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12/59

12現状では・・・

こんにちは。こんばんは。

今回は新キャラの視点から、前回の続きで話をしています。

しっかりと人物像が書けているかが不安ではありますが、書けていたら幸いです。

-回想-


 第四階層-冬の区画-

「マリー」

 名を呼ぶ声で私の気分は最悪へと変わる。

 せっかくの雪原だというのに、ひどく汚いモノに見えてしまった。吹雪で一寸先も真っ白だけど。

 しかし、無視するわけにもいかない。この吹雪の中でも明確に聞こえるのだから、無視はできない。今、この私を呼んだ魔女は、【災厄の壺】のオーナーなのだから。

「どうかした? ウィッチ」

 ウィッチ。自らをそのように呼ぶよう名乗った魔女。

 いかにオーナーといえど、不愉快である意思だけは伝えておきたいから、不機嫌を込めて返事をする。

「ダーゼルガーンから、仕事の依頼だよ」

 ・・・は?

 今、ダーゼルガーンと言った?

 仕事の依頼と、言った?

 私がここに閉じ込められて、馬車馬もホワイト企業社員かよ!って発狂したくなるほどの激務に年中無休で励んでいるのに?

 ダー君と密会していたと?

「自慢か? ビッチ!」

「うんうん。業務連絡だから聞け」

 この魔女め・・・私だって彼に会いたいのに会えない悲劇のヒロインを放置して、なんたる態度だ。ああ、悔しい。

 ダー君に会って首の骨が折れるまで抱きしめたい!

「ダーゼルガーンの子供らが、もうすぐ第一階層へ到達するから、保護してほしい」

 ・・・。

 ・・・・・。

 ・・・・・・・は?

 だーぜるがーん・・・の・・・こども?_

 こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?こども?


「だぁあぜるがぁあんのこぉどぉもぉおおおおおおおおおおお!!!!!?????」


「ダーゼルガーンの子供! キッズ! ジュニア! Baby!? 誰とのぉお!!??」

 ま、まさか! あの、光のブス女神が・・・いやいや、それを許すようなネフェルマリーではないわ。そうね。つまり、ネフェルマリーがとうとう結婚に成功したのね!

 はっはっはっはっは!

 っざけんなよネフェルマリー! 私をここに切り捨てておきながら、なにを一人で幸せになってんのよ!! ならいっそのこと、あんのブスと結婚してくれた方が「ザマァ!」って笑いものにできるわ!

 あっはっはっはっは!

 あぁあぁぁぁあぁあぁ!! ブスと結婚する姿を想像したら私にも修復不能の傷があああああああああああああああいやああああああああああああああああ!!!

 くそがああああああああ!!!! 全員しねぇえええええええええ!!!!

 私を置いて幸せになるなど許せない!

 みんな、みんな、みんなしねぇえええええええええ!!!!


「邪神くんから加護を授かった子供らなんだけど?」

「第一階層ね? すぐに向かうわ!」


 それを先に言いなさいよ。神が人間に加護を授けるなんて普通のことなんだからさ。ダー君の子供とか言うから、勘違いしちゃったじゃないのよ~もぉ♪

 やだ、恥ずかしいわ。

 どんな子供かしら? いや、そもそもなんでダー君の子供が?

 ・・・妙ね・・・なんで今更、ダー君の加護を貰った子供が、こんなダンジョンに?

「ウィッチ。その子供らって、なんなの?」

「見ればわかるよ。で、注意事項は、地球は日本からの転生者なので、話しかけるときは日本語を使用すること」

「日本語? 今使っているから問題ないわ」

「次、一人は人間の子供だけど、もう一人は蜘蛛のモンスターなので間違えて攻撃しないように」

「雲? クラウドの雲?」

「蜘蛛。スパイダーの蜘蛛ね」

「意味わからないわ」

 ダー君。あなた今度は何をしようっていうの?

「まぁ、君が造った魔王ハースニングへの対抗策だね」

「なんですって」

 第一階層へ移動するために走り出していたけど、思わず止めてしまった。だって、聞き捨てならない言葉を聞いたのだもの。

「ハースニングへの対抗策?」

「そうだよ。対魔王兵器開発計画。その第一段階はクリアされた。計画は第二段階に移行される」

「・・・待って、それって・・・」

「うん?」

「その対魔王兵器、クソ雑魚だったりしない?」

「・・・あ、わかるんだ」

 ダー君!? ハースニングの時にやりかけた失敗を、まさかやってはいないでしょうね!?




-現在-


「まるで成長していない」

 気絶した子供を抱えて、川から程近い場所にある村へと入ったのはいい。しかし、叩き起こそうと子供を見てみれば、5歳ぐらいじゃないの・・・。

 さすがの私も殴って起こすとかムリ・・・とか言う前に、なんで5歳ぐらいの子供をこんなダンジョンに落としてくるんだよ!!

 ないわー。

 まじないわー。

 せめて10歳ぐらいまで成長するのを待てなかったの? このくらいの子供なら、虎穴に放り込むとか谷底に蹴落とすぐらいでしょうが・・・。

 こんな地獄の10丁目みたいな場所に放り込む神経を疑うわ。

 だけど、この子からダー君の気配と匂いがプンプンするから、頭がトリップしそう。いい匂いだわ。ちょっと服の一部を切り取って、芳香剤にしようかしら・・・。

「話が逸れるわね」

 自分で自分に言い聞かせないと、思考が妄想ダー君と見せられない地獄絵図になるわ。

 モニターを表示する。

 先ほど、村でも一番大きな屋敷である村長宅に布団で寝かせつつ治療を行った。全身血まみれで、内臓がグチャグチャだったけれど、人間の身体を治すなぞ造作もないので指を鳴らしてハイ終わり。

 神の権能をナメてもらっては困るわね。

「しかし、この子・・・どうやって生き延びたのかしら?」

 治療した時点で失血が致死量に達しているし、臓器破損率が70%を超えているとか・・・死んでいないのが摩訶不思議よ。

 解析を掛けてみる。

 体を構成する基礎は、かつて私と一緒に研究したハースニングに組み込んだものを流用しているようだ。けれど、ところどころで彼が組んだ欠陥プログラムを、私が修正したものにしてあったはずなのだけど・・・。

「エラーデータだらけじゃないの」

 あっちもエラー。こっちもエラー。

 あらやだ。この子、魔法術が使えなくなっているじゃないの・・・何? この外部デバイス。詳細が表示できない上に文字化けしているし、接続解除もできないわ。

 

 これは酷い。


 エラーのオンパレードだ。どうなっているの?

 すべては外部デバイスによる干渉が原因だ。このデバイスが人間としての正常な機能をことごとく妨害している。この欠陥に気づかないまま世に転生させたというのか?

 だとすれば、ダー君は著しく劣化してしまったということになる。

 昔は、魔王ハースニングを造ったあの日の彼は、まさに天才とバカは紙一重を実践してくれる・・・昔からバカだったわ。

 あー、もー、私なんであんなのに惚れてたんだっけ? かっこいいから。

 しかし、このままでは情報不足ね。

 外部デバイスの詳細も掴めないから、この子がどのような意図で作成されているのかも分からないし、ほかにダー君の意図を垣間見ることができる情報源がないと・・・。

「そういえば、あの蜘蛛がいた」

 そうだった。この子の傍で狼狽えていた蜘蛛がいたわ。

 ついてこいとは言ったけれど、村に入るまで一度も確認しなかったから、今はどうしているのかも知らない。

 仕方がない。

 貴重な情報源だから、回収しに行くとしましょう。

 モニターは出しっぱなしで、ちょっと横に置いておく。

 子供は寝かせてあるのでしばらくは起きないだろう。その間に蜘蛛を回収しに行くとする。

「おーい、蜘蛛」

 もしかしたら外にいるかもしれないと、村長宅を出てすぐに声をかけてみた。が、ダメ。

 空を見上げてみる。

 この村を覆おう二重結界に、さすがの蜘蛛も逃げてしまったのかもしれない。

 外側と内側で、異なる結界が張られている。外には魔物除け。内には状態異常:睡眠。もちろん、睡眠の効果は私や人間には機能しない。

 村そのものを寝かせて置くための内結界だから、モンスターにも効果は無い。

 ま、村にはいないようだから、外に出るしかないようね。

 門まで移動する途中で、結界に張り付いている毒々しい緑色をした大蜘蛛を見た。気持ち悪い。たしかアレは地球の南米に生息している世界最大の蜘蛛・・・だったかしら?

 いや、異世界モンスターか? 蜘蛛の形って色々だけど、基本形が同じだから覚えづらいのよね。


「おい、そこの蜘蛛」


 私が門まで近づき、改めてその巨体へと声をかける。

 すると、蜘蛛はビクッとした様子で反応すると、ノソノソと動き出して結界から離れ、門の前に移動した。

「一応確認するけど、日本語は分かるのよね?」

 蜘蛛は顔を縦に振って見せる。肯定しているわけか・・・賢い? いや、なんか違うな。

「ちょっと、今からお前を解析するから、そこを動かないでちょうだい。動いたら殴るわ」

「ぎーぃ」

「あ? 威嚇してくるとは、いい度胸ね?」

 しかし、蜘蛛は大慌てで顔を横に振っている。

「・・・違うの?」

 蜘蛛は顔を縦に振っている。

「・・・そう。正直、何を言っているのか分からないから、下手に音を鳴らすのは止しなさい。モンスターの特に昆虫系の出す音は威嚇であると、私は解釈しているからね」

 さて、とりあえず解析を始めましょうか。

 モニターを複数表示し、収取される情報を眺めていく。

 その中に、鑑定データなるものを見つけたので、コレをピックアップして新規ウインドウを横に開いてモニターに表示する。


『アライラー。異世界の地球で生活していた女子高生の転生者。異世界ケッテモにて生息するポインダーの亜種でさらに希少な素体に魂を憑依させて上書きを行った後、当世界の創造主が一人、邪の男神による魔改造を施された生物兵器。万能の概念を付与された邪の男神謹製の眼を八つ持ち、あらゆる環境に即時適応できる優れもの。量産計画を発案するも、直属の邪神天使一同に「気持ち悪い」と却下された。当モンスターは、ルッタ・レノーダを【災厄の壺】に引き込むための使い捨てである』

 

「まじかー・・・ないわー・・・さすがにこれはさいていだわー」

 語彙力が一気に低下する結果だわー。

 体は間違いなく異世界モンスターでも厄介な種である『ポインダー』のようだ。しかも希少な亜種でもさらに希少なタイプとか・・・確か、毒であればなんでも取り込める上に扱うことが出来るし、一度覚えた毒であれば体内でも精製できる毒蜘蛛の頂点に君臨する・・・子蜘蛛ね。

 これでまだ子蜘蛛。異世界ケッテモであれば、Lv10で第一進化を迎え、Lv25で第二進化、Lv50で第三進化して、Lv80で最終進化する奴だったはず。

 一度ぶん殴ってやったけど、アレは危なかったわね。外と内から肉を溶かす毒を霧状に撒きつつ、麻痺毒を液状に散布して確実に仕留めに来る知能まであるのだから。

 そんなモンスターに・・・なんで人間の魂を憑依させて上書きさせちゃうかなー。

 コレあれだ。人間の魂をパイロットに例えて、ポインダーが巨大ロボット。まさに人間が巨大ロボットを操縦するかのように、アライラーという魂がポインダーの身体を操縦している状態だわ。

 欠陥が過ぎる・・・。

 データを見る限り、ポインダーの特徴ともいえる毒攻撃はほぼ使っていない。唯一使った毒も、血を凝固させて血管を詰まらせる蛇などが使う毒のようだし・・・。

 性能を発揮できていない。

 しかし、ダー君謹製の眼を相当数使いこんでいるようね。

 でもオカシイ。この子の魔力総量と、使用頻度に使用時の魔力消費量を計算してみると、データがバグっているような天文学的数値に達する。

 この子、ビームを八発撃てば魔力切れ起こすはずなのに、バカスカ撃ちすぎじゃない? 外部から魔力供給を受けていたとしか思えないけど、いったいどこから?

 いや、もしかして・・・。

「この子とあの子がセットということ?」

 あり得る。

 ルッタ・レノーダとアライラー。この二人がセットで運用されるのであれば、欠陥を補いあえるかもしれない。

 先の解析で、ルッタもダー君から加護を貰い、枯渇しない魔力とかいう魔力が垂れ流しになっている状態だったことは判明している。

 このことから、ウィッチが保護しろと言ったのはこういう事なのかもしれない。

 セット運用しないと、このダンジョンでは生き残れないわけだ。

「いや、でもこれ、ダー君の思惑じゃないな」

 解析の結果、アライラーは使い捨てだ。

 であるならば、対魔王兵器というのはルッタ・レノーダ一人を指すことになる。現状では、ハースニングの足元にも手が届かない子供だが・・・。

「外部デバイスが、鍵ということか」

 解析不能だった謎のデバイスを知ることが出来れば、あの子への評価はまた変わるかもしれない。

 うーん。

 とりあえず、現状ではここまでかな。

 ルッタが起きて、アライラーとセット運用した場合のデータ収集ができないと、次へ進めないわ。

「そうか・・・ウィッチめ。そういうことなのか」

 二人をセット運用する考えは、おそらくウィッチだ。

 ダー君から仕事の依頼を受け、ダンジョン内からポインダーの亜種でもさらに希少な個体の卵を外へ持ち出し、ダー君に魔改造させてダンジョン内に戻す。

 あの魔女であれば、それができる。

 そして、ルッタ・レノーダをダンジョンへ落とすために使い捨てる・・・のをやめて、ウィッチがルッタと合流できるように手を打った。

【災厄の壺】の口には、門番として【神殺しの獣】である『麒麟』を配置してある。

 あいつは仕事に真面目だから、外に出ようとするモンスターは確実に仕留めてくれる。それがアライラーを仕留め損ねるはずがない。

 ウィッチが二人の合流を確認して引き上げさせたんだわ。

 面白い。

 この二人をセット運用した時に、どんなデータが得られるのか・・・今から楽しみだわ。

「おい、蜘蛛」

「ぎ?」

 また威嚇・・・かと思ったけれど、中身が女子高生だとすれば「なに?」くらいの反応だろう。

「日本語を話すことはできないの?」

 顔を上下に動かしているのは、できないという肯定か・・・。

「では、文字は?」

 すると、蜘蛛はガバッという感じで身体を高く持ち上げる。攻撃してくるようなら、真っ二つにしてやるところだった。

 しかし、すぐさま蜘蛛ならよく見る姿勢に戻り、前足を地面に擦り付けて動かし始める。

 その動作、文字を書いているようね。

「えーっと・・・『あ』?」

 巨体だからか、文字も大きい。しかし、読める。

「いいわ。とりあえず、続きを書いてみなさいな」

『あ』『ら』『い』『ら』『ー』・・・アライラー。この蜘蛛の名前か。

「アライラーというのは、お前の名前でいいのかしら?」

 そういえば、ずっと「おい、蜘蛛」で呼んでいたから、名前で呼んで欲しかったのかしら? ちょっと可哀想なことしてしまっていたかな。

 顔を上下に動かして肯定していることからも、名前を呼んで欲しかったのでしょうね。

「そう。ではアライラー。とりあえず、村に入りなさい。外では魔除けの効果でい続けるのはキツイでしょうし」

「ぎー」

 なにやら困惑している様子だが・・・。

「あ、村に入るためには、門で入場登録をする必要があるわ。この村は、木の柵に丸太の門しかないから、門である丸太を前足で触りなさい。そのまま少し待つのよ」

 私の言葉通りに、アライラーは丸太の門を前足で触れる。

「触れたら、入場許可を求める。と、念じなさい」

「ぎぎぎぎぎぎぎ」

 耳障りな音を出す・・・虫モンスターってこういうのが多いから嫌になるわ。

「しばらくはそのままよ。そのうち、アナウンスがあるから、待つの」

 シーン。そんな擬音がしっくりくるような待ち時間。


《ぴんぽんぱんぽーん。お客様の、入場、登録が、完了、いたしました。モンスターの、入場、と、なりますので、飼い主の、方は、厳重な、管理を、よろしくお願いします》


 ・・・久しぶりに聴いたわ。

「もう大丈夫よ。入ってきなさい」

 私が促してやると、アライラーはおっかなびっくりという様子で、前足を門に潜らせてくる。結構な慎重さだけど、ゆっくりと体を門に潜らせて・・・・。

「ぎぎぎぎぎぎぎぎいぎぎ」

「黙れ! おまえの鳴き声なのか門が軋む音なのか分からなくなるから! 静かにしなさい!」

 この蜘蛛、大き過ぎて門にハマりやがった!ったくもぉ!

 ・・・えーっと、門のサイズを拡張する操作手順は・・・えーと、確か門のこっち側の裏にあるパネルの蓋裏に・・・。

 操作手順のシールが貼ってない!?

 ウィッチの奴! こういうのはちゃんと貼っておきなさいよ!

「ちょっと、そのまま動くな! 今、門を拡げる操作法が載っている取説を探してくるから! 絶対にそこを動くなよ! 門を壊したらお前を殺処分するからな!」

「・・・ぎぃ」

 私は、大急ぎで村長宅へと駆け戻った。





「二人はどうだった?」

 串に刺さったみたらし団子を口で頬張りつつ、お茶を啜って月を眺める。

 そんな村長宅の縁側に腰かけていると、隣にはローブで身を覆い隠すような恰好をしているウィッチが座っていた。

「・・・まだ、セットで見たわけではないから」

「なら、別個で見た感想は?」

 ずいぶんと性急な様子ね。

「まぁ、別個で見た限り、どっちも兵器としては欠陥品ね。ルッタは外部デバイスありきのエラーデータだらけ。まだ実働データを見ていないから、あれらのエラーデータがどのように機能するのか分かっていないし、何とも言えないわ」

 そう、ルッタはまだ寝ている。

 怪我から来るものだけではない。疲労も重なっているのでしょうね。可愛い寝顔に一時間ぐらい眺めてしまった。

 蜘蛛・・・いえ、アライラーも村の広場で身を小さくして寝ている。さすがの巨体だけあって、村長宅の庭には入れなかったからね。

 家屋や庭を壊されては堪ったものじゃないから、十分な広さがある広場で寝ろと言ったわけだ。

「アライラーは転生すらしていないから、ポインダーの特性などを本能的に理解できていない。その上、蜘蛛の身体に人間の魂だから、性能を発揮できても50%ね。ただ・・・現状のスペック値はハースニングを軽く超えているのよ。コレが意味不明だわ。これでしっかりと手順を踏んで転生されていたなら、対魔王兵器は完成していただろうにね」

 まったく・・・ダーゼルガーンはいつもそうだ。

 自分が興味のあるものは、とにかく手を加えたがる。その一方で、興味が無いモノはとことん手を抜く。

 ただ手を抜くだけではない。目的に合わせて必要水準を満たして完成とするから、手を加える余地が多分に存在している。

 一方で、興味がある物は手を加えたがるせいで、伸びしろも拡張性も全部潰してしまう。

 これ以上などない。それを主張するかのような出来上がりなのがルッタだ。結果、現状では人間が超人になった程度の存在でしかない。あ、素で超人だったわね。

 今後、身体の成長で基礎能力が向上するとしても、魔王の域に到達することはないだろう。

「外部デバイス」

「うん?」

 ただ一つの懸念事項は、ルッタに接続されている外部デバイスただ一つだ。

「ルッタに解析不能の外部デバイスが接続されている。これが、エラーデータと繋がっているようでね。デバイスの正体がわかれば、また評価も変わるとは思うんだけど」

「そう? なら、ダーゼルガーンにはそのように報告しておくよ」

 こいつ・・・。

「彼から依頼された仕事だったわけか」

「そうだよ。報告書をね・・・提出しろってうるさくてさ。第三者に、あの子らを見て欲しかったんだよ」

「ふん・・・」

 私に解析させて、あわよくば改善案を出させようって腹積もりかしらね。

「あまり不機嫌にならないでよ。魔王も6体いると、世界を維持するだけでも大変なことさ。ダーゼルガーンは、そんな重荷を背負う傍ら、対魔王兵器の研究に打ち込んでいたのだから」

「・・・魔王が、6体? どういうこと? ネフェルマリーは、ハースニング以外に魔王を増産したというの?」

 この【災厄の壺】で管理人を務めるようになって数万年。

 ウィッチはときおり様子を見に来るが、外の情報などは教えてくれない。それゆえに、私は外で何が起きているのかを知らない。

「その辺りは、ルッタ君に聞いてみるといい。最低限の情報は持っているよ。聞けば、君なら察しもつくさ。外で何が起きているかのね」

「・・・そう」

 ウィッチは、消えていた。

 フィルム映画を途中で切って、また繋ぎ直したかのように唐突に消えた。フェードアウトするように消えるとか、明滅して消えるとか、そういう演出などはない。

 

「そう、つまり・・・私も不貞腐れている場合ではないということね」


 やりがいなどない仕事を、年中無休で手当なし。気を抜けば死ぬというのに、休暇も無しだ。自分が何をしているのかも、考えるのが嫌になっていたこの頃だった。

 でも・・・。

「いいわ。やってやろうじゃないの」

 団子を食べ尽くし、茶を飲み干す。

 妙な気分だった。

 このダンジョンに昇る月は、偽物だというのに・・・。


 今日は、本物のように美しく見えた。


申し訳ありません。

機械系やプログラム系は知識が無いので、こんな感じかな?で書いています。


次は、ルッタがマリーと問答する感じになるかと思います。

読んでくださり、ありがとうございました。

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