21 空を舞う鶏
こんにちは。こんばんは。
何事も挑戦である。と、WEB小説大賞に応募してみようかな?っと思って、注意事項を確認したのですが・・・私の作品て、わりとアウトな気がしてビビっている今日この頃です。
後程、最初から見直して、ダメそうな場所を修正していこうかと思っています。
どうぞ、最後までお楽しみいただければ、幸いです。
和風な村も北の門を出ると、どこか肌寒さを覚える土地が広がって見える。
しかし、よくよく見てみれば平坦な大地が続いているわけでもないようだ。峠と言うほどの傾斜ではないが、ウネウネと大地が上下している。
そんな俺とアライラにとっては未開の地となる北地域であるが、マリーさんは仕事で見回りしているから慣れた様子でいる。
念のためにと、マリーさんに服屋で防寒着の購入をお願いしたのだが・・・。
「大丈夫よ。私に任せておきなさい」
そう言って、俺が寝込んでいる間に服作りを進めていた事を教えてくれた。
村の服屋で買えるモノは、あくまでもダンジョン化する前の陸地だったころに販売されていたモノで、現在の環境に対応したものではないし、対モンスター用の魔法術処理は施されていないらしい。
これらの理由により、とりあえずはマリーさんが用意してくれるだろう・・・防寒着を当てにするほかないのが現状となる。
「で? 防寒着は?」
「まだ必要ないわ。目的地である谷の近くには、集落が一つあるの。村と同じで魔除けの結界を施してある数少ない人間の生活圏よ」
つまり、そこに付くまでは防寒着などは必要ないってわけですか。
・・・大丈夫かな。
〈お鍋で食べたい♪ おでんを食べたい♪ すき焼きしゃぶしゃぶ煮込みうどん♪〉
アライラが村を出発してから上機嫌で歌っているのだが、はて? なんの歌だったかな?
「ルッタ。アライラーは何を鳴いているの?」
マリーさんには、アライラの声は『ぎぃぎぃ』と耳障りにしか聞こえていないらしいので、俺が通訳しないとキレる。
だから、俺はアライラの歌をそのまま再現するかどうかに悩んだ。
「えーっと、お鍋で、おでん。すき焼き。しゃぶしゃぶ。煮込みうどん。が食べたいと、歌っているんです」
・・・内容だけを説明することにした。
「そう・・・鍋が恋しい季節。っではないけれど、寒い日は鍋に限るからね」
美味しいですからね。
アライラ用の鍋を作ったら、材料を大量に用意して鍋大会でも開きたいなぁ。
〈食べたい物がいっぱいあるから、ルッタよろしく!〉
「そうは言っても、俺に作れるのは家庭料理だからね? 妙に凝った料理とか作れないからね?」
〈うへへー。ルッタの作った物なら、絶対美味しい! 期待大!〉
う、なんか妙なプレッシャーが・・・く。
俺とアライラで話をしていると、横でマリーさんは地図を広げていた。もはや見慣れた中空に表示するウインドウだ。
横から覗き込んでみると。村から谷までの限定されたエリアにルートを描き込んだ物のようだ。
マリーさんが、チラッと俺を見るが・・・特に何を言うでもない。
〈マリーさんは、何をしてるん?〉
「地図を確認しているようだ」
アライラが鳴き声を発した直後に俺が答えたことで、マリーさんは俺たちの会話を推測したようだ。
「そうよ。目的地である北の谷まで、なるべく安全で、おまえたちの修行にもってこいな順路を作成したわ」
あー、やっぱりそうなのか。
徹夜で考えてくれたのだろう。今の俺たちがどの程度まで戦えるのかを考慮したルートであれば、なんだかんだで無事に目的地にたどり着けるだろう。
「問題は、何日あればたどり着けるのか? なのよね」
・・・え?
それは、どういう意味なのだろうか? 一応、詳しい話を聞いてみたほうが良いのかな?
聞いてみたいけれど・・・どうしようかな。
〈ねぇねぇ、その地図を私も見たいんだけどー?〉
「ああ、マリーさん。アライラも地図が見たいと言っています」
俺の翻訳を聞いて、マリーさんはウインドウの地図を凝視する。そして、アライラの眼を確認するようにチラッと見ている。
なんだろうか?
「ふむ・・・試して見るか」
そう呟くと、マリーさんは中空に表示しているウインドウを掴んで、割と雑に丸め始めた。
いや、というか・・・そのウインドウは手でつかんで丸めることが出来るものだったのか・・・魔法術って地球の科学を軽く先んじているなぁ。
すると、マリーさんは丸めた地図をアライラの八つある眼の一つに突き立てた。
〈ぎゃわあああああああああああああああああッ!!〉
「ええええええええええ!!!」
あ、いや・・・俺も似たようなことは度々しているけれども・・・ちょっと他人がやっているのを見たら思わず驚いてしまった。
はー、心臓に悪いな。これ。
しかし、アライラは俺以上に驚いたようだ。
全身が痙攣して、そのまま地面にバタリと倒れてしまうほどに硬直してしまう。
「あ、アライラ? 大丈夫?」
〈はわわわわわわ、だ、だいじょうぶ・・・けど、その、あれだ。腰が抜けた。みたいな?〉
まぁ、そうなるのも分からないではない。
唐突に目に何かを突き立てられたら、そりゃビビるよね。
「ふむ。やはりインストール方式は変わっていなかったか」
「何がですか?」
指を顎に添えて、刺した地図が邪眼の中に溶け込んでいく様子を見ながら、マリーさんは頷いている。
そして、俺が近づいてから問うてみると、俺の頭に手を乗せて撫でながら答えてくれた。
「アイツ・・・いや、ダーゼルガーンの奴はね。よく自分が作った道具類をアップデートする時は、直接情報を挿し込んでアップデートをしていたの。私がやった地図を突き刺すような感じでね」
・・・もっと別の方法はなかったのかよ。
「ま、地球的に言えばUSBを挿すのと同じ事よ。直接インストールしたい情報を挿し込むってだけね」
「そんな強引な・・・」
ダーゼルガーンとかいう邪神は、横着し過ぎなのではないだろうか? 便利なのはいいが、絵面がヤバすぎるのは考え物だな・・・でもまぁ、これも次第に慣れてしまうのかもしれない。
「それで、地図は開けそう?」
〈えー、ちょー、まー、んー・・・こうか〉
邪眼の一つが光ると、マリーさんが見ていたのと同じ地図が中空に表示される。
アライラの方が体格も大きいせいか、地図のサイズも遥かに大きい。これで映画とか見れたら大迫力だろう・・・ちょっと、アライラにお願いして覚えている映画作品を見せてもらおうかな?
〈おー。なんか赤い線が書かれてるけど、これがルート?〉
「えっと、赤い線がルートですか?と」
「そうよ。この地図は村をスタートとして、目的地になる谷への比較的安全なルートを私が独断と偏見で作成した修行コースでもあるわ」
修行ですか・・・。
〈修行かー。今時、修行パートとか流行らないよ?〉
「今時は、修行パートは流行らないと言ってます」
まぁ、俺はさほど流行は追っていなかったから、その辺はあまり詳しくないんだよな。
「ふむ。安心しなさい・・・修行はあくまでも兼ねているだけよ」
兼ねているだけって・・・。
「目的は、谷へ向けて冒険よ!」
冒険・・・そうか、冒険か。
たしかに、それならちょっとワクワクしてくるかもしれないな。
〈ヨーロロンみたいな奴ばっかで、ちっとも進まないのは、ヤダー〉
・・・確かに、初っ端から強くて行き詰まる相手だと、気持ちが萎えるよね。
「なんて?」
「あ、えっと、ヨーロロンのような奴だらけで、先へ進めないのは、やだー。と」
また、何か小言を言うかな?っと思ったのだけど、マリーさんは腕を組んで黙ってしまった。
ただ、なんだか俺を凝視して少しばかり顔が赤くなっているのが気になる。なんだろう? カメラを構えそうな気がするのだけども?
〈あ、ここの赤い丸の点は?〉
「マリーさん、地図に書かれている赤い丸の点はなんでしょう? 谷と村の中間くらいにあるようですが」
「ああ、それが集落よ。村に比べると規模は小さいから・・・アライラーが入ると狭いかもしれないわね」
そうか、規模が小さいからアライラがしっかりと休むには狭い場所なのか。
どうするのがいいかな? 集落の外で寝てもらう? そうすると、野生のモンスターに襲われるかもしれない・・・いや、魔除けの結界があるから安全か?
しかし、今のアライラはモンスター枠だから、むしろ魔除けの結界で集落近くに居るのが辛いかもしれない。
まぁ、その辺りは集落を見てからでいいか。
「ところで、地図って第一階層全域を網羅した物もあるんですか?」
「あるよ」
「手に入れることはできますか?」
「村で購入できるわ。ただし、ダンジョン化する前の観光ガイドみたいな地図だけどね」
そっちかーッ。
「ちなみに、私が使っている地図は魔法術を使えないと開けないから、諦めなさい」
どうして俺には魔法術が使えないんだ・・・くっそぅ。
〈む・・・前方にモンスター・・・感あり!〉
「え!?」
こんなにも早くに?っと思ったが、地図をインストールするまでは普通に移動していたのだから、それなりに村からは遠ざかっている。
そして、俺とマリーさんはアライラに乗っている。
これは、俺の歩幅とアライラの歩幅が違い過ぎるがゆえの処置だ。そもそも、洞窟迷宮で乗れと言っていたのは彼女だし、すでに当たり前な感じになっていたから気にもしていなかったな。
さて、アライラが見つけたモンスターだけれども・・・俺の眼にはまだ豆粒ぐらいにしか見えない。
いつもの事だな。
俺の視力は並みの人間よりはいいんだと思う。一応、アライラの鑑定では超人になっていたわけだし。
だけど、アライラの眼は万能だ。
俺には豆粒でも、彼女ならはっきりくっきり見えるだろう。
〈うん? なんか向こうもこっちに気づいた・・・ぅげ!?〉
「どうした!?」
〈ものすごい勢いで近づいてくる!!〉
言われて、俺は前方に目を向け直す。
ぅげ!って言うだけあって、確かに尋常じゃない速度で接近してきているが・・・なんだか動きがおかしい。
こちらへ真っ直ぐ迫ってくるのではなく、渦を描くような動作を空中で行いながら、一度も足をつけずに迫ってくるのだ。
なにあれ? どうなっているんだ?
いや、よく見ろ。目に意識を集中して、あの動きを分析しろ。
かのモンスターは、接近するための動作の始めとして両腕?を振り上げている。そこから前方へと振り下ろす動作の勢いで前進しつつ、続けて蹴り上げるような動作で上昇しながら前進してきて・・・いる?
続けて、腰を捻りつつ両腕・・・いや、アレは翼か?っを水平に広げて回転斬りの要領で回転しながら前進し、再び蹴り上げる動作で上昇しつつ前進すると、踵落としのような動作で前進しつつ、両腕を振り下ろす動作でさらに前進しつつ降下して・・・んんんんん???
な、なんだあの動作ッ!?
〈あ、あの動作はッ!!〉
「知っているのか!?」
〈お父さんの、ゲームプレイ動画フォルダのどれかに、アレと似た感じの高速移動をする奴があったと思うんだけど・・・〉
ゲーム? なんのゲームだろう? プレイ動画? アレかな? 動画サイトなどに投稿するための録画ファイル。
まぁ、細かい事はいいんだけど・・・いや、よくないのか?
地球のネトゲで、異世界モンスターが行う高速移動と同じことをするモンスターが居たと?
「そのモンスターはどんな攻撃手段を持っているんだ!?」
〈え? いやモンスターじゃなく―――〉
「ってそんな事をしている間に、目と鼻の先まで来ているぞ!!」
〈うわわわわわわッ!!〉
「右後ろ斜めジャンプ! 回避!!」
もはや半分以上が直感での指示になってしまったが、紙一重の指示によってアライラが動いてくれると、モンスターの斬撃が地面を抉るように突き刺さる。
そして、アライラは見事に俺の指示通りの場所へと飛び退いて回避に成功した。
蜘蛛の瞬発力って、実はすごい速いんだ。
おかげで、俺はまたアライラから落とされそうになったが、マリーさんに足首を掴んでもらって落下は阻止された。ありがとうございます。
「情報が欲しい!! 鑑定を!!」
〈ほいきた鑑定!!〉
『ノットン。異世界ノテテオに生息している鶏の一種。その翼は刀剣であり、飛行能力は持たないものの特殊な舞で空中を高速移動する。その動作に惑わされる者は多いことから、空を舞う鶏と呼ばれている。当モンスターは雄と雌で姿が異なり、刀剣の翼を持っている個体が雄。装飾の翼を持っている個体が雌となる。刀剣の翼と装飾の翼はどちらも市場に出れば高額で取引される』
鑑定は大変便利な能力ではあるけれども、市場で高額取引されるとかそういう情報は、この時点では必要ないものだ。
少しでも戦闘能力に関する情報が欲しいというのに、絶妙に気の利かない加護だと思う。
特殊な舞で空中を高速移動するとあるが、すでに見たままの説明だ。これとは別に隠されている能力とかそういう情報は得られないモノか・・・。
・・・邪神ダーゼルガーンの加護だから、期待できない。
〈うげげ! ノットンが来るよ!!〉
刀剣の翼というのは確かなようだ。
どのようにして研いでいるのかも不明な刃を備えた翼は、まさに刀剣を腕から生やしていると言っても過言ではない。
コレを振るうことで武器としているのは、見たままだ。
しかし、コレを武器として使用する際に行う動作だけは意味が分からない。
振りかぶって、振り下ろす。ただその動作だけで地を滑るように前進し、蹴り上げる動作だけで空中へと上昇しながら前進してくる。
まるで理解ができない。
「科学的に、どういう仕組みなのかを説明してほしい」
〈言ってる場合!?〉
場合じゃないけど、納得できない!! 異世界モンスターだからと許容できない俺がいる!!
だけども、今はそれどころじゃないのは間違いないので、色々と放棄しようと思います!
「迎撃するぞ!!」
〈よし来た!〉
「地の深淵い我が力を以て求める」
〈邪眼ビーム!〉
牽制で放ったビームは一発であるが、ノットンはひょいっと上昇する動作でビームを華麗に回避する。
〈ならば! 八連続ビーム!〉
八つの邪眼で一斉にビームを放つのではなく、邪眼一つからビームを放ち、時間差で攻撃を行うことで動作の間に生じる隙を突くという狙いがある。
刀剣の翼を振り上げる動作による異常な仰け反りで一発目を回避すると、続く二発目のビームを振り下ろす斬撃で切り払い、三発目を蹴り上げる動作で上昇しながら回避し、四発目と五発目を回転斬りで前進しながら切り払う。
七発目のビームは踵落としのような動作で降下しながら回避すると、八発目を振り下ろす斬撃で切り払った。
・・・なんなんだ? あのモンスター。
って、愕然としている場合じゃない!
「地獄道・地蔵菩薩大道人!」
アレが理解不能な移動能力を駆使して拘束で迫ってくるのだから、諸々は後で考えるべきだ。
「地獄門・縛鎖閻魔錠! 重ねて求める! 地獄能・巻蛇槍貫大道撃!」
かなり捲し立てるように技を連続発動させたが、これでノットンを迎撃できるのかは不安しかない。
巻かれた円錐形の刃が回転を始め、風切り音を響かせる。
「アライラ。ノットンをギリギリまで引き付けるんだ!」
〈むぅうん!!〉
いかに分けわからない高速移動をしてくるとしても、目標への攻撃時には必ず動作に隙が生じるはずだ。そこを横から大道人に突かせれば、倒せないまでもダメージを負わせられるはず!
俺の予想通りに、あっという間にアライラの目の前まで飛んでくるノットンが、回転斬りの構えを取って一瞬の溜めを行った。
〈来る!〉
「大道人!」
俺が合図を送るよりも早く、大道人は槍でノットンを攻撃する・・・が、その回転斬りは前進するのではなく、後退した。
〈うぇ!?〉
「なッ!」
直後、蹴り上げる動作で前進しつつ上昇するノットンの蹴りを受けた大道人が、倒れる。
「緊急離脱!!」
〈ジェーット!〉
次の動作は予想が出来た。回転斬りよりも振りっている両翼からして、振り下ろし斬撃だ。
なら、こちらも一気に間合いを開くための行動を取るのが正しいだろう。
「コクェッコ!?」
八つの邪眼で一気に後方へと飛び上がったアライラに驚きの声を出しつつ、ノットンはその両翼を振り下ろして、盛大に空振りしていた。
〈邪眼! チャンスだッ! ビーム!〉
まだ着地はしていないが、空振りしたことで動きが止まった今こそが好機なのは確かだ。
発射されるビームは、確かにノットンへと命中する。しかし、それで仕留めることはできなかった。ギリギリのところで再び高速移動をされてしまったからだ。
だが、命中はしている。
「コクェっ!」
〈むぅん!〉
ノットンは、右腕・・・いや翼の関節部に熱で抉れた傷ができていた。
これによって、右翼が思う様に動かなくなったようだ。となれば・・・。
「大道人!」
倒れた大道人がクルリと一回転して起き上がると、すぐさま再び攻撃を仕掛ける。が、これに対処するノットンが華麗に回避して見せるも、右翼の負傷によって空中でバランスを崩した。
さっきまでの技にキレがない。
〈邪眼! これでトドメだッ! ビーム!!〉
空中を高速移動するための動作に支障を来たしたことで、移動に失敗して着地するノットン。そこに、アライラのビームが飛んでくると、その頭を撃ち抜いた。
全身を痙攣させながら、ゆっくりと倒れ伏す。
「・・・たおせたぁ」
俺は、心からの安堵を声に出していた。
理解不能な動作の連続を目の当たりにして、どうやら緊張していたようだ。息を吐き出すたびに、疲れが段を為すように圧し掛かってくる。
〈はー、いきなりなんあのコイツーッ〉
「確かに、どこから出てきたんだろうな」
そうだ。
このモンスターがどこから現れたというのか?
ノットンが飛んできた方を見ても、群れらしい影は見えないわけで・・・。
〈むー? 望遠しても群れっぽいのはないなー〉
やっぱりか。
「ここからでは見えないでしょうね。ほら、もう少し先に台地のように土が盛り上がっている場所があるでしょう?」
んー?
〈おー、あるある〉
「アライラには見えたようです」
俺の言葉を聞き、マリーさんは頷いてから台地のように盛り上がっているという場所を指さす。
「それ、遠くからは土が盛り上がっているように見えるけれど、クレーターになっているの。あそこまで行ってみなさい」
マリーさんの指示を受け、アライラは再び歩き出した。
さほどの時間もかからずに、目的の台地?に到着して・・・覗き込む。
〈月面にあるクレーターみたいな感じだね〉
「確かに、クレーターのようだけど・・・これは?」
「この大陸がダンジョン化する前の、神殺しとの死闘で残った跡よ」
神々と神殺しの生存をかけた戦いの跡地ってことか。
これはかなり凄い場所のようだ。と思うのだけど、そんなクレーターの場違いな鶏が群れを成している。
「・・・アレは?」
〈なんやろか?〉
俺にはまだ遠いので、詳細は不明だけれど・・・見た限りで、クレーター中央には土を盛って作ったようなステージが存在し、ここに五匹のノットンが登っている。
五匹の内、頭に何か陽射しを反射する物体を・・・乗せているのかな? 生やしているのか? 分からないが、とにかく目立つ奴がステージ中央で軽快なステップを踏みながら声を張り上げている。
そして、中央に立つ一匹の周りを囲むようにして、四匹の鶏が・・・踊っている。
そんなステージの周囲には、俺たちが戦闘をしたノットンとは異なる容姿をしたノットンが両翼を振り上げながら熱狂しているように見えた。
それら熱狂して何かをしているノットンらの外周を固めるように、俺たちが戦ったノットンに似た姿の鶏がダンスを披露している。
「アライラ、俺はこの光景に似たものを、地球に居た頃に芸能ニュースなどで見た事がある気がするよ」
〈奇遇だね。私もこれに似た何かを、アニメで見たことある気がするよ〉
・・・何だったかな?
俺もアライラも腕を組んで頭を傾げていると、マリーさんがヤレヤレと言わんばかりに説明してくれた。
「ノットンの群れは、あのようにアイドルのコンサート会場のような位置取りで構成されるのよ」
「アイドルの・・・」
〈コンサート会場・・・〉
それだ。
なんかどっかで見たことあると思ったけれど、アイドルを含めた何かしらのコンサートには参加したことないから、思い出せなかったんだな。
〈アイドルアニメで見た事あるやつだ! そっかそっか!〉
あ、そういうアニメなら見るんだ?
「で? もう少し詳細をお聞きしたいのですが?」
「ふむ。まずはクレーター中央のステージに注目しなさい」
俺とアライラはステージに注目する。
「ステージの中央で軽快なステップを踏みながら声を張り上げているのが、群れのボス。頭には刀剣が生えていてね。個体によって生える刀剣は違うのだけど、とにかく立派な刀剣が生えるとボスの証となるわけ」
あの陽射しを照り返しているモノは、頭に生えた刀剣・・・つまり鶏冠か。
「で、ボスを囲むようにしているのが群れの幹部。ボスよりも弱い個体ではあるが、実力は群れ全体でも上から数えられるほど高い。つまり、実力ベスト5があの5匹であり、群れで最高のイケメンファイブということよ!」
・・・え?
「えーっと、実力と美を兼ね備えた5匹が、ボスと幹部4匹という事ですか?」
「あ、そうね。簡単に言うとそれ」
なんで力説していたんだろう?
「さて、そのステージを囲んでサイリウムのような装飾品を振り回しながら声援を送っているのが、ノットンの雌たちね」
・・・そういうことか。
「雌は雄とは異なり、刀剣の類は生えないのだけれど、代わりに宝石のごとく美しい装飾を体に生やしているから、アレ目当ての専門狩人もいるそうよ」
へぇ・・・。
「そうして、雌たちに見向きもされず、ただただ必死に踊り続けているあれらこそ、一般ノットン雄よ」
アレだけ大量にいるんだから、バックダンサーとかその辺なのかと思えば、一般人・・・じゃなくて、一般ノットン雄・・・かぁ。
「どうやら、食事を用意する担当の戦闘部隊がいないようね」
「そんなのもいるんですか?」
「そうよ。あの群れはそういう部隊分けがされている。ざっくり言うと、雌たちを楽しませるイケメンファイブのアイドル部隊。群れの食事を確保する戦闘部隊。アイドルにもなれず、狩りにも出られない負け犬・・・いや、訂正。負け鶏が、あの一般ノットン雄というわけね」
精神的に・・・なんかこう・・・厳しい現実を突きつけられているような・・・そんな・・・。
「だとすれば、先ほど俺とアライラが戦ったノットンは?」
「一般ノットン雄の一羽」
・・・アレで一般ノットンなの? あの意味不明な高速移動をしてきたのに!?
「驚くことは無いでしょう。つまりは雑魚よ。ヨーロロン相手するのと大差はないわね」
・・・アレで?
あんな意味不明な動作をする鶏が、ヨーロロンと大差ない? マジで?
「あれでヨーロロンと大差ないんだってさ」
〈むぅーん。そっかー・・・大差ないのかー〉
・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・うん。
「帰ろうか。アライラ!」
〈うん、帰ろう! 私たちの村に!〉
クルッと方向を百八十度回転させて、来た道を戻ろうと歩きだした時・・・我らが引率様は異議を唱えられた。
「まぁ、待ちなさい」
いっつもそれだ! まぁ、待ちなさい。・・・なぁにが! まぁ、待ちなさい。だ!!
とか考えていたが、マリーさんはアライラを地面に抑えつける様に手を押し当てて圧を掛けている。そして、アライラは地面に押さえつけられてジタバタと足を動かしていた。
〈いーやーだー! どうせ! どうせ、フルボッコにされるんだぃ! そんで刃物の翼に切り刻まれて、輪切り千切りイチョウ切りぃにされるんだーッ! うわーん!!〉
・・・お味噌汁にちょうどいい切り方かもしれないな。
「ルッタ。翻訳」
「はい、フルボッコにされて味噌汁の具みたいに切り刻まれるんだから、イヤー。って言ってます」
〈なんで、お味噌汁!?〉
まぁまぁ、ちょっとそれは横に置いておいてくれ。
「お味噌汁・・・は、まぁ置いておきましょう。よく聞きなさいアライラー」
マリーさんは、とても真剣な目で話を始めた。
「今回の旅は、鍋の材料を得ることが目的となるけれども・・・その理由は、アライラー。お前がルッタに唐揚げを食べたいと望んだからに他ならない」
アライラを押さえつけるのを止め、マリーさんは腕を組んでノットンの群れを見る。
「つまり、唐揚げを作る鍋のために今回の旅は始まったわ」
〈・・・で?〉
アライラが胡散臭いモノを見る目・・・いや、見た目からでは分からないが、どことなく雰囲気での話で、胡散臭いモノを見る目でマリーさんの話を聞いている。
「ここで、ノットンを複数確保することが出来れば、鍋を手に入れた時にすぐさま唐揚げづくりができるでしょう? しかも、修行にもなるから一石二鳥。セットでお得」
〈おお!〉
アレーッ? なんか騙されてない!?
「蜘蛛のモンスターに転生して早数年。久方ぶりの唐揚げ・・・さらに、地球で食べて来ただろう鶏料理の数々を調理するためには、食材は確保しておくに越したことは無い」
〈確かに!〉
「さぁ、アライラー。おまえの眼に映る群れは、ノットンというモンスターか? それとも、唐揚げ、フライドチキン、鶏飯、ロースト、サラダ、スープ、タツタ、南蛮、照り焼き―――」
涎がボロボロと零れていますよー。おーい。アライラさーん?
〈チキンが食べたいアライラー! 突貫します!!〉
というのは分かっていたので、その頭に錫杖を突き刺した。
〈ぎゃああああああああああああっふ!!〉
バタリと、その場に崩れ伏したのを見て、錫杖を抜きながら俺は言った。
「落ち着け。鍋が手に入っても、油が無いからすぐには作れないよ。唐揚げとかね」
マリーさんが、これ見よがしに舌打ちをした。
「・・・勘のいい子供は、大好きよ」
「勘じゃないです」
マリーさんに一瞥もしないで返答すると、どことなく落ち込んだ雰囲気を感じ取った。
しかし、アライラがこれに怒り始める。
〈だましたな! 父さんと同じで、私をだましたんだ!!〉
・・・君は、お父さんに何を騙されたんだ? 聞いてみてもいいのかな?
「お父さんに、なにを騙されたの?」
〈え?〉
・・・あ、これテキトーに言ってるだけか。
それなら話を切り上げても問題ないだろう。マリーさんにも確認しないとだしね。
「まぁ、いいよ。マリーさん、一時撤退ということでよろしいですね?」
「そうね。ノットンとの戦闘は経験したわけだし、今日は村に帰るとしましょうか」
よかった。スポ根とかいう感じに「逃げるな!」とか言われるかと思ってドキドキしてしまった。
「じゃ、帰ったらノットン対策を考えよう」
〈ほーい〉
「あ、ノットンて鶏の一種らしいから、ローストチキンなら作れるかも・・・」
いや、ダメか。オーブンとか必要になるし・・・もも肉だけだし、工夫すればできるかな?
〈はいッ!はいッ! 一羽まるごとローストチキン! 食べたい食べたい!〉
「え? 一羽まるごと・・・」
それだと丸焼きになると思うんだけど・・・どうするか? 俺。
いつも通りに錫杖に突き刺して焼き台で焼くか? でも、アライラのことだから、丸焼きとローストチキンは別料理と思っていそうだし・・・。
というか、俺が間違えているんだろうか?
いや、一羽まるごとローストチキンは、丸焼きで正解の・・・はず・・・。
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▽
その後、ノットンの下拵えをしながら必死に考えた俺は、大道人6人に円陣を組ませて石窯に見立てつつ焼き台を囲み、鉄板代わりに閻魔錠を編んで組み合わせた帷子みたいな奴を板状に固めて設置する。
これに下拵えをした・・・内臓処理して水洗いしただけの・・・肉を乗せて、じっくりと焼き上げる。
〈ローストチキン♪ 一羽まるごとローストチキン♪〉
バレないかなぁ・・・バレないといいなぁ。
焼き上がったノットンまるごとローストチキンは、アライラが美味しく食べ尽くした。
ふぅー。
次回は、ノットン攻略をさっくり終わらせて、さらに北へ進む予定・・・です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




