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14そしてルッタは決意する

こんにちは。こんばんは。

四月末からバタバタと忙しく、マリーの思い出話を書いていたら話の終わりが見えなくなったので伐採しておりました。

次の更新はもう少し早くできるよう頑張ります。

 目が覚める。

 何か圧のようなモノを感じて目を開いてみれば・・・マリーさんが俺をジッと見下ろしていた。

「はい、おはよう」

「・・・おはようございます」

 朝、目覚めると年上の女性がジッと見下ろしている・・・とか、心臓に悪すぎる。

「あの・・・なにか?」

 恐る恐る声をかけてみると、マリーさんは咳払いをして何かを振り払うように頭を左右に振ってから、俺に答えた。

「これから、アライラーの朝食になるモンスターを狩ってくるから、おまえは朝食の準備をしてちょうだい」

「俺がですか?」

「そうよ。難しいことではないから、私が帰ってくるタイミングで出せるようにしてくれればいいわ」

 ・・・どういうことだろうか?

 俺が聞き返す間もくれず、マリーさんは家を出て行った。

 そういう行動力は・・・まぁ、前世の身内で慣れっこなのだが、久しぶりの感覚なので違和感は拭えない。

 しかし、朝食を任された以上は、しっかりと支度せねばなるまいよ。

「で・・・」

 村長宅の台所へやってくるのだが・・・。

 これは、江戸時代ぐらいがこんな感じじゃありませんでしたか?って問いたくなるくらいには、土間に竈と木製テーブルなどが置かれている。

 竈に至っては牧だ。

 火を点ける道具は?

 歴史の教科書で見たような。学校の歴史博物館遠足で見たような。なんかそんな感じの火打石を見つけて手に取ってみる。

「・・・どうやって火を点けるんだっけ?」

 カチッとツマミを捻れば火が出るコンロ・・・あぁ・・・文明の利器が欲しい。

 せめて、マッチくらいは置いてあって欲しかった。

 結局、地獄変の錫杖で火を点けたのは、3分後くらいだった。





「ふむ。今日の味噌汁はいい感じね」

 白いご飯をお釜で炊く。

 そんなことはやったこともなかったが、地獄変の力を借りてなんとかなった。食べごろになったら錫杖が鳴るようにしておいたのが功を奏したようだ。

 しかし、ここまででもう疲れてしまっていた。

 マリーさんがアライラの朝食となるモンスターを狩ってくる間に、勝手の分からない台所で悪戦苦闘をしていたからだ。

 水は井戸から汲んで来ないとならないし、冷蔵庫などが無いので家の玄関横にて栽培されている野菜を食べる分だけを取って、調理する。

 味噌とぬか漬けがあったが、これは大いに助かった。

 味噌汁は作れたし、ぬか漬けに入っていたキュウリなどをスライスして出せたからだ。

 ただ、アライラの朝食用に焼いたモンスターのサイズには、味噌の量が足りなかったので使用しなかった。昨日と同じヨーロロンというモンスターだ。

 アライラは昨日と同じく〈おいひぃ〉と言ってガツガツと食べていたが・・・。

「やはり、おまえの使う青い火は、高純度の魔力による物のようね」

「・・・はい?」

 ぬか漬けをボリボリと頬張っていた時に、唐突なことを言われて返事が遅れてしまった。

「アライラーが、おまえの焼いたモンスターを美味しいと言って食べる理由は、おまえの魔力に不純物が存在していないからなのよ」

「不純物・・・ですか?」

「そう、魔力における不純物というのは、いわゆる属性を指すわ」

「属性・・・」

「そう、魔法術における基礎四属性。火、水、風、土ね。これらに適正のない者は、属性そのものが毒素にもなるので、特にモンスターが嫌う傾向にあるわ」

「なるほど」

 こういう授業のようなモノを受けるのは初めてだ。

 俺には魔法術を扱う才能がない。というのが判明して以降、魔法術に関する学習は無駄ということで打ち切られてしまっていたから、新鮮だ。

「その分、純度の高い魔力は体内へ取り込むことで、自身の適正属性に染めることが容易いから、栄養素としてこれほど理想的なモノもないの。おそらく、アライラーはまだ子蜘蛛だから、この栄養豊富な高純度の魔力を何よりも欲している状態なのでしょうね」

 ・・・子蜘蛛?

「え、アライラって子蜘蛛なんですか?」

「ええ、そうよ。アライラーはアレでまだ子蜘蛛よ」

「・・・圧倒的に大きいのですが?」

「この世界にはLvシステムが存在しないから、あの子が成虫になることはないけれど、だからこそ、ほぼ永久的におまえの魔力を取り込み続けて成長できるのよ」

「意味が分かりません」

「体がどんどん大きくなるのよ」

「そういうことですか」

 成長=進化・・・ではなく、成長=体が大きくなる。ということらしい。しかし、進化しないと成虫になれないというのは・・・どうにも哀しい生き物だな。異世界モンスターというのは。

「そう、アライラーのスペックが異常な数値に到達している理由も判明できて、ため息しか出ないわ」

「え? あの、どういうことです?」

「あ、あー・・・こっちの話なので、気にしなくていいわ」

 咳払いをして話題を変えようとしている。が、どうにも気になる。スペックが異常な数値というのが、あまりにも気になる。

「まー、この調子でアライラーへの魔力供給を続けるといいわ。いわゆる『歩く魔力ポンプ』ってことで頑張りなさい」

「あ、歩く魔力ポンプ!?」

「そうよ。昨日と今日の食事を用意している様子をモニタリングさせてもらったけれど、おまえが地獄変を使うたびに幼児にはありえないほどの負荷が内臓にかかっているわ。そしてなによりも、肉を焼いている間に錫杖複数本に巨大地蔵とコンロ代わりの青い火・・・」

 なんか中空に出したウインドウを見ながら難しい顔になった。

「これで発生している負荷が常軌を逸しているわ」

 ・・・どう、逸しているのでしょうか?

「まだ解析が不完全だとはいえ、東京タワーの天辺からエレベーターを落下させて、底で受け止めるような圧が掛かっているのよ」

「・・・想像が簡単そうで、まるっきり想像ができない例えをするのはやめて欲しいのですが?」

「あら?・・・東京スカイツリーの天辺からエレベーターを落として、受け止めるような圧が掛かっているっていう方が分かりやすい?」

「どっちも分からないと言っているんです」

 いくら何でも高校生だったのは5年前の話だ。まるっきりそういう勉強をしていない現在では、ほぼ忘れてしまっている。そういうのってパスカルっていうんだっけ? ニュートンだっけ?

「あら嫌だ。前世は高校生だったのでしょう?」

「5年もこっちで生活していれば、あっちで覚えたことなど忘れていきますよ」

「そう? 私は憶えているけど?」

「神の記憶力と、たかが人間の記憶力を一緒にしないでください」

「それもそうね。記憶と言うか、記録しているようなものだし」

 ・・・インチキ過ぎません? 脳内記録でセーブしてあるってことでしょうか? チートって奴でしょ?

「ま、その辺はいいわ。とりあえず、今後もアライラーとコンビを組んで、魔力供給に専念しなさいな」

「なぜです?」

「現段階で、戦闘面をアライラーに担当させ、お前は指示と魔力の供給でバランスが取れるということよ。それに、お前の場合は魔力供給で身体を慣らしていくことが強くなるための近道にもなるわ」

「どういうことです?」

「地獄変の使用と、魔力の供給。ただこれだけで、おまえは死にかけていたでしょう?」

 文字にしてみると、確かにたったそれだけに見えるから不思議だ。

 でも、確かに洞窟迷宮から脱出するまでは、ほぼほぼアライラーに戦闘を任せて魔力の供給と地獄変による援護しかしていない。

 でも、脱出後には身体中から血が噴き出ていた。

「体が幼いということと、成長過程にあることで、今のお前では地獄変を使用した戦闘までを行うのは過剰労働になる。無理をしないことよ」

 ・・・でもなぁ、なんかアライラーを道具扱いしているようで気が引けるんだよな。

 考え方なのかもしれない。アライラには俺の魔力を供給する。代わりに、彼女には俺の代わりに戦ってもらう・・・。やっぱりなんか、気が引けるなぁ・・・。

 これに関しては、今は保留にしておこう。

 この第一階層という場所で、どのようなモンスターが闊歩しているかも分からないのだ。春の都を目指すとなれば、必然的にどうすればいいのかはわかるはず。

 その上で、アライラと話し合っていこう。

「ところで、昨日していた話の続きをしたいのですが」

「私が地球で旦那をゲットした話まではしたね?」

「そっちじゃないです。【災厄の壺】に関する話です」

「ち・・・ろくに仕事もできないクソ上司の茶に、トイレの水を使ったら病院送りになった話を聞かせてあげようかと思ったのに」

「犯罪ですよ」

「私、悪の女神なので」

「・・・」

 返す言葉も見つからないよ。

「で? 【災厄の壺】の何を聞きたいのかしら?」

「なぜ、【災厄の壺】が必要になったのか?を聞きたいです」

「ふむ・・・その話をすると、私の武勇伝並みに長くなるわ」

「・・・まぁ、できれば手短にしてもらえると嬉しいです」

「・・・注文の多い子ね」

 面倒くさい奴と言いたげな目つきで睨まれた。

 しかし、少し考えてくれているところを見ると、俺の希望を考慮してくれるようだ。

 それにしても・・・この人がいたという地球は俺と同じ地球なのだろうか? お茶をトイレの水で淹れるとか・・・現代なら冗談にならないよ。

「仕方ないな・・・まずは私・・・ネフェルマリーとダーゼルガーンの出会いから始まって、魔王ハースニングの完成、光の女神パーラハラーンとの対峙、ダーゼルガーンとのすれ違い、異世界創造、お祝いの嫌がらせ、他の悪神による事態の悪化、神殺しの獣、ウィッチ登場、災厄の壺って流れだから・・・」

 ・・・その呟きだけで情報量が半端ないんですが!?

 それに、チラッと聞き捨てならない単語が混じっていませんでした?

「そうね・・・一応、神の世界だと地球では言語化できない情報もあるから、私の経験則で翻訳するとしましょう。だから、あくまでも地球を舞台にした場合の話に置き換えさえてもらうわ」

「あ、はい・・・お願いします」


《神として未熟だった時代。

 地球でいう大学にある研究室の一室で、当時はまだ悪でなかった女神ネフェルマリーが、神としての格を高めるために研究室で生物兵器の研究をしていた時の事》


 出だしからぶっ飛んだ事態になっているんですが・・・。


《彼女が引きこも・・・研究に没頭しているその時、「やぁ、君の研究している【魔王】という生物兵器に興味があるんだ。俺も参加させてほしい」と言ってさわやかな笑顔で入って来た彼は、まさに私の運命の人だったわ》


「ちょっと待て」

「・・・え? なにどうしたの?」

「ダーゼルガーンが、魔王の研究に参加した?」

「そうよ。お前の言う第一国家ハースニングのハースニングは、私・・・というかネフェルマリーとダーゼルガーンの共同研究にして開発に成功した傑作よ」

 ・・・あ、あの、あの野郎・・・あのやろう!!!!

「え? マジでどうしたのよ?」

「アイツの尻拭いじゃないか!! ふざけんなよクソ邪神が!! 何が困った事態だボケ!! 自分が原因なんだから自分でなんとかしろよバカ野郎!!」

 頭に血が上っていくのが分かるが、この沸騰する怒りを我慢することなどできない。っと、思ったのだが・・・。

 一眼レフのカメラを構えているマリーさんを見て俺は止まった。

「・・・なんですか? それ」

「一眼レフのカメラよ。安心と高品質の日本製よ」

「いえ、質問を間違えました。なんでカメラを構えているんですか?」

「おまえの怒った顔が可愛いかったからよ」

 ・・・いや、せめて構えるのを解いてくれないかな?

 しかもその巨大なレンズは・・・数百万する奴じゃなかったかな?

 ・・・とりあえずは一気に頭が冷めたので話を中断させてしまったことを誤っておこう。

「・・・失礼しました。取り乱しました」

「あら? もういいの?」

「はい、話の続きをお願いします」

「ち・・・気配を消しておくべきだったか」

 この人・・・小声だけど隠す気が毛頭ないって音量で舌打ちしてやがる。

 プロ仕様としか思えない一眼レフのカメラをリュックに放り投げて・・・放り投げた!? 特に何も音がしなかったけど、カメラってリュックに放り込むようなモノじゃないよね?

「さて、残念だけど落ち着いたようだから、続けるわ」

「・・・お願いします」


 と、ここから先は、マリーさんが昔を思い出してとにかく話が長くなった。

 当時の愚痴とか、恋心とか、その辺の話で脱線を何度もし、掻い摘んで話すことなどできなくなって、とにかく長くなった。


 だから、それらを全部聞いた俺が、出来うる限りでまとめてみた。


 ダーゼルガーンと共同で研究を始めたことで、魔王の開発は成功したらしい。アイディアと基礎技術を奴が提示し、これらを整えて修正するネフェルマリーという役割で進めたそうだ。

 あくまでも地球風に置き換えた話だが、大学の卒業論文で発表すると、高い評価を受けて神としての将来に箔をつけることに成功したそうだ。

 しかし、そんな輝かしい未来を見据えた矢先に後の女神パーラハラーンが登場したらしい。

 ダーゼルガーンの幼馴染で、結婚を約束していたかの女神と、ネフェルマリーは殺し合いになるほどの激突を繰り返したそうだ。警察にも何度かお世話になるほどの問題になったらしい。

 そうして日々を過ごしているうちに、ダーゼルガーンとパーラハラーンが世界創造をすることになったそうで、ネフェルマリーは血管が破裂するような怒りと共に、異世界に生息していたモンスターを持ち込んだらしい。

 お祝いの品だと言って、この世界に異世界モンスターをばら撒いたのだそうだ。

 とはいえ、嫌がらせ程度に納めたという。絶妙に食べづらいモンスターや、生理的嫌悪が強いモンスターなどがメインだったらしい。

 あくまでも、大好きなダーゼルガーンを横から奪ったブス女神への嫌がらせなんだそうだ。


 しかし、ここで真性の悪が参戦してきた。


 それら悪の神々が「おもしろそう」「やり方が生ぬるい」という事をネフェルマリーに言いながら、大量殺戮系モンスターを始めとする。洒落にもならない危険なモンスターを大量に持ち込んできたそうだ。

 これにはネフェルマリーも顔を青くして対応に走ったらしく・・・結果としてはブス女神さんと共闘という形になったらしい。物凄く不満だったが、ダーゼルガーンのために我慢したそうだ。

 すると、悪の連中から被害を受けた神々が「今後の対策を模索するためにも」という事で続々と援護に駆けつけ、悪の連中も「盛り上がってまいりました」と続々と集結し、この世界は【善と悪】の神々による戦争状態に陥ったらしい。

 スケールが一気に壮大になった。

 こうして、一進一退が繰り返される中で・・・誰も想定していない事態が発生したそうだ。


【神殺しの獣】


 悪の神々によって持ち込まれたモンスターが、この世界はではLvシステムなどが無いせいで経験値が蓄積され続けた結果、バグによる進化が起こったのだという。

 これによって、元の世界でも設定されていない未知の種族へと進化を果たしたモンスターは、神と天使に特攻を持つ災厄の獣となったらしい。

 神や天使による攻撃や干渉を無効化、無力化し、神や天使を一撃で殺す攻撃を放つ。

 ただそれだけなら問題ではなかった。一番の問題なのは、アバターを貫通して本体にまで効果が届き、本体を殺すという事が最悪だったらしい。

 デスゲームって奴だ。どこかで聞いたことある話だけど、それは置いておく。

【神殺しの獣】の登場により、アバターを捨てて世界から逃げようとした者は多かったが、【神殺しの獣】が持つ効果によって、いわゆるログアウトが出来ない状況になったらしい。

 逃げられない。という状況で、善と悪の神々は協力して【神殺しの獣】に対抗するようになった。

 が、元々敵対していたこともあって、そう長くは協力関係を維持できず、次第に仲間割れを起こして瓦解し始めたのだという。

 誰もが「もうダメだ」と思った時、一人の魔女が海の向こうから歩いてやって来たという。

 かの魔女は言う「私はウィッチ。皆様の憂いを解消する良い品をお持ちしました」と、一つの壺を差し出してくる。

 いかにも怪しい女であるが、悩んでいる時間などない。

 ウィッチの提案に乗り、壺を使って【神殺しの獣】を含めるモンスターを大陸と周辺海域ごと封印することが決まった。

 魔女の登場が唐突で意味不明なレベルではあるが、マリーさんをはじめ創造神である二人でさえも知らない存在だったらしい。

 


「で、封印するにあたって、共に壺の中でモンスターや環境を管理する人員が必要という事になってね。最初に異世界モンスターを持ち込んだネフェルマリーが、責任を負うべきだと・・・なったわけ」

「それでマリーさんが残ったと」

「そうよ。しかし、ただ残ったのではないわ。ネフェルマリーは、封印が始まったタイミングで、本体に影響が少なく、それでいて他の神々に気づかれないように、私と言う情報を切り離して逃げ出したのよ」

「マリーさんの情報ですか?」

「そう、地球でバカンスを過ごしていた時の情報を丸ごと切り離して、本体の記憶を追加しつつ人格を形成し、コレをアバターの主人格として設定。私と言う管理人を残し、本体は自分の世界に帰ったわけだ」

「なるほど」

 嫌がらせから始まって、ほかの神々による被害拡大に悩み、最後は全責任を押し付けられる・・・か。

「まぁ、私を切り離したことで、本体は今もダーゼルガーンを追いかけまわしているんでしょうね」

 ・・・? それはまるで、今の自分はダーゼルガーンを追いかけまわすほど好きじゃないとでも言うような感じだけど。

「さて、掻い摘んだ話・・・のはずが、ずいぶんと長くなってしまったわ」

「そうですね。情報量が多いので、ちょっと整理する時間が必要そうです」

「そう? なら休憩にしましょう。そろそろお昼・・・は過ぎているから、一度アライラーの様子を見てくるといいわ」

「はい!」

 俺は村長宅を出る。

 そういえば、アライラが静かだ。お腹が空けば、自分から〈ごはんまだー〉って言ってくるのがアライラなのだが?

 村の広場へと駆け足で移動する。と、広場には身を小さくして動かないアライラと、直立不動の地蔵菩薩大道人が見えた。

 ・・・こうして見ると、どういう状況なんだ?ってなる構図だな。

〈すぴー〉

 アライラは寝ていた。

 大道人に尋ねてみると、朝食を食べてからはずっと寝ているらしい。

 なんだか起こすのも悪いから、大道人にこのまま彼女を見ているようにお願いして村長宅に帰ることにした。

 彼女と出会ってから、いろいろと忙しい毎日だったこと、ボス部屋での戦闘と脱出、これらを考えても相当な重労働だっただろう。

 今は、ゆっくりと休むのがいいだろうな。

 のどかな村の風景を楽しみつつ、村長宅へと帰宅した。

「あら? ずいぶんと早かったのね」

 マリーさんが茶を啜りながら縁側でくつろいでいた。

「ええ、アライラは寝ていましたから」

「・・・そういえば、あの子も解析した時には疲労がたまっていたわね。お前が血を噴きながら倒れたから、ずっと心配で気を張っていたのかもしれないわ」

 確かに、血を噴き出す様子を見て慌てていたようだし、ずっとを俺を心配してくれていたんだろうな。

 で、いつもと変わらないご飯を食べて、本当にホッとしたんだろう。それで現在は爆睡中ってところか。

「ま、それならそれで、お昼を食べましょう。手を洗った来なさい」

「はい」

 言われた通り、洗面所で手を洗い、うがいをする。

 このわずかな間に昼食を準備することはできないだろうから、台所へと行って手伝いをしようと思う。

 しかし、台所へ行くと・・・誰もいない。

 不思議なことに、食事を作っている様子は無く、俺が朝食を作って後片付けをしたままの様子から変化はなかった。

 首を傾げつつも居間に戻る。

「ほら、今日の昼食はざる蕎麦よ」

 ん?

 俺が洗面所で手洗いうがいをする間に、どうやってそんな物を用意したんだろうか?

 目を点にして考えていたが、早く座るように促されたので言われた通りに自分の席に座る。

 ざるそばを見ていたら、考えるのに疲れてしまいため息が出た。

「さて、今度は私も聞きたいことがあるわ」

「・・・俺にですか?」

「そうよ。私はずっとこの場所で管理人として生活してきたのだけど、外の情報は何も入ってこないのよ」

「つまり、俺に外の事を話せ。と?」

「話が早くて助かるわ。おまえがダンジョンへ落とされた事も含め、外の情報を知りたいと思うの。だから、おまえの知っている事を話しなさい」

「・・・はい、わかりました」

 昼食の間、俺は外で生活していた頃を思い出しつつ、マリーさんに話して聞かせた。

 必要はないと思ったが、俺が死ぬ前は地球で高校生だったこと。邪神の策によってアライラの前世さんを巻き込んで殺されたこと、転生したことも話す。

 それから、第一国家ハースニングの北地方にある鉱山の町ネルゾイで生まれたこと。

 邪神の加護で魔力が垂れ流しになっているがために起きた面倒ごとの数々なども話すが、その辺は興味が無いようだったので話を変えた。

 邪神に聞いた話で、現在の世界には六つの国があるという話。

 これには興味があったのか、目を鋭くして聞いてくれる。そうして、昼食を終えた後も話をし続け、古い木製の振り子時計が午後三時を示すころまで続いた。

「なるほどね・・・第六国家まで増えていたか」

「はい、それらすべてが魔王の名前になっているようです」

 マリーさんは、下顎に人差し指を添えて口をへの字にする。何かしらで、憎々し気な目をしていることからも、結論を得たような感じだ。

「あいつら・・・ハースニングを真似したのか。先手を打たれたのだから、そうもなるか」

 独り言のように呟く。

 あいつら・・・とはおそらく、真性の悪である悪の神々を指すんだろう。

 憎々し気なのは、かつて責任を押し付けられたことに対する恨みから来る感情と推測しておく。

「ダーゼルガーンの言った通りであれば、第二国家から第六国家までの【魔王】は、おそらくネフェルマリーの作品ではないわ」

「というと?」

「第二国家以降は、世界を滅ぼされて失職した神をスカウトして増やしたのだとして・・・それらに魔王を挿入したのは、間違いなく彼らの世界を滅ぼした悪の神でしょうね」

「なんでそんな?」

「連中は、悪の中でも頭がオカシイ連中なのよ。何かしらで喧嘩を売られたら、相手が破滅するまで粘着してくるわ。自分の気が済むまで、相手が何もかもを失うまで、徹底的に迫り続ける。それが、真性の悪神というものよ」

「・・・ネフェルマリーも同様なのですか?」

「・・・アレは・・・そうね。ベクトルが違うわ。ダーゼルガーン大好きを貫いて暴走しているから、真性とはちょっと違う・・・はず」

 目を逸らした。自分で言いながらも自信は無いのですね。

「とはいえ、悪の神にもいろいろといるから、真性の悪は少数なのよ。おかげで、その他大勢の悪は迷惑しているわ。一括りにされては困る。ってね」

「・・・そうですか」

 善も悪も関係なく、そういう人は普通にいるので、スルーしておく。

「信じてないわね? だいたい、基本的な悪の神っていうのは、主人公と戦って空の彼方に吹っ飛んでいくタイプの連中なのよ。ヤナカンジーとかバイバイキーンとか、その辺よ」

 え、その辺なの!? その辺が基準!?

 でも、まぁ、確かに、悪が全部真性だったら、世界がうまく機能しなくなるか。

「まぁいいわ。それより、第一国家ハースニングの本来の名前って知っているの?」

「本来の名前ですか?」

「そうよ。おまえの住んでいた国がある島国は、『試験大陸グランテスト』を詰めた壺の蓋として用意された陸地なのよ。そこに当時のアバター以外で生活していた人間を移住させたわけね」

「あ、なるほど、そういうことなんですね」

「そうよ。その時にパーラハラーンが名付けた国の名が『アルファニア』というの」

 ・・・アルファニア?

 いや、ちょっと待て・・・アルファニアって。

「ちょっと待ってください。『アルファニア』って、現女王陛下のお名前なんですが?」

 そう、第一国家ハースニングを治める王家。その現代女王陛下の名前が『アルファニア』という。これは偶然か?ってことはないだろうな。

「ぷ・・・ぷくく・・・ぷくくくく・・・今でもよく思い出すわ。陸地はハート型にして、二人の愛を広く示そうとか言って、彼と口論になっていのよね」

 ・・・あ、そういえば邪神がそんなことを言っていた気がする。地形で口論になったとか。

「自身満々で名づけをしていたというのに、長い年月で名前が上書きされるとか・・・くふふ」

 あー、なるほど・・・「ざまぁみろ」って感じで楽しくて仕方ないのか。そういうところが、悪の女神と言われる所以なんだろうな。

「未練がましく、アバターで『アルファニア』と名乗るか・・・ぷふぅ!」

 さっきまでと違い、それはもう嬉しそうに笑い転げ始める。楽しそうですね。

 それにしても、マリーさんの反応からして現代の女王陛下は光の女神パーラハラーンのアバターということなんだろうか。

 魔王を倒すという名目で、バックアップのためにアバターを用意するとか言っていたが、女神様も当然参加されているということだな。

「それに、ダーゼルガーンも相変わらずのようで何よりだわ」

「というと?」

 唐突に邪神の話をし始めた。

「アイツは相も変わらずパーラハラーンを怒らせているのでしょうね。子爵令息にアバターなんか作って、女王と結婚できないじゃないの。身分差でね」

 ・・・うん? 子爵令息?

「あの、なんで・・・子爵令息?」

「ん? なんでもなにも、ユアヒム・レーン子爵令息がダーゼルガーンのアバターだからよ」

 ・・・。

 ・・・・。

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「おまえねぇ・・・よく考えてみなさいよ。謎の鉱物でできた岩盤の調査に、考古学者なんて派遣するわけがないでしょう?」

「え、ええ・・・そうです・・・ね?」

「ダーゼルガーンは、どの世界であってもアバターを作るときは『博士』もしくは『学者』の家系に生まれるように設定するのよ。今回は、学者貴族のレーン子爵家ってわけね」

 ・・・。

 ・・・・。

「そして、パーラハラーンのアバターである女王の命令を受け、考古学者のユアヒム・レーンがおまえの居る鉱山へと派遣されてくる。何せ女王の命令だものね。周りに『いや、それはオカシイ』と指摘されても、ごり押しできるからね。ご苦労なことよ」

 そ、そうか・・・どんな基準で派遣されてきたのかと思っていたけど、女王がグルなら考古学者が派遣されてきても不思議はない。

 すべては俺を【災厄の壺】へと落とすため、確実にコレを実行するためにダーゼルガーン自らが俺の前にやって来ていたんだ。

 あの時に感じたうさん臭い笑顔は・・・そういうことか。

 そういうことかぁあ!!!!!!!

「おや、いい感じに怒りが沸きあがっているようね」

 今、俺はどんな顔をしているだろうか。

 きっと、顔中に血管が浮き上がって目が血走っているのではないだろうか? さっきから手が白くなるほどに力が籠り、震えだすほど全身に熱が帯びていく。

 ああ、悔しい。

 これほど悔しいと思ったことは無い。

 あの時・・・そう、あの時だ・・・。

 アイツを俺の護衛騎士に叩き飛ばす必要などなかったのだ。むしろアレに錫杖を引っかけて道連れにするべきだったんだ。

 助けてやる必要などなかったんだ。

 あぁ、ぐやじい・・・・。

 アライラと一緒に、ミンチにしてやれたというのに・・・ひき肉にしてやれたのに!!!

「あの邪神だけは、この手でグチャグチャにしてやる」

「ええ、頑張りなさい」


次は、春の区画を大冒険・・・の前に、マリーさん指導の戦闘訓練を予定しています。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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