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02 転生するまでのお話①

こんにちは。こんばんは。

作るのって本当に難しいですね。緊張します。

一通り作ったのですが、長くなり過ぎてしまったので区切ることにしました。

-回想-


 朝、何気ない通勤通学でもっとも混雑する時間。

 いつものように電車を乗り換えるために、階段を下りて人の流れに乗りつつ隣のホームへと移動する。

 俺と同じ学生服を着ている者や、別の学校の生徒、サラリーマン。混雑時の駅というのは本当に息苦しいと感じる。

 スマホに繋いだイヤホンからお気に入りの曲を聴いているものの、とにかく周りの喧騒で聞き取れない。

 隣のホームに上る階段を歩く途中で、スマホを操作して音量の調節をしていた。

「きゃッ」

 曲のわずかな間を縫うようにして、俺の前を歩く女子の声が聞こえた気がした。

 なにかあったのか?と、確認のために顔を上げた直後、俺の上に圧し掛かってくる。

 あまりにも唐突なことだったので、俺は仰け反った。それでも、普通であれば踏ん張れるはずなのだが、その人物は重かったのだ。

 そうして、階段を落ちることとなった。



-現在-


〈私だ!〉

 俺はビクッとして蜘蛛さんを見る。

 なんか急に身を乗り出して大声を出したので、ビビってしまった。

〈その『きゃッ』って悲鳴は間違いなく私だ!〉

 ・・・うん?

「それはつまり、君は死ぬ直前の出来事を覚えているのか?」

〈そうとも、階段を上り切った直後に、到着した電車から飛び出して来たサラリーマンのおっさんにタックルされて、階段を落ちたんだよ!〉

 あー・・・俺の前にいた人って、蜘蛛さんの前世さんだったのか。

〈落ちるときに、背中が誰かにぶつかった感触を覚えているから、きっと巻き込まれたのがルッタに違いない!〉

「・・・失礼なことを聞くけど、体重いくつだった?」

 途端、熱く語っていた蜘蛛さんは沈黙してしまった。

「悲鳴を聞いて、顔を上げた時には圧し掛かられていたから、踏ん張れずに階段を落ちたんだ」

〈・・・90㎏くらい〉

 あ、なるほど・・・。

〈ふ、太っていたから・・・その・・・〉

「あー、君はその辺を気にする必要はないよ」

〈え?〉

「むしろ、君は巻き込まれた側だからさ」

〈どゆこと?〉

「じゃあ、ちょっと続きを話すから、しばしご静聴をお願いします」

〈あ、はい〉



-回想-


「はい、次」

 意識が回復すると、目の前には怪物が執務机に腰かけている。

「やぁ、突然のことに驚いているだろう?」

 驚きもするが・・・なにやら不穏な存在がニヤッと笑みを見せていることに悪寒が走る。とてもよくないことが起こると確信した。

「まずは謝罪を。ちょっとラブコメという奴を見てみたくなったので、君の前を歩く少女を階段から落ちるように仕込んだんだ。イベント発生って奴な」

 ・・・アレは、この怪物が仕組んだことだったのか。

「通勤通学ラッシュの駅。ホームに到着した電車からサラリーマンが扉の解放と共にダッシュで階段へと突入し、ちょうど登ってきた女子高生と激突。これを後ろに続く男子学生が受け止めてから・・・始まるラブストーリー!を予定していた」

 なんだよ。その「完璧な筋書きだったんだが」とでも言いたそうな顔は・・・。

「まさか、受け止められずに階段を落ちるとか思わないじゃん?」

 そういえば、通勤通学ラッシュなんだから、かなりの人数が居合わせていたはずだ。どれほどの被害が出たのだろうか。

「まぁ、幸いにも巻き込まれた人間はみな軽傷で済んだし、死んだのは君と女の子だけだったし、それほど悲観することもない」

 死んだの俺と俺に倒れてきた女子だけなのか!?

「というわけで、君と女の子には異世界転生にて新たなる人生をプレゼントすることにした」

 ・・・なんて鮮やかなワンパターンだろうか。

「好きだろ? 地球人は異世界転移や転生がさ」

 確かに、そういう話は古い時代・・・まぁ、昭和からよくある作品のジャンルなのは間違いない。いや、遡れば神代の時代からあるとも言えるものだ。

 そう考えてみれば、日本に限らず人間とは異世界関係が大好きなんだろうな。

「さて、君には俺と俺の幼馴染で作った世界に転生してもらうわけだが、そこである仕事を依頼したい」

 仕事?

「ただ転生するだけなのは勿体ないからな。ここでの記憶を継承しつつ、俺の世界で未だ解決できていない厄介ごとを解決してもらうわけだ」

 なんで俺がそんなことをしないといけないんだ・・・。

「まずはこれを渡しておこう」

 そう言うと、怪物は腰かけていた机から離れて俺に一本の巻物を手渡してくる。この巻物にはただ簡素に『地獄変』と記されている。

「その巻物は『陰陽道・地獄変』という物だ。地獄世界を凝縮したような物で、いわゆるチート能力を使用者に授けるアイテムだな」

 陰陽道・・・つまりは陰陽術に関係する何かしらの力を記した巻物ということか。

「注意してほしいことは、地球で言われている陰陽術の類ではない。ということだ」

 どういうことだろうか? 解釈としては異世界での陰陽術ということだろうか?

「まぁ、地球の言葉で翻訳すると、もっとも近い意味の言葉がそれになるってだけだ。だから、地球の陰陽術と同じに考えてもらいたくない」

 なるほど、別物ということで解釈しておけということか。

「これは、俺が地獄世界に赴き、取引をして用意してもらった地獄という世界を凝縮した道具だ。そのため、俺は詳細を把握していないし、把握することができない」

 用意した本人が、この道具の性能も分からないというのか? あまりにも危険すぎるだろう。暴走してしまうことはないのだろうか?

「なにせ、コレは使い手を選ぶからな。俺が巻物を開いても扱うことができないんだ。どのような力を発揮するかは、使い手次第という厄介な代物なんだよ」

 ・・・使い手を選ぶ?

「よって、おまえの知識や想像力などに左右されるから、その辺はがんばって使いこなせるようにして欲しい」

「ちょっと待て」

 あ、声が出た。出ないのかと思ったが、出るのか。

「うん? なにか質問か?」

「もちろん、ある。ラブコメがどうのと言って、気まぐれで俺を殺してしまったとか言っていたが、使い手を選ぶ道具を渡して来たという事は・・・」

 この自称神さま、いきなり顔を真っ青にして脂汗を流し始めやがった。

「初めから、俺を殺すつもりでやりやがったな?」

「あ、いや、その・・・はい。そうです」

 こっちを見て言え。

「で? 俺の上に落ちてきた女子がそのために死んだというのか?」

「・・・必要な犠牲だった。それだけだ」

「おまえ、神様を自称しているようだが、邪神の類だろ」

 あ、ギクッて反応した。

「ま、まて! 確かに無関係な女子を巻き込んだことは認める! ソレがおまえに反応したから、使い手として殺したことも認める! その上で、どうか俺の依頼を受けて欲しい!」

「ということは、あんたの作った世界は事実なのか?」

「そうだ。俺と、俺の幼馴染で作った世界は本当のことだ。それだけは嘘じゃない」

 ・・・とりあえず、ウソではないようだ。

「なら、あんたの世界で起きている厄介ごとというのはなんだ?」

「・・・ああ、そうだな。まずはそこから話をするべきだった」

 神様にもいろいろといるらしく、異世界もいろいろとあるらしい。

 しかし、どの異世界も地球を手本にして独自に作った世界なのだという。

 この神様も他と同じく地球を手本にして、幼馴染の神様と共同で世界創造を行ったのだそうだ。

 しかし、地形の設定で口論になり、よく話し合って妥協した結果、地球にどことなく似てしまっているらしい。 

 苦労も多かったが、順調に世界は運営されていた・・・が、あるとき、悪の神様にとんでもない嫌がらせを受けてしまうこととなったらしい。

「それが、魔王という生物兵器だ」

 自称神は続ける。

「魔王と言っても、魔を統べる王というわけじゃない。これも魔王と呼称されている生物兵器なんだ。その正体は、生命体に星丸ごと一つ分の情報を凝縮した存在となる」

 ・・・うん。意味わからない。

「やっぱり通じないか・・・そうだな。地球という星には人間だけでも数十億人いるだろう? それ以外の生物だって大量にいる。さらには自然現象なども多く発生するし、それら全てをデジタル化した場合、どれだけの情報量になると思う?」

「分からん!」

 そういうのに疎いので、正直に分かりません。

「・・・まぁ、それらすべての情報が、ただ一人の生命体に凝縮されてできた兵器だと理解してくれ」

「わかった。分からないけど分かったことにしておく」

「ありがとう」

 すると、自称神は中空に世界地図を表示した。

 表示こそしたものの、地球の物ではないようだ。先に聞いた通りで地球にどことなく似ている。が、陸地は六つしかないようだ。

「これが、おまえの転生先となる世界だ。御覧のように、まだ六つしかない」

 地図の左端上にある三角形の島国が『第一国家ハースニング』という。

 第一国家を囲むようにして存在する逆L字の国が『第二国家アバジレンダ』という。

 第二国家の下に位置する逆三角形の大陸を『第三国家ダクラティブ』という。

 第二国家の東に位置する北方の大陸が『第四国家エモーニャック』という。

 第三国家の東に位置する南方の大陸が『第五国家ズイシュン』という。

 そして、第四国家と第五国家の東に位置している島国が『第六国家アメツ』というらしい。

「これらの国の名前が、魔王の名前でもある」

 ・・・は?

「魔王が、六人もいるのか?」

「そうだ。陸地が増えるたびに、悪の神によって魔王を追加されててな。対魔王兵器として『勇者の剣』とか作ったんだが、封印するのがやっとなんだ」

 倒せないのか。

「それで、今度こそ魔王を倒すため、駆除するため、排除するために用意したのが、おまえに渡した『陰陽道・地獄変』だ!」

「俺一人で六人を倒せっていうのか!?」

 んな無茶な!

 いくらなんでも無理が過ぎる! チート能力をくれるアイテムと言えど、世界を旅して魔王を倒せというのは、あまりにも酷だ。

「そこは心配しなくていい。陰陽道は地獄変だけじゃない。全部で六つあってな。六人の魔王に合わせて六つほど用意してある。そのうちの一つをお前に渡した」

「なんだ。そうだったのか」

 つまり、六つある陰陽道のチートアイテムは、俺を含めて六人に分配済みというわけだ。使い手が見つからなかった地獄変が最後の一個ということか。

「地獄変だけが使い手を見出せなくて困っていたんだが、やっと見つかったんだ。テンションが上がって、あのような暴挙に出てしまった。すなまかった」

 ・・・こいつ、特に悪びれていないな。むしろ、なにか他に隠している感じだ。

「ちなみに、各国にはそれぞれに管理している神がいる。いずれも、世界を作って運営していた神々なんだが、悪の神に滅ぼされて無職になった奴らをスカウトしたんだ」

「・・・悪の神ってどんな奴なんだよ」

 この神が作った世界は魔王という嫌がらせを受けているというが、他の神が作った世界は滅ぼされているという。どういうことなんだろうか?

「悪の神って言っても、悪性の神って分類になる。いや、属性というべきか? 光の神々、闇の神々などの分類でな。悪の神々というのが正しいだろうな」

 結構、数が居るわけか。

「俺の世界は、嫌がらせをするのが大好きな悪の神だったから、存続しているが・・・他の神はホントにヤバい連中に荒らされて滅ぼされているからな」

 悪にも色々いるわけか。

「話を戻すが、六人の魔王が居るせいで、世界がまったく発展しなくなってしまったんだ」

「どういうことだ?」

 説明を受けてみると・・・。

 文明などのレベルを引き上げるためには、そのためのエネルギーを供給しないといけないらしい。

 地球でも、世界中へ平等に供給されているエネルギーを受け、やる気のある者が歴史に残る新発明や技術革新をしていくらしい。

 しかし、そのエネルギーを魔王の封印に浪費してしまっているために、この神が運営する世界は文明レベルがまるっきり上がらなくなったのだそうだ。

 しかも、定期的に封印システムをメンテナンスしないといけない。

「そのため、1000年周期で第一国家から順番に魔王を復活させて、封印のシステムをメンテナンスして、勇者を用意して再封印するという作業が繰り返されているんだよ」

「ふーん」

 っで、いい加減に終わらせたいので、こうして新しい対魔王兵器を準備したという。

「もちろん。俺を含め、各陸地を管理する神々と天使らもアバターを作って現地入りし、おまえを含む全員をそれぞれバックアップする」

 握り拳を作って、天高くに振り上げる。

「なんとしても、魔王を倒すんだ!」



-現在-


「って感じの話だ」

〈そーだったのかぁ・・・私はおまけだったのかよぉう〉

「なんか、申し訳ない。ごめんね」

〈ぎゃふん!〉

次は、自称神から加護をもらう話を予定しています。

読んでくださり、ありがとうございました。

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