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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-91.転生者5



「じゃあ、僕はこれからどうしたらいいんですか?」

 僕はお手上げだった。勇者にも冒険者にもなれない。他にはあまり思いつかなかった。考えてみれば少し不思議だ。なぜ冒険者というよくわからない仕事が異世界に存在するのか。どうやらこの世界はもといた世界同様、冒険者という職は必要がないらしい。

「んー、そうだね。君は強くなりたいの?」

「はい。」

 力強く答える。

「じゃあ、選択肢は三つかな。一つはレイリの私兵になること。要するに軍隊に入るってことだね。二つ目はハローワークだね。身分証とかは用意してあげるから好きな仕事を選ぶといい。三つ目は魔法高校に通うことだね。まあ、君だったら勉強すれば編入試験くらい受かるんじゃないかな。」

「魔法高校?」

 僕は無性にこの単語が気になってしまった。

「そう、魔法高校いい響きだろう。まあぶっちゃけ魔法とかを教える高校で世界にいくつかある。そこに編入させてあげるということだよ。まあ、もちろん編入試験は受けてもらうけどね。」

「それは僕みたいに魔法が使えなくても通えるのか?」

 僕は必死になって聞く。レナさんには上げて下げられてばっかだから期待はしていないと言えばうそになるが、少ししか期待をしていない。


「やだなー、君、僕はそこまで酷なことは言わないよ。」

「どの口が言う。」

「もう、レイリまで・・・魔法が使えなくても魔法高校入れるのは世界でたった一つだよ。そう、私立クマ高校だよ。」

「クマ高校・・・」

 それって熊の高校なんですか?僕をからかってますか?などと疑問が次々と沸き上がってくるが何も言わない。その代わり疑いの目をレナに向ける。

「レナは嘘は言ってない、安心しろ。」

 レイリがレナへの疑いを払拭する。


「もう・・・僕の信用が暴落しちゃってるよ。悲しいなあ・・・」

「仕方ないだろ・・・」

「それに比べてレイリの信用は鰻登りみたいだけどねえ。」

「レナは少し黙ってろ。」

「あのー・・・」

 完全に無視されていた。ぐすん、悲しい。

「なんか口悪くなってない?そう言えば昔はこんな感じだったけ、そう僕たちが初めてあった時もねえ・・・」

「余計なことは言うな。」

「はーい、曹くんに話しても意味ないしね、話すならあの子辺りがいいかな・・・」


「あのう・・・」

 僕はさっきよりも大きな声を出す。そして、二人はやっと気が付く。

「ごめんねー、曹くん。」

「いいですけど、お世話になってるのは僕なんで。」

「そうだよねー。」

 調子に乗るな、と思ってしまう。しかし、相変わらずわからないというかつかみどころがない人だな。僕をなぜ助けたのか、なぜあそこにいることが分かったのか、そしてなぜ僕が転生者だということを知っているのか不思議である。僕はそんな気持ちを心に押し込める。


「クマ高校に行くためにはどうすればいいんですか?」

「そりゃあ、勉強するしかないね。まあ、僕はやさしいから教えてあげるよ。それにしても、魔法高校に入学するのでいいのかい?言っちゃあなんだけど、肩身の狭い思いをするかもしれないよ。知らんけど。」

「いいんです。」


「・・・大丈夫そうだね君は自信家っぽいし。どうせいじめられも気が付かなそうだし。」

「なんか失礼なこと言いませんでした?」

「僕が思ったことだしねえ。」

「かわいくないですよ。」

「やだなー、こんな美少女を前にしてそんなことがよく言えるね。」

「せめて美女だろう。」

 レイリは突っ込む。レナはどっからどう見ても大人だった。見た目は若いにしろ、纏っているオーラが大人の女性のオーラだった。

 そして、僕は激しくレイリに同意したのだった。



 かくして、僕の地獄が始まった。まずは言語だった。字も読めないし、レイリやレナ以外の人が言っていることがわからない。

「あれだよ、言葉に魔力を乗せると伝わるんだよ。それに相手の言葉に宿る魔力を増幅することで僕たちは君のいうことを理解してるんだよ。」

 レナは曰くそうらしい。よくわからないが、僕にも微細な魔力はあるらしいが、これでは使えないから諦めろと言われてしまった。やっぱりこの異世界転生ハードモードすぎだろう。

 普通の人と意思疎通もままならない状態から僕の異世界生活は始まったのだった。読み書きは思った以上に苦労はしなかった。文法は日本語と似ており、何より表音文字だった。要するに読めなくはないということだ。それに日本語のように漢字もカタカナもなく、文字数は五十だった。

 一か月程度経つと日常会話レベルならできるようになった。うん、頑張った、僕。そして読み書きもある程度できるようになったし、本も簡単なものなら読めるようになった。

 数学は全く問題がなかった。中学生レベルのものだったし、何しろアラビア数字だったのだ。異世界にアラビア数字があった時は本当に驚いた。どんな世界でも数学は共通言語なのかもしれないな。

 科学も問題がなかったが、何も知らないのは社会だ。国家の仕組みとかは簡単なのだが、主要な貴族の名前を覚えるのは本当にきつかった。アンジェラにアタランタになんか紛らわしいものが多かった。そして、地理はというと、これもまた驚いた。なぜか四国が大陸になっていたのだから。そして、よく見てみると北海道、本州、九州、四国が大陸なっていた。本当にびっくり桃の木山椒の木だった。

 そして、なんとか僕は一通りの勉強を終えたのだった。


次回、ネネ登場します。

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