時を待つ。


〈魔力・・・圧縮開始!〉


 邪眼にチャージされるビームのエネルギーは、そして一瞬を消えた。

〈・・・〉

「・・・」

 どうなったんだ?

「ねぇ? 魔力が消失していないか?」

〈いんや?・・・邪眼ビーム分の魔力を圧縮したわけなんだけど・・・〉

「わけなんだけど?」

〈・・・ゴマ粒みたいになったんで、ルッタには消えたように見えているんだと思う〉

 ・・・あー。

 確かに、アライラのサイズでゴマ粒と言われてしまえば、俺の視力では見えないのも当然か。

 だが今、もっとも驚くところは・・・邪眼ビーム一発分の魔力が圧縮するとゴマ粒レベルになってしまうことだろう。

 どんだけエネルギー量が少ないんだ? あのビーム。

「なら、圧縮する魔力の量が少ないってことじゃないか?」

〈そう! それそれ!ってことで、バスタービーム分の魔力を供給して頂戴!〉

 ううむ・・・こういう時に許可を求めてくるか?

 普段から俺に確認することなくバスタービームをバカスカ撃ってるじゃないか。しかも八連で、

「・・・わかった。俺は歯を食いしばるから、圧縮するといい・・・あと、八連でやるなよ?」

〈・・・・・・わかってるよん♪〉

「今、勢いで押し切ろうとか考えてただろ?」

〈そそそそそそ、んなことはなないよ!〉

 動揺し過ぎだろ・・・いや、これも何かのネタなのかな? まぁ、その辺は深追いしないでおこう。

「とりあえず、邪眼一つ分だからな? 八つでやるなよ?」

〈オッケーッ〉

 魔力の圧縮が再開される。

 俺の身体から錫杖を通して、魔力がアライラへと供給されていくが・・・戦闘時並みの供給速度で腹が痛む。

 ちょっと、お腹を下したとかの腹痛ではない。洞窟迷宮脱出時の腹痛と同じに感じる。


 彼女の邪眼が一つ、魔力が満タンになったところで急激に光が小さくなっていく。さっきは一瞬で圧縮されていたから、やっぱり魔力が少なすぎたのだろうな。

 ただ、大量の魔力を圧縮するには多少の時間もかかるようだ。反発もあるのか、魔力が圧縮されるのを拒むように抵抗している。

 まるで、新聞紙を力任せに丸めて潰しているような感じだな。

〈むぉお!! こなくそーぉん!!〉

 アライラが声を絞り出すようにして力んでいる。

 ・・・これはまるで・・・トイレで・・・いや、止めておこう。

〈うぐぐぐぐぐgふんぐぐぐぐぐgおおおおおおほほほほほほほh〉

 ど、どういう声出して踏ん張っているんだよ。

〈ぉおっしゃあ! 圧縮できたぜぇ・・・はぁぁ・・・疲れたーッ〉

 改めて、圧縮し終えた彼女の目を覗き見てみると・・・なんか、光の円が出来ていてソレが丸い眼のなかで瞳のごとく存在感をアピールしている。

 ・・・八つあるうちの一つだけに光る瞳が出現したことで、アライラ・・・というか、モンスターとしての姿がより不気味になった。

〈どう? どう? 外から見て、なんか変化ある?〉

「オシャレ系コンタクトレンズを付けたようになっている・・・かな」

〈・・・ふぅん?〉

 どうやら、イメージが出来なかったようだ。

 圧縮ができたようではあるが、次は解放?とやらで自身を強化することになるわけだけど・・・。

 姿勢を正したアライラは、深呼吸をし始めた。

〈よーし、次は圧縮した魔力を開放して、私の能力を強化するぞー〉

「なぁ、その圧縮した魔力を開放するっていうけど、どういう感じで開放するんだ?」

〈え? そりゃアレだよ。体に流して駆動パルス流体機構をフル稼働させるんだよ〉

 ????

 え? どういうこと? なにそれ? 聞いたこともない名前なんですが?

〈・・・まー、こまけぇこたぁいいんだよー〉

「はぁ?」

 棒読み? つまりは、テキトーな事を言ったわけか?・・・となると、コレ!? マジでヤバいことに!


〈はい! 圧縮魔力ッ! 解放!!〉

 あ! 俺が止めに入る前に発動させた!!

 

 次の瞬間、アライラの全身が青に輝き始めると、体毛がユラユラと揺れ動き出し、青い火が全身から噴き出て来た。

「これは・・・」

 洞窟迷宮でアライラの体内に入った寄生虫を駆除するためにやったのと同じ反応。

 あの時は、俺が錫杖で直接魔力を流し込んだことと、寄生虫を焼き殺すという目的があったからこそ、アライラは無傷でどうとでもなったわけだが・・・これはダメだ。

 こんな、ダムの放水のような勢いで全身に火を回したら身体が内から焼け焦げるぞ・・・。

〈ほぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ〉

 あ、前もこんな声出してた気がする。

 って、なんかほっこりしている場合じゃない! 錫杖を投げてアライラに刺せば魔力の流れ込みを制御できるかも分からん!

 投げる!

 そのために錫杖で投擲準備に入った。


「なにをしてんだゴルゥアッ!!」


 アライラの真下に出現したその人は、殺気が迸るほどの威力を乗せた拳で殴り上げる。

〈ごっばぁあ!!〉

 腹・・・腹でいいのかな? 脚の付け根と言うか・・・虫の細かい部位が分かんないけど、そんなところを殴っても大丈夫なのかな?

 体が空高くに跳んでいくアライラは、口から魔力?をゴッポゴッポと吐き出しながら、そして地面に背から激突して動かなくなった。

「おまえも、止めなさいよ」

 直後、俺の頭にマリーさんの手が乗った。

 アライラを殴った殺気が迸る手が頭に乗ったことで、汗が噴き出る。少しでも力が籠れば、俺の頭が潰れかねない。

「い、いろいろあって、邪眼一つに減らせました・・・」

「ふむ・・・説明しなさい」



 とりあえず、一通りの説明をした。

 大道人は今も魔力をゲロっているアライラを面倒見ている。

 どうやら、二日酔いに似た状態であるようで、頭が痛い。体の節々が痛い。眩暈がする。などの症状が発生しているようだ。

 ・・・その程度で済んだのが幸いだな。

 それにしても、マリーさんはマリーさんで何かあったのだろうか?

 ・・・。

 お茶でも顔に掛けたようなシミが服にあって、茶葉っぽいのが点々としている。これは、お茶を飲んでいる時にアライラの異変に気付いて噴き溢したって感じかな?

「まったく・・・そもそもロボットの特殊機能を再現しようというのが間違っているのよ」

「そうですね」

「アライラーは蜘蛛のモンスターなのだから、ちゃんと分相応の強化方法を用いることが重要なのよ」

「そうですね」

「幸いにも、この世界には魔法術があるわ」

「そうですね」

「アライラーがコレを覚えて、邪眼で再現すればいいだけのことよ」

 ・・・そうでした。

 魔法術とか、俺には使えない技なので意識から外れていた。

「ほら! こんなこともあろうかとッ!!」

 俺がボーッとしていたら、マリーさんが何かを取り出して設置した。

「教材だって準備済みなのよ!!」

 か、紙芝居用の舞台と紙芝居舞台と置くための机だと・・・。

「なぜ、私を呼ばないッ!?」

 呼んで欲しかったんですね・・・申し訳ない気持ちでいっぱいです。だから、その眼を輝かせるのをやめてください。ただただ不気味です。

 しかし、俺の視線はマリーさんが用意した紙芝居から離せない。


『マリーのなぜなに魔法術講座』


 ・・・手書きだー。





 次回は、微妙に強くなったので、今度こそノットンを超えて北を進むお話を予定しています。


 マリーは、ウィッチへの報告書を書き終えて伸びをしつつお茶を口に含んだ直後、アライラーの異常事態を知らせるアラートが鳴って、驚いてひっくり返った感じです。

 後頭部を打ち付けたことと、お茶を被ったことと、アライラーがバカをやりやがったことにマジギレして駆けつけた。という話を入れようかどうしようか悩んで、とりあえず止めました。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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