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22 そうだ! 迂回しよう!

 こんにちは。こんばんは。

 ノットンをアッサリ攻略させようと書き始めてみると、アッサリと返り討ちになるルッタとアライラーしか書けなかったので、苦戦しました。

 旅行のチラシを見て思いついたのが、今回のお話です。


 少々長くなってしまいましたが、最後までお楽しみいただければ幸いです。

「ゴァッグァッゴォア!!」

 喉が潰れたかのような鳴き声で叫ぶノットンによって、待ち伏せからの不意打ちをした大道人が腹部を横に一刀で切断されて崩れ倒れる。

 八つ当たりするかの如く、ノットンの足元に転がった下半身が蹴飛ばされた。

「くそ、反応速度が尋常じゃないな」

 まだ6人のうちの一人だから大丈夫。などと思ったが、その場から飛び上がるノットンが空を舞う高速移動で俺・・・いや、アライラを一気に猛追してきた。

〈さっきまで両目がハートマークだったくせに! (♡ω♡)だったくせにッ!!〉

 器用に変な顔文字を表示するけれども、今やることじゃないよね?

「やっぱり、おいろけ作戦はマズかったんだよ」

〈雄を誘い出すなら、定番の戦術でしょッ!〉


 北にある谷を目指して村を出た俺たちは、大きなクレーターを縄張りにしているノットンという鶏っぽいモンスターと遭遇戦になった。

 理解し難い空中高速移動術によって、空を舞うように迫ってくるモンスター。剣のような羽を生やしていることが特徴だ。

 そんなモンスターの群れをいかにして突破し、北へと進むのがいいのか?を話し合った結果。

 当面はヨーロロンと同じように一匹ずつ誘導してノットンとの戦闘を繰り返し、攻略法を確立させようということとなった。

 まぁ、ほとんど俺が提案したことだ。

 アライラは「ファイターモードで上空からバスタービームを撃てば一網打尽にできる」と言っていたが、それをやったヨーロロンは歩いて退避していたことを教えると、なんか落ち込んでしまったから、俺の案を実行することとなる。

 さて、こうして実行された誘導であるが・・・最初は無反応だった。

 誘導する一匹を定めたあとは、結界を展開して群れから一匹を隔離しつつ、幻覚を見せてこちらに誘導するというものだ。

 しかし、ノットンは一心不乱に踊るばかりで、まるでこちらに誘導されてくれない。

 ご馳走を見せても、敵性生物を見せても、踊り続ける姿は・・・もしかしなくても意識が飛んでいるのではないか?と心配になるほどだった。

 ・・・だが、雌の姿を見せたらコンマ秒で反応した。

 ということで、アライラが悪ノリも含めて雌が雄を誘惑するかの如く艶めかしい仕草で挑発する。と、ノットン雄は目をハートマークにして飛び掛かってきた。

 その速度は、先日に相手したノットンを遥かに凌ぐほどで、アライラが邪眼ジェットで逃げるまで、接近されていることにも気が付かなかった。

 そうして、八つの邪眼でジェットした回避を行ったことで、幻覚などが全て解けてしまい・・・ノットンが騙されたことに気が付いて怒りに燃えだしたのだ。

 

 ・・・そりゃ騙されたと分かれば、誰だって怒るよね。


 体毛が真っ赤に染まっている姿は、溶岩のごとく熱を帯びているように見える。

 その証拠と言うわけでもないが、胴を横に一刀で切り払われた大道人の切断面が融解したかのように赤熱色に染まっている。

「だいどぉーじーん!!」

 俺が間延びするほどの悲鳴を上げた時には、足止めで突撃した大道人の一体が石材のごとく細切れにされてしまった。

 大道人の周囲を旋回するような動作でありながら、剣の翼で円弧を描くように振るいつつ乱舞した結果だ。

 ハッキリ言おう。

 先日より、ヤバい。

〈ルッタ! お目眼がハートだった時よりは、動きが遅いよ!〉

「怒りで攻撃力が上昇していると考えるのが妥当だな・・・誘惑されていた時は・・・多分、恋焦がれて速度が上昇していた・・・のかな?」

 気持ちが急いて落ち着きがなくなる人みたいに、ノットンも気持ちが急いてしまったという事か。

 いや、マリーさんの話しだと、雌に振り向いてもらえない一般ノットン雄らしいから、誘惑された時点で気持ちが舞い上がってしまうのかもしれない。

 うーん。

〈ええい! 邪眼! 八連続ビーム!!〉

 俺が考え事をしている間に、アライラが牽制目的のビームを連射した。

 その全てを、右足を軸にして回転する怒りノットンに切り払われる。何気に凄い回転速度だ。フィギュアスケートをするノットンとかいるのかな?

 ダメだ・・・このままでは埒が明かないな。

 ノットンの攻撃力は確かに上昇しているようだけれど、アライラが言う様に速度は下がっているようだ。先日に戦ったノットンと比べても、アライラが余裕で回避できる程度には遅い。

〈よ! ほ! は!〉

 ステップを踏むようにして、軽やかに怒りノットンの一撃を避けていくアライラを見て、確認することにした。

「アライラ、ノットンの動きが見えるのか?」

〈まーねー。目がハートだった時よりは見やすいよ〉

 なるほど、これならできるかもしれない。


「アライラ。アイツの斬撃を受け止めることはできるか?」

〈うぇ!? 受け止めるて、どうやって!?〉

 大道人をスパッと切断できる切れ味の剣を生やしているし、ビームだって切り払う事ができる厄介なモンスターだが、命中すればダメージを負うのも確かだ。

 ならば、斬撃を受ける目的で邪眼に防御系の技を発動させてやれば、斬撃を受けることはできるかもしれない。

「君の万能邪眼で、いい感じの防御技を前足二本にそれぞれ四つずつ掛けるんだ。空中移動時に行う両翼の振り上げ動作に合わせて懐に飛び込み、振り下ろしに合わせて前足二本に掛けた防御技で受け止める」

〈白刃取り!〉

「いや、白刃取りは無理だよ」

〈でしょねーッ!〉

 こんなやり取りをしているが、アライラはノットンの猛攻を割と余裕で避けていた。目が優れているからこその余裕なのかもしれない。

「俺の閻魔錠を君の前足に巻いて籠手代わりにするから、そこに邪眼で防御技をかけて、ノットンの攻撃を受け止めて欲しいんだ」

〈メッチャ怖いんですけど!〉


「地獄門・縛鎖閻魔錠!」

 申し訳ないが、アライラといつまでもコントをしている時間もないので、行動を強制させてもらうことにする。

 縛鎖閻魔錠が地中から飛び出して、アライラの前足に巻き付く。

〈や、やるしかねぇ! うおおおおおお!〉

 前足二本に鎖が巻かれたことで、アライラがどことなくヤケクソ気味に叫び出した。と同時に、動きを止めた。

〈四連邪眼!×2! プロテクト! シェル! ガード! バリア! ガントレット! アームドウェポン! シールド! 障壁! 結界! 盾! 鎧! 堅! えーっと! それからえーっと!〉

 いや、四連と言っているのに技の名前を言い過ぎじゃないか?

 と思いつつも、アライラの前足二本に巻かれた鎖がものすごい勢いで光が切り替わり、とにかく防御技が続々とかかった事を示していた。

 コレを持って、未だに〈シャッター! えーっと、城壁! あ、壁! ウォール! ウォール! 〉とだいぶ混乱しつつも叫んでいる。

 そうこうしていると、トドメと言わんばかりの鳴き声を上げるノットンが、両翼を振り上げて襲い掛かってきた。

「来るぞ!」

〈なむさん!〉

 振り下ろされる斬撃に合わせて、ノットンの懐に飛び込みつつ前足で刀剣を受け止める。

 鎖が多量の火花を散らして見せるが、邪眼のフル防御技によるブーストでなんとか受け止め切れたことに安堵する。・・・が、よく見ると刃が鎖に食い込んでいる。

 本当にギリギリで受け止められたのだと分かる。

「ここだ! 縛鎖閻魔錠!」

 地中から鎖の身体と錠の頭を持つ蛇が飛び出して、ノットンの足に巻き付く。

 これに反応して逃げようと飛ぶが、すでに閻魔錠は巻き付いている上に、地中に半分以上は埋まっているため、鎖が張って飛び退くことが出来ずに地に倒れ落ちた。

「大道人!」

 間髪入れずに両翼を抑えなければ、鎖を切り除かれてしまうかもしれない。

 だから、倒れている間に大道人二人でそれぞれの翼を抑えつける。刀剣に切り付けられないように注意しつつ、わずかな時間稼ぎに成功した。

「アライラ!」

〈邪眼! トドメのビーム!!〉

 邪眼の一つからビームが発射され、大道人を振り払おうともがいているノットンの頭を撃ち抜く。

 そうして、力なく倒れた。

「はー、倒せたー」

〈はー、倒せた―〉

 二人で同じことを言っているので、なんだかおかしい気分になる。

 

 が、倒したはずのノットンがまたもバタバタ暴れ出して大道人が吹っ飛ばされた。

〈バイオハザード!〉

 何を言いたいのかはよく分からなかったけれど、つまりゾンビになったと言う事だろうか?

 しかし、別にゾンビと言うわけではない。

「大丈夫・・・よく見ろ」

 俺が声をかけると、アライラは目を凝らして倒したノットンを見た。

 

 あの手の動物って、死んでもしばらく暴れている事があるんだよね。

 ・・・ビックリするけど。



 それから、数匹ほどノットンを狩る。

 雌の幻覚で誘導するのはやめて、他の方法で誘導できないかをいくつか試した。が、雌の幻覚以外ではまるで反応しないことに、俺は項垂れる。

「怒らせるしかないのか・・・」

〈雄ってやーねー〉

 結局、雌の幻覚で誘導し、あの手この手で・・・というか、ほぼ先ほど狩ったノットンと同じ戦法で倒した。攻撃手段と移動手段が他の個体と共通していることで、対応が作業化できたとも言える。


 雌の幻覚で超高速移動で迫ってくるノットン。

 幻覚を解いて正気に戻すと、状況を即時に理解して怒り出す。・・・凄い理解力だと思う。

 攻撃力が上昇するが、速度は通常時に戻るようなので、アライラは対応できるようになった。これで攻撃の始めで両翼を受け止める。

 止まったところに閻魔錠で足を縛り、大道人で取り押さえる。

 そしてビームで仕留める。


 この流れで、ノットンは狩れるように・・・いや、一般ノットン雄は狩れるようになった。

 ・・・ちょっと悲しい気分になる。

 どの雄も、行動パターンが同じ過ぎて泣けてくるのは、俺が男だからだろうか・・・。

〈この調子で、全部狩りつくしてやろう!〉

「いいや、ダメだ。次はノットン雌だぞ」

〈雄と同じじゃダメかな?〉

「そうだね。明らかに雄と雌では外観が異なる。宝飾品のような物を生やした翼から、どんな攻撃をしてくるのかが分からない以上・・・下手すればこっちの命が危ない」

〈むぅん・・・実は雌の方が強いっていうのは、お約束だしね〉

「そういう法則があるのか?」

〈漫画やアニメなら定番よ? 海賊のボスも盗賊のボスも騎士団長とかも、ほぼほぼ女性の場合が多いし〉

「・・・そうか」

 そういう法則があるのなら、異世界モンスターも当てはまるかもしれないな。

 ならば、今日はこれで村に帰り、次を考える方がいいだろう。

「よし、今日はこれで切り上げよう」

〈ほいほーい! ローストチキンも数匹確保したもんねー!〉

 ・・・大道人にまた円陣を組ませる必要があるのか? あ、そういえば、ノットンに石材のようにされた大道人が居たな。アレを回収してレンガ代わりに組めば、石窯になるか?

 いや、接着をどうするか・・・アライラの蜘蛛糸で代用できるかな? 燃えてしまうか・・・。


「まぁ、待ちなさい」

 俺が村に帰ってからのローストチキンをどう作るかと考え始めると、マリーさんがいつもの言葉を掛けて来た。

「なにか?」

 ちょっと不満気に返すと、クレーターの中央へと指を向ける。

 そのため、俺は指が示す先を見る。

「・・・アレは?」

〈ノットン・・・かな?〉

 俺の視界では遠いために、詳細な姿がよく分からないが・・・色が他のノットンとは異なり、黒と茶色が目立つ。

 さらに、一般ノットン雄と比べても二倍近い体格をしており、ここからでも分かるほどマッチョに見える。ボディビルダーとは違うだろう。

 アレは、戦闘に特化した筋肉を持っている。見せるための筋肉とは物が違っていると感じられる。


「ノットンの群れでも、異彩を放つあの群れは、戦闘に特化したノットンでね。亜種という奴よ」


 亜種だと・・・。

〈ノットン亜種! これはレア素材が取れる予感!〉

「ダメだアライラ。まずは鑑定だ! 迂闊な戦闘は自滅するだけだ」

〈おーらい! 鑑定!!〉


『モットン。異世界ノテテオに生息する鶏の一種。ノットンが戦闘に特化した亜種であり、主に群れの食糧事情を支えている。圧倒的な戦闘能力を持つものの、雌にモテるのは食事時だけである。群れのボスは、食事の時間だけが唯一の休憩時間なので、オス同士の仲は良好だったりする。当個体は群れのボスとはマブダチ』


 なるほど、あのひと際大きな個体が戦闘部隊のボスってわけか。

 ・・・いや、ちょっと待てよ。群れのボスは食事の時間だけが休憩時間ということは、それ以外はずっとステージで歌って踊り続けるということなのか?

 この世の地獄かな?

 いや、今はそこに注目するところではないよな。

〈どうするー?〉

「ダメだ。アレの相手はまず危ない。亜種というならば、ノットンとは異なる戦闘法で来る場合もある。せめて、一度は狩りをしている様子を見てからにしたい」

 ただでさえ、ノットンの戦闘方法は特殊過ぎて理解できないくらいだ。

 戦闘特化のノットンであるとするならば、先の一般ノットン雄以上に強いのは確定だろう。むしろ、なるべく早くここを去る方がいい。

 ああいう戦闘に特化している個体となれば、俺たちに勘づく恐れもある。

〈どこで狩りをしているのかな?〉

「それは後日改めよう。今日はここで引くんだ」

〈え? でも、このままだと北にある谷まで全然行けないよ?〉

「しかし、無理をして進んでも命を危険に晒すだけだぞ」

〈そこはほら、マリーさんが助けてくれるってー〉

 ・・・これまでの事を考えれば、よくそんな事が言えるな。

「それこそ当てにしてはいけないな」

〈なんで?〉

 ・・・なんでて、覚えていないのか?

「これまでに、君がピンチになってマリーさんが助けてくれたタイミングは、どういう状態だった?」

 アライラが、一時的に固まる。

〈・・・ボッコボコ〉

「うん、そうだ。つまり、マリーさんの救助タイミングは?」

〈・・・私がボッコボコ〉

 ・・・。

 ・・・。

「これは、逃げるのではない」

〈戦略的撤退である〉



「ということで、ノットンの群れ攻略はどのように進めていくとするか」

〈むぅん・・・〉

 村の広場にて、アライラの邪眼でクレーター内の静止画像を表示してもらいつつ、作戦会議を始めた。

 マリーさんは村長宅に戻っている。

「さて、今回の調査で新たな事実が発覚した。マリーさんが戦闘部隊とか言っていた食料調達班のノットンが、亜種であるという事実だ」

〈えーっと、群れのボスを含めたイケメンファイブと、雌と一般ノットン雄と亜種・・・ヨーロロンよりキャラ層が分厚いのはなんでなん?〉

「元の異世界を作った神に聞いてくれ」

 アライラの疑問はもっともだけれども、それを知るのは神だけだ。前世が地球人の俺に異世界モンスターの設定理由など分かるはずもない。

 設定資料集とかあれば、また別なのだろうけども。

〈とりあえず、一般ノットン雄は割と簡単に攻略できる感じだね〉

「そうだね。あそこまで行動パターンが一緒だと、個体差があるヨーロロンの方が生物としては優れているとも言える」

 ヨーロロンは戦うたびに戦い方が異なっていた。

 力押しで攻めてくる個体も居れば、毛を飛ばして空中に撒いておき、コレを使って空中を不規則にバウンドするという荒業をやっていたのもいる。

 それに比べると、一般ノットン雄は・・・まだ数匹とはいえ、全部が同じ技を同じように使用していた。個性が皆無と言える。

 こうなると、後は作業のように倒せてしまうから危険だ。

 一般ノットン雄だけなら、明日中には狩りつくせるかもしれない。が、次の問題は雌・・・それと亜種か。

「一般ノットン雄の場合は、一匹だけ群れを離れてくれた個体が居たことで、偶然にも一対一で戦闘できたから、割と簡単に攻略法を見つけられたけれども・・・」

〈次は雌を狙う? 亜種にする?〉

 戦闘能力に特化した亜種は・・・リスクが高いな。一般ノットン雄ですら、あの異常な戦闘能力を持っているのだから、おそらく攻撃パターンなどは違うだろう。

 すると、雌で様子を見てみるか?

 基本的な姿はノットンと共通しているから、なんとかなるとは思うが・・・。

〈いっそのこと、無視して北を目指すってのはどう?〉

「・・・無視して?」

 ・・・ノットンの群れを無視する。

 言われてみると、俺はノットンの群れを攻略することばかり考えていたが、目的は北にある谷へと行くこと・・・マリーさん的に言えば、冒険することだ。

「アライラ。マリーさんからもらった地図を表示してくれ」

〈ほいほい〉

 ルートが記された地図を表示してくれる。

 これを今一度しっかりと見れば・・・ノットンの群れが縄張りにしているクレーターを線が通っているが、ただそれだけだ。

 別に群れを殲滅しろとか書かれているわけではない。

「そうか・・・別にノットンの群れを攻略する必要は無いんだ」

 マリーさんは言っていたな。修行は兼ねているだけだと・・・。

 なんだ・・・そうか。

「よし、明日は右回りにクレーターを迂回してみよう」

〈お! 右回りってこっちね?〉

 アライラが地図に前足を重ねつつ、右回りにクレーターの縁をなぞる。

「そうそう。何も無理をしてノットンを攻略する必要がないのなら、俺たちが進めるルートを探せばいいだけだったんだ」

 ノットンの群れをまるごと相手するのは自殺行為に他ならないのだし、全部を狩り終えるには相当な時間も必要になるだろうから、ここは素通りできるようにするべきだろう。

 よし、そうと決まれば・・・。

「アライラ」

〈うん?〉

「明日のために、今日はもう休むとしよう」

〈うんうん。そのまえにご飯ね!〉

 ・・・しまった。忘れていた。

「じゃあ、とりあえず焼き台で丸焼きでも作ろうか」

〈ノンノン。石窯があるんだよ?〉

「即興の石窯モドキね? 大道人たちが焦げて炭塗れになった上に、どことなく不機嫌になっていたから、もう二度とやりたくないんだけどね?」

〈今日は、ピザが食べたい気分だね!〉

 ・・・ピザ? あの宅配で有名なピザ?

「アライラ、非常に残念なことがある」

〈どうしたの?〉

「ピザのパン生地ってどうやって作るんだ?」

〈え!?〉

 だって、ピザって宅配してもらうか、スーパーで売っている奴に自前でトッピングとチーズを用意して、後は乗せてレンジで仕上げるけれど・・・生地から作ったことはないんだよね。

 そもそも、あのクルクルーって回すとか、やったこともないし・・・小麦粉でいいのかな?

 いや、このダンジョンで小麦粉って、そもそも手に入るのか? 一応、味噌とかその辺の調味料はあるようだから、小麦粉だってあると思うけれど・・・。

「ちょっと、マリーさんに聞いてくる」


 その後、マリーさんに「麦自体は第三階層で自生している」と教えられた。

 小麦粉は、都に行けば市場で買うことができるとも教えてもらった。なので、マリーさんにお願いして買って来てもらえないか相談したが・・・。

「アライラーが食べるピザ分の小麦粉? 自分で都に行って買ってきなさい」と、断られた。

 ・・・なんきろ・・・いや、何トン必要になるかも分からないから、そりゃ断られるよね。

 

 ということで、今日は丸焼きを作った。




 

「ふむ。それで右回りに迂回すると?」

「はい。このままだと、ノットンの群れに阻まれて目的地である谷に到着できそうにないため、クレーターを迂回することで北を目指したいと思います」

 北門から村を出て、ノットンの縄張りとなるクレーターを目指しつつ、今日の方針をマリーさんに話す。

 おそらくは、了承してもらえるはずだ。

「まぁ、いいんじゃない?」

 ほら、やっぱりだ。

「冒険とは、危険を冒すことだもの。存分に命を危険に晒すといいわ」

 ・・・え? どういうことですか?

「あの、それはどういう意味でしょうか?」

「・・・私が地図に記したルートは、比較的安全で修行にもなるというのは、教えたわね?」

 確かに、そう言っていたと思う。

「そのルートから外れるということは、多少なりと危険度が増すということよ」

 ・・・うっそ。

「楽しみね。右回りに進んだ先で、どんなモンスターが待ち構えているのでしょう?」

 これは、なんか非常にヤバい気がする。

 けれど、ノットンで足止めされているのも嫌だから、今日は右回りで進んでいこう。

「アライラ、周囲の警戒をとにかく厳にしてくれ! 俺も可能な限りで警戒をするから」

〈おっけー〉

 冷や汗が止まらないけれど、とにかく進むしかない。

 アライラの歩行速度は、やはり体が大きいだけあって速いものだ。通い慣れつつある道というのもあるのだろうけど、ノットンの縄張りであるクレーターまでさほどの手間もかからずに到着した。

 そして、ここからが本番だ。

「よし、右回りでクレーターを超えるよ!」

〈おーし! いくぞーッ!〉

 

 のっそのっそ。と、アライラはクレーターに沿って右回りに迂回を始めてくれる。

 周囲の景色は殺風景になっているが、見れば大小さまざまなクレーターが進むほどに姿を現してくる。

「ずいぶんと、クレーターが残っているんですね」

「ええ。春の区画でも北西は、冬の区画に近い場所でもあるからね。流れ弾とかが結構、飛んできていたのよ」

 ・・・流れ弾?

 冬の区画から、流れ弾が飛んでくる?

〈流れ弾って、そんな長距離の大砲とか撃てるモンスターが居たのかな?〉

「・・・居たんだろうな。これだけ大小様々なクレーターがあるんだし」

 神殺しとの激戦跡地がノットンの縄張りになっているようだけど、それ以外にも異世界モンスターの攻撃によるクレーターもあるわけか。

 本当に、この大陸は生死を分かつ戦場となっていたわけだ。

「あれだけ、長閑な村があるのに・・・嫌に殺伐とした土地だ」

 この第一階層に来てすぐに到着した村。

 日本の白川郷みたいに古式家屋が並ぶ村。

 あの場所は、とても居心地がいい。永住したくなるほどの平和な村だ。

 だけど、北に来てみればそんな平和とは縁遠い風景が存在している。北海道並みの広さを持つ区画と言えど、こんなにも狭いと感じられる。

 村で感じの春風も、この場所ではただただ冷たい風となる。

 防寒着を着ると暑く感じるけれど、着ていないと寒いと感じるだろう。


〈お、ねぇねぇ? ルッタ〉

 どこかセンチメンタル・・・センチメンタルで合っているかな?・・・な気分で周囲を見回していると、アライラが立ち止まって声をかけてくる。

「モンスターか!?」

 俺は錫杖を構えて立ち上がり、アライラの視線・・・視線・・・前を向いているから前で合っているのかな? 丸い目で瞳とか無いとどこに焦点を合わせているのか分かんないな。

〈うーん・・・アレ、モンスターかな?〉

 前足で示す方角を見ると・・・薄っすらとだがクレーター?に水が溜まって湖のようになっている感じの水場が散見される。

 しかし、俺の視力ではそこまでだ。

「・・・どこに何が居るんだ?」

〈えー、見えないのー?〉

 仕方ないだろう。俺の視力は、君の万能邪眼に比べるまでもない人間レベルなんだからさ。

「できれば、君の視界で捉えたものを、表示してくれ」

〈しかたないなー〉

 なんか、ムカつく。

 言いつつ、アライラは地図を表示するのと同じように、その眼で捉えたモンスターの姿を表示した。のだけれど・・・最大望遠で拡大している感が凄まじい荒い映像だ。

 なんだろう?

 なんとなく、この形は・・・。


〈フラミンゴかな?〉


 うーん。そう言われてみれば、確かにフラミンゴに見える。

 細い足が水に浸かっているが、一本足で立っているようだ。もう片足は体に密着させている?

「けれど、体色が白いから・・・フラミンゴとも言い難いような」

 いや、それ以上にフラミンゴと思えない部分がある。

「この細長い首の先にある頭は、ハシビロコウにも見えるな」

〈ハシビロコウ?〉

 え、知らないの?

「ハシビロコウというのは、ペリカン目ハシビロコウ科ハシビロコウ属に分類されるペリカンの仲間だよ」

〈・・・ふーん〉

 興味ないのか・・・反応が淡泊だ。

「あのモンスターって、もしかしてキメラの類かな?」

〈キメラ! なるほど、異世界のキメラモンスター! ちょっとまだ遠いなー。もう少し近づいてみよっと〉

「接近するのは構わないけど、慎重にね」

〈あいあい〉

 それにしても、仮にキメラモンスターだとするなら、このモンスターは不気味過ぎる。

 まだ距離があるため、アライラの望遠でもハッキリとした姿がぼやけているが、特徴だけを見れば地球でも見知った鳥の合成に見えるわけだ。

 仮に、地球に生息しているモンスターのキメラだとした場合、どういう目的で持ち込んだのか?

 と、そんな事を考えている間にアライラが表示してくれる映像がハッキリとしてきた。

〈むぅん・・・そろそろハッキリクッキリ見えるようになってきたし、鑑定してみようかぁ〉

 楽しそうで何よりだ。

 それにしても、姿がハッキリと見えてくると、これは渡り鳥とはまた異なる感じの生物だな。ハシビロコウと思われた頭はそれっぽい形をしているだけで、眼も無ければ嘴もない。

 羽毛かと思われた身体はただの毛のようだ。鳥ではないのかもしれない。

 しかし、俺が一番気になったのは・・・足である。この足・・・鳥の足に似ているが・・・微かに昆虫類に見られる棘っぽいモノが生えている。

〈よぉーし、鑑定!〉


『シャッビンカン。異世界バケユビタに生息する昆虫種。渡り鳥のような姿に擬態することで、獲物を騙し油断を誘う。長い首と小さな頭に見える物は触角であり、本来の目と口は首元の模様で隠している。渡り鳥と間違えて接近してきた獲物が射程範囲に侵入した場合、その擬態を解いて襲い掛かる。その速度は音速に達し、大抵の生物は逃げられない。主な攻撃方法は音速を活かした突撃と、強力な酸性の体液である溶解液を吐きかけることである』


〈アレ、虫なんかーッ!?〉

「やっぱり虫なのかッ!!」

 輪郭がぼやけて見える遠い距離からであれば、渡り鳥のようにしか見えないのは、確かに油断するし騙されるな。

 問題なのは、射程範囲に侵入するという点。

 音速で移動が可能ということだが、どの程度で射程距離となるのかを探る必要がある。

 ここは、とにかく慎重に・・・。

〈ねぇねぇ、ルッタ〉

「・・・うん?」

 なんだろう。とっても嫌な予感がしています。

〈アイツら、こっち見てないかな?って思うんだけどー〉

「・・・」

 アライラが表示してくれているズーム画像を見た限り、ハシビロコウのような頭の形をしている触角がこちらを向いているのは確かだ。

 さっきまで、身体と同じ方向に向いていたはずなのだが、アライラに言われて気づいた。

 これは、どう見ても気づかれている。

「・・・間違いない。こっちに気づいているぞ」

〈あ、やっぱり?〉

「たぶん、鑑定可能距離と連中の射程距離はほぼ同じなんだと思う」

〈そうなるー?〉

「そうなるー」


 シャッビンカンが、水場から上げていた片足を降ろして二本足で立つ。一匹がそれをし始めると、群れ全体で同じ動作を時間差で行っていく。

 すると、最初の一匹がゆっくりと前のめりに倒れるように体を降ろし始めた。と、その時。渡り鳥のような体が三つに分裂でもしたかの如く伸びた。

 そして、体毛に隠れるようにして・・・まるで腕組でもしていたかのような虫の足が飛び出してくると、前のめりに倒れる身体を支えて水場に立つ。

〈待って待って! 群れが一斉にトランスフォーメーションを始めたんですけどぉ!?〉

 無駄にカッコいいのが腹立たしいね。

「逃げるぞ!」

 俺が合図するのとほぼ同時に、シャッビンカンが背中の翼・・・に見せかけて殻を開いて、虫独特の羽がスライドするように一枚ずつ飛び出して、三枚を展開する。

 なんか、無駄にメカニカルなのはどういうことなの!?

〈緊急離脱ジェーット!〉

 そんな俺の苛立ちに応えるように、アライラが八連邪眼を駆使して飛び上がった。

 とりあえず、これで逃げ切れる。とそんな事を思った矢先に・・・シャッビンカンが水場から甲高い音を響かせつつ飛び出してくる。

 一匹飛び出してから、続けて数匹が飛び出し、時間差で続々とシャッビンカンが水場から発進した。

〈あー! なんてズルい! 無駄にカッコいい発進の仕方してるやんけ!! 私もあれやりたい! やりたいやりたい!〉

 ・・・ん?

 緊急離脱ジェット中は、眼が推進器になっているから視界が確保できないはずじゃ・・・。

 と、アライラを見てみれば・・・ジェットの火が消えていた。

「アライラ! ジェットを止めるな!」

〈え?〉

 音速に達したシャッビンカンが続々と音の壁を破って加速する爆音を響かせて迫ってくるのが見える。これは凄い。音速の壁を破る様子を正面から見れるとはね・・・顔が青ざめていると思う。

〈うわ、やば! じぇ―――〉

「今からじゃ遅い!! 八連邪眼バスタービームで応戦するんだ!」

〈我儘ばっかり! 八連邪眼バスタービームッ!!〉

 本当に、今からジェットを掛けても、シャッビンカンの加速からは逃れられない。ならば、アライラの必殺技であるバスタービームで数を減らし、足止めも兼ねればいう事はない。

 隙が出来れば、ジェットで再加速して逃げられるはず。

 

 と、このダンジョンではそんな甘い考えは通用しない。

 八つの邪眼から発射されるバスタービームは、俺たちに迫るシャッビンカンの群れを確かに襲った。圧倒的な熱量が連中を呑み込んで、消し炭にしてくれる。

 はずだった。

〈八連邪眼ジェーット!〉

 バスタービームを撃ち終えて、すぐさまジェットを再開するアライラだが・・・。

 シャッビンカンがバスタービームの中から一匹も脱落することなく迫って来ていた。

〈んぇ!? なんで生きてるの!?〉

 ジェットが点火するわずかな隙間から、シャッビンカンが健在であるという事実を見るアライラは、とてつもないほど上ずった声で叫んでいた。

「分からない! バスタービームに耐えるにしても、無傷なのはどういう能力なんだ!?」

 ヨーロロンといい、ノットンといい・・・ここ第一階層なんだよね? ゲーム的には序盤だよね? ラスボス直前のダンジョンとかそういうわけじゃないんだよね?

 なにがどうして、こうなるんだ?


「溶解液よ」


 凛とした声音が響き、俺はマリーさんを見た。

 そういえば、ずっと静かだったので忘れていた。

「溶解液?」

「アライラーの鑑定にあったでしょう? 強力な酸性の体液である溶解液を吐きかける。とね」

 確かに、アライラの鑑定ではそのような説明はあった。

 けれど、溶解液でどうやってバスタービームに抵抗したと言うのか?

「その溶解液でバスタービームを溶かしつつ、熱で蒸発した分が冷却効果を生み出したのよ。これでシャッビンカンはバスタービームという必殺級の技を無傷で突破したわけ」

 ・・・うーん?

 オカシイな・・・溶解液でビームを溶かしつつ・・・とかいう妙なワードが俺の耳に届いてきたんだが?

 聞き間違いかな?

「溶解液で、ビームを溶かした?」

「そうよ。ビームだって、溶解液を掛ければ溶けるわ」

 ・・・んんんん?

 ちょっと、意味わからないです。どういうことでしょう?

「単純に、ビームが持つ熱量に耐えられる溶解液が地球には無いから、あっという間に蒸発してしまうだけよ。異世界モンスターなら光を溶かす霧をまき散らして身を隠すヤバいのもいるわ」

 ・・・ビームって、溶けるモノなのか? 融解? え? 溶解液で溶けるものなの? どうなの?

 あ、そうか・・・マリーさんは神の元アバターだから、地球の科学では解明されていない何かしらの何かを知っているということか?

 あああ、なんかどんどん思考がおかしい方向にッ!

「でも! だとした場合、シャッビンカンはバスタービームに耐えるために一定時間と一定量は溶解液を吐き続けなければならないはずでは?」

「そうね。それができたからこそ、シャッビンカンは無傷で追いかけてきているわけよ」

 そうなのですけれども! おっしゃる通りなのですけれどもッ!!

〈なんか、私のビームが通用しない奴ばっかりねー〉

「やる気を無くすな! 追い付かれたら食われるんだぞ!!」

 そうだ。

 アライラがジェットで加速してくれたおかげで、今はある程度の距離を稼ぐことができているが、このままだと速度が落ちて追い付かれる危険がある。

 どうにかして逃げ切る方法を考えないといけない。もしくは、シャッビンカンを撃滅する術を考えないといけない。

 ・・・どっちも手詰まりなんだけど、なにか手はないものか。

〈うっわ、虫に集られて食われるとか最悪じゃん! なんとしてでも逃げ切ってやるぅ!!〉

 お、アライラがデッドエンドを回避するためにやる気を出してくれたようだ。

〈八連邪眼! 最大加速! ジェーット!プラスロケェーット!!〉

 え?

 次の瞬間、八つの邪眼がジェットを再起動させて再加速すると、続けてジェットとは異なる火を噴射してさらなる加速をし始める。

 シャッビンカンを一気に引き離すほどの速度を発揮したが・・・。


 俺の全身から血が噴き出た。

 

 身体中の至る所で肉が裂け、血が噴き出して止まらない。

 意識はハッキリとしているが、身体がどんどん重くなっていくのを感じた。

〈アレ? アレ!? なんか出力が上がんない! ルッタ! 魔力供給が減ってるよ!!〉

 ど、どうやら速度が落ちたようだ。

 なんか頭が急激に働かなくなってきたけれど、シャッビンカンが急速に迫ってくるのが分かる。

「ど、どうした?」

 俺はどうしてしまったのか? なんだかなんにも考えられなくなっている。

「ふむ・・・これ以上は無理そうね」

 マリーさんが一歩踏み出すと、俺の頭をひと撫でした。

 その行為にどんな意味があるのかは知らないが、次の瞬間にはシャッビンカンが一匹残らず消し飛んでいく。

〈うわー・・・何をしたんだろ?〉

 バスタービームも耐えるモンスターを、一瞬で蹴散らした?

「まぁ、このくらいはできないと・・・第四階層など生き残れないからね。精進しなさい」

 そうか・・・そのぐらい次元が違うレベルなんだ。

 はぁー。先は長いなぁ・・・。

「アライラー。すぐにジェットとロケットを切って、降下しなさい。さすがに処理限界のようだからね」

〈え? なに? どゆこと?〉

「何を言っているのか分からないから、とにかく降りなさい。少し休憩したら、ルッタもある程度回復するから」

〈はーい!〉



 村も北門付近に着陸したアライラの上で、一時間ほど休憩していると・・・俺の身体がいつも通りに動くようになった。

 アライラが滅茶苦茶なジェットプラスロケットとかいう加速を掛けた時に起こったのは、なんだったのか?

 とりあえず、マリーさんに診察してもらった。

「後遺症もないようだし、大丈夫そうね」

「・・・で? 俺の身に何が起きていたのでしょうか?」

「そうね。いわゆるオーバーヒートってところかしらね」

「オーバーヒート?」

 マリーさんは腕を組んでから口元に拳を寄せて咳払いする。

「そうよ。緊急離脱ジェットからバスタービーム。そしてジェットという連続使用で負荷が高まっていたところに、ジェットとロケットの重ね掛け・・・いや、同時起動と言うべきかしら? ジェットに供給する魔力に加え、ロケット分の魔力まで供給を求められたことで、その二種に同時供給を行った結果、オーバーヒート・・・いや、この場合はだと安全装置のようなモノが機能したというのが正しいかしら?」

 ・・・腕を組みなおして首を傾げだした。

 どうやら、マリーさんでも説明が難しい事態だったようだ。

「何とも説明するのが面倒だけれど、とにかくお前の魔力供給可能範囲を超えてしまったことが原因というわけよ」

 そういうことなのか。

 俺の本能なのか、地獄変なのか、とにかく何かしらで安全装置が働いたのだと思っておこう。

「アライラ。ロケットって、スペースシャトルとかのロケットブースターのロケットだよね?」

〈うん? そうそう、そんな感じー〉

 ふぅむ。

 邪眼でジェットを使用中にロケットブースターまで使用したわけか・・・。

「あの・・・マリーさん?」

「うん?」

「アライラの邪眼は、ジェットという技を使っている最中にロケットブースターのような別種の技を使って、何かしらのダメージとかはないのでしょうか?」

 短時間とはいえ、ジェットにロケットは重なって発動した。

 とんでもない加速には成功したが・・・。

「ふむ・・・確かに、邪眼への負担も大きかったはず・・・」

 ジッと、マリーさんがアライラを見た。

「アライラー。おまえの邪眼を私に診せてみなさい」

〈うぇ!? いやいや! 絶好調だから! もーまんたい!〉

 マリーさんが俺を見るので、翻訳する。

「なにも問題ないそうです」

「なるほど・・・診せなさい」

 お母さんオーラを展開して、迫るマリーさんに数歩下がるアライラ。

〈うううう・・・嫌だ! 嫌だ嫌だ!〉

 にじり寄るマリーさんと、後退するアライラ。なかなか見ない光景だな。

「でもアライラ。これまで散々と万能邪眼を酷使しているわけだし、いい機会だから診てもらった方がいいんじゃない?」

〈えー! で、でもさぁ〉

「ほら、何事もメンテナンスは重要だぞ。突発的な故障が起きてからじゃ遅いわけだし」

〈うー! でもーッ!〉

 まぁ、マリーさんに地図を差し込まれた時には驚きのあまりに腰が抜けたような状態になっていたし、診ると言っても何をされるのか分からないから不安だよな・・・。

「メンテナンスと言っても、別にロボットのように取り外したりはしないだろうし、診てもらったら?」

 俺がなんとか説得できないかと思っていると・・・。

 マリーさんが手を叩いて・・・ニヤッと笑いだした。怖いんですが?

「アライラー。邪眼のメンテナンスが終わったら、おまえの周りを火の海にしてあげるわ」

 えー?

〈はぁーっ! 何言ってんの!? 意味わかんないんだけど! バカなの! ば―――〉

「運命に翻弄される主人公のように、火の海から出撃してみたらどうかしら?」

〈―――ごめん、ルッタ・・・私はッ〉

「えッ? なんで俺に謝るの?」

 アライラに謝られるような事をされた覚えがないが、なんだろうか?

〈え、いや、別に・・・ネタだけども・・・〉

 なんだネタか。そうか、何かのワンシーンを真似たって奴か。なんだ・・・。

「ビックリするからやめてくれ・・・」

〈むぅーん・・・〉

 




 村の外。

 雲一つない快晴の下で、俺は春風を楽しみながらボーッと空を見上げて過ごす。

 こうして、マリーさんの口車に乗ったアライラは、大人しく万能邪眼のメンテナンスを受けることとなった。

 とても緊張した様子だったが、マリーさんは手慣れた様子で邪眼を診ていく。

 その様子は、どこか懐かしいモノを感じられて嬉しい。という雰囲気であった。昔のこととはいえ、好きだった男の名残を感じられて、懐かしんでいるのだろうか。

 終始、上機嫌だったのはよかった。

 そして、メンテナンスを終えると、マリーさんは魔法術でアライラを火で囲む。

 ・・・いったい、何をするつもりなのだろうか?


 見ていると・・・。

 火の向こうからアライラの影が見える・・・と、八つの目が「ビコーン」と音を放ちつつ光り始める。そして、のっそのっそと火の中から歩いて出てきた。

 ・・・あ。


〈ひゃぎゃああああああっちちちちちちちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!!!!〉


 どことなく格好つけて火の中から出てきた感じだったけど、のっそのっそと歩いて出てくれば、火が体に燃え移るのも当たり前な気がするんだけど・・・。

 マリーさんが魔法術で消火してくれたので、事なきを得た。

 が、その後はマリーさんとアライラで口論が始まり、俺は翻訳で付き合わされた。

 

 とても疲れた・・・。

 

 ・・・結局、アライラは何がしたかったんだろう?

 いや、ホントに・・・。



 

 次回は、アライラーの新技?をルッタが思いつくお話を予定しています。

 

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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