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17 夢という名の大志を背負えッ!

こんにちは。こんばんは。

ルッタとアライラが都を目指して頑張るお話の始まりであり、前話でマリーが探していたマジックバッグを渡すお話となります。戦闘はありません。

ちゃんとほのぼのとしていて、ギャグ的にお話が書けているか不安は尽きません。

最後までお楽しみいただければ、幸いです。

 全身を襲う痛みにうめき声を上げつつ、布団を退けて身体を起こすと・・・電撃を浴びたような痛みが足の先から頭の天辺までを一気に通過したように感じた。

 アライラがヨーロロンの群れに突撃したことでフルボッコにされてしまったわけだが、そこから彼女を救出するために頑張った結果である。

 まぁ、最後は虫の息になっていたのは俺の方で、マリーさんの援護が無ければ死んでいただろう。

 それにしても、命がいくつあっても足りないな・・・って、これで何度目の愚痴になるだろうか?

 口から吐き出されるのはため息ばかりだ。

「あら? 起きて早々、ため息とはね」

 部屋の引き戸が開いて、マリーさんが登場する。と、開口一番にため息を指摘されてしまった。

「いろいろと考えることも多いでしょう? しかし、まだ旅は始まったばかりよ。少なくとも、この第一区画に来れるだけの実力はあるのだし、気落ちする事は無いわ」

 ・・・ん? マリーさん?

「ただし、二人がかりでヨーロロンにフルボッコされていたら、絶望的だったけれどね!」

 どちら様ですか?って問うのは正しいか判断に困る。

 まるで別人のようだ。ちょっと俺の記憶にあるマリーさんとは言動が一致しない。

 何というか・・・普段は覚めた目つきをしている人が、お酒を飲むと恵比寿様のような目つきになってテンション高めになるような・・・感じかな?

 あ、そうそう・・・前世の母がこんな感じだった。ちなみに叔母は泣き出す。

「ところで? おまえはお風呂とか、前はいつ頃入った?」

 ちょっとマリーさんの様子に唖然としていると、腰に手を当てて俺の眼を覗き込んでくるように前のめりになった。

 お風呂にいつ入ったか?

「えーっと・・・あの、ダンジョンに落ちてからは一度も・・・水浴びもしてないです」

 そう。水浴びをする機会は幾度かあったが、いずれも安全を確保できないとして浴びるのを諦めた。

 そのため、俺の体臭は結構キツくなっているはずである。が、なんだかんだで目まぐるしい日々だったせいで気にする余裕もなかったけれど・・・。

 そう問われて、改めて自分の身なりを確認すれば、服は血と泥なので汚れているではありませんか。

 布団を確認すれば、物凄い大変な事態になっている。

 これ、結構いい布団だから、クリーニングが大変だ・・・どうしたものか・・・。

「でしょうね。私も見回りでお風呂に入れない場合が多いから、あまり意識していなかったけれど・・・さすがにその汚れを見れば気が付くわ!」

 ・・・もしかしなくても、お酒か何かを呑んでいるんでしょうか?

「よし、そういうわけでお風呂に行くわ! まずはしっかりと綺麗になって、それから元気に修行タイムと行きましょうか!」

 俺が目を点にしていると、マリーさんが当たり前のように俺を抱き上げた。そして、肩に乗せて担ぐ。まるで米俵になった気分だ。

 この時、マリーさんの全身から酒の臭いがしたことで、俺は確信する。この人は酔っぱらっている。と。しかし、いつ飲んだ?

 朝から飲んだのか? いや、もしかして昨晩に呑んだ酒が残っているとか?

「心機一転! 新たな旅路に挑むため、身をさっぱりさせることで不安や悩みをさっと流してしまいなさい! これで怖い物など無いわ!」

「そいうのとは、また別の問題かと思いますが・・・」

「はいそこ! つべこべ言わなーい!!」

 ・・・誰だよ。この人に酒飲ませたの・・・いや、管理人はこの人しかいないんだから、一人で吞んだのかな?

 どのみち、肩に担がれているこの状況では、俺に選択肢はなさそうだ。とりあえずは、このままお風呂場に運んでもらうしかない。

 

 村長宅のちょっと奥にあるトイレ。その角を曲がってさらに奥へ行くと、風呂場があった。洗面所もすぐ隣にある。

 脱衣所と書かれた札を確認して、引き戸を開けば・・・日本の古い旅館などで見かける木造の室内に、木造の棚、竹の篭などが置いてある。

 そういて、俺は下ろされた。

「ほら、あっちにある引き戸から中を覗いてご覧なさい」

 促されるまま、風呂場に続く引き戸を開けば・・・なんと檜風呂だった。

 風呂場全体が檜を用いて造られているようで、床はタイルを敷き詰めたものとなっているが、檜で作られた簀の子が敷かれている。

 なんて贅沢なお風呂なんだろうか。

「さぁ! 服を脱ぎなさい! 檜風呂がお待ちかねよ!」

 ・・・いえ、さすがにちょっと・・・そう凝視されていると脱ぐに脱げないのですが・・・。

「なーに? その顔・・・」

 どんな顔をしているのでしょうか?

「ははぁ・・・以前が高校生だったからと、私のような美女に見られては気恥ずかしいわけね! ははッ! ガキめ!」

 本当にもう・・・なんでこの人は酒を呑んだんだ?

 俺がうんざりしていると、マリーさんがゆったりとした動作からは想像もできないほどの早業で、俺の服を逃がしてしまう。

 そんな馬鹿な・・・あのゆっくりとした動作で!?って思ったが、マリーさんなら魔法術でちょちょいのちょいという奴だろう。

 あ、パンツ一枚だけは残っている。

「これでも三児の母となり、娘が子供を産んだときは育児の手伝いをし、孫がひ孫を連れてきた時は名づけもしてやったベテランよ? グズる子供の服を脱がすなど、さほども難しくないわ!!」

 この人に酒を呑ませてはいけないと、私は激しく思います。

 それと、今のは魔法術で俺の感覚野を鈍らせただけだろう。ヨーロロンを群れから一匹だけ連れ出した方法の応用で違いないはずだ。

「ほらほら、とっととパンツを脱ぎなさい。そこだけは自分でね」

 妙なところで義理堅い人だな。

 観念してパンツを脱ぐ・・・前にバスタオルを腰に巻いて、改めてパンツを脱ぐ。

「ふむ・・・コンプライアンス? まぁいいけど。さぁさ! お風呂へゴーッ!!」

 ・・・こういう人の酔いを覚ます方法ってどういうのがあるんだろうか? 仮に酔いが冷めたとしても、テンションだけは変わらない気がするから恐ろしい。

 というか・・・。

「マリーさんは脱がないのですか?」

「当たり前でしょう。おまえの頭と体を洗ってやるだけなんだから」

 ・・・お母さんモードになっている?

「なに、遠慮はいらないわ。大怪我をした後だもの。何かしらで気絶しても不思議はないし、湯舟に沈まないように付き添うだけよ」

 ・・・そんなに目を輝かせて鼻の下を伸ばしている人に言われても。

 風呂の水を上手く被せることが出来れば、酔いは覚めるだろうか? うーん。マリーさんがお湯を被る姿が想像できん。「残像だ」とか言って回避しそう・・・。

「ほらほら、何を考えているのか知らないけれど、ささっとお風呂に入るのよ!」

 手を引かれてお風呂に連れ込まれてしまう。

「さーて、まずは頭を洗いましょうね! そこの椅子に座りなさい!」

 風呂場で使う木製の椅子に座らされた。

 どうしたものか・・・と、ため息が出そうなタイミングで頭に何かを被せられる。この有無も言わせぬ勢いで被せられたものに驚いた俺は、被せられたものの縁を掴んで押し戻した。

「何を被せたんですか!?」

 俺が思わず掴んだ被り物を外すために持ち上げた時、ちょうどマリーさんは桶に汲んだ湯を掛ける途中だったようで、これが弾かれてマリーさんの頭に湯が被った。

 バシャアっと、水も滴る言い女・・・なんて言葉で誤魔化されるかな?と冷や汗が出るも、マリーさんは目を半眼にして俺を凝視してくる。

 う、これは・・・拳骨とかそういう昭和風な・・・。


「シャンプーハットよ。おまえくらいの子供には必須でしょう?」

「見た目は5歳児ですけど、中身は高校生だったんですぅ!!」


 抗議しつつもマリーさんのパワーに抗えず、結局はシャンプーハットを被らされて、頭を洗われてしまう。

 お湯でシャンプーを流している途中で、かすかな呟きを聞いた。

「私としたことが、酔いでテンションが上がり過ぎていたか・・・くそ・・・」

 ・・・どうやら、酔いは覚めたようだし、テンションも下がったようだ。よかった。

 などという事はない。結局、身体を洗われ、湯舟に入れられて100まで数えたら出るようにと、なぜか最後まで一緒に100を数える羽目になった。

 ただ、ちょっと懐かしい気持ちになって、笑ってしまった。





「ほら、おまえの服よ」

 今日まで着ていた俺の服が、皺も汚れもない綺麗な状態に洗濯されて戻ってきた。

 ・・・いつの間に?

「この家には、洗濯機とかあるんですか?」

 そうでもないと、こんなスピード洗濯は不可能だ。お風呂に入っている手間にと言っても、マリーさんんだって一緒に入っていたのだから洗う如何など無かったはずだ。

「洗濯機は無いけど、洗濯籠に洗う物を入れて、あとは洗濯を依頼するだけよ」

「・・・は?」

 俺の顔を見て、マリーさんは「ふむ」とだけ返事をすると、自身の身に着けている春物のトレーナーを唐突に脱いだ。

 そして、洗濯籠に脱いだ服を入れてから「コレを洗濯して乾燥まで終わらせて頂戴」と籠を棚に置く。と・・・籠が消えた。

 驚きに目を見開いていると、再び棚に籠が戻ってくる。

「ほら、終わった。これですぐに着れるのよ」

 そう言って、俺に差し出してくる春物のトレーナーは、洗濯に乾燥まで終えて皺一つ無い状態だった。

「どういうことです? これ・・・」

「どうもこうも、ダンジョン内にある家屋なら全てに備わっている能力よ。まぁ、正確には都、町、村、集落はダンジョン化する際にモンスター化しているから、こういう特種能力を得てしまったのだけどね」 

 ・・・はッ!?

「あら? 教えていなかったかしら?」

「えーっと・・・教えてもらってはいないかと?」

 いや、いろいろあったから俺が忘れているだけか? でも、なにも思い出せないし、教えてもらっていないのでは? はて・・・どうだったかな?

「まぁいいわ。それについてはアライラーも交えて改めて教えてあげましょう。今は後よ。あと」

 それだけ言うと、着替えを促される。

 まぁ、ここは春の区画であるから、春の気候であるため肌寒い環境にある。だから、裸でいると湯冷めしてしまう。ちょっと冷えた。

 とりあえずは、洗濯が終わっているという自分の服を着る。

 仄かな洗剤の香りと、お日様の下で干されていた温もりが感じられて、湯冷めしていた身体を優しく保護してくれる。これは、魔法術などによる洗浄効果では得られない物だと確信した。

 凄い機能だ。

 ・・・もう、この村に永住してしまってもいいのではないだろうか?

「ふむ・・・その恰好もカワイイとは思うけれど、そろそろ新しい服がいいかもしれない」

 ・・・いや、別にこの格好でいいのですけれども。

「やはりこう・・・もっと少年らしく、冒険する感じの・・・うーん。さすがの私も服を自作した事はないから・・・都にいい感じの服はあったかな?」

 独り言かな? 声が大きいけれど。

「あの、別に服は大丈夫ですから」

 俺がそう言うと、マリーさんはキョトンとした顔でこっちを見てくる。

「何が大丈夫なの?」

「新しい服は必要ありません。この服は俺専用にアルメルデ伯爵家が用意してくれたスペシャルなので」

「・・・ふむ」

 なんか見慣れたウインドウを中空に展開して、キーボードを叩き始めた。

「あぁ、なるほどね。服までは解析していなかったけれど・・・確かによく手を加えてあるわ」

 そんなにあっさりと分かるモノなんですか・・・。

「破損による自己修復機能。着用者の成長に合わせて丈の自動調整。さらに季節ごとの温度調整機能か。鎧代わりの防御性も高めてあるようね」

 分かるんですね。

「しかし、少し調整が甘いな。修復力は弱いし、丈の自動調整と言っても10歳前後が限界のようね。季節ごとの温度調整も、急激な変化には対応できていない。防御力に関しては鉄程度のようだし・・・正直、作った奴は二流ね」

 アルメルデ伯爵家お抱えの魔法術師様なんですけれどね。

 宮廷魔法術師ほどの実力は無いにしても、ベテランと呼ぶに値する腕の持ち主であると、前伯爵様が自慢していた実力者だ。

「しかし、頑張った方ではあるわね。もう少し、腕を磨くことができるのならば、一流の仲間入りはできるかもしれない」

 なるほど、俺も会った事は無いけれど、ベテランで腕は確かだというのは間違いなさそうだ。

「とはいえ、外の世界であれば鉄程度の防御性で十分かもしれないけれど・・・ここでこれはベニヤ板と同義よ? 大概のモンスターなら猫パンチの打撃で砕けるわ」

 猫パンチで砕ける鉄・・・ちょっと絵が想像できなかった。

 それだけ常軌を逸している場所なんですね・・・ヨーロロンを思い出して顔が青ざめる気分だ。

「ふふ、面白い。服作りでもしてみましょうか・・・まずは生地から用意しないと・・・」

「いやいや、まずは既存の材料で服を作れるようになってから、素材にこだわるべきでは?」

「・・・それもそうね」

 ブツブツと自身の知識と相談を始めたように、顔が真剣なモノとなる。

 こういう人は、一度こういう状態に移行すると、しばらくはこのまま周囲の雑音も気にならなくなるほど集中するので、放置しておくのが正しい。

 なので、この隙にアライラの様子を見に行こうと思う。

「まぁ、待ちなさい」

 気づかれないように忍び足でこの場を去ろうとしたのに、あっさりと首根っこを掴まれた。

「アライラーのところに行くのね?」

「えーっと、はい。そうです」

 見透かされていた?というか、俺がマリーさんから離れて出かけるとすれば、彼女のところしかないのだから、分かるのも当然か。

「私も行くわ」

「マリーさんもですか?」

「そうよ。ちょっと荷物があるから、先に玄関で待っていなさい」

 それだけ言うと、自分の部屋へと戻っていく。

「・・・なんだろう?」

 首を傾げてしまうものの、言われた通りに玄関で支度を整えて待つことにする。日も登り、春の暖かな陽気が景色を青々と照らしてくれる。

 ・・・というか、太陽がずいぶんと高い・・・もしかして、もう昼だったりする?

「はい。お待たせ」

 声を掛けられたので、そちらに視線を移動させると・・・大きな紙袋を下げたマリーさんが、微笑んでいた。

 とりあえず、気になったので荷物を訪ねてみる。

「その荷物は、なんですか?」

「おまえにプレゼントよ。ただ、アライラーも交えて渡した方がいい。と思ってね」

 それだけ言うと、後はアライラーも一緒に話をすると言って、村長宅を後にした。なんだか大きな紙袋だけれど、何が入っているというのだろうか?


〈むー・・・むにゃ・・・〉

 俺は、広場でひっくり返っているアライラを見て、思わず走り出した。

 声が聞こえてくることから、生きているのは間違いないだろう。しかし、虫がひっくり返っているのだから、死んでいる可能性も頭を過ぎる。

 だが、走って近づいてみれば、足がピクピクと動いていることから、まだ生きているのだと確認できた。とはいえ、状況は死に際の昆虫にしか見えないが・・・。

「・・・大道人。アライラは生きているよね?」

 俺の問いに、大道人は頷いた。

 どうやら、昨日の戦闘で頑張ったことで疲れているようだ。いつもは身を小さくして寝ているが、なぜか眠りが深い場合だとひっくり返るのだと・・・大道人に教えてもらう。

「・・・遠目から見ても、これは死んでいるようにしか見えないわね」

「はい・・・紛らわしいことこの上ないですね」

 アライラの声が虫の鳴き声でしか聞こえないマリーさんでは、間違いなく死んでいる虫にしか見えないだろう。俺だって声が聞こえなければ勘違いしていた。

「まぁ、いいわ。とりあえず起こしなさい。朝ごはん・・・という名のお昼ご飯の食材を狩りにいかないといけないからね」

 ・・・あ、やっぱりもうお昼なんですね。

「どうかした?」

「いえ、もうお昼なんだなーっと」

「あら? 時計を見てないの?」

「はい、ちょっと確認し忘れていました」

「ま、昨日は散々な目にあったとはいえ、頑張ったのだからね。疲れが出ているということよ」

 確かに、虫の息になるぐらい頑張ったからな・・・。

「とはいえ、いつまでも寝かせて置くわけにはいかないわ」

「そうですね・・・コツがあるので、任せてください」

 そう言って、俺は大道人に錫杖を鳴らすように合図を送る。

 洞窟迷宮にて、アライラが寝言で怒鳴り散らしつつ起きたことがある。その時のセリフから見てただろう夢を推測して、再現してやるだけでいい。

「ガチャチケット一枚でSSRが召喚できました!」

〈っざけんな! 私が何万つぎ込んだと思ってんだおまえぇえ!!!・・・え?〉

 アライラが目を丸く・・・もともと丸いけど、心情的に目を丸くしただろう顔で俺を見る。

「おはよう」

〈・・・なんだ夢か〉

 すー・・・すやぁ・・・なんて息遣いが聞こえたので錫杖を叩きつけて阻止する。

「はいはいッ、また寝ようとしないッ!!」

〈夢であってくれーッ! 後10連! あと10連で推しキャラ水着SSRが引けるはずなんだぁん!〉

 ブワーッて泣き出したので、ヤレヤレと思ったが・・・地面に落ちた涙がジュワッて音を立てたことで俺は即座に退避する。

 目から溶解液が出てくるとか、どんな体質なんだ・・・。

 マリーさんも頭が痛いと言わんばかりに、頭を抱えている。が、キリッとした顔になってビシッと一言。

「いいから起きなさい!ご飯にできないでしょうが!!」

 あなたは、お母さんですか!?

〈お、お、おーい! んぬぬぬぬ! 起きられないーッ〉

 大慌てで起きようともがくアライラだが、マリーさんの圧が増す一方で、彼女の涙目は潤むばかりだ。とりあえず、俺はひっくり返っている理由を聞いてみる。

「ところで、なんでひっくり返って寝ていたの?」

〈・・・さぁ?〉

 寝相なのか? 物凄い寝相が悪いだけなのか?

〈なんで?とか聞かれても、目が覚めたらひっくり返っているんだからしょうがないでしょ?〉

 ・・・まぁ、そうだよね。

 開き直っている様にも聞こえるけれど、本人はいたって真面目に起き上がろうと身体を動かしている様だし・・・踏ん張っているけれど、やはり上手くできないようだ。

「ルッタ。アライラーを起こしてあげなさい。ジタバタと暴れられても困るし、万が一にも村の建物を壊されては堪ったもんじゃないわ」

 目に殺気が溜まっている・・・速やかにアライラを起こすとしよう。

「大道人。アライラを起こしてあげてくれ」

 頷き返されて、大道人は俺の指示通りに起こしてくれる。ひっくり返っている彼女の頭を持ち上げて、ゆっくりと抱き起した。

〈ふぃー〉

 汗を拭うような動作を前足でやっているアライラは、そして俺とマリーさんを交互に見る。

〈で? 朝ごはんは?〉

「ないよ。これから狩りに行くんだ」

〈えーっ!?〉

 アライラが不満の悲鳴を上げるが、マリーさんが一歩前に出るとピタッと黙る。

「とりあえず、ご飯を狩る前にルッタに渡しておくものがあるわ」

 そういえば、何か紙袋を持っていたな。

 俺が視線をマリーさんの手元に送ると、アライラもそっちを見ているようだ。

「アライラーもよく見ておきなさい。コレが私からお前たちに送る旅の必需品! マジックバッグよ!」

 ジャジャーンって擬音を付けたくなるような掲げ方で、紙袋を持ち上げるマリーさん。今日は本当にどうしたというのだろう? 酔いは覚めているはずだよね?

「と、いうわけで・・・はい」

 そこはなんかもっと、凝った演出で手渡して欲しい気もしたけれど、普通に紙袋を差し出してきたので、普通に受け取った。

〈マジックバッグ・・・まさか、異世界ではド定番の容量無限というチートアイテム・・・〉

「ルッタ。アライラーは何言ってんの?」

 俺は、とりあえず紙袋から商品箱を取り出しつつ通訳する。

「はい、異世界ではド定番の容量無限チートアイテムって言って・・・え?」

 紙袋から取り出した商品箱を見て、俺は言葉を詰まらせつつ自分の眼を疑った。そして、一度商品箱を足元に置いて、目が正常であることを確認するために自分の両手を見る。

 そして、もう一度商品箱を見た。


『NEW小学生に送る決定版! 品質6年保証! 入学おめでとう! ピカピカの一年生よ! 夢という名の大志を背負え! レッドカラー:ランドセル』


〈おぉ!! ランドセル!!?〉

「そう! ランドセルよ!!」

 ・・・ランドセルぅ!!!!!!!?????????

 なんで異世界のド定番チートアイテムが、ランドセルなんだ!?

「これから、おまえたちは第一階層を巡り、さらなる下層へと冒険していくことになるからね。旅をする上でも荷物というのは大量に必要となるわ」

 なんかマリーさんが自信満々で語り出した。

「アライラーに荷物を載せるというのも、旅の定番だとは思うけど・・・このダンジョンでは遭遇戦や奇襲などは常に起こりうる危険地帯だからね。激しい戦闘で紛失することもあるだろうし、そういう問題を解決する必須アイテムを! 私からお前たちに送るわ!!」

〈おぉーッ! マリーの姐御!! サイコーっす!!〉

 アライラが前足で拍手喝采している・・・マリーさんもなんか物凄いふんぞり返っている。

「さぁルッタ!」

〈さぁルッタ!〉

 二人の声が重なると、マリーさんはいつの間にか一眼レフのカメラを構え、アライラが八つの邪眼を輝かせている。

「夢という名の大志を背負えッ!」

〈夢という名の大志を背負えッ!〉

 ど、どうしてこういう時に二人は完全同調するんだ!? 親子かなんかか!!??

 ぐ、くそ・・・た、退路は・・・退路は無いのか!?


 くそぉおお!!!!

 背負うしかないのかぁあ!!!!!


次回は、このお話の続きでアライラーが新しい力?を獲得するお話になる予定です。

それから、番外編を書いているのですが・・・新キャラが大量に登場してしまってカオスになってしまいました。途中から何を書いているのか分からなくなって、今はどうやって整えるかに頭を悩ませています。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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