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10/59

10むぅん・・・

こんにちは。こんばんは。

魔法術具で外と連絡を試みていることを忘れていました。

洞窟迷宮突破前のボス戦を書いているのですが、やはり思うように書けないです。

「なぁ? アライラ」

〈うん? どうかした?〉

 道標人の案内で道を進んでいると、水の音を聞く。

 休憩地かと思ったものの、小川ほどの水が流れている小さな空間だった。

 アライラに鑑定してもらったものの、特に何か定まった名前が出てくることは無く・・・地下水。とか岩。とかその程度しか出ない。

 ただ、この水は綺麗な水だというので、水補給に立ち寄っている。

 そうして、改めてアライラを見上げてみれば・・・。

「君・・・やっぱり大きくなっているよね? 一回りほど」

〈そーなん?〉

 俺の記憶と目がおかしくなければ、最初に彼女を修復した際のサイズから大きくなっているのは間違いない。

 巨大ワームのワーミンとかいうモンスターを倒すことに成功し、俺が寝ている間にアライラが八割ほどを食べ尽くしていた。

 その時点で、彼女は大きくなっていた。

 成長したとかそういう類ではなく、見た目をそのままに大きくなっていたのだ。

 目の錯覚か、思い違いかと思っていたが・・・洞窟迷宮の通路を移動している際に、彼女と洞窟を比べた時、洞窟が少し小さくなったような気がするのだ。

 その上、背に乗っていると妙に広い背中であると違和感を覚え、間違いないと思うのだが。

〈ま、成長期ですので!〉

 彼女があまり自覚していない。

〈さーって、とりあえずお弁当でも食べようっかなぁ〉

 そういって、彼女が蜘蛛糸で牽引していた風呂敷を手繰り寄せ、包みを開いて中に入っている肉団子を齧り始める。

 かの巨大ワームであったワーミンの肉で俺が作った肉団子だ。

 二割残ったといえ、その量は相当なもので・・・正直、俺一人で作るのは無理だったから、一番最初に使った地蔵菩薩大道人ハリボテを召喚して頑張って肉団子にした。

 アライラと同サイズになった肉団子が複数できあがると、彼女は邪眼を駆使して一つに束ね・・・。

 圧縮して一個の肉団子に固めたのである。

 その結果が・・・。

〈うーむ。ボリボリと歯ごたえあるお肉って不思議だわ〉

 肉のはずなのに、殴ると拳が壊れてしまいそうな硬度の肉団子になってしまった。それをボリボリシャクシャク食べているのがアライラである。

 ため息しか出てこない。

 俺の分をこっそりと分けて置き忘れたので、圧縮された肉団子は食べられないのだ。硬すぎて。

〈そうだ。ねぇルッタ!〉

 食事中に俺へ話しかけてくるとは、どうかしたのだろうか?

〈せっかく綺麗な水場のようだし、ちょっとお風呂とかどう?〉

「お風呂? 確かにしばらく入っていないけれども・・・ここでか?」

〈そうですとも! 水風呂的な!〉

「水浴びをしろってことか?」

〈そうそれ! 私がキッチリと監視しておくから!〉

「・・・モンスターが来ないようにか?」

 それとも、俺を監視するというのか?

〈も、もちろん。モンスターが来ないように周辺警戒を密にしつつ、監視をですね」

「・・・誰を監視するんだ?」

〈・・・もちろん。モンスターです〉

 嘘くさい。

「まぁいいや。水浴びはお預けだよ。どこにどんなモンスターがいるかも分からないし、せめて第一休憩地くらいの広い空間で安全な場所でないと無理だ」

〈むぅ・・・あそこ、安全だった?〉

「あそこにいた魚は、食用兼鑑賞魚だったわけだし・・・湖に入らなければ問題ない・・・ってことなんだろ・・・」

〈むぅん・・・〉

 思い返してみると、あまり安全でもなかった気がするな・・・。

 でも、モンスターが侵入してくる気配もなかったわけだし、安全だったのかもしれない。

 ため息を吐いていると、腰のベルトに備えてあるポーチから音が鳴った。


 うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう


〈空襲警報!空襲警報!・・・え!? どゆこと!?〉

 アライラが機械的な声でアナウンスしたと思ったら、自分でツッコミを入れている・・・。

「落ち着け。これは洞窟迷宮へ突入する前に使った魔法術具のメッセージ受信音だ」

 そういって、ポーチから魔法術具を取り出した。

 俺の血でカピカピになった羊皮紙を広げる。

〈・・・何その着信音。せめてピリリリじゃね?〉

「俺に言うなよ。この音はいつかの勇者様が誰もが絶対に跳ね起きる音として設定したらしいから、詳しいことは俺も知らないんだ」

 空襲警報の音に似ている以上、戦争時代の人だったのかも知れないけれど。

〈ぬぅ・・・紛らわしい〉

「まぁ、ちょっとメッセージを聞くから、静かにしててほしい」

〈ほーい〉


『ルッタよ! 無事なんだな!? おお! 俺は嬉しいぞぉお!!!』

『ちょっ!! 俺の孫なんだから横から割って入るなよ!』

『うっさいわボケ! 俺は伯爵。お前は男爵。身分の差をわきまえろって教えて来ただろうが!』

『アンタは前!伯爵だろうが! ボケじじい! 今はただの平民なんだから、現役で男爵の俺が上なんだっつの! 命令! 黙れ!』

『あんだとテメェ!? アレほど教え込んできたというのに、どういう記憶力してんだバカめ! この成り上がりのエセ男爵!』

『かー! よく言うわ! 女王陛下に教師を命じられたくせに、別に教師を雇って丸投げしてたくせによぉ!』

『やっかましいわ! 俺がいくら教えても覚えないお前のせいだろうが!』

『わかるか! アレはこうするんだ! コレはこうやるんだ!って身振り素振りだけで何を学べっつんだよ!』

『かー! これだから平民は始末におえねぇ!』

『なんだとボケじじい!』

『なんだよバカじじい!』

『『いい加減にしなさい!!』』

『『ごめんなさい!!』』


 ・・・なんだ、今の・・・。

〈なんか喧嘩してるっぽい感じのメッセージだったけど? ルッタに喧嘩売ってたの?〉

「いいや、ジジイ二人が勝手に喧嘩を始めて、婆さん二人に怒鳴られていた感じだな」

 間違いなく、最初の声はアルメルデ前伯爵様だろう。それに文句を言っていたのが、俺の祖父で間違いない。

 最後に二重で聞こえてきた声の一組は、アルメルデ前伯爵の奥様で、もう一人が祖母だ。怒鳴られたことで、ジジイ二人が仲良く謝ったというところか。

〈救命用だったか、救助用だったか知らないけど、そんな用途であんなメッセージを送ってくるもんなん?〉

「・・・まぁ、そういうジジイ二人だから」

 老人は敬えって? ムリムリ。あの二人、なにか仕事させると仕事が増えるっていうトラブルメーカーで実は家族からも職場からも「何もするな」と言われるほどの疫病神だからさ。

 いや、だからこそアルメルデ前伯爵を無理やりに隠居させて、ただの平民だった祖父を男爵にして面倒見させることにしたんだろうけど。

「ま、とりあえず返事を出すから、少し静かにしててくれ」

〈ほいほい〉


『ご無沙汰しております。僕が送ったメッセージは、何日ほどでそちらに届いたのでしょうか?

 父さん、もしくは領主様に教えていただきたいと思います。

 どうか、爺様二人は頭をカチ割って墓石の下に埋めてからお願いします。きっと治ることもないのでしょうが、神父様に供養をお願いしてくださいませ。

 少しでも早く、静かになってくださることを地下深くよりお祈りしております』

 という感じのメッセージを送り返した。


 一息吐いたところで、また魔法術具が音を鳴らす。

〈・・・返信早くね?〉

「いや、これはたぶん・・・前の奴が途中でだったから、改めて送ってきたのかも」

 とりあえず、再生してみる。


『あー、さっきは済まなかったな。ルッタよ』

『お前が無事という事で、少々、感情が昂ってしまったようだ。許せ』

『さて、お前のメッセージだが、あの地震による崩落から七日後ぐらいに届いたぞ。今は無事に生きておるか?』

『一応、メッセージはかの崩落からすぐに送ってくれたモノであると判断し、ワシらのメッセージも七日程で届くものとして送っている。どうか、届いたならば返事を出しておくれ』

『一人で心細いとは思うが、決してあきらめずに生き抜くのだ』

『念のため、メッセージはこれから毎日送るからな。おまえも毎日返すように』

『もちろん。返事は愛するおじい様へと』

『テメェ! 婆さんの用意した台本と違う事を言うんじゃねぇよ!』

『俺は実の祖父なんだからいいいだろうが!』

 『ボキッ』『メキッ』(打撃音)

『ということですから、決して諦めてはいけませんよ。ルッタ』

『お祖母ちゃんたちも、必ず助ける方法を見つけますからね』



 ・・・うん。迷惑極まりないな。

〈うーん。お爺ちゃんたちってバカなの?〉

「あ、わかる?」

〈うんうん。そりゃあ、お爺ちゃんらで言い争いが始まったかな?ってところで殴る音が聞こえたしね〉

 まぁ、正直・・・アルメルデ前伯爵夫妻と祖父母はどっちもどっちだからなぁ。

 なるべく早く俺のメッセージが向こうに届くといいんだけどな。せめて父さんか領主様に代わってもらいたいんだよな・・・。

「とりあえず、また返事を出しておくから・・・静かにしててくれ」

〈ほいほい〉


『メッセージをありがとうございます。僕が送ったのは、地下深くへと落ちた当日ですので、七日かかるというのは間違いないかと思います。

 現在は、地下空間にあった入口のような穴から洞窟を探索しているところでして、外では見たこともない異形の虫などが生息しています。

 大変危険な場所であるようで、すでに何度か命を落としかけています。幸いにも、地下水を発見し、そこを足掛かりにして活動しているため、飢えなども凌げております。

 どうか、メッセージは一日一回と時間を定めて送ってくださいませ。あと、父さんか領主様に対応をお願いします。

 ジジイたちと婆様たちは、どうかメッセージを送るのをやめて僕の無事を祈るだけにしてください。よろしくお願いします』

 という感じのメッセージを送る。


〈なんて?〉

「老人どもに返事を出させるな。って要求した」

 なんか、ドッと疲れた気分になるな。仄かにイラっとしていることを自覚できる。

〈なんか賑やかなお爺ちゃんとお婆ちゃんたちなんだねー〉

「ああ、賑やか過ぎて回りからドン引きされるくらいには、元気一杯の人たちだよ」

〈うーん。いいなぁ・・・私もそんな生活を送りたかった〉

「・・・ごめん。君は転生してずっとここに居るんだもんな」

〈うへへ、今はルッタがいるから大丈夫! 前は、もう考えるのもしんどくて、とにかく死んでたまるか!って感じで戦ってたし・・・途中からほとんどなんも考えなくなってた気がするし〉

 そうか。考えることをやめた方が、いろいろと気が楽になるのかな。

〈だけど! ルッタのご飯は美味しいから! もう最高だね! これからも私のご飯を作って頂戴ね!〉

「ああ、いいよ。って言っても、焼いているだけなんだけど・・・作れる状態であれば、必ず君のご飯を作るよ」

〈・・・うへへ!〉

 と、そんな空気に割り込む受信音が鳴る。

〈・・・また?〉

「ああ、さすがにイラっとするな」


『はーい、ルッタ? 一人で寂しくはないかしら?』

『お婆ちゃんたちは、ルッタが一人寂しい思いをしているだろうと思って、こうしてメッセージを送ることにしました』

『爺様たちは追い出したわ。いても邪魔な上に、すぐ喧嘩するんだもの』

『お小遣いを与えて、町の飲み屋へ連れて行かせたわ。安心してね』

『さて、それじゃあどんなお話をしましょうか?』

『あの子が好きな勇者伝説を読み聞かせてあげるのはどうでしょうか?』

『あら、そういえば生まれて間もないころから熱心に読んでいたものねぇ』

『そうです。お茶にお菓子も用意していますし、ゆっくりとお話を読み聞かせてあげれば、きっとルッタも安心して救助を待てると思います』

『では、どの勇者伝説から読み聞かせてあげようか』

『そうですねぇ・・・』


「もういい」

 俺は、魔法術具のメッセージ再生を停止した。

 そして、即座に返信する。


『お父さん。もしくは領主様。どうか爺様と婆様から魔法術具を取り上げてください。迷惑極まりなく、危険な生物に襲われる危険性が高くなります。先の返事でも言いましたが、メッセージは一日一回で時間を定めてください。それ以外はどうか控えてください。僕はまだ死にたくありませから、どう――――――」

〈あ、ルッタ!? お地蔵さんが杖を振ってる! モンスターが近づいている!〉

「e? wktt! arrhggkndtkr! ktrhktdknhr!」

〈え? なんて?〉

 ええい! 言語切り替えをし忘れた!

 魔法術具のメッセージを送信して、すぐに片づけを始める。

「あいうえお! すぐに片付けるから、道標人と一緒に迎撃に行ってくれ!」

〈お、了解了解!〉

 くっそ、しょうもないメッセージのためにこんな手間を掛けさせられるとは!

 ポーチに収納して、周囲に落とし物などをしていないかを確認する。こういう急いでいるときほど落とし物をしやすいから、急いでいても入念な確認は忘れないようにする。

 そして、落とし物などは無いと確認してから、俺はアライラの元まで走る。

 体の大きな彼女を見つけるのは容易で、動いている様子もないことからすぐに合流できた。

「状況は!?」

〈いっただっきまーす!〉

 転びそうになった俺は、どうにか踏ん張った。

 そうして、彼女が食らいついている物を見る。と、半透明の芋虫みたいなモンスターだ。例によって俺とほぼ同じサイズ・・・じゃないな。太さだけなら俺と同サイズだけど、長さは芋虫そのものだ。

「それ、なに?」

〈シャクシャクとした食感で美味しい虫!〉

 なんか、凄く嫌な雰囲気の虫なんだが・・・とてもじゃないけど、食べたらヤバい感じが肌を刺すように警告してくる。

 それをまるでモヤシのように束で・・・あ、モヤシが食べられなくなりそう。

「アライラ。鑑定はしておけよ」

 すごく嫌な感じがするが、どうやらウェルダンビームで丸焼きにしてあるみたいなので、俺が思うほどヤバいという事は無いのかもしれない。

 だけど、念には念をというし、せっかくの加護なんだから使っておいたほうがいいだろう。

〈むー? まぁ、そういうなら鑑定!〉


『ヤッホン。異世界キリタカクカに生息している寄生虫。自身よりも強いモンスターに食べられることで子孫を繋ぐ。食べられると、体内の液状卵が食道や胃袋から体内へと浸透し、血管などを通って脳に移動する。ここで孵化した幼虫が、脳細胞に自身を繋げて行動を誘導する。人間に寄生された場合、成長すると人間より大きくなるため、頭が異常に膨らむので発見は容易。ただし、治療に成功しても脳は使い物にならないため、死は避けられない。また、体には液状卵が血に混ざっているため、焼却が推奨される』


〈ブホッ!! んべ! ンベベベベベベ!!〉

 アライラが盛大に吐き出し始めた。

「まぁ、焼いてあるんだし・・・そこまで危険はないのでは?」

 とうとう懸念していた寄生虫が現れた。

 やはり食べる物には慎重になって正解だった。いるんだ。寄生虫。こんな・・・いや、とにかくこうして見つかったのは僥倖と言える。

 より一層、食べる物は慎重に吟味していくことにしよう。

 とはいえ、さすがにアライラのビームで焼かれているわけだから、寄生することなどできないだろうし。

 そう思いつつ、俺は丸焼きになっている一匹を見る。

「・・・ウェルダンで仕上がっているんだしなぁ」

 念のため、今日までモンスターの解体に使って来た青い火の刃で身体を裂いてみる。

 切り口から染み出てくる体液は、肉汁の類だとみることもできるのだが・・・地面にボタッと落ちたところで凝固が始まり・・・ウネウネと小さな芋虫が凝固したそれから孵化した。

 ・・・こいつはヤバい。

〈・・・え、中まで火が通っているのに、孵化した・・・だと〉

「ウェルダン程度の火加減じゃダメってことなんだろう・・・それこそ、火葬で焼却が推奨されるわけか」

〈ど、どうしよう・・・〉

 そうだな。さっき束でムッシャムッシャと食べていたもんな。

〈ひぃぃぃ! 寄生されたぁ!?〉

 アライラが高速で後退りをしつつ、前足で自分の頭を摩っている。鑑定による解説からも、頭に侵入して行動を制御するタイプのようだしな。

 というか、以前に食べた経験があるということは・・・。

「俺と出会う前には、すでに寄生されていたのかもしれないな」

〈いやぁあ!! 今も私の頭の中で、こいつらが蠢いているっていうのぉぉぉおお!!?〉

「いや、それはないよ」

〈どゆこと!?〉

 俺は、まっすぐにアライラを見つめて答える。

「麒麟似の怪物との戦闘で、君は死にかけただろう?」

〈うん・・・〉

「あの時、君の身体を修復したわけだが、無事な部位から身体を修復するために必要な分を融通したと、前に説明したと思う」

〈・・・うん、した?〉

 忘れているのか。

「はぁ・・・その時、君の身体に寄生していたとすれば、すでに君の身体を修復するために消費済みだと思うから、前の分は大丈夫だよ」

〈なーんだ! そっかー!〉

「ま、今接種した分は別だけど」

〈んぎゃーッ! もうダメだーっ! 操られちゃんだもうダメだーっ!!〉

「いや、対処方法はあるぞ」

〈マジ?〉

「マジマジ。ただし、めっちゃ痛いし、いっそのこと殺せってなると思うけどね」

〈く、殺せ〉

「わかった。覚悟はできているんだな」

 一度、修復を受けているからこその潔さなんだろう。あの時とは痛さが段違いだと思うが、彼女も寄生虫に操らるくらいなら・・・ってことか。

〈え? あの、ちょっと―――〉

 アライラがなんか口ごもっているが、治療は迅速に行う必要がある。そのため、彼女の頭の上に飛び乗って、錫杖を突き刺した。

〈ふぎゃ! って、それで治るの!?〉

「いいや、ここからが本番だから、我慢してね」

〈え?〉

「ほら、殺るぞ」

 錫杖に灯る青い火が、そしてアライラの体内へと注入される。

〈ほぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ〉

 すでに一度、錫杖を刺して治療していることもあり、この青い火が彼女を殺すことはない。が、彼女の一部ではない異物を排除するために脳も肉も神経も血管も焼き尽くしていく。

 それは、激痛を伴うことだろう。

 しかし、寄生虫という厄介な虫を駆除するためには、仕方のないことだ。

 どうか、耐えてくれ。

 すると、アライラの身体が青く揺らめき出して、関節の隙間や殻の隙間から青い火が飛び出してくる。これに続けて、体毛が逆立ち始めると、青い火を噴き出し始めた。

 彼女の身体に収まりきらない火が、放出されているのだろう。

 これと共に、丸焼きとなって炭化した寄生虫も吐き出される。ボロボロとアライラの体内から押し出されて、土へ還っていく。

 結構な数が入っていたようだ。

 時間にすれば30分ほどだろうか・・・。

 錫杖から青い火の供給が止まり、アライラの体内に残る火がすべて放出されたところで、治療は完了した。

〈ほー・・・ほけっきょー〉

 アライラが力なく蹲る。

「・・・まぁ、これからは食べる物には気を付けような」




 それから、食べる物すべてを鑑定するようになった。

 そればかりか、スキャナーのような機能の技を使って寄生虫の有無を確認するようにもなる。神経質になっているようにも思うが、慎重であることはいいことだ。

〈むぅ・・・この虫は・・・むぅ〉

「・・・そいつは、ドーナンって食べられない虫だろ?」

〈安全に食べられるなら、もう食べられない奴でもいいかな?って〉

「さすがにそれはどうかと・・・思うよ?」

〈むぅん・・・むぅん・・・〉


次は、ボス戦まで進む予定です。

読んでくださり、ありがとうございました。

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